第二章二幕でございます。
しばらくホラー展開が続きます。
苦手な方はご注意を!
出発前。
「良い? たん君。鬼はね、基本的には不死と言っても過言じゃないの。その不死たる鬼を滅する手段は二つ。
一つは、陽光をもちいること。
鬼は夜にしか活動しない。何故かは不明だけど、鬼の身体は太陽の光を浴びると灰のように燃え尽きる。その原理は私達鬼殺隊の武器である日輪刀にも採用されているほどの、致命的な鬼の弱点となるわ。
そしてもう一つは……。これは私自身の経験からなのだけど、鬼の頭部を狙いなさい」
「頭部? 脳ミソってこと?」
「そう、鬼とて理性のある生物。いくらどんな傷でも再生可能と言っても、自分自身が脳から身体に命令しなければ確実に治りが遅くなるわ。その状態でなら、今の禰豆子ちゃんでも『共喰い』ができる」
「…………」
禰豆子が鬼を喰らう、共喰い。ここまで詳細にカナエから説明されて、炭治郎はようやく実感が沸いてきていた。本当にあんな化物を喰わせることだけが、禰豆子を生かす手段なのだろうかと。普通の人間ならば、その罪深さにきっと耐えられないだろう。自分達と同じ姿格好をした異形の存在。元、人間。炭治郎は今後、自分の妹を生かすために、その罪と向き合わなければならない。
「……
カナエの後ろから、ぼそりと義勇の言葉が聞こえてくる。図星を疲れた炭治郎は、反射的に声を荒げて反論した。
「……っ! 違う! 俺は臆してなんかいない!!」
「……別に異端でもなんでもない。本来生き物とは、他人の命を喰らうことで糧を得る。人間とて牛を潰し、豚を潰し、鳥を潰して生きているのだ。その対象が元、人間である鬼になっただけのこと」
「…………」
「…………」
予想外な人物から予想外の慰めの言葉をもらって、炭治郎とカナエは絶句した。この無表情冷徹男にもそんな感情が存在しているとは夢にも思わなかったのだ。
「なぁにぃ? ぎー君も意外とたん君のこと、心配してるんだねえ。良い子いいこ♪」
「……そんなことは」
「照れない、てれない♪」
「…………」
どうやら自分でも
他人を心配している余裕など、今の炭治郎にはない。これは生存競争なのだ。人か、鬼か。どちらがこの世の生を
ガリッ、ゴリッ、ゴキッ、……ボリボリ。
ロウソクの火が灯っているとはいえ、神社の中はかなり薄暗かった。
だが鬼が人の骨肉を噛み千切る
幸いなことに、この五月蝿いまでの
(後ろから頭部を一撃……、気絶させたら頭を潰して禰豆子に食べさせる。後ろから頭部を一撃……、気絶させたら頭を潰して禰豆子に食べさせる。後ろから頭部を一撃……)
ゆっくりと音をたてないように神社の戸を引きながら、これからやるべき行動をまるで念仏のように頭の中で繰り返し唱える。そして、覚悟を決めると。炭治郎は中の鬼へと一足飛びで奇襲をかけた。
「――――――ッ!!!」
掛け声や雄叫びなんぞ上げる気もないし、必要もない。
炭治郎はその類の感情を吐き出すことに何の意味もないと、痛感していた。成すべきことは一つ。
目の前の鬼を禰豆子に喰わせる。それだけだ。
憎しみも哀れみも、戦闘では邪魔者以外の何者でもない。冷徹に淡々と、粛々と。なんてことは無い。これはそう、調理なのだから。
振り上げた斧を真っ直ぐに、鬼の脳天めがけて振り下ろす。鬼は食事に夢中で炭治郎の一撃はおろか、接近にすら気付いては居ない。
殺った!
炭治郎はそう確信した。なんだ、鬼なんて大したことないじゃないかっ! とも思った。
そして事実、炭治郎の斧は鬼の後頭部を直撃したのだ。
バキッ、メリッ……。
そんな気色悪い音が斧の先から聞こえてくる。それは間違いなく、頭蓋骨が割れた音である。普通の人間なら即死のはずだが、その鬼は平然と言葉を口にした。
「……俺は食事中で、此処は俺の縄張りだ。邪魔するんじゃねえ」
「――――えっ?」
咄嗟に鬼の頭から斧を引き抜き、後ろへと下がる。
ぐるぐると、炭治郎の頭脳が回転する。なぜだ、間違いなく斧は脳にまで達していた筈だ。もしかして、頭が弱点だなんて嘘だったのか!?
しかしその炭治郎の自問自答は、完全に見当違いなものだった。暗がりの中、よくよく見れば鬼の身体に対して頭部があまりにも自分の方に突き出ている。
「……くそっ、畜生っ! 失敗した!!」
「ん? お前やっぱ、人間か。コレを俺の頭だと思ったのか? アヒャヒャッ! 残念だったな。コレは、俺の、……スープだ」
目の前の鬼が、炭治郎の割った頭をくるりと回転させた。
両の眼が見開かれ、瞳孔は開ききり、アゴもだらんと垂れ下がっている。そして、首から下は存在しなかった。
この暗がりの中、炭治郎は鬼に喰われている人間の首を鬼と勘違いしてしまったのだ。
「うああああぁ…………、ああああああああああああぁぁぁぁ――――――――ッ!!!」
叫ばずにはいられなかった。ほんの数本、ロウソクの火が灯った神社の中。
この日、炭治郎は初めて。
既に死んでいるとはいえ、人間の身体に刃を突きたてた――――。
最後までお読み頂きありがとうございました。
「共食い」という鬼を倒す設定。
著者の知る限りでは、どれだけ喰らえば鬼は死ぬのか理解できておりません。
なのでこの点も独自設定です。
鬼舞辻 無惨様は下弦の鬼とか一気飲みにしているんですよね。。。
かと言って他の鬼でも「共食い」できるようですし。
誰か、教えて(汗