バカと楽しく過ごしてく   作:リミア

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4話・・これからどうしよう

『勝てるわけがない』

 

『これ以上設備を落とされるなんて嫌だ』

 

『姫路さんがいたら何もいらない』

 

様々な反対や批判の声(一部は姫路へのラブコール)があがった。

 

「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせてみせる」

 

それを雄二はものともせず言い切った。

 

『何を馬鹿なことを』

 

『できるわけないだろう』

 

『何の根拠があってそんなことを』

 

確かに今の段階では皆乗り気ではないだろうな。

 

「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素が揃っている」

 

だが、雄二はここから説得をして士気を上げてく。

 

「それを今から説明してやる」

 

そうして周りを見渡す雄二。

 

「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

「は、はわっ」

 

ムッツリーニ…話の最中に覗くなよ。油断もすきもないやつだな。

 

「土屋康太。こいつがあの有名な、寡黙なる性識者『ムッツリーニ』だ」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

いまだに隠そうとしてるよ。みんな知ってるのに何で認めないんだろう?まぁ、だからこその『ムッツリーニ』か。

 

『ムッツリーニだと……?』

 

『馬鹿な、ヤツがそうだというのか……?』

 

『だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……』

 

『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ……』

 

ある意味同意だ。見習いたくないけど。

 

「姫路のことは説明する必要もないだろう。皆だってその力はよく知っているはずだ」

 

「えっ? わ、私ですかっ?」

 

「ああ。ウチの主戦力だ。期待している」

 

確かにな。皆さんご存知姫路は霧島に並ぶ学力の持ち主だ。さすが、恋する乙女と言ったところか。

 

『そうだ。俺達には姫路さんがいるんだった』

 

『彼女ならAクラスにも引けをとらない』

 

『ああ。彼女さえいれば何もいらないな』

 

おーい、こんな時に口説くなぁ。

 

「木下秀吉だっている」

 

秀吉は、戦力よりも作戦行動の方で期待できるからな。

 

『おお……!』

 

『ああ。アイツ確か、木下優子の……』

 

「当然俺も全力を尽くす」

 

雄二も、作戦やら何やらで力を出す、いわば策士、戦争風に言うと軍師だからな。勉強ができない訳ではないだろうが。

 

『確かになんだかやってくれそうな奴だ』

 

『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれていなかったか?』

 

『それじゃあ、振り分け試験の時は姫路さんと同じく体調不良だったのか』

 

『実力はAクラスレベルが二人もいるってことだよな!』

 

さすがだ、早くもここまで士気を上げるとは。

 

「それに、吉井明久だっている」

 

 ……シン──

 

…さすがだ、一瞬でここまで士気を下げるとは。

 

「ちょっと雄二! どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ! 全くそんな必要はないよね!」

 

雄二の事だ、おそらくネタだろう。

 

『誰だよ、吉井明久って』

 

『聞いたことないぞ』

 

お前らはさっきあった自己紹介も忘れるほどの頭なのか?

 

「ホラ!折角上がりかけてた士気に翳りが見えてるし!僕は雄二たちとは違って普通の人間なんだから、普通の扱いを──って、なんで僕を睨むの?士気が下がったのは僕のせいじゃないでしょう!」

 

睨んだ雄二だが、その後にやりと笑って、

 

「そうか。知らないようなら教えてやる。こいつの肩書きは『観察処分者』だ」

 

その名を言った。

 

『……それって、バカの代名詞じゃなかったっけ?』

 

「ち、違うよっ! ちょっとお茶目な十六歳につけられる愛称で」

 

「そうだ。バカの代名詞だ」

 

「肯定するな、バカ雄二!」

 

今ほど『お前が言うな』という言葉が似合う場面はそうそうないだろう。

 

「あの、それってどういうものなんですか?」

 

姫路が首をかしげそう聞いた。

 

「具体的には教師の雑用係だな。力仕事とかそういった類の雑用を、特例として物に触れるようになった試験召喚獣でこなすといった具合だ」

 

まぁ、姫路には縁のない話だろう。

 

「そうなんですか? それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そんなことができるなら便利ですよね」

 

キラキラした目で言う姫路。純粋だなぁ。

 

「あはは。そんな大したもんじゃないんだよ」

 

手を振って否定する明久。

まぁ、例のフィードバックがあるしな。

 

『おいおい。『観察処分者』ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?』

 

『だよな。それならおいそれと召喚できないヤツが一人いるってことになるよな』

 

クラスの奴らがそれを指摘する。

 

