郡千草は勇者である   作:音操

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お待たせいたしました、遅くなって申し訳ありません……
ゲームが、ゲームが悪いんです……ウマ娘にド嵌りしてしまいました。
ライスシャワーとアグネスタキオンがね、もう私の好みにブッ刺さりすぎで……サイレンススズカも合わせたこの3人が好きで好きでアプリに嵌ってしまいました。

さて、本編ですが今回は『彼女達』との出会いとあります。
それと、本作の本来の目的の為に必要な事も書きました。
その為にまたも法律なりなんなりを調べたりして……


第16話

私達の秘密を打ち明けてから、大凡1月経過した。

幸いに、本当に幸いな事に、皆との距離は縮まり、少しずつ仲良くなれている……気がする。

『友達』と言うモノが分からなくなっている為、仲良くなるという感覚も分からないのだけど。

 

そんなある日、放課後に乃木若葉さんが近づいてきた。

彼女にしては少し珍しい、申し訳なさそうな表情。

 

「千草さん。少し、良いだろうか?」

「どうかしたの?」

「頼みごとをしたいのですが……内容が内容なので、どうしたものか、と」

「ふむ……取りあえず、その内容を話して貰えるかしら?」

「えぇ」

 

コホン、と間を入れて、乃木若葉さんが話し始める。

 

「……諏訪の勇者との通信を、この間から始めたのはご存知ですよね?」

「えぇ、聞いてはいるけれど……基本的には、貴方とひなたさんが担当していたわね」

「はい」

 

私達勇者の代表は、現状乃木若葉さんという事になっている。

大社の本拠地がある香川の勇者である事。

武具に宿っている力が高位の神々の力である事。

本人の実力も高く、実績も持っている事。

これらを考慮した結果、乃木若葉さんが私達四国の勇者の代表として活動して貰っている。

 

「おっしゃる通り、私とひなたが通信を行っているのですが……明日の通信を、変わって頂きたいのです」

「……理由が、何かあるのね?」

「実は、私が島根県から救出した方々の見舞いや鼓舞を依頼されて……断る事も出来ず、明日丸亀市の病院などを回る事になったんです」

 

成程、と頷く。

確かに、そういう話なら乃木若葉さんは断りにくいだろう。

彼女は、とにかく真面目な人だから。

 

「……分かったわ。代わりが務まるかは不安だけれど」

「大丈夫です。諏訪の勇者である白鳥歌野さんはとても良い人です……ある一点では譲れない所こそありますが、そこを気にしなければ、えぇ」

「何か、あったの?」

「えぇ……退けない戦いが、ありました。ですが、彼女との関係が悪化するとか、そういう内容ではありません。良きライバルと言いますか……まぁ、そんな感じです」

 

……?

まぁ、通信先の相手との関係悪化とかの話では無い、という事らしい。

 

「通信は、私1人だけで行った方が?」

「そうですね……ひなたも私と共に回る予定ですので、千草さん御一人か、もしくは他の誰かも一緒に、という形になるでしょうか」

 

さて、どうしたものか。

そう考えて、考えて……ふと、ある事を思いついた。

 

「ねぇ、こういうのはどうかしら?」

「………成程。それは、確かに良いかもしれませんね」

「えぇ。じゃあ、そう言う事で」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ねぇ、みーちゃん」

「なぁに、うたのん」

「今日、四国との通信の日でしょ?今度こそ乃木さんとの麺類頂上決戦に決着をつけたいのよ。どうすれば私達と蕎麦がウィナーになれるか、作戦を考えない?」

「うーん……向こうにとってのうどんは、私達にとっての蕎麦と同じだから……やっぱり、実際に食べて貰わないと良さを分かって貰うのは難しいんじゃないかなぁ」

「Oh……それは、長く険しい戦いになりそうね」

 

みーちゃんとそんな事を話しながら、通信機材を置いてある部屋へと歩いて行く。

1ヶ月程前から始まった、四国に居る勇者との通信。

今日はその勇者通信の日。

 

「さて、と。えっと、これをこうして、こっちをこうして、スイッチを押して、っと」

 

パパッと用意を終えて、機材の電源を入れる。

これで、向こうと通信が繋がる。

 

『………tes,tes,tes. 聞こえますか?』

「?はい、聞こえますが……乃木さんでは無い、ですよね?どなたでしょうか?』

 

聞こえてきたのは、聞いた事の無い声。

落ち着いた印象を与えるその声の主へと誰かと聞いてみる。

 

『良かった。無事、繋がったようで……私は、四国に居る勇者の1人、郡千草と申します』

「乃木さん以外の勇者の人でしたか。初めまして、白鳥歌野です」

 

乃木さん以外の勇者。

話には聞いていたけれども、まさかこうして会話出来るなんて、思っていなかった。

 

『今日は乃木若葉さんが所用で通信に出られない代わりに、私が通信を担当させて頂きます』

「そう言う事でしたか。分かりました、今日はよろしくお願いします」

『えぇ、よろしくお願いします』

「それじゃあ、いつもの流れとかは把握されてますか?」

『確認はしましたけれども……近状報告、今後の方針について、が主な内容だとか』

「その認識で間違いありません。では、近状報告からしましょう」

 

そっか、乃木さんは用事が出来たのか。

……麺類頂上決戦は次回以降に持ち越しね!

