本当はあったかもしれない「鬼滅の刃」   作:みかみ

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ハーメルンでは始めての投稿となります。

mikamiです。
今までは「小説家になろう・アルファポリス」様にて一次創作の異世界転生ものを書いていましたが、勉強の一環として二次創作にも手を出すようになりました。

あらすじにも書きましたが、本作は原作「鬼滅の刃」のストーリーを一部改変したIFストーリーとなっています。

「鬼滅の刃ファン」としては新参者はなはだしいので、もし我慢ならない改変や解釈等がありましたらご意見を頂けると幸いです。

それでは本編をゆっくりとご覧下さい。


第一章 鬼が来たりて
第1-1話[竈門家]


 ……しんしん、ふわふわ……。

 

 昨日までなら。

 そんな表現が似つかわしい綿雪が、山肌に舞い散っていた。

 

 昨日までなら。

 ぎゅっ、ぎゅっと小気味良い音を鳴らしながら雪を踏みしめ、背中の(かご)に大量の木炭を背負い込み、いつもと何ら変わりの無い(ふもと)までの道を歩んで行くのが炭治郎の日課だった。

 

 昨日までなら。

 一年の始まりであるお正月を、沢山のご馳走で迎えるためだった。

 腹を空かして待っている下の兄弟達の腹を満たすことが出来るのは、長男である炭治郎だけなのだ。

 麓の村でお手製の木炭を売り、そのお金で美味しい食べ物を買う。そうすれば、次の日には家族の笑顔が見られるはず――、

 

 ――だったのに。

 

「どうして、皆が死ななきゃならなかったんだ……」

 

 今、この時。

 山肌から冷たく吹き降りてくる白銀の風が自分の背中に叩きつけられ、分かれ、自分の前でまた一つの吹雪へと戻りながら遥か先へと消えてゆく。

 

「どうして、禰豆子が鬼にならなきゃならなかったんだ……」

 

 今、この時。

 雪の感触など楽しむ余裕もなく、只々、雪の中に埋もれる片足を蹴り出し、そしてまた片足を埋める。

 背中に感じる重さが徐々に増しているような気がした。四肢は凍りつき、頭は「走れ」と必死に命令を送り出し、胸の辺りだけが恐れと焦りで妙に熱い。

 

「禰豆子、死なないでくれよ。……もうちょっとの辛抱だからな」

 

 今、この時。

 炭治郎はただ一人残った「家族」を背負い、(ふもと)の村に向けて必死に駆け下りる。

 

 怖かった。

 背中に残った命の灯火が小さくなるにつれ、自分の背中が重くなってゆく気がして。

 

 恐ろしかった。

 昨日まで極当然にあった沢山の温もりが、一晩で消えてしまった事実に。

 

 受け入れたくなかった。

 自分が昨日まで当たり前に受け入れていた現実を、新たな現実で書き換えられてしまいそうで。

 

「……死なせない、兄ちゃんが必ず、死なせないからなっ!!」

 

 一家の長男で、大黒柱。

 可愛い兄弟達を、今は亡き父の代わりに立派に育てあげる。それが望みであり、使命だったはずだ。

 だが、そんな炭治郎の使命は本日、唐突(とうとつ)に終わりを告げた。

 

「だから、頼むから。……兄ちゃんを一人にしないでくれよぉ」

 

 そんな長男の声は、背中の妹に届く事無く、生き物の臭いが一切しない雪山の中に消えていった。

 

 

 ◇

 

 

 久方ぶりに到来した、冬晴れの朝だった。

 山の中に立てられた一軒家とはお世辞にも言えない平屋建て。庭先には冷たい白雪が舞い散り、一度に大量の(まき)を入れられるように造られた大きな窯小屋の上からは、暖かい白煙が昇ってゆく。

