少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
彼女は誰だ!!!
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それとは別に、本文にまったく関係ない艦娘を紹介するコーナー!
【 国後 】
子日スライディング土下座事件の張本人。
そして、ある意味で雪風を超すスーパー幸運艦。
戦争通じて戦死者0。
キスカ島撤退作戦が無事に成功したのも彼女のおかげで突入が1日ズレたからだ。
はい、こんにちは! リンガの基地司令官です!
SE: シュイーン
ちょっと早口気味な挨拶でYouTuberみたいなスタートを切ってみたが、ダメだ。伝わらないね。
そもそも普段見てないからね、もっと研究しないとダメかな。
さて、本日の俺。
時雨を連れてとある基地までお出掛け中。
目的はヘッドハンティングです。
時雨にはお使いを頼んであるので、その間にお目当ての艦娘さんを呼び出してもらい、まずは二者面談。
案内された部屋に着くと、彼女はすでにイスに座って待っていた。
「私を指名して、いったいなにさせようって魂胆だい?」
うんざりしたような顔の彼女は早々に、そう口にした。
「君の戦報を拝見させてもらった」
「なんだ、またか」
おおかた、指揮官先頭の伝統を蔑ろにした臆病者だとでも書かれているのだろう。
ならばこの男の目的は叱咤の類か再教育か、どちらにせよあまり面白いものではなさそうだ。そんな風に彼女は思った。
しかし、男が続けたのはその予想を覆すものだった。
「素晴らしい判断だと思った」
率直な感想を伝える提督。
それを聞き、怪訝な表情をする彼女に問う。
「どうした?」
「艦娘にあるまじき行動だって責めないのかい?」
なるほどそういうことか。
それだけで、彼女が置かれた状況を察する。
海軍に残る悪習である指揮官先頭。
彼女の戦報には確かにそういったことも書かれていた気もするが、時間もなかったので過程と結果以外は流し読みだ。正直あまり記憶にないし、そんなところに興味もない。
「これ以上ない見事な戦果を挙げているのに、どこを責める必要があるんだ」
笑いながら、そうやって手放しの称賛を贈る。
「だけど、僚艦にばかり戦わせて自分は高見を決め込んだって散々責められたよ」
「見当違いだ、指揮艦が最初に特攻してどうする。指揮を執る者は最後に死ねばいい」
なんで学ばないんだろうな。
そりゃ上が動かなきゃ下が着いてこないってのはなくもない。が、上から死んでいって組織がまともに機能するわけがない。
いや、上って言うと語弊があるよな。
この場合の上って、社会で言うところの中間管理職だし。
店長や主任、いいとこ課長さんとかだろう。
文句があるならお前がやってみせろ。と、社長さんに言ってやりたい。そんな社会人も多かろう。
まぁいい。そんなのは些細なことだ。
こんなところで他所の基地司令官に褒められたところで状況は変わらないんだろう。
言うべきことをさっさと言って、話を進めるに限る。
と、言うことで、ウチの艦隊に来ないかと声を掛けた。
あんまり胡散臭い顔をするものだから、仕方がない。本音で話そう。
「身も蓋もない話をするとだな、君はウチの艦隊が声を掛けるのにちょうど良い条件を揃えてるんだよ」
「まず、前提として無能は困る。有能な敵より無能な身内のほうが始末に負えないからな」
そう言った男は、人好きのする笑顔を見せた。少し、この男の話に興味が出る。
「次に、ウチが今1番必要としているのは有力な戦力ってわけじゃない。ウチの水雷戦隊は充実しているからね」
「じゃあなんで私を」
駆逐艦の私を勧誘に来たとこの男は言っていたはずだが、水雷戦隊が必要ないときたもんだ。よく分かんない奴だ。
そしてそのよく分かんない奴は、さらに分からないことを言う。
「君に将の器を見たからだ。艦娘を指揮できる艦娘は少ないんだよ」
「艦娘が艦娘を指揮するなんてのは褒められたことじゃないね」
「君はソレをやったのだろう?」
「だから、今は冷や飯を食らってる」
「ウチの艦隊では珍しい光景じゃない。現に、ウチの艦隊は私じゃなく駆逐艦の子が指揮を執っているよ」
ついでに内政も丸投げだ。と思ったが、それはあえて言わないでおこう。
「信じらんないなー。で、それが理由なの?」
「実は1番重要な理由は他にある」
固唾を飲んで、その理由とやらを待つ。
そうして出てきた理由がこれ。
「君が言った通りだ。君が冷や飯を食らわされてるくらいの厄介者だから、安心してウチに誘える」
「なんだいそりゃ、皮肉のつもりかい?」