「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚だ」

 

ひでぇ。

 

「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」

 

でも、雄二にそんな思いやりはないらしく話を進めた。

 

「とにかくだ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」

 

「うわ、すっごい大胆に無視された!」

 

…明久ドンマイ。

 

「皆、この境遇は大いに不満だろう?」

 

『当然だ!!』

 

「ならば全員筆を執れ!出陣の準備だ!」

 

『おおーーっ!!』

 

「俺達に必要なのは卓袱台ではない!Aクラスのシステムデスクだ!」

 

『うおおーーっ!!』

 

「お、おー……」

 

姫路も雰囲気に飲まれたのか小さく拳を作り掲げていた。やべ、ちょっとかわいいと思ってしまった。

…あれ、秀吉?どうして俺を睨むんだい?

 

「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」

 

「……下位勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね?」

 

さすがにその場のノリでは行かないよな。

 

「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることはない。騙されたと思って行ってみろ」

 

「本当に?」

 

「もちろんだ。俺を誰だと思っている」

 

明久を死地に行かせようとする外道だと思う。

 

「大丈夫、俺を信じろ。俺は友人を騙すような真似はしない」

 

なら、明久のことをどう思っているんだろうか。聞いてみたい。

 

「わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」

 

「ああ、頼んだぞ」

 

…明久お前はやっぱり良い奴だな。後で労ってやるよ。

 

数分後

 

「騙されたぁっ!」

 

物凄くぼろぼろになって帰ってきた。

 

「やはりそうきたか」

 

平然と言うなよ。

 

「やはりってなんだよ!やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!」

 

「当然だ。そんなことも予想できないで代表が務まるか」

 

「少しは悪びれろよ!」

 

しかし、さすがに可哀相だな。

 

「明久、大丈夫か?」

「吉井君、大丈夫ですか?」

 

俺と姫路が、ほぼ同時に声をかけた。

 

「あ、うん。大丈夫。ほとんどかすり傷」

 

学校内の暴力ででかすり傷ができるのって、大丈夫の内に入るのかな?

 

「吉井、本当に大丈夫?」

 

「平気だよ。心配してくれてありがとう」

 

島田も心配(デレ)しt…

 

「そう、良かった……。ウチが殴る余地はまだあるんだ……」

 

「ああっ! もうダメ! 死にそう!」

 

…島田、そのツンは好感度を下げるだけだぞ。

 

「そんなことはどうでもいい。それより今からミーティングを行うぞ」

 

おい、発端をつくった張本人。

 

「あの、痛かったら言って下さいね?」

 

「大変じゃったの」

 

そう言ってみんな雄二の後を追うように教室から出て行った。

 

「…………(サスサス)」

 

「ちなみにムッツリーニ、畳の跡ならもう消えてるぞ」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

よくここまで否定できるよな。

 

「いや、今更否定されても、ムッツリーニがHなのは知ってるから」

 

明久にも指摘されてる。

 

「…………!!(ブンブン)」

 

「ここまでバレているのに否定し続けるなんて、ある意味凄いと思う」

 

「ああ、さすがムッツリーニだ」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

「──何色だった?」

 

「みずいろ」

 

即答か。

 

「やっぱりムッツリーニは色々な意味で凄いよ」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

…ホント、よくここまで否定できるよな。

 

「ほら吉井。アンタも来るの」

 

「あー、はいはい」

 

「返事は一回!」

 

「へーい」

 

母親と捻くれた子供みたいな会話だな。

 

「……一度、Das Brechen──ええと、日本語だと……」

 

「…………調教」

 

近くからムッツリーニの声。というか、なに当たり前みたいに答えてんだよ。

 

「そう。調教の必要がありそうね」

 

「調教って。せめて教育とか指導って言ってくれない?」

 

「じゃ、中間とってZuchtigung──」

 

「…………それはわからない」

 

「確か、日本語だと折檻だったかな?」

 

「それ悪化してるよね」

 

「そう?」

 

島田、お前はいったいどんな環境で育ったんだ?

 

「というかムッツリーニ。どうして『調教』なんてドイツ語を知ってるの?」

 

「…………一般教養」

 

なにが楽しくてドイツ語の『調教』なんて一般教養で学ばなきゃいかんのだ。

 

「相変わらずムッツリーニは性に関する知識だけズバ抜けてるね」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

『調教』を性の知識として捕らえて良いのか?

 

そんな会話をしながら校内を歩いていると、先頭の雄二が屋上に通じる扉を開けて太陽の下に出た。

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