 その隣では次男の竹雄が斧を振り上げて薪を割り、更にその隣では三男の茂と次女の花子が楽しそうに雪玉をぶつけ合っていた。数日の間、一歩として外に出られない天気が続いていたのだ。二人は家の中で溜まりに溜まっていた鬱憤(うっぷん)を解き放つかのようにはしゃぎ、竹雄に邪魔だと悪態をつかれている。

 なんとも暖かな光景だと、炭治郎は木炭を(かご)に詰め込みながら微笑ましく見守っていた。

 

「禰豆子。そろそろ新しい着物を買っても良いんじゃないか?」

 

 そうっと、静かな声で声をかける。

 兄弟達が喧噪(けんそう)を極める窯小屋から、家を挟んで反対側では静かな粉雪が舞っていた。

 そこで背中に末の弟、六太をおんぶしながら散歩を楽しむ長女に炭治郎は声をかけたのだ。あの騒ぎでは、せっかく寝かしつけた六太が起きてしまう。

 母は冬仕事と家事で忙しく、六太の子守をする時間も取れない。この騒がしい兄弟と幼い四男を監督するのは、長男の炭治郎と長女である禰豆子の仕事だ。

 竈門家はお世辞にも裕福な家庭とは言えなかった。亡くなる以前から父は病で床に伏せ、家業である炭造りは炭治郎が担ってきた。自分を含めて育ち盛りの子供が6人も居るのだ。その誰もが無事に成長できているのは僥倖(ぎょうこう)以外の何者でもないが、炭を売って得た生活費は殆どが食べ物となって兄弟達の胃袋に収まってしまう。

 最優先されるべき防寒具以外の衣服は、後回しになってしまっているのが現状だ。

 それでも、この働き者の長女にはきちんとした着物を着せてやりたい。

 

「うううん。私は大丈夫だよ。ウチには大飯食らいが沢山いるんだから。それに私、この着物可愛くてお気に入りなんだ」

 

 そう言って笑顔を浮かべる禰豆子。

 最近、母から譲り受けた髪飾りの付いたかんざしで団子頭にした姿は、兄であるという贔屓(ひいき)を加味しなくとも可愛らしい。この素材を活かさない手はないのだ。

 それに炭治郎は見てしまっていた。兄弟達が寝静まった深夜、一本のロウソクから灯せられた明かりを頼りに、妹の禰豆子が自分の着物を(つくろ)っている姿を。

 

 

 背中の籠に大量の木炭を積んで、炭治郎は白銀の山を降りる。

 冬の雪山は、命の息吹をまったく感じさせない死の山だ。春や秋に感じる生き物の気配がなりを潜め、ただただ白雪の道だけが永遠と続いている。

 

「もっと沢山の炭を売って、いいかげん新しい着物を買ってやらないとな……」

 

 そんな単調な山道を下りながら、ポツリとそんな言葉が炭治郎の口からついて出た。

 出発前に禰豆子が見せた笑顔は、今だに炭治郎の脳裏に焼きついている。

 俺は長男だ。

 それぐらいの甲斐性を見せねば、天から見守ってくれている祖母と、何より父の炭十郎が心配してしまうというものだ。決して嫌々やっているわけでも、義務だと感じてやっているわけでもない。

 炭治郎は今の生活が心底幸せだと感じていた。

 

 だからこそ、この生活が長く、せめて下の兄弟達が自立できるまで。

 

 続いていって欲しいと願っていた。




いかがでしたでしょうか?

とは言っても、まだ第一話では原作となんら変わりない光景です。
少しづつ物語が変化していきますので、ごゆっくりお楽しみください。

今現在、30話少々ストックがありますので有る程度までは毎日投稿していければと思います。毎日18時頃の更新とする予定です。

それでは、今後とも「本当はあったかもしれない『鬼滅の刃』」をよろしくお願い致します。

追記:投稿後の確認中に「原作の台詞の流用はNG」の一文を発見しました(汗 執筆のテーマ上、どうしても始まりと終わりの部分は原作に近づいてしまうのですが大慌てで修正した次第です。これくらいなら……、大丈夫でしょうかね?
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