「まずは皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している」
壇上にいる雄二がそんな言葉を言った。
「ゆ、雄二、どうしたのさ。らしくないよ?」
「ああ。正直俺もそう思う」
「ああ。自分でもそう思う。だが、これは偽らざる俺の気持ちだ」
そうやって雄二が言いみんなの方を向いた。
「ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい。勝って、生き残るには勉強すればいいってもんじゃないという現実を、教師どもに突きつけるんだ!」
『おおーっ!』
『そうだーっ!』
『勉強だけじゃねぇんだーっ!』
雄二がそう言うとみんなの士気が…いや、みんなの心が1つになり団結した。
「皆ありがとう。そして残るAクラス戦だが、これは一騎討ちで決着をつけたいと考えている」
そう言うとクラスのみんなが騒ぎ始めた。
『どういうことだ?』
『誰と誰が一騎討ちをするんだ?』
『それで本当に勝てるのか?』
「落ち着いてくれ。それを今から説明する」
雄二が教卓をたたくと静まった。
「やるのは当然、俺と翔子だ」
最後にふさわしいシチュエーションだな。
「馬鹿の雄二が勝てるわけなぁぁっ!?」
明久がいらんことを言うと雄二が明久めがけてカッターが投げられた。
「次は耳だ」
さっきの団結はどこへ。いや、こいつ等は別か。
「まぁ、明久の言うとおり確かに翔子は強い。まともにやりあえば勝ち目はないかもしれない」
自分で言ったな。人に…というか明久に言われたのが癪だったのか。
「だが、それはDクラス戦もBクラス戦も同じだっただろう?まともにやりあえば俺達に勝ち目はなかった」
そうだなったな。
「今回だって同じだ。俺は翔子に勝ち、FクラスはAクラスを手に入れる。俺達の勝ちは揺るがない」
…それは、どうだろう。
「俺を信じて任せてくれ。過去に神童とまで言われた力を、今皆に見せてやる」
『おおぉーーーっ!!』
雄二のその言葉がまたみんなに届いたようだ。
「さて、具体的なやり方だが……一騎討ちではフィールドを限定するつもりだ」
「フィールド?何の教科でやるつもりじゃ?」
「日本史だ」
そう言えば出ていた問題って日本史だけだっけ。
「ただし、内容は限定する。レベルは小学生程度、方式は百点満点の上限あり、召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負とする」
雄二ってこの時点で百点取る自信あるのか?
「でも、同点だったら、きっと延長戦だよ?そうなったら問題のレベルも上げられちゃうだろうし、ブランクのある雄二には厳しくない?」
「確かに明久の言うとおりじゃ」
「おいおい、あまり俺を舐めるなよ? いくらなんでも、そこまで運に頼り切ったやり方を作戦などと言うものか」
確かにそうだな。…でも今思ったけど今までの作戦も結構運頼りだったような。
「?? それなら、霧島さんの集中を乱す方法を知っているとか?」
「いいや。アイツなら集中なんてしていなくとも、小学生レベルのテスト程度なら何の問題もないだろう」
あ、こいつ小学生レベルのテスト舐めてるな。
「雄二。あまりもったいぶるでない。そろそろタネを明かしても良いじゃろう?」
「ああ、すまない。つい前置きが長くなった」
そう言って一呼吸した。
「俺がこのやり方を採った理由は一つ。ある問題が出れば、アイツは確実に間違えると知っているからだ」
そう言うとみんなが首をかしげ、雄二はそのまま言葉をつなげた。
「その間題は──『大化の改新』」
「大化の改新?誰が何をしたのか説明しろ、とか?そんなの小学生レベルの問題で出てくるかな?」
「いや、そんな掘り下げた問題じゃない。もっと単純な問いだ」
「単純というと──何年に起きた、とかかのう?」
「おっ。ビンゴだ秀吉。お前の言う通り、その年号を問う問題が出たら、俺達の勝ちだ」
自信満々にいう雄二。
「大化の改新が起きたのは、645年。こんな簡単な問題は明久ですら間違えない」
雄二、明久を見てみろ。静かに泣いてるぞ。
「だが、翔子は間違える。これは確実だ。そうしたら俺達の勝ち。晴れてこの教室とおさらばって寸法だ」
そう言ってみんなを納得させた雄二。
「あの、坂本君」
「ん? なんだ姫路」
「霧島さんとは、その……仲が良いんですか?」
とここでおそらくほぼ全員が思っている疑問を聞いた。
「ああ。アイツとは幼なじみだ」
「総員、狙えぇっ!」
「なっ!?なぜ明久の号令で皆が急に上履きを構える!?」
ちなみに俺はしていない。
「黙れ、男の敵!Aクラスの前にキサマを殺す!」
「俺が一体何をしたと!?」
嫉妬による団結か。気のせいかさっきの団結より一体感があるように思える。
「遺言はそれだけか?……待つんだ須川君。靴下はまだ早い。それは押さえつけた後で口に押し込むものだ」
「了解です隊長」
ノリいいな。
「ねえ、アキ」
「なに?美波」
あれ?島田から聞きにいったな。ちなみに明久と島田は名前で呼び合っている。Bクラス戦での壁の件で見直した(惚れなおした?)島田が「名前で呼び合おう」と言ってきたらしい。
「アキは、その、霧島が好みなの?」
「そりゃ、まぁ。美人だし」
「…………」
「え、美波?そんな教卓なんて持ってどうしたの!?危ないよ!?」
…まぁ、やってることは前と変わらんか。
「あの、神上君はどうなんですか?」
「ん?なにがだ」
「ですから、その霧島さんみたいな人が好みなんですか?」
なぜ明久そっちにけで俺に聞くんだ?秀吉もなにこっち見てるんだ。
「ん~、別に好みと言う訳ではないかな。美人だとは思うがな」
「そうですか…」
ん?なんか複雑な顔してるな。
