少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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この章だけボリューミーになりそうね。
でも数えてみると、ほとんど〜から始まるシリーズなのよね。

時系列的にはここ南西海域での話にはなるが……。
う〜ん。

ところで、感想欄で気軽にからんでくれる人を募集していますYo!


〜初めてのおつかい〜

「心配だ、心配だ」

「そうか、今日だったね」

 

 

 

ある晴れた日の朝。

執務室をウロウロと歩き回る提督に時雨が呆れ声を掛けた。

 

 

「心配し過ぎじゃないかな? 山風はアレでできる子だから、あんまり構い過ぎるのも良くないと思うよ」

 

 

今日は山風が旗艦を務める初めての海上護衛が予定されている。

通常ならシンガポールからブルネイを経てタウィタウィ。第六の子たちならそこからさらにパラオやトラックまで輸送船を護衛する任務だが、今回はブルネイで折り返す特別ルートをゴリ押しで組んである。

それでも心配は尽きないのだ。

 

 

「やはり目的地はペナン基地くらいにしておくべきだったか? いや、それだとマラッカ海峡が心配だな。いっそセレターとリンガの往復が最適解か」

「それだと行って帰ってくるだけになるね。今回は二度手間になるのを承知で目的地はブルネイにしたんだよね? 1,000kmくらいしか離れてないよ」

 

そうなのだ、山風率いる輸送船団はブルネイまでしか物資を運ばない。

しかし、当然ながらタウィタウィなども補給物資を必要としている。結果、山風の輸送船団が出発した数時間後には改めて六駆のみなさんが第2陣の輸送船団を連れて回ることになっていた。

 

もちろん山風とはすれ違わないルートを通るので当人は知らない作戦だ。

当然、暁からは嘆息で、響からはジト目でもって返された。艦隊の良心である雷をもってしても「さすがに擁護できないわね」と言われる始末。一応電がフォローしてくれたが、誰もしなかった役が回ってきただけなのかもしれない。それでも雷、電は山風とは知らぬ関係ではないため、最終的には引き受けてくれたのだった。

 

 

「もう少し信頼してあげなよ」

の……信頼? 織田家の武将か誰かか?

 

 

「信頼と心配は別物だ。それに白露や海風からも最大限のバックアップを持って臨むべしと進言をもらってるし」

 

信頼ならしている。期待もしている。しかし、高速輸送船を揃える我がリンガ泊地でも輸送船団の速度は15ノットに届かない。地図の上では隣の基地とも言えるセレター軍港とブルネイ間だが、それらを往復してリンガに帰投するのに3日を要するのだから心配するのも仕方がない話ではなかろうか。

ちなみに六駆が基地に戻るのはそれから更に2週間後の予定だったりする。

 

 

ともあれ、山風旗艦による初めてのお使い。バックアップは完全を期している。

彼女と共に護衛を担当するのはまず江風。これは山風になにかあったときでも、姉妹なら気も許せるだろうとの配慮だ。そして提督の周辺を秘密裏に警護し続ける影の功労者であり実力者、三水戦旗艦の川内を半ば無理矢理突っ込み、これまた警護艦として実力は折り紙つきの三水戦メンバー綾波という、近海を渡るには豪華すぎるガチのメンバーで固めてある。

 

 

「仕方がない提督だね、それで? 霞はなんて?」

 

今回の作戦を行うにあたって1番の難所と考えられていたのは、艦隊行動を一手に担う慈悲のない艦隊司令艦殿の攻略だったが、「勝手にしろ」との心温まる返答を持って応援してくれた。

白露たちの顔を立てたとも取れるが去り際に一言、2度も3度も同じことやったらアンタ首だから。と、まさかの基地司令官解任通告を頂くことになってしまった。

 

「提督をクビになっても僕が養ってあげるから平気だよ。そうなったら昭南島あたりに家でも買って静かに余生を送ろうね」

 

ダメだ、明らかに後ろ向きな人生設計を前向きに検討するんじゃない。

 

 

 

そこへ静かなノックが割り込む。

「準備が整ったわ」

 