「わざわざ皮肉を言うためにお出掛けしてくるほど暇人じゃないし、性格は悪くないつもりだよ」
そこへノックの音とともに時雨が入ってきた。
「確かに暇ではないだろうけど、僕の知っている提督なら、皮肉を届けるためだけに大洋を渡っても不思議じゃないけどね」
「おかえり。どうだった?」
「事前の情報通りだね、ここの司令官は彼女の扱いを決めかねてる」
戦いぶりを臆病だと論じる批判はあるが、彼女の指揮のおかげで隊が生還できただけでなく、戦果もあったのだ。
罰するべきが賞するべきかで意見も割れているらしい。
どうぞ割れててくれ。その間にウチが頂いていくからさ。厄介払いができてそちらさんも万々歳だろ。
「時雨? 久しぶりじゃないか」
「やあ長波。元気そうで安心したよ」
「改めての紹介は要らないな? ウチの秘書艦の時雨だ。実は彼女たちから君のことを聞かされてね、ウチに欲しい逸材だと」
彼女に声を掛ける理由をいろいろ挙げたが、決定打はこれ。
「最初に君の境遇を知らせてくれたのは霞だね。相変わらず軍令部のやることは見当外れだと怒っていたよ」
「霞も居るんだね」
「二人とも昔馴染みなんだろ? 二水戦で長かったと聞いてる。まったく面識のない艦隊に来るより、気心が知れていていいんじゃないか?」
「まあね、霞とは敵勢力圏の真っ只中で救助活動に勤しんだ中さ。色々と無茶をやらかす悪友みたいなもんかな」
長波は二水戦所属期間が1番長く、同じく二水戦に所属していた時雨や霞とは面識があるのだ。
「それで、アンタは二人に言われたからホイホイ迎えに来たって言うのかい?」
「そうそう、俺が戦報を読んだのなんて実のところ君を迎えるのが決まった後だったし」
皮肉を言ったつもりだったが、大して効かなかったなと長波は思った。
そして、実は提督が戦報を読んだのも、ここに向かう船の中でだったりもする。
「人がいいのか艦娘に甘いのか、よくわかんない奴だな」
「これも、ウチの艦隊では珍しいことじゃないさ。時雨と霞がウチの艦隊の人事権を握ってるからね。さっき言った艦隊の指揮を執ってるのが霞だよ」
ちょっと驚く話が聞こえた。
待て待て、今なんてった?
「人事権って、ホントなのかい?」
「うん、任されているよ。実際にやり繰りしてくれてるのは霞だけどね」
考えられないことだ。
指揮を執るってのが問題になる組織で、艦娘が人事権を持つなんて。
「艦娘が好き勝手に人材を考えるのはどうなんだい?」
「もともと現場を知ってるのはお前たちだけだし、艦娘としての能力や相性なんかも過去の大戦から一緒に戦ってきた当人の方がよくわかってるだろ。任せるさ」
器が広いのか、なにも考えていないのか。
やっぱりよく分かんない奴だった。
「で、君に対しては二人して艦隊に迎えるべきだと太鼓判を押してる。彼女たちがそこまで評価している艦娘を迎えるのに反対する理由なんてないよ。……反対したところで覆らないし」
「もう霞がウチの艦隊表に長波の名前を書いて、今後の予定を組み直していたからね。提督が長波を連れて帰れなかったら、しばらく責められるんじゃないかな」
待て待て待て、おかしな話のオンパレードだ。
そんなのまるで霞の艦隊じゃないか。
「おいおい、本当にその艦隊は大丈夫なのかい?」
「おかげで自由にさせてもらっているよ」
「自分たちで考えて動く、だからその責任も自分たちで取る。そんな艦隊だ」
「居心地の良い艦隊だから長波もきっと気に入ってくれると思うよ。でも、なんでも自由にできるウチは、どこよりも規則に厳しくて、権利と義務にうるさい艦隊でもあるから、そういった意味では楽ではないね」
男と時雨がそれぞれ艦隊について聞かせてくれた。
「権利と義務、か」
面白そうなところではある。
どこの基地も、どこの艦隊も変わらず。最低なのか最悪なのかと思っていたが、少なくとも今まで所属してきた他のところよりは息もしやすそうだと思った。
「私はそこでなにをすればいいんだい?」
「ウチの艦娘と同じように遊んで、訓練して、また遊んで、そして戦う。戦い方にも俺は細かな指図をしたりしないから、考えがあれば霞に言ってくれたらいい」
「そんなことまで霞がやってるのか。霞も苦労するな」
それを聞いた時雨が笑って言う。
「つまり、霞と一緒に苦労してもらおう。そういうことだね」
過去「華の二水戦」に所属し、数々の艦と肩を並べ作戦に携わった経験を持つ霞は、先ほどから話題になっている人事のほか泊地運営に必要な案件の管理をほぼ全て担っている。さらに艦隊司令艦として作戦立案や艦隊指揮の全権をも手にしており、彼女の一挙手一投足で艦隊の向く方向が変わるとも言える。
