バナージの思想in一夏。
妄想であり、自慰であり、願望である。
彼女は独りぼっちだ。
彼女は欲張りであった。
知らないことが好きだった、知ることが気持ちよかった。
次から次へと進みたかった、指先の舞踏は自慢になった。
子供なら、好きなことが最優先だ。
面倒を無視し、障害を蹴散らし、後塵には目を向けず、興味を視界の中心に収めて
始まりから異端ではない。
異常は発露していくモノだから。
限界が無いように生きていた。
数多の知識を吸収し、幾多の知恵を疾走させ、彼方から閃きを手繰り寄せ、技術を際限無く向上させ、人知の外へ飛んでいた。
彼女にとって、常識という社会の枠は
そんな
彼女の視線は常に、遥かな高みへ向けられている。
見る世界が違う、そんな生き物が共に生活出来る訳が無い。
だからだろう、彼女を理解出来る者に対して、彼女はいつも全力だった。
彼女には妹がいた。
良好な関係とは言い難いが関係無い、彼女が愛しているという、十分な理由があった。
それだけで守る対象だった。
彼女の目的を理解し、彼女と歩む力を持つ友がいた。
友は彼女が産み出したモノを纏い、闘争に於いて世界最強の座を勝ち取った。
それはつまり、彼女の能力が世界に認められ、世界に欲されたということだ。
彼女と彼女の産み出したモノに有用性を見出だし、変化と革命が起こった。
彼女の望みを
彼女の視線は常に上を向いていた。
青く広く清らかな空の更なる向こう、限りない遥かな先、
目指す先は高く、しかし我が子は狭い地べたに押し付けられた。
彼女は我慢ならなかった、だから彼女は今在るセカイから飛んだのだ。
ーーー見方を変えれば、彼女は異物として弾かれたのかもしれない。
彼女は独りぼっちだった。
しかし、常ではない。
彼女の友には弟がいた。
真っ直ぐで、鈍感で、優しくて、頑固で、姉思いで、家事が得意で、間違いを見過ごせず、向こう見ずな男の子。
彼女はそんな男の子が大好きで、男の子も彼女を大切に思っていた。
彼女の妹や友と同様、興味と守護の対象だった。
だから、だろうか。
彼女が産み出したモノは、彼を愛した。
説明しよう。
それはIS、そう呼ばれている。
正式名称『
それは「白騎士事件」という彼女と彼女の友が引き起こした騒動により、既存の兵器を凌駕する性能を見せつけて日の目を見る。
コアを核としアーマーを形成、圧倒的出力と汎用性、安全性を兼ね備え、単独飛行可能なパワード・スーツである。
その性能から軍事転用され、抑止力の大半をISへと転換するほどの代物である。
しかし、不可解な欠陥も存在する。
ISはコアが操縦者を認識して初めて機能するが、その認識対象が女性限定であることだ。
年齢や民族関係無く、全ての男性は認識されず、女性のみがその力を振るうことが許可される。
女性が力を持った急激な変革、即ち、女尊男卑の社会誕生である。
彼女の望みが、何一つ報われぬままに。
話を戻そう、彼がISに愛された、その答えを。
彼は彼女を大切に思っていた。
当然である、姉の友であり、彼女の悩みを知り、彼女に愛された恩もある。
何よりも、彼女の目標に共感していた。
彼女はいつだって空を見上げていた。
明ける白を見ていた、深い蒼を睨んでいた、沈む緋を眺めていた、眠る黒に馳せていた。
千変万化、同じ景色は無く変化に富んだ在り方に憧れていた。
そして、星々が煌めく彼方を目指していたのだ。
だから彼女は飛ぶ、我が子と共に、地にしがみ付く者たちを置いて。
独りぼっちで。
だから、彼は。
「いっくん、一緒に行こう?私たちの目指したあの
「人と人との繋がりを棄てたらダメだ。相手を同じ存在として、心を持つ者同士理解し合えるんだ。独りぼっちは寂しい、貴方はそれを感じ続けたはずでしょう?」
「もういいんだよ、いっくん。私はいっくんとこの子たちで十分だよ。私たち以外は昇れない、飛べないなら、私だけでいいんだよ」
「束さん、それは違うよ。束さんと俺や千冬姉たちが分かり合えるように、もっとたくさんの人たちと繋がれるんだ。自分から独りになる必要なんてないんだ」
「だって無駄だもの。束さんはスゴ過ぎるから皆追い付けない、理解出来ない。だから私に寄生するようにすり寄る奴らなんて要らないよ。私には、いっくんさえいればいいの。ねぇ、お願いだよいっくん、
「ッ!?貴方は!どうしてもっと早く言わなかったんだ!どうしてそれを伝えなかったんだ!心を開いて正直になればきっと、そんな涙を流すことなんて無かったんだ!」
「そうなのかな?でも、もう遅いよ。もう無理だよ。だって束さん、
「それでも!それを悲しいと思うなら諦めちゃダメなんだ。手を伸ばすことを止めたら、
彼は決めた。
この、友だちのつくり方さえ知らない女の子の手を取ると。
繋がりを広げて、彼女の内にある神を呼び覚ますために。
「俺に力を貸せ!」
彼は、獣を駆って今、飛ぶ。
「貴方だけは、
この広過ぎる、無限の成層圏に、独りぼっちでいさせないために。