「ドアと壁をうまく使うんじゃ!戦線を拡大させるでないぞ!」
秀吉が指示をする。あの後午前九時よりBクラス戦が開始され、昨日中断されたBクラス前という位置から進軍を開始した。
開始したのはいいが。
「……」
姫路がさっきから動かない。
「姫路さん、どうかしたの?」
明久が見かねて聞きに行った。
「そ、その、なんでもないですっ」
「そういう反応はなんでもなくないと思うが」
「ほ、本当になんでもないんです!」
俺が聞きに行ってもなんでもないと主張する姫路。
「右側出入り口、教科が現国に変更されました!」
「数学教師はどうした!」
「Bクラス内に拉致された模様!」
ち、こうしてる間にも状況が悪くなっていく。
「私が行きますっ!」
そう言って姫路が駆けだそうとしたが
「あ……」
うつむいて止まってしまった。
そこで見てしまった。
「っ!!」
根元が持っている手紙
姫路のラブレターを。
「……なるほどね。そういうことか」
明久も見たようだ。
…腹が立つ。あの根元にも、自分のことばかりで、忘れて何もできなかった自分にも。
「姫路」
「は、はい……?」
「お前は下がれ。今は何もできないみたいだからな」
俺はなるべく優しく声をかけた。…謝罪のつもりなのかもしれない。彼女に申し訳ない気持ちでいたから。
「え…?」
「んじゃ」
「あ!神上君!」
そう言って俺は教室に戻っていく。
「僕も行くよ」
「ああ」
そうだな。主役がいなくちゃ始まらないな。
「面白いことしてくれるじゃないか、根本君」
「ああ、愉快なことこの上ないぜ」
ホント、こんなことして
『あの野郎、ブチ殺す』
後悔すんなよ?根元。
『雄二っ!』
「うん?どうした明久。真也もか。脱走か?チョキでシバくぞ」
目つぶしする気だな。というツッコミは置いておこう。今はそんな気分じゃない。
「話があるんだ」
「……とりあえず、聞こうか」
明久の声を聞いて真面目になった雄二。
そして
「根本君の着ている制服が欲しいんだ」
「……お前に何があったんだ?」
台無しになった。
「こいつの発言は無かったことにしろ。根元の制服の中にあるものがほしい」
「…品は?」
「言えない」
雄二の問いにはっきりと答えた。
「まぁいいだろう。それくらいなんとかしてやろう」
「助かる」
とりあえずこれで手紙のことはOKだな。
「で、それだけか?」
んな訳ない。
「姫路を今回の戦闘から外して欲しい」
「理由は?」
「理由は言えない」
明久もいるし、何より姫路が隠したがっているんだ。言えるわけない。
「どうしても外さないとダメなのか?」
「ああ。どうしてもだ」
正直こんなこと頼むなんて心が苦しい。無茶なことを頼んでいるんだ。たとえ未来を知っていても申し訳なく思える。
『頼む、雄二!』
それでも俺と明久は頭を下げて頼む。
「……条件がある」
「条件?」
「姫路が担う予定だった役割をお前達がやるんだ。どうやってもいい。必ず成功させろ」
…こいつは。本当に頼もしい友だ。
「ありがとう」
「もちろんやってみせる!絶対に成功させるさ!」
「ああ!」
「良い返事だ」
俺達は礼を言って、雄二の提案を受けた。
「それで、僕たちは何をしたらいい?」
「明久はタイミングを見計らって根本に攻撃をしかけろ。科目は何でもいい」
「皆のフォローは?」
「ない。しかも、Bクラス教室の出入り口は今の状態のままだ」
「……難しいことを言ってくれるね」
明久は決まりだな。
「俺は?」
「真也は俺と一緒に来い」
「了解した」
俺は保険か、あるいは壁か。
「もし、失敗したら?」
「失敗するな。必ず成功させろ」
強い口調で言う雄二。失敗は絶対に許されないと言っているようだ。
「それじゃ、うまくやれよ」
そう言って教室を出ていく雄二。
「え?どこか行くの?」
「Dクラスに指示を出してくる。例の件でな」
室外機の事だろう。
俺も雄二の後を追おうするが、雄二が振り向いた。
「明久。お前は確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニのように、お前にも秀でている部分がある。だから俺はお前を信頼している」
「……雄二」
「うまくやれ。計画に変更はない」
そう言って、今度こそ雄二は出て行った。
「明久。がんばれよ」
俺は明久にエールを送って雄二の後を追った。
そして、Bクラス前。根元と会話をし、時間を稼ぐ。
ドンッ!
「お前らいい加減諦めろよな。昨日から教室の出入り口に人が集まりやがって。暑苦しいことこの上ないっての」
「どうした?軟弱なBクラス代表サマはそろそろギブアップか?」
ドンッ!
「はァ? ギブアップするのはそっちだろ?」
「無用な心配だな」
「そうか? 頼みの綱の姫路さんも調子が悪そうだぜ?」
こいつ、よくもいけしゃあしゃあと。
「……お前ら相手じゃ役不足だからな。休ませておくさ」
「けっ!口だけは達者だな。負け組代表さんよぉ」
「汚い手を使ってしか勝利を得れないお前の方が、口が達者だと思うな」
俺も時間稼ぎに参加した。
「それに負け組がFクラスのことなら、もうすぐお前が負け組代表だな」
ドンッ!
「……さっきからドンドンと、壁がうるせぇな。何かやっているのか?」
「さぁな。人望のないお前に対しての嫌がらせじゃないのか?」
「ありえるな」
「けっ。言ってろ。どうせもうすぐ決着だ。お前ら、一気に押し出せ!」
来た!
俺は雄二に目配せした。
「……態勢を立て直す!一旦下がるぞ!」
「どうした、散々ふかしておきながら逃げるのか!」
俺と雄二は全員下がらせ
『あとは任せたぞ、明久』
その声を合図とし
「だぁぁーーっしゃぁーっ!」
ドゴォッ!
豪快な音をたて、壁が崩れた。
「くたばれ、根本恭二ぃーっ!」
「遠藤先生! Fクラス島田が──」
「Bクラス山本が受けます!試獣召喚(サモン)!」
「くっ!近衛部隊か!」
明久達が突撃したが近衛部隊が壁になった。
「は、ははっ!驚かせやがって!残念だったな!お前らの奇襲は失敗だ!」
残念なのは
ダン、ダンッ!
「……Fクラス、土屋康太」
「き、キサマ……!」
「……Bクラス根本恭二に保健体育勝負を申し込む」
「ムッツリィニィーーッ!」
お前の頭のほうだ。
「──試獣召喚(サモン)」
『Fクラス 土屋康太VSBクラス 根本恭二
保健体育 441点VS203点』
ムッツリーニの召喚獣は手にした小太刀を一閃し、一撃で敵を切り捨てる。
今ここに、Bクラス戦は終結した。