 

「では、こちらの近状報告から!諏訪は前回の通信から1度だけ襲撃がありました」

『……バーテックスからの襲撃、ですか』

「はい。と言っても小規模なモノでしたので、無事殲滅出来ましたけど」

 

一昨日の事だけど、あの白い大きな化け物……四国では『バーテックス』と呼ばれている存在。

英語で『頂点』を意味する言葉を名付けられたアレは、時折諏訪に襲撃をしかけてくる。

今回もしっかり殲滅したけどね!

 

『……話には聞いていましたけど、そちらにはあの日以降も襲撃があるのですね』

「えぇ。乃木さんからは聞いていますけど、そちらは今の所襲撃も無いとの事で」

『はい。今のところは襲撃も無い状態が続いていて……申し訳なさを感じてしまいますね』

「乃木さんも言っていましたよ。負担を押し付けているようで申し訳ない、って」

『そう、でしたか……では、この話は止めにしましょうか』

 

礼儀正しい人なのね、郡千草さんは。

 

『こちらの現状報告ですが、先ほども言った通りバーテックスの襲撃は無く、平和と言っても良いかもしれません。四国の方では勇者の力を科学的、呪術的に引き出すシステムを開発しているのはご存知でしょうか?』

「えぇ、話だけは、ですが」

『完成に、少し近づきました。先日、初期型から改良し、使用者への負担を軽減出来たモノが出来ました』

「初期のモノは使用者が倒れる程の負担がかかったと聞きましたけど……」

『えぇ、あれは中々。改良版も私が使いましたが、確かにあの時よりは負担がかからなかったですよ」

「あ、貴方だったんですね」

『えぇ、そうです』

 

……礼儀正しい雰囲気からは信じられないのだけれど、結構無茶もしちゃう人なのね。

 

『大きな変化と言うとそれくらいでしょうか』

「そうですか。システムの実用化が近づいたというのは朗報ですね」

『えぇ、そうですね……あぁ、そうだ。白鳥歌野さん、少しお時間を頂いても?』

「なんでしょう?」

 

急に話しの流れが変わったので、少し驚く。

さて、一体何があったのだろう?

 

『乃木若葉さんから許可を貰って、今日はある事をしようと思っていたの』

「ある事、ですか?」

『こちらの勇者一同の紹介を、させて頂けないかと。白鳥歌野さんは、私達の中で話した事のある人は乃木若葉さんとひなたさんだけ、ですよね?』

「そうですね」

『他にも勇者として選ばれた人は居ますから。自己紹介だけでもさせて貰えたら、と思いまして』

 

成程、そう言う事か。

それは、確かに良いかもしれない。

乃木さんの他に、『高嶋友奈』さん、『土居球子』さん、『伊予島杏』さん、『郡千景』さん、そして今通信を担当している『郡千草』さんが居る。

みーちゃんのような立ち位置にいる『上里ひなた』さんも居ると聞いている。

でも、話したことがあるのは、乃木さんだけ。

上里ひなたさんについては、みーちゃんと同じように通信の部屋に控えているけれど、会話には参加しない形をとっているみたいだしね。

 

「……そうですね、折角の機会ですから、お願いします。乃木さん以外の人たちの事も、知りたいです」

『それは良かった。皆、こっちに近づいて』

『諏訪の人、聞こえますかー!!』

『いやぁ聞くだけって暇でしょうがなかったんだ!!おーい!!』

『タマっち!急に大声出したら驚いちゃうよ!!』

『……もう少し、静かにしましょう?』

 

Oh……元気いっぱいな人が2人程居るわね!

あんまりにも大きな声にみーちゃんがビックリしちゃってるわね。

 

『事前に決めていた順番で、自己紹介しましょうか』

『じゃあ、まずは私から。愛媛県出身の勇者、伊予島杏です』

「伊予島杏さんね。よろしくお願いします!」

『こちらこそ、よろしくお願いします。次は……』

『次はタマだな!杏と同じで愛媛出身の、土居球子だ!タマって呼んでくれ!!』

「えぇ、分かったわ、タマ!」

『次は私!奈良出身の、高嶋友奈です!!』

「高嶋友奈さん!元気一杯ね!」

『元気一杯だよ!それで、次が……』

『次は、私が……郡、千景、です。高知県出身』

『そして私、郡千草。千景の姉で、四国の勇者の中では最年長という事になるの』

「千景さんに、千草さんね!」

 

元気一杯な2人はタマと高嶋さん。

落ち着いた感じの人が伊予島さん。

そして、落ち着いた……と言うよりは、物静か?

