本当はあったかもしれない「鬼滅の刃」   作:みかみ

17 / 133
先日は投稿が遅くなり申し訳ありませんでした。
本日はしっかりと予約投稿、第二章参幕でございます。

今回のお話もグロ要素が出てきますのでご注意を。R-15だよっ!


第2-3話[始めての鬼退治(その3)]

「ボウズ……。まさか、鬼狩りか? ……いんやぁちげぇな。奴等特有の『藤の花』の臭いがしねえ。なんにせよ、あんがとよ。これでっ、飲みやすくなったってもんだぁ」

 

 まるで蜜柑を割くかのように、目の前の鬼は炭治郎の傷つけた箇所から頭蓋骨を裂いた。周囲にペキペキという骨が割れる気味の悪い音が響き渡る。

 

「人の味噌はな、こうやってグチャグチャに掻き回してから飲むのがうめえんだ。味噌と血が程よく混ざって絶品だぜぇ?」

 

 ズチュルルルウウウゥゥッ。

 炭治郎の耳に、人の味噌をすする音が入り込んでくる。まるで人間が味噌汁を飲むかのように、椀代わりの頭蓋骨をかたむけ中身を喉の奥へと導いている。

 普通の人間が見たら卒倒して当然の光景だ。その点に関して言えば、炭治郎はよく耐えていた。

 だが奇襲が失敗に終わった今、炭治郎には鬼に対抗できる手段を持ってはいない。つい最近まで鬼に出会ったこともなかった少年には、剣術の修練などとは縁遠いものだ。

 だからこそ、炭治郎はこの奇襲に全てを賭けていた。真正面から戦えば自分に勝ち目が無い事実を、他の誰よりも本人が自覚している。

 

 どうする、逃げるか? けどせっかく見つけた鬼だ。このチャンスを逃せば、次の機会まで禰豆子が空腹に耐えられるかも分からない。

 一見して、立派な長男像を見せている炭治郎。だがその実、彼こそが下の兄弟達に依存していたと言っても良い。幼い頃から病弱だった父。自分が面倒を見なければいけない五人もの兄弟。そんな環境で育った彼は、幼くして大人の階段を駆け上がってしまった。自分の欲より兄弟達の欲を優先し、その代わり兄弟達の羨望(せんぼう)の眼差しを受け自尊心を得る。

 そんな彼が、妹の窮地(きゅうち)を前にして引けるわけが無かった。たとえ、自分がどんな危険に遭遇しようとも。

 

「へへへっ、どうしたぁ? 斧を持つ手がふるえてるぜぇ?」

「……うるさい。お前は、お前は……。禰豆子のエサになれええええええええええっ!!!」

 

 先ほどの奇襲とは打って変わり、炭治郎は奇声を上げながら突進する。

 その行動は、鬼から見れば滑稽(こっけい)の一言につきた。なにせ鬼という人間の枠を超えた身体能力を得た側から見れば、目の前の少年はゆっくりと移動する牛のような動きに見えるからだ。

 この少年は自分の敵ではない。

 鬼はその事実を十分に確認した上で、少年をどう扱うか考え始めた。

 

(殺すのは簡単だが、今のところ食料は十分にあるしな……)

 

 鬼の後ろには、この神社で夜を明かそうとしていた旅人四人の死体がある。あまり多く食料を確保して鬼狩りに目を付けられては面倒だ。

 だがまあ、見たところ親ナシらしい。居なくなったところで、騒ぎが大きくなりはしないだろうと鬼は判断した。

 

「決めたぞ……。お前は死ぬまで玩具として遊んでやる。せいぜい、いい声で鳴いてくれよおぉ!?」

 

 血で真っ赤に染まった口元を舌なめずりしながらも、鬼は人間の最後の足掻きという寸劇を楽しむ悦楽に思いをはせた。

 

 ◇

 

 当たらない。

 

 どれだけ早く、鋭く振ったとしても。

 

 炭治郎の斧は、目の前の鬼にかすりもしなかった。

 

 あの鬼舞辻 無惨との戦いでは、傷を負わすことが出来ずとも当てることは出来たのに。

 

 どうして……?

 

 どうして俺はあの、鬼殺隊の二人のように鬼を斬れないのか。炭治郎の心に苛立ちだけが募ってゆく。

 

 ――鬼を斬る。

 

 平穏な生活を失った少年は、これからの人生をその一つの目標のみで生きようと心に決めていた。

 

 少年は自分の心の奥底へと問いかける。問いかけられる。

 どうした、竈門炭治郎。お前は仇を討つのだろう? 自分の命よりも大切な母や弟、妹達を殺した奴等を地獄へ突き落とすのだろう?

 ならばこんな鬼に手こずっている場合か。

 

 ほら、どうした。

 背中の妹が腹を空かせている。ここ数日は眠ってばかりだ。お前は、最後に残った妹さえも死なせてしまうのか? そうすれば、お前は今度こそ一人ぼっちだ。耐えられるのか? お前に。

 長男だの一家の大黒柱だの言って、お前は家族に依存してきた。その最後のより所が禰豆子だ。

 

 お前にそれが、耐えられるのか――?

 

「うあああああああああぁぁぁぁ――――――!!!」

 

 奇声を上げながらも、汗まみれになりながらも。炭治郎は鬼に向けて闇雲に斧を振るい続ける。

 だがその斬撃は、誰が見ても拙いものだった。

 

「ヒャハハアハハッ!! どうしたどうしたぁ、まるで当たらねえぞ人間のクソガキぃ!!」

「五月蝿いっ! 鬼は殺す、俺の手で絶対、殺すんだぁあ!!」

「良いねえ、人間の肉はガキの方が柔らかくて美味い。ましてや、恨みのこもった肉ともなれば最高のご馳走だぁ。……これでまた、俺様は強くなれるっ!」

 

 その気になれば一撃で殺せるはずの炭治郎を、鬼は挑発し続ける。まるで、その方が上等な肉になると言わんばかりに。

 真っ暗闇の村はずれ、神社の庭先で炭治郎と鬼の殺し合いは続く。民家からはかなりの距離があるため、地元住民の誰もが、この争いに感づくことはなかった。

 

「ウウウウウゥ…………」

 

 少年の背中に隠れた、一人の鬼を除いて――。




最後までお読み頂き有難う御座いました。

ちなみに「共喰するなら頭部を狙え」は著者の独自設定でございます。
神社のはぐれ鬼を倒す際に炭治郎が頭を破壊しようとした背景をアレンジした結果、こうなりました。
納得していただければ良いのですがggg。

それではまた明日。18時にお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。