いつもと変わらない平坦な声で姿を現したのは横須賀鎮守府で中将閣下の秘書艦を務める航空母艦加賀。

 

「加賀さん? 視察の予定でもあったのかな」

 

予想されない人物の、予定外の登場に椅子から腰を上げ驚く時雨だったが、ふふふ、しかしこれは予定通りの行動なのだ。

 

 

「こちらの艦隊の準備はできているのかしら?」

「もちろんだ。今日は頼むよ」

「任せておいて、必ず今作戦は成功させます。万が一の場合には私の20cm砲で艦隊決戦を仕掛けてでも無事にあの子を連れ帰るわ」

「まさか、加賀さん……」

 

そう、俺に限って慢心は有り得ない。これが最大限のバックアップというものだ。

支那方面艦隊で二四駆と共に中国戦線で活躍した加賀を中心に、特別な空母打撃群を形成する。

鈴谷や熊野ほか志願してきた白露、海風、涼風による支援艦隊の完全なるフォロー体制。今回運ぶ輸送量をはるかに超える油を吐き出すが、作戦の目的はあくまで山風の海上護衛デビューなのだ。そこを履き違えてはいけない。

 

 

「本当は長門にも来てもらいたかったのだけれど」

 

アゴに指を添えた姉さんがそう漏らした。

 

横須賀鎮守府に座する戦艦長門。

彼女は加賀というかわいい妹からの滅多にないお願いを快く受け入れ協力を申し出てくれたのだが、聯合艦隊旗艦さまをやすやすとリンガまで寄越せるはずもなく、今回は加賀だけがほとんど失踪に近い形で駆けつけたのだ。

中将閣下には駅でお土産のヒヨコでも買って渡せばいいだろう。

 

 

 

「せめて金剛の協力を仰げれば良かったんだが、それをすると霞に気取られる恐れがある」

 

そんなことになれば、この支援艦隊そのものが暗礁に乗り上げかねない。戦艦の戦力を当てにできないのは辛いが、普段から霞にべったり付き添っている金剛に話を持っていくのは割りに合わないと判断した。ここは実利を取るべきだろう。

 

「さて、時間もない。早速行こうか」

「……どこへ?」

 

心なしか、どこか無表情気味の顔が怖い。そんな時雨の質問に明確な答えを返す。

 

「出発前の最後の訓示に決まってるだろう」

 

そうして、妙なやる気に燃えている二人が歩きだし、その後に時雨も続いた。

 

 

 

 

 

「あまり意味のある作戦とは思えませんわ」

「相変わらず変なこと考える提督だねー、面白いからいいけど、深海棲艦の出現情報でもあったの?」

 

顔を合わせた途端に声を掛けてきたのは熊野と鈴谷だ。

控え室には他に白露、海風、涼風の計五人が待機していた。

作戦前というのに、なんでお菓子を持ち寄ってリラックスモードなんだよ!

 

「そんなものがあったら輸送作戦そのものを中止してるに決まってるじゃないか」

「いつ敵が現れるとも限りません。もしもに備えるのが軍事行動です」

 

そう告げる加賀の言葉に、その通りだとでも言いたげな白露と海風が力強く頷く。その二人を引き気味に見てるのは涼風。

 

「もういいですわ、それで、わざわざ出発前になんですの?」

 

「今作戦は秘密作戦。くれぐれも山風に勘づかれることなく、しかし片時も目を離すことなく行程3日を完遂せねばならん非常に難易度の高い作戦だ。が、ここに集まってくれた皆はそれをやり遂げることができる高練度艦、必ずや吉報を持ち帰ってくれると確信している」

 

イキナリ熱い口調で訓示を始める提督を見て涼風は思った。

「……ダメだ、この提督。早くなんとかしないと」

 

 

いよいよ作戦内容の通達だ。加賀が前に立ち、道中の警戒について説明する。

「今回の作戦行動中は制空のために私の制空隊を上げます。もちろん識別胴体帯と尾翼識別番号は塗り潰してありますので、近隣基地からの航空隊だということにします」

 

