本当はあったかもしれない「鬼滅の刃」   作:みかみ

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第6-13話「竈門禰豆子の奮闘」

 私の中にもう一人の私が居ると気付いたのは、一体何時頃だっただろうか。

 

 お兄ちゃんと旅を始めた頃、間違いなく私は一人だった。それから幾度となくご飯()を食べて、食べてたべてたべて。そう、どこかへ出かけたお兄ちゃんを探しに、あの気持ち悪いお山に行った頃からだったかもしれない。

 もう一人の私はとても寂しがり屋で、いつも兄を探していた。ほら、今も私の中で泣きながらお兄ちゃんを探し続けている。

 

 ――――おにいちゃん。……「  」の、おにいちゃんどこぉ?

 

 最初は、私のお兄ちゃんを探しているのかな? と思ったけど。どうやらもう一人の私が探しているのは炭治郎お兄ちゃんではないみたい。

 

 私の中には居ないと思うんだけどなあ。

 それでも、もう一人の私は兄の姿を探し続ける。その姿はおぼろげで、何処かで会ったことがあるような、それともないような。……もしかして、あの子かな?

 

 まあ、でも。

 

 私にはお兄ちゃんが、お兄ちゃんには私が居る。私はそれだけで満足、十分すぎるくらいに幸せ。

 

 なら、良いよね。

 

 ごめんね、あなたのお兄ちゃんを探してあげられなくて。

 

 えっ? 近くに絶対いる?

 

 ほんと? でも私の近くにいる男の子は炭治郎お兄ちゃんだけだよ?

 

 あれれ?? もしかして……。

 

 あなたのお兄ちゃんは、あなたのお腹の中にいるんじゃないの? ……たべちゃったんじゃないの??

 

 ねえ、そうだよね。

 

 ――――――――――藤華ちゃん。

 

 ◇

 

 もう何日も前。

 それまで住んでいた家はとても暖かくて、しかも久遠というお姉ちゃんはとても優しかった。鱗滝っていうお爺ちゃんもいたし、紗枝(きえ)さんっていう女の人もいるあの屋敷はとても住み心地が良い。

 お兄ちゃんはこんな良い所からなぜ出ていくのだろうとも思ったが、普段は優しい目がいつになく真剣だったのだから何かとても大事なことがあるのだと思う。

 それにお兄ちゃんの居る場所が禰豆子の居る場所だ、それに関しては迷うことなどなかった。また箱の中かという思いもあったけど、それくらいなら我慢できる。でも、やはりこの箱の中に居るのは窮屈(きゅうくつ)だ。何よりお兄ちゃんの顔が見られないというのが苦痛だった。

 

 そして今。

 新しい家での生活は、私的には結構楽しかった。

 お兄ちゃんがたどり着いた場所は怖い人達が沢山いるような場所だったけど、友達らしい人が二人も一緒だったのは嬉しい。けど、前の家に比べると外に出られる日が少なくなったのはつまらないかな。

 ようやく外へと出させてもらえた夜。私はご機嫌だった。

 けど散歩の途中で、面白いお面をかぶった人が怪我をした。何か毛みたいなモノが飛んできたかと思ったら、チクリとその人の腕に刺さったのだ。別に(かす)り傷にさえならないだろうと思っていたのに、様子がおかしい。毛が刺さった箇所を中心に赤、青、紫といった色に肌が変わり、やがて黒くなってゆく。

 

 これってアレだよね、私の刀みたい。

 

 今も両腰にぶら下げた藤色(ふじいろ)の、二本の小太刀は私のお気に入りだ。

 

 ねえねえ、私のといっしょだねっ!

 

 って見せてみたら。

 

 あれれ? 私の中から声がする。「おにいちゃん、おにいちゃんなの?」って。

 

 もー、だから違うって。この猪頭があなたのお兄ちゃんだったら私、びっくりするよー。

 

 でもでも、私の言葉は届かないみたい。だって私の中から必死に手を伸ばそうとしてるんだもん。

 

 そんなもう一人の私の手が、猪頭のお兄ちゃんに触れたかな? って思った時。

 

 綺麗だった藤色の肌は元に戻っていった。

 

 な~んだ、もう終わり? ……つまんない。せっかく炭治郎お兄ちゃんにもっとよく見てもらおうって思ったのに。

 

 むー。

 

 ねえ、お兄ちゃん。今日はもうかえろ。あたし疲れちゃった。

 

 また遊びに連れて行ってね。

 

 その時には私の中に居る、藤華ちゃんも自分のお兄ちゃんが何処に居るか気付くといいな。

 

 えっ? なに? ……あっ、ダメダメ。

 

 だめだよ、炭治郎お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだから。

 

 絶対にあげないよっ!!

