さて、木下姉に連れてこられて明久や姫路たちと映画館に来たわけだが…
「チケット1枚千円か…」
「他にもコーラMサイズ300円、ポップコーンMサイズ400円だよ。これがたったの2時間で消費されるなんて…。映画館、なんて恐ろしい場所なんだ!」
こいつのセリフはほっといて、明久と島田をのぞいて俺も入れると四千円か。大丈夫っちゃあ大丈夫なんだが、痛い出費には変わりない。てか姫路も俺持ちなのか?できればってか絶対明久の方だろ。なんで俺?
「あの…神上君」
「ん?どうした、姫路?」
もしかして、やめてくれたりしてくれるのか!?
「これ、見ませんか!?」
そんな淡い希望を砕き、恋愛ものの映画を指さした。
「へぇ~、いいんじゃない?」
「そうね、これにしましょうか?」
島田と木下姉も賛成のようだが、
「「そう…。じゃあ、俺/僕達はいいからみんなで見てきなよ…」」
『ええ~!!どうして (ですか)(よ)(じゃ)!?』
いや、映画自体あんまり興味ないし。見たいってわけでもないし。
『じゃあアニメにする?』
「「いや、そう言うことじゃないから!」」
根本的に食い違ってる。
「観念するんだな。真也、明久」
『!?』
その声は、雄二――
「男とは……無力だ…」
――なんだけどなんかおかしい。
なんで手枷はめてるの?そしてどうして霧島がその手枷に繋がってる鎖を持ってるの?なんで周りなにも言わないの?
「雄二、どれが見たい?」
「早く自由になりたい」
会話として成立してないな。まぁ雄二の言葉は当然っちゃ当然だが。
「じゃあ、地獄の黙示録完全版」
「おい待て!それ3時間23分もあるぞ!」
「2回見る」
「1日の授業より長いじゃねぇか!」
なるほど、早く終わらせる気なしか。
「授業の間雄二に会えない分のう・め・あ・わ・せ」
健気?だなぁ。
「やっぱ帰る」
そう言って雄二は帰ろうとしたが
「今日は、帰さない」
バチバチバチ!!
…どっから出したスタンガン。そしてなんで持ってるんだ。
「な、なんだ翔子、それ!な、あべし!ぎゃ!ちょ、がば!」
躊躇なく雄二にくらわせた。
「学生2枚、2回分」
「はい、学生1枚、気を失った学生1枚、無駄に2回分ですね」
店員さん、言いたい気持ちはわかるけど接客業としてそれはどうよ。
「仲の良いカップルですね」
「憧れるよね~」
「あんな風になりたいわね」
「うむうむ」
「「……」」
俺と明久は女子(秀吉もいるが)の感覚についていけなかった。
ホントに将来、犯罪にまで行くなよお前ら。
翌日
「ふわぁ~~」
昨日結局映画をみんなで見てその後明久と島田と一緒にクレープを食べた。明久が「僕達の分もお願い」と言ってきた。もちろん却下したが。俺の方は倍払わなくちゃいけないってのに。
「さてと…」
飯作って行くか。
ちなみに今俺は一人暮らしである。親は海外だ。(番外編3参照)あと一応妹もいる。前世でも妹はいたが、…まぁ前世では色々あったからな、家系がってことで。だが今はそんなこともない普通に仲がいい…のかな?家族、兄妹だ。
「おっす。おはよう、明久」
「あ、おはよう真也」
…なんか暗いな。
「どうした?」
「いや、朝ね…」
聞いたところ、曲がり角で久保とぶつかり、落ちたパンを拾って食べようとしたら福原さんが踏んづけてしまい食べられなくなってしまったそうだ。
「てか落ちたもの食おうとするなよ」
「30秒以内なら大丈夫でしょ」
「完全にアウトだ」
しかも道端だし。
「お、おはよう姫路」
「おはよう、姫路さん」
下駄箱前に立っている姫路にあいさつをした。
「え!?あ、おはよう、ございます、です。神上君、吉井君」
あいさつを返した後、姫路は去って行った。
「「!」」
明久も気づいたようでその手には手紙が握られていた。まぁラブレターだろうな。邪魔しちまったかな。
「よう、珍しく早いな、2人とも」
「ん?」
そこには雄二がいた。
「昨日はどうだった?」
まさかそっちから聞いてくるとは。
「別に、普通に遊んだみたいだったぞ」
財布が軽くなったが。
「僕は今月の食費代が一瞬にして映画の闇の中に消えていったよ」
他にもゲームとか食費削って買ってるけどな。
「雄二は?」
「おまっ…!」
それを聞くのか!?
「目が覚めたら、繋がれた牛が殺されるシーンだった」
「「は?」」
俺達は、何を言っているんだろうという感じで声をだした。
「隙を見て逃げだそうとしたら、また電気ショックをくらって気を失い、目が覚めたらまた牛が…」
「ホントに2回見たんだ」
いや、もっと何か言う事が…あるはずだが出てこない。
「また逃げ出そうとしたらまた気を失って、永遠に牛を殺すシーンで目覚め続けるんじゃないかと強迫観念に襲われて、逃げられなくなった…」
「永遠に映画の最初は見れないんだね」
「だから…」
他に言う事を…
「はぁ…そんなことより次の仕送りまでどうやって生きていこう…」
「お前、そんなことって…」
ひでえ。
「あのゲームの山を売ればいいじゃないか」
「やらない物もあるだろ?」
「なんて事言うんだ!何物にも代えがたい優秀な作品の数々を食べ物なんかに代えられる訳がないじゃないか!!」
「お前にとって食べ物は『なんか』なのかよ」
「自業自得って言葉、知ってるか」
それ以前の問題のような気がする。
「2人はまだ余裕があるからそんなことが言えるんだよ!僕なんか命に係わるんだよ!」
じゃあゲーム売れよ。食費削って買うなよ。
そうツッコミたがったが、雄二が明久に近づき肩に手を置いた。
「明久、お前は俺に命の危険がないと思ってるのか?」
「「……」」
その言葉に俺達は何も言えなくなった。
「「ごめん」」
「…いいんだ」
この時、俺達の心は確かに1つになった。