それはそのまま、彼女になにかがあれば泊地も艦隊も止まってしまうことを意味している。膨大な仕事量に追われる彼女の負担軽減。それは艦隊にとって、そして提督にとっても急務だ。
軽減された分だけ彼女はほかの仕事にも目を光らすだろうが、仕事内容を分担できればリスクの分散に繋がり、今よりは体を休める時間も取れるだろう。
それは霞個人の問題ではなく、艦隊にとって大きなメリットだというのが提督と時雨の共通する考えだ。
そして、同じく二水戦旗艦を経験し、戦時の二水戦所属期間一位を誇る長波なら霞の仕事を分担することも可能だろう。
水雷戦隊という大きな集団をまとめた経験だけでなく、所属期間が長いというのはそれだけで大きな武器だ。困窮する極限の状況下での作戦経験、そして知己となる艦娘の多さ。その財産を十全に活かせるのもまた、ウチの艦隊を置いてほかにはないと自信を持って言える。
「ホント、身も蓋もない話だったね」
話すべきことは話した。
後は彼女がなんて言うかだが……。
肩の力を抜き、一つ息を吐いた彼女が言った。
「いいよ、この長波サマが必要だって言ってくれるなら、それは嬉しいことさ」
「よし、そうと決まれば早速手続きだ。長波の気が変わらないうちにウチの艦隊の子になってもらおう」
「それなら心配は要らないよ。手続きはさっき僕がしてきたから」
なんのこともなく、時雨がそんなことを口にした。
「ちょ、それじゃあ最初から選択肢なんてなかったんじゃないか」
「長波なら断らないと思ったからだよ。それに、僕も長波へのここの仕打ちには怒っているんだ。なにがなんでも説得するつもりだったさ」
そうだった、時雨はこんな奴だ。
「私はいいんだ、けど。高波を置いては行けない。なあ司令官。私のわがまま、なんとかならないかい?」
「わがままねぇ、その高波という艦娘を俺が連れて行くことにメリットはある?」
イスから立ち上がり、縋るように言う長波。
早速の権利の行使なので良い機会ではある。
ちょいと長波の話を聞いてやろう。
実のところを言うと、駆逐艦一人掻っ攫うのに結構なワガママを通すので、ホイホイと人員を増やして連れ帰るわけにもいかないのだ。
「高波は目がいい。索敵は重要さ、艦隊の目になれる能力を持ってる。あいつは、見た目は大人しいが芯を持ってるやつだ。必ず力になる」
「索敵自慢ならウチにも暁がいるしな、ほかには?」
やんわり断ろうと考えていたら、横から時雨が口を挟んだ。
「高波はかわいい子かい?」
「目の中に入れても痛くはないさ、この長波サマの妹だからね」
時雨が助け舟を出したということは察せられた。ここは意地悪せず拾うべき、そう言っているのだろう。
そんなことよりも重大な問題ができたのだ。
イスに座ってる間は気が付かなかったが、長波サマ。
お胸がとても大きいですね。
キリスト教圏では大きな胸は性的 = 悪であったことから悪魔の棲み家と言われたらしいが、その谷間にはまさしく悪魔が棲んでいるに違いない。
それに早速誘惑された俺に、長波のお願いを断る理由などない。
「なら仕方がないな、かわいいは正義。分かった、連れて行こう」
簡単に言うが、問題はある。
「でも書類はどうするのかな? 長波の異動しか許可を取っていないけど」
「長波の私物として間違えて持って来てしまったから、必要なら取りに来いってリンガに帰ってから電文を送っておけ」
めちゃくちゃな理屈を大真面目に口にした提督。
それを聞いた長波が小声で時雨に言った。
「アイツはどこまで本気なんだ?」
「だいたいいつも本気だと思うよ」
ソロモンのルンガ沖夜戦での長波がこんな感じ。
二水戦旗艦だった長波が、作戦後に槍玉に挙げられたわけだ。
旗艦、つまり司令部が壊滅しちゃうと戦隊が機能不全を起こすので、司令官である田中少将は特段間違った選択をしたわけじゃないんだけどなぁ。
参加戦力
駆逐艦8 重巡洋艦4
軽巡洋艦1
駆逐艦6
損害
駆逐艦1沈没 重巡洋艦1沈没
重巡洋艦3大破
【ためになる艦これ知識】
この海戦は九三式魚雷が活躍した帝国海軍自慢の一戦。
みんなが「酸素魚雷」って言ってるあの魚雷だ。
白露型以降の艦に積まれたこの魚雷。これ以降の魚雷は基本的に酸素魚雷だし、そもそも秘密兵器だ。
当時は現場も含めてわざわざ酸素魚雷だなんて呼んでないゾ。
このとき被害を一身に集めて、唯一の沈没艦となったのが高波。
被害担任艦となる。
武蔵の艦長も後で書いているが、「被害担任艦」が当時の呼び方。
被害担当艦っていつできた言葉なんだろな、艦これ以前はあんまり聞かなかった気がする。
重要なのはこの一戦。
戦術的にはS勝利だが、戦略的にはE敗北。
目的であった輸送には完全に失敗してる。
提督的には、高波が沈んでる時点で戦術的にも大敗北だと思う。