「昨日言っていた作戦を実行する」
翌日雄二は朝一番、教卓の前で言った。
「作戦?でも、開戦時刻はまだだよ?」
「Cクラスの方だろ」
明久の問いに俺が答えた。
「あ、なるほど。それで何をすんの?」
「秀吉にコイツを着てもらう」
そう言って雄二が鞄から取り出したのはこの学校の女子の制服。
「待て雄二。なぜお前が女子の制服を持っている」
霧島のか?それとも趣味?後者なら友達やめるぞ。
「…お袋が、少し、な」
「OK、わかった。もう何も言うな」
まさか、そっちだったか。
「それは別に構わんが、ワシが女装してどうするんじゃ?」
おい、もっと構えよ。
「秀吉には木下優子として、Aクラスの使者を装ってもらう」
そう言って制服を秀吉に渡した。
「と、いうわけで秀吉。用意してくれ」
「う、うむ……」
秀吉が制服を受け取ると着替え始めた。
「……」
「……?」
するとこっちを見てピタッと止まった。
「し、真也。あまり見ないでくれぬか///」
「え?……ああ、わかった」
たしかに、男同士と言えどそんなに見たら恥ずかしいよな。
「……………(パシャパシャパシャパシャ!)」
こいつも少しはそういう心を持ってほしい。
「よし、着替え終わったぞい。ん? 皆どうした?」
「さぁな? 俺にもよくわからん」
「おかしな連中じゃのう」
「おかしいのは前からだろ」
ムッツリーニと明久は鼻血出して悶絶してるし。
「ところで真也…」
「ん?」
「どうじゃ?この格好。おかしくないか?///」
そんなこと言ってる時点でなんかおかしい気がする。ま、いっか。
「ああ。大丈夫だと思うぞ。似合ってる」
「そうか!良かった」
何が良かったんだろう?作戦のことか?
「お前等も、おかしなことやっていないでCクラスに行くぞ」
「あ、ああ」
「うむ」
「あ、僕も行くよ」
俺達が出て行き、明久が慌てて追いかけて来た。
「さて、ここからは済まないが一人で頼むぞ、秀吉」
「気が進まんのう……」
色んな意味でそうだな。後で木下姉に折檻されるし。
「そこを何とか頼む」
「むぅ…。仕方ないのう…」
「悪いな。とにかくあいつらを挑発して、Aクラスに敵意を抱くよう仕向けてくれ。お前ならできるはずだ」
「はぁ…。あまり期待はせんでくれよ…」
何とか秀吉を説得することができた。俺も応援しとくか。
「がんばれ。秀吉」
「うむ!まかせるのじゃ!!」
さっきと言ってることが違う気がする。
「雄二、秀吉は大丈夫なの?別の作戦を考えておいた方が……」
「多分大丈夫だろう」
「心配だなあ……」
「もう少し秀吉を信じてやれ」
「うん…」
「シッ。秀吉が教室に入るぞ」
雄二が言うや否や、ガラガラっとCクラスの扉を開ける音が聞こえてきた。
そして…
『静かになさい、この薄汚い豚ども!』
…生で聴くとすげぇ。
「流石だな、秀吉」
「うん。これ以上はない挑発だね……」
『な、何よアンタ!』
怒ってるなぁ。そりゃ扉開けていきなり『豚ども』じゃなぁ。
『話しかけないで!豚臭いわ!』
自分から話たのに。話はするけど、話されたくないのか?
『アンタ、Aクラスの木下ね?ちょっと点数良いからっていい気になってるんじゃないわよ! 何の用よ!』
見事に木下優子と思ってるな。少しは疑問に思おうぜ。
『私はね、こんな臭くて醜い教室が同じ校内にあるなんて我慢ならないの!貴女達なんて豚小屋で充分だわ!』
『なっ!言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって!?』
豚小屋=Fクラスかよ。
『手が穢れてしまうから本当は嫌だけど、特別に今回は貴女達を相応しい教室に送ってあげようかと思うの。ちょうど試召戦争の準備もしているようだし、覚悟しておきなさい。近いうちに私達が薄汚い貴女達を始末してあげるから!』
そう言い残し、靴音をたてながら秀吉は教室を出てきた。
「これで良かったかのう?」
いい笑顔だぜ。青年が仕事を満足にできた時の様な顔だ。
「ああ。素晴らしい仕事だった」
『Fクラスなんて相手にしてられないわ!Aクラス戦の準備を始めるわよ!』
「作戦もうまくいったことだし、俺達もBクラス戦の準備を始めるぞ」
「あ、うん」
「そうだな」
そう言って俺達はFクラスに戻った。