 

 ◇

 

 それからまた、しばらくの月日が流れて。

 なんだか外がピリピリとした雰囲気に包まれているように禰豆子は思う。きっと、とても大切な何かが起ころうとしているんだ。でも今度はお昼の真っ只中、私はお外に出られない。昨日からずっとお兄ちゃんの気配が感じられない。こんなことは始めてだ。

 

 つまんないの……。

 

 いいもんいいもん。今の私にはお友達が出来たのだっ!

 

 藤華ちゃんとお喋りしていれば退屈なんてしないもんね。ねえねえ、もっと藤のお花のお話きかせてよ。

 

 ……ふーん。藤のお花ってお日様の明かりを溜め込むんだ。私、お日様キライ。だって熱いし痛いんだもん。

 

 藤華ちゃんだってそうだよね。うんうん、藤華ちゃんって私とおんなじ「  」だからね。

 

 ……ん? なになに、なるほどなるほど。ねえねえ、それって私と一緒なら出来るんじゃないかな?

 

 わかんない? じゃあやってみようよ! 前にね、私も身体が元気になる体操を思い出したんだ。すうぅ――――っ、はあぁ――――って息を何度も繰り返すの。そうするとね、身体中に元気がいっぱい、いっぱぁ――――い集まってくるの!!

 

 そんな私に、藤華ちゃんが手助けしてくれたら。多分とっても楽しいよ?

 

 あ――あぁ、また遊びたいなあ。

 

 あの時、藤華ちゃんと遊んだみたいに。

 

 

 

 

 

 ひさりぶりに、ほんっとう~に久しぶりに木箱の外へでる。

 でも箱の扉を開けてくれたのは、炭治郎お兄ちゃんじゃなかった。

 

 お兄ちゃんとおんなじ服を着た女の人だ。

 にっこりと笑っているけど、なんだか怖いふんいき。でも、どこかで見たことがあるような気もするお姉さんだった。

 

 どうやらこのお姉さん、私に頼み事があるらしい。

 

 ふふん、しようがないな~。

 

 お姉さんに両手を合わせられて、ちょっと得意げな気分になった私。

 

 けど、まだまだお昼みたいで外には出られない。

 

 お日様、いたいからキライ。

 

 そう思っていたら、お姉さんが早籠(はやかご)を持ってきてくれた。まるで神様か、お姫様みたいに運ばれて私の気分は上々だ。

 

 でもやっぱり、お兄ちゃんが居ないのは寂しい。

 

 また私をおいて、藤華ちゃんの時みたいに他の子と遊んでるんだろうか。

 

 そう思うと今度はむかむかしてしまう。

 

 私が早籠の中で微妙な顔をしていると、ドスンと降ろされたみたい。そのまま日の光が当たらないように作られた天幕の中に連れていかれる。

 

 外の様子はよく見えないけど、どうやらお山に来たようだった。

 

 えっ? 今度はなぁに!?

 

 猪頭のお兄ちゃんみたいに具合が悪い人達を助けてほしい?

 

 なにそれ。ああ、藤華ちゃんの力を見せようとして、私の小太刀を見せてあげた時のことかな??

 

 ……ふっふっふ。実はあれから、私の中にいる藤華ちゃんと協力して更にすごくなったのだ!

 

 あの時のお兄ちゃんはすごく喜んでくれた。なら、今度もたくさん人助けしたら。

 

 もっと、もっ~っと、お兄ちゃんはよろこんでくれるよね?

 

 さあ、なんでもござれ。

 

 今の禰豆子達にふかのうはないのだっ♪




 最後までお読み頂きありがとうございました。

 三章以来の禰豆子一人語りです。
 まだまだ言葉を話せない禰豆子ではありますが、心の中では沢山おしゃべりしているんだろうなあ。というイメージの元、執筆しておりますw

 ようやく藤華ちゃんも出番が増えてきましたね。禰豆子の中ではありますが……。
 なんとか久遠さんに負けないぐらいの存在感を出してほしいなあ、と作者も書きながら応援している次第。

 結構良いコンビになると思うのですが、どうですかね?w

 さてさて。
 何の解決も提示されていない第六章も明日の更新で最終回です。
 第七章も七話くらいまでは書いているのですが、なんとも遅筆で進んでおらず。

 もしかすると七章開始はGWあけになるやもしれません。

 詳しくは次の更新にて。
 外出できない連休中の暇つぶしなっていれば幸いです♪
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