「そういえば坂本、次の目標だけど」
「ん?試召戦争のか?」
「うん」
あれからみんな満腹の状態で(雄二も回復した)次の試召戦争についての話をしていた。
「相手はBクラスなの?」
「ああ。そうだ」
そう、今回はあの屑が代表をしているBクラスである。
「どうしてBクラスなの?日標はAクラスなんでしょう?」
「正直に言おう」
明久のもっともと言える問いに、雄二が急に神妙な面持ちになり、
「どんな作戦でも、うちの戦力じゃAクラスには勝てやしない」
あの雄二が、戦う前からこんなセリフを言う。まぁ無理もない。あの霧島翔子を代表としてはじめ、学年次席である久保利光、秀吉の姉、木下優子にあの工藤愛子とずばぬけた学力を持っているやつが何人もいる。こいつ等を抜きにしてもFクラスで太刀打ちできるわけがない、というのが現実。
「それじゃ、ウチらの最終目標はBクラスに変更ってこと?」
「いいや、そんなことはない。Aクラスをやる」
さすが。それでも諦めず打倒Aクラスの目標にしている。これも神童と言われている所以かな。
「雄二、さっきと言ってることが違うじゃないか」
そこにまた明久が雄二に抗議した。
「クラス単位では勝てないと思う。だから一騎討ちに持ち込むつもりだ」
「一騎討ちに? どうやって?」
「そのためのBクラス、だろ?」
「そうだ」
俺の答えに雄二が肯定した。
「試召戦争で下位クラスが負けた場合の設備はどうなるか知っているな?」
「え? も、もちろん!」
嘘つけ。
(吉井君、下位クラスは負けたら設備のランクを一つ落とされるんですよ)
姫路からの助け舟で答えを得た明久。てか、モロバレだぞ、姫路。
「設備のランクを落とされるんだよ」
今更感MAXなんだが…
「……まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ」
「そうだね。常識だね」
「では、上位クラスが負けた場合は?」
「悔しい」
それで済むのか?
「ムッツリーニ、ペンチ」
「ややっ。僕を爪切り要らずの身体にする動きがっ」
「だからなんですぐにペンチに行くんだよ。そしてなぜムッツリーニに言うんだよ。持ってんのか?だとしたらすごいよ。なんで持ってんのって言いたくなるけどな。後明久、お前リアクション軽いな」
やばい、思わず長いことツッコんじまった。この一連の流れに隙がなかったしな。
「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」
またも姫路がフォローをする。
「つまり、うちに負けたクラスは最低の設備と入れ替えられるわけだね」
「Dクラスの時もそうだったろうが」
こいつ、忘れたのか?
「そうだ。そしてそのシステムを利用して、交渉をする」
「交渉、ですか?」
「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むよう交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラス設備で済むからな。まずうまくいくだろう」
「ふんふん。それで?」
「それをネタにAクラスと交渉する。『Bクラスとの勝負直後に攻め込むぞ』といった具合にな」
「なるほどねー」
明久の奴、ちゃんとわかったのか?…まぁ、大丈夫、だよな?
「じゃが、それでも問題はあるじゃろう。体力としては辛いし面倒じゃが、Aクラスとしては一騎討ちよりも試召戦争の方が確実であるのは確かじゃからな。それに──」
「それに?」
「そもそも一騎討ちで勝てるのじゃろうか? こちらに姫路がいるということは既に知れ渡っていることじゃろう?」
今までしゃべらなかった秀吉が雄二に疑問をかけた。だが
「そのへんに関しては考えがある。心配するな」
自信満々に言う雄二。まぁ雄二の奴、自分がやるつもりだからな。
「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことはその後に教えてやる」
「ふーん。ま、考えがあるならいいけど」
ということで、この話は雄二の話術により終わりを迎えた。
「で、明久」
「ん?」
「今日のテストが終わったら、Bクラスに行って宣戦布告して来い」
またか。
「断る。雄二が行けばいいじゃないか」
…まぁ、ごもっともな意見だ。色んな意味で。
「やれやれ。それならジャンケンで決めないか」
「ジャンケン?」
出たよ、鬼畜ジャンケン。
「OK。乗った」
案の定、明久は乗ってしまった。単純な奴。
「よし。負けた方が行く、で良いな?」
雄二の言葉に、こくりとうなずいた。
「ただのジャンケンでもつまらないし、心理戦ありでいこう」
「わかった。それなら、僕はグーを出すよ」
…ホント、単純な奴。
そうか。それなら俺は──」
雄二は指をゴキゴキと鳴らした。
「お前がグーを出さなかったらブチ殺す」
わー、すごい心理戦だー(棒読み)
「行くぞ、ジャンケン」
「わぁぁっ!」
パー(雄二) グー(明久)
「決まりだ。行って来い」
「絶対に嫌だ!」
そりゃそうだ。
「Dクラスの時みたいに殴られるのを心配しているのか?」
「それもある!」
「それなら今度こそ大丈夫だ。保証する」
どの口が言うんだよ。
「なぜなら、Bクラスは美少年好きが多いらしい」
「そっか。それなら確かに大丈夫だねっ」
明久、なんて残念な子。
「でも、お前不細工だしな……」
雄二、それ自分が大丈夫って言った言葉も否定してるぞ。
「失礼な!365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」
「5度多いぞ」
「実質5度じゃな」
「くだらないこと言ってないでとっとと行け」
「三人なんて嫌いだ!」
そうして明久は、殴られに行った。
そういえばムッツリーニ一言も喋んなかったな。
「……言い訳を聞こうか」
言い訳も何もないと思う。
「予想通りだ」
「だから、さらっと言うなよ」
こいつの冷静さ、すげぇなぁ。
「くきぃー! 殺す! 殺し切るーっ!」
「落ち着け」
「ぐふぁっ!」
鳩尾一発で黙らせるとは、さすがだ。
「先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」
「お前がやったんだろうが」
さすがにあんまりだと思う。
「ほら、行くぞ」
そうして、明久を担ぎ帰った。
あれ?なんか忘れているような。…まいっか。
次の日。
「さて皆、総合科目テストご苦労だった」
教壇に立った雄二が机に手を置いて皆の方を向いている。
「午後はBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分か?」
『おおーっ!』
Dクラスとの戦いの時のこともあるのか士気が高かった。
「今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない」
『おおーっ!』
「そこで、前線部隊は姫路瑞希に指揮を取ってもらう。野郎共、きっちり死んで来い!」
「が、頑張ります」
『うおおーっ!』
姫路が少し腰を引かして答え、その答えにまた士気が高まっていく。
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了のベルが鳴り響き、Bクラスとの戦いのゴングが鳴った。
「よし、行ってこい! 目指すはシステムデスクだ!」
『サー、イエッサー!』
さて、俺もやるか!