「コホン。まぁまぁ、落ち着くんじゃ皆の衆」
パンパンと手を叩いて場を取り持つ秀吉。こいつもなんか取り繕った顔してるな。
「む。秀吉は雄二が憎くないの?」
「冷静になって考えてみるが良い。相手はあの霧島翔子じゃぞ?男である雄二に興味があるとは思えんじゃろうが。むしろ、興味があるとすれば……」
「……そうだね」
そう言ってみんな姫路の方を向いた。…こいつ等は、霧島を何だと思っているんだ。もう少しまともな事考えろよ。…いや、そう考えてしまうのも無理がない例がいたな、1人。
「な、なんですか?もしかして私、何かしましたか?」
いや、姫路は何もしてないぞ。こいつらがあほなだけで。
「とにかく、俺と翔子は幼なじみで、小さな頃に間違えて嘘を教えていたんだ。アイツは一度教えたことは忘れない。だから今、学年トップの座にいる」
…はぁ、こいつは。あいつはとっくに真実に気付いているよ。それでもそう思っているのは、お前が教えてくれて『絶対に忘れない』って誓ったからなんだぞ。
「俺はそれを利用してアイツに勝つ。そうしたら俺達の机は──」
『システムデスクだ!』
「一騎討ち?」
「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込む」
あの後俺達は宣戦布告しにAクラスにきた。今相手にしているのは木下優子だ。
「うーん、何が狙いなの?」
「もちろん俺達Fクラスの勝利が狙いだ」
堂々とした態度で言う雄二。
「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることができるのはありがたいけどね、だからと言ってわざわざリスクを犯す必要も無いかな」
「賢明だな」
ここからが交渉に本番だ。
「ところで、Cクラスの連中との試召戦争はどうだった?」
「時間は取られたけど、それだけだったよ?何の問題もなし」
楽勝だった訳か。さすがAクラスだな。
「Bクラスとやりあう気はあるか?」
「Bクラスって……、昨日来ていたあの……」
さすがにあれはビジュワル的にもきつかったのか、頬がひきつっている。
「ああ。アレが代表をやっているクラスだ。幸い宣戦布告はまだされていないようだが、さてさて。どうなることやら」
「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、三ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争はできないはずだよね?」
「知っているだろ? 実情はどうあれ、対外的にはあの戦争は『和平交渉にて終結』ってなっているってことを。規約にはなんの問題もない。……Bクラスだけじゃなくて、Dクラスもな」
すべてはこの時のためだったわけだ。
「……それって脅迫?」
「人聞きが悪い。ただのお願いだよ」
どの面下げて言うんだか。
「うーん……わかったよ。何を企んでいるのか知らないけど、代表が負けるなんてありえないからね。その提案受けるよ」
「え?本当?」
あっさり許可したのが意外だったのか明久が驚いて聞き返した。
「だって、あんな格好した代表のいるクラスと戦争なんて嫌だもん……」
だろうな。
「でも、こちらからも提案。代表同士の一騎討ちじゃなくて、そうだね、お互い五人ずつ選んで、一騎討ち五回で三回勝った方の勝ち、っていうのなら受けてもいいよ」
「う……」
反撃して来たな。確かに無条件で飲むわけないよな。
「なるほど。こっちから姫路が出てくる可能性を警戒しているんだな?」
「うん。多分大丈夫だと思うけど、代表が調子悪くて姫路さんが絶好調だったら、問題次第では万が一があるかもしれないし」
ほう、姫路がこんなに軽く見られるなんてな。
「安心してくれ。うちからは俺が出る」
「無理だよ。その言葉を鵜呑みには出来ないよ」
「そうか。それなら、その条件を呑んでも良い」
「ホント?嬉しいな♪」
無邪気な笑顔で言う木下姉。なかなか侮れないな。
「けど、勝負する内容はこちらで決めさせて貰う。そのくらいのハンデはあってもいいはずだ」
「え?うーん……」
そう言って悩む木下姉。
「……受けてもいい」
「うわっ!」
とその後ろから霧島が現れた。
「……雄二の提案を受けてもいい」
「あれ?代表。いいの?」
「……その代わり、条件がある」
「条件?」
「……うん」
そう言うと霧島は姫路の方を見た。
「……負けた方は何でも一つ言うことを聞く」
「…………(カチャカチャ)」
おい、ムッツリーニ。無駄なカメラの用意してんじゃねえ。負ける気か、お前。
「……それと」
「ん?」
なんだ?今度はこっちを見た?
「……勝負は五回じゃなくて七回」
「なっ!?」
その言葉に雄二が驚いた。なるほど俺を警戒してるのか。
「……嫌ならいい。別に私たちはどちらでもいい」
「く……」
引く気なしか。
「雄二、どうやらここまでのようだ。下手に粘って強制に話が終らされたりこれ以上条件が多くなるのはまずい」
「だが……」
「大丈夫だ」
そう言って雄二を見る。
「……わかった。提案を受けよう」
「ゆ、雄二!何を勝手に!まだ姫路さんが了承してないじゃないか!」
「心配すんな。絶対に姫路に迷惑はかけない」
そりゃあ、姫路は関係ないからな。ってか雄二も正直に…言えるわけないか。俺?知りあっていると知られたらまずいという理由で無理。
「……勝負はいつ?」
「そうだな。十時からでいいか?」
「……わかった」
「よし。交渉は成立だ。一旦教室に戻るぞ」
「そうだね。皆にも報告しなくちゃいけないからね」
そう言って、俺達は教室に戻った。
「……」
俺は…どうする。確かに仲間の、友達のためにと決意した。
だが、霧島達はどうなる?今は敵で戦争中だ。
けど…俺は…