本当はあったかもしれない「鬼滅の刃」   作:みかみ

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エピローグその2。
執筆状況としては次の第四章は書き終えています。今は五章の詳細なプロットを練っている段階ですね。
ストックが十分にないと不安なので頑張ります……。


第3-13話[もうひとつの仇討ち]

「「ご苦労様でした。皆様六人、最終選別、合格でございます」」

 

 二つの白黒人形娘が、労いの言葉をかけてきた。

 当初、七日間生き延びろという選別基準はまるで機能しなかった。なぜなら藤襲山にて飼われていた数多くの鬼は、数手の大鬼と藤華によって喰い尽されていたからだ。

 その数手の大鬼は藤華の口の中へ、そして藤華は禰豆子の口の中へと消えている。

 

 もはや最終選別を続ける意味さえもなくなってしまったのだ。

 

 この場に居る合格者は五人。

 炭治郎、猪頭の少年、モヒカン頭の少年、無表情な少女。そして完全に忘却の彼方へ置き去ってしまっていたが、気弱な黄髪の少年の姿もあった。

 

「……お前、どこまで逃げていたんだ?」

 

 炭治郎が呆れた顔を隠しもしないで、黄髪の少年に話かける。

 

「どこだっていいだろぉ!? 選別の課題は生きぬくことなんだからぁ!!? 逃げたって生きのこりゃ勝ちなんだよぉ!!」

 

 顔面のありとあらゆる穴から液体を垂れ流しながら、黄髪の少年はヒステリックに叫んだ。

 

「そりゃぁそうだけど……。生きる為にはもう、強くなって鬼を斬るほかないんだぞ?」

「知ってるよ! しってますよ、ええっ!! それでも一分一秒、長く生きたいじゃん!? 鬼に殺されるかもしれないけど、その前に女の子と恋に落ちれるかもしれないじゃん!!?」

 

 なんとも前向きなのか後ろ向きなのか良く分からない少年だ。

 しかし、そんな漫才もモヒカン少年によって中止させられた。

 

「……臆病者の事情なんて知りたくもねえんだよ。それよりも、なぜあの狐面がいねえ? あいつは鬼殺隊候補生じゃねえのか?」

 

 問いの口調も視線も、すべてが炭治郎に集中している。

 それも当然の話であった。炭治郎としては禰豆子の存在を隠すためにも、知らないと答えたい。だが藤華という名の少女を圧倒した最後の連携。それは急凌ぎとは言えないほどの完成度を誇っていた。とても咄嗟に動きを合わせましたなんて言い訳が通じるわけもないのだ。

 

「えっと、ちょいと傷が深くて……。先に帰ったみたい……かな?」

 

 炭治郎の答えは更にモヒカン少年の不信感を増大させる。性格的に腹芸なんてモノを使う人生を歩んでこなかったのだ。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「えっ、なに? 他にも生き残った人がいるの!?」

 

 一人を除いて、鬼殺隊候補生達全員の視線が炭治郎の顔面に襲い掛かる。

 何かもう一つ良い言いワケを思いつかないものかと、脳内がぐるぐると回転する。そもそもさっきの言葉とて大失敗だったのだ。これ以上、口を開いても墓穴を掘るだけでしかない。

 沈黙という名の冷たい空気が炭治郎の全身に吹き続ける。

 

 そんな静寂を打ち破ったのは、最終選別の監督官だった。

 

「えっ? 何々? 今年は合格者はこんなに居るの? 鬼殺隊の未来もようやく明るくなってきたかなぁ? ぎー君はどう思う?」

「……新人の前で、その呼び名はやめてください」

「やぁよぉ、ぎーくんは、ぎー君だもんねっ!」

「…………そもそも豊作が予想できたから青田買いに来たんでしょ」

「ぎー君、ノリわるーいっ!」

 

 妙に騒がしい女性の声と、心底嫌そうな男性の声。

 二つの声が最終選別への入口となった鳥居の奥から届いてくる。ある者は見知らぬ、そしてある者は聞きなれた声でもあった。

 全員の視線が炭治郎から謎の人物の居るであろう暗闇へとそれる。

 

「だれだぁ? お前、知ってるヤツか?」

「俺が知るわけないだろぉ!?」

 

 猪頭の少年が黄髪の少年に問いただす。

 

「……おいおいっ、あの人達が来るなんて聞いてねえぞ?」

「……………………」

 

 モヒカン頭の少年と無表情少女は察しがついているようであった。

 

 そして。

 

 最後の一人は、喜びとも怒りともとれる複雑な表情を浮かべている。

 炭治郎が二人の声を忘れるわけがなかった。

 