「そこまでやる? 3機編隊で上げるのかなー、まさか15機全部とか?」

「今回は念を入れて熟練の零戦二一型を21機積んできています」

 

近海を渡るのに過大すぎる航空機運用に鈴谷が呆れ顔で聞くも、顔色ひとつ変えない加賀がいつもの平坦な声で答えた。

 

「21機……、真珠湾にでも行くつもりなんですの?」

同じく過剰戦力について疑問を呈した熊野に動じることなく加賀が言う。

「もちろん志賀にも上がってもらいます」

 

 

「ちょい待ち、ウチらの索敵機を上げておくだけでも十分なんじゃ」

 

ふふ、戦術行動の申し子と呼ばれる鈴谷だが、それでは甘い。お前がこの間作ってくれたクッキーよりもなお甘い。

 

「敵艦を見つけてから艦戦を上げては間に合わんかもしれない、それならば道中最初から最後まで一貫して制空権を確保しておくほうが安心だろ?」

「いや、だろ? って言われても。泊地の目と鼻じゃん。敵なんて空母どころか水雷艇の一隻だっていないよ? 多分」

 

 

「最悪制空権を喪失、敵艦隊と砲撃戦に突入した場合は私が突撃して護衛艦隊を守護します」

「いやー、空母が艦隊戦はおかしいでしょ」

 

「私の装甲は長門型を凌ぎます。万に一つも失敗は有り得ません」

「加賀さん格納庫のために装甲割ってなかったっけ?」

 

「私の砲は前を向いて2門なので、突撃しながらの砲戦に向いています」

「一斉射したら甲板めくれちゃうんじゃ……」

 

熱い護衛計画について、加賀と鈴谷の白熱した議論が繰り返されるが、みんなが心を一つにして作戦に望んでくれている証だと、そう提督は思う。

 

 

「クソ、もう少し時間があれば、山風の随伴に金剛型を並べたものを」

「時間がないのが悔やまれます」

 

金剛以外の姉妹艦は、それぞれ別の艦隊で最前線を戦っているはずだ。呼び寄せるにはそれなりの時間と念密な根回し、そして納得のいく口実が必要になる。そのため、高速戦艦で周囲を固める作戦は残念ながら実現しなかったのだ。

これだけの戦力を集めたにもかかわらず、未だ足りないと悔やむそんな二人に時雨が静かに言った。

「輸送船の護衛に戦艦並べて、いったいなにを運ぶつもりだったんだい?」

 

 

しかし、彼らにその声は届かなかったようだ。

訓練は実戦のように、実戦は訓練のように。わかりますか? と加賀の声だけが室内には響いていた。

 

 

 

 

 

「さ、お前たちはそろそろ出航だ、頼むぞ」

「もう時間なのですの?」

「山風たち護衛艦が出るのは正午すぎだから3時間後だな」

ゲンナリとした表情の鈴谷、熊野と対照的に、今まで静かに事の成り行きを見守っていた白露、海風は互いの目を見て頷いたのだった。

 

 

出発際の桟橋で、一歩引いた涼風が小声で時雨に話しかける。

「時雨姉ぇ、放っておいて構わないのかい?」

「そうだね、ブルネイに行くのにこの調子だと、パラオに送り出すときには航空支援付きの連合艦隊を編成しかねないね」

 

問題にしか聞こえない話だが、それでも悩む風ではなく、時雨はさほど危機感を抱いていない様子だ。涼風がその疑問を顔に出すと、落ち着いた声のままで、時雨が付け足すようにこう言った。

 

 

 

 

 

「あとで霞に報告しておくから心配ないよ」




Dadmiralという言葉を生み出した山風だからね。仕方ないね。
山風は大戦前の作戦で加賀と行動を共にしているので、加賀にとっては昔から知ってる近所の子だ。

そして改長門型として生を受けた加賀は長門の妹でもある。


リンガ泊地の艦隊での問題はなんでも霞に丸投げシステム。
だから長波ゲットに燃えてたのだ。

そして長波は自分の時間を捻出するために、朝霜ゲットを企み奔走する。
これで霞が言う「長波がもう一人いたらいいのに」が実現するわけよ。
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