少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
今日明日と艦隊に迎えた逸話を投稿するだけの予定だったけど、2話とも山もなにもない、ただ消化するだけの話……みたいなものなので、急遽合間にオマケ話を一つ。
しかし、この話にも特に語るべきところはなにもない。
パンツ話とソロモン、陸戦話なんかが今後続くはずなので、それまで耐えて!
「今さら遅いのよ! このクズ!」
佐世保が落ちた日。
ドック側の入り口、その蛇島南岸壁で深海棲艦を食い止めていた霞が開口一番に言ったセリフだ。
そしてそれは、俺が霞と初めて会話したときの記憶。
誰に言われるでもなく、町を守るならこのポイントで防ぐしかないと判断した霞。
そしてその意見を取り入れた朝潮。
二人とも優秀だった。
たった二人で、彼女たちはまず町を、人を守ることを選択して戦っていた。
日頃から多忙な上に、秘書艦代理まで臨時でこなしている霞が隣で黙々と書類を片付けている。代わりに管理部に置いてきたという長波は今頃涙目で仕事をしているかもしれない。
そんな霞の姿を見て、思い出した始まりの記憶は今となっては懐かしいものだ。
あのときの霞は、まるで睨め付けるかのような目をして、眉間に皺を深く刻んでいた。
「なによ?」
見られていることに気付いた霞がそう声を発した。
その眉間には皺ができていたが、あのときのものとは違う。
「霞の横顔に見惚れてたんだよ」
そんな風に茶化してみると、バカじゃないのとすげない返答をされたが、その耳は少し赤味が差していた。
俺たちは生き延び、あれからも確かに時を刻んできたのだなと、そう実感する。
あの日の判断は間違ってなかったと思う。
俺がそれを口にしたとき、霞は呆れ、そして反対したが、結局俺の考えに従ってくれた。
「鎮守府を捨てる? アンタ、本気で言ってるの? ここは護国の要。他の基地や泊地とはわけが違うわ」
「勘違いだ、ここを鎮守府足らしめているのは建物なんかじゃない。お前たちが生きていれば何度でも再建できる。救われなきゃいけないのは箱物なんかじゃなくお前たちだ」
ただの建造物だ。そんな物のために死んでやる義理はない。
今でもそう信じている。
あの日、深海棲艦の裏をかくため艤装を抱えてみんなで走った。
「アンタ、やっぱりちょっとおかしいわ」
霞はそう言ったが、それでも最後まで俺を信じて戦ってくれた。
みんなボロボロの姿で、どこから見ても敗残兵だった俺たちは、それでも笑顔で月の照らした海を呉まで逃げ帰った。
またこうして戦いたいと言った俺に、2度とゴメンだと言った霞だったが、今もこうして力を貸してくれている。
「だから、なんなのよ!」
視線に耐えられなくなった霞がさっきより眉間に皺を寄せてこっちを見る。
よく誤解をされるようだが、霞はかわいいのだ。
言葉はキツいかもしれないが、そのどれもが俺を思ってのこと。
帝国海軍の栄光と衰退を全てその目で見てきたこの駆逐艦は、開戦の真珠湾から最後の作戦となった天一号までを実体験で知っているのだから。
俺から言いたいことは、だから決まっているのだ。
「いつもありがとな。好きだよ」
鳴かぬ蛍が身を焦がすを地でいく女。それが霞。
そんな霞の反応については俺だけの秘密だ。
俺の宝物として大切に、胸の奥にしまいこんでおこうと思う。
霞さん。
提督からカルティエのタンク フランセーズって腕時計を贈られて愛用中。
右腕を飛ばしたときから、作戦時はつけ替えるようになった。
感覚派の天才さんが多い中、完全理論派の艦娘。
第2選択言語が肉体言語のバイリンガルで、趣味は読書。