 二年前。

 貧しくも暖かい家庭を煉獄に変えたあの事件。

 鬼舞辻 無惨の来襲によって兄弟達が鬼へと造りかえられ、それでもなんとか助けたいと奮闘する炭治郎の希望を摘み取った男。

 

 冨岡義勇。 

 

 この道だけが禰豆子を救う唯一の方法であると、自分を仇である鬼殺隊へと誘った女性。

 

 胡蝶カナエ。

 

 炭治郎が狩るべき、殺しても殺したりない怨敵が再び姿を見せたのだ。

 

 ◇

 

 激闘の末、最終選別を乗り越えた五人の前に現れたのは男女二人の鬼殺隊士だった。

 率先して模範を示すかのように、モヒカン頭の少年と無表情少女が片膝を地につける。猪頭の少年は鼻息を荒くし、黄髪の少年は状況が理解できずにキョロキョロと慌てた様子だ。

 その二人を知っていて礼も示さず、ただ睨みつけているのは炭治郎だけである。

 

「花柱:胡蝶カナエ様。水柱:冨岡義勇様でございます」

「皆様には紹介しておりませんでしたが、この最終選別の裏監督官の任をお願いしておりました」

 

 相変わらずの単調な声で、白黒双子が鬼殺隊の頂点を紹介する。

 

「……おい、……おいっ! 柱の前だぞっ、頭を下げろ!!」

「――――ぐっ」

 

 いつまでたっても膝をつかない炭治郎の頭を、モヒカン少年がムリヤリ押さえつける。横を見れば、他の二人も無表情少女の手によって頭を下げられていた。

 

「本来、この最終選別において柱のお二人が監督官を努めるのは異例中の異例でございます」

「それだけ、皆様は鬼殺隊内部で期待されているのです」

「うんうん♪ かなたちゃん、輝利哉クン。新人さんの導き役ご苦労様ですっ」

 

 カナエがご褒美とでも言いたいのか、二人のおかっぱ頭を楽しそうに撫でている。

 炭治郎の横では猪頭が「輝利哉? あれで男かよっ!?」などとほざいているが、この場の全員に無視された。

 

「さてさてっ、先ほど冨岡義勇が言った通り。鬼殺隊は今、優秀な人材に英才教育を施そうと考えていますっ! つまりは継子探しっていうかぁ、継子漁り?」

 

 カナエの言葉を聞いて、最終選別合格者の中に静かな緊張が走る。

 継子とは優秀な若い人材を柱自らが育成する、言わば鬼殺隊のエリート枠である。順当にいけば次代の柱となるのも夢でない地位なのだ。

 

「不死川 玄弥くん。我妻 善逸くん。嘴平 伊之助くん。栗花落 カナヲちゃん。竈門炭治郎くんっ! ……あれれ? もう一人居るって聞いたけど??」

 

 カナエが合格者の名前を告げてゆく。しかしやはりと言うか、最後の合格者である禰豆子の話題も取り上げられた。

 膝を地につけ、頭を下げながらも炭治郎の心には緊張が走る。この二人は竈門兄弟の秘密を知る数少ない隊士だ。もし、この場で禰豆子が鬼であることを暴露されればただではすまない。

 

 藤華と戦っていた時とは違う、嫌な汗が炭治郎のこめかみから垂れていた。心臓の鼓動も何時になく小刻みに脈動している。

 

「最後の合格者、竈門禰豆子様は育手の鱗滝左近次様が引き取ってゆかれました」

 

 白黒のうち、白髪の人形少女が淡々と事実を口にする。知ってか知らずか、禰豆子については詳しく語らない。

 

「そうなの? ええ~、ざんね~ん。私の第一候補だったんだけどなあ……」

 

 必要以上に、大げさに。禰豆子が居ないという事実をカナエが悔しがる。

 この花柱が何を考えているのか、炭治郎はさっぱり分からなかった。単に鬼だから手元で監視しようとしたのか、あるいは。

 

「ぎー君は、どの子にするの?」

「…………別に、誰でも」

「だめよぉ? 柱になったからには継子を持つのも柱の勤めなんだからぁ」

「……………………じゃあ、こいつで」

 

 炭治郎の頭の上で天上の会話が交わされていた。

 もちろん、頭を上げることなど許されていないのだから、義勇の言う「こいつ」が誰なのか知るよしもない。

 

 だからこそ。

 

 カナエの次の言葉に、炭治郎の心臓が跳ね上がった。




 最後までお読み頂きありがとうございました。

 これまた独自設定降臨。
 最終選別には裏監督官が居たんだよっ! なのに他の候補生は数手の大鬼に食べられちゃいました。

 えー、花柱様と水柱様ざんこくー、ありえなーい。(棒

 この伏線はどこで回収しようか……(滝汗
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