何と言うか、内気な感じな人が千景さんで、そのお姉さんが千草さん。

タマと高嶋さんの判断は、腕白って感じなのがタマ、って覚えておきましょう。

 

「それじゃあ、私も自己紹介しましょう!諏訪の勇者、白鳥歌野!それと……私を支えてくれている人を、紹介しても良いかしら?」

『支えてくれる人?』

「えぇ。巫女さん、って言うのだったかしら?神様の声を聞き、伝えてくれる人」

『ひなたさんのような存在、という事ね』

「そうね。普段は真面目な話だから、勇者である私が、ってやってきたけど……今日は、そう言う日ではないでしょう?」

『そうですね……・えぇ、もし良ければ、紹介してください。貴方の事を支えている、巫女の方を』

 

許可を貰って、みーちゃんの方を見る。

 

「みーちゃん、こっち来て!」

「え?えっ?」

「ほらほら、四国の勇者に挨拶しましょ!」

「い、良いのかな?」

「向こうに許可も貰ったし、大丈夫よ!」

 

みーちゃんの背中を押して、マイクの前に立たせる。

 

「大丈夫、私も傍に居るから!」

「う、うん……え、えっと、初めまして。諏訪の巫女、藤森水都、です」

「水の都、で水都って読むのよ!」

『藤森水都さん、ね。よろしくお願いします』

『よろしくね、水都ちゃん!』

『よろしくお願いします、藤森さん』

『よろしくな!』

『……よろしく、お願いします』

 

うんうん、みーちゃんの事も知って貰えた。

……今度、乃木さんにも紹介しないと。

それと、上里さんの事を紹介して貰おう。

 

『……そろそろ、時間かしら』

「そう、ね」

 

千草さんの声で、気付いてしまう。

もう、時間が少ないという事に。

 

そもそも、バーテックスに襲われた今の世の中で、四国と諏訪でこうして通信出来ているのは何故か?

それは、神様の力によるモノ。

長時間維持出来るものでは無い。

 

「今日は、ありがとうございます。また時折、乃木さん以外の人たちも通信に出てくれるかしら?」

『良いんですか?』

「えぇ、勿論!」

『それじゃあ、若葉とひなたに相談してみるか!』

『そうだね!』

『……機会があれば、また』

『それじゃあ、白鳥歌野さん、藤森水都さん、また今度』

「えぇ、また今度!」

「ま、また今度!」

 

 

 

「皆良い人みたいね、四国の勇者って!」

「そうだね……何時か、会ってみたいね」

「そうね……うん、直接会ってみたいなぁ」

「……ねぇ、うたのん」

「なぁに、みーちゃん?」

「……………やっぱ、何でも無い」

「そう?」

「うん」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「母さん」

「千草……?それに、千景と、大社の方まで」

「急でごめんなさい。でも、どうしても相談したい事があって」

 

諏訪との通信を終えた後、私は千景と真鍋さんと一緒に病院へと向かっていた。

というのも、私達がこっちに来てから、大凡3ヶ月。

とある事の準備が整ったからだ。

 

「相談って……何があったの?」

「母さん。1つ、聞いて良い?」

「えぇ、良いけれど……」

「本心を、教えて欲しい。嘘はつかないで、母さんの本心を」

「……えぇ、分かったわ」

 

恐らく、辛い事を聞く。

でも、これは私達『郡一家』の為に、必要な事だから。

 

「……母さん。『あの人』に、未練はある?」

「…………………………」

 

長く、重い沈黙だった。

考えて、悩んで……大凡1分程か。

母さんが、少し俯きながらも、口を開く。

 

「………そう、ね。無い、と言うと嘘になるわ。あの人を好きになったのは、本当の事だったから」

「………うん」

「………ねぇ、千草。香川に来る事、『あの人』は止めたかしら?」

「うぅん、全く。むしろ、私達が働くと自分に援助金が入るって知ったら、喜んでたくらい」

「……………そう、なのね」

 

何処か、呆れるような、そんな表情を浮かべて。

母さんが、真っ直ぐに、こっちを見た。

 

「千草。貴方が今日此処に来た本題を、教えてくれる?」

「うん……母さん、あのね」

 

母さんの表情は、とても真剣で。

だから、私は余すことなく伝えた。

私と、千景と、大社の人たち。

皆で細かな部分まで調整した、『あの人』との縁を断ち切る為の作戦を。

 

「……大社、って、凄い所なのね」

「うん。だから、こんな事も実現出来るの」

「……………分かったわ」

 

私の話を聞いて、少しだけ考えて。

母さんが、私の後ろ、真鍋さんを見た。

 

「大社の方」

「真鍋、と申します。郡様御姉妹の事を主に担当しておりますので、今後も付き合いがあるかと思います。どうか、よろしくお願いします」

「……こんな私が言う資格があるとは思いませんが……『娘』の事を、よろしくお願いします」

「どうかご安心を。全力をもって、サポートさせて頂きます」

「どうか、お願いします……それで、先ほどの話なのですが」

「はい」

「……そちらの提案を、受けさせて頂きます」

 

真鍋さんの事を真っ直ぐ見ながら。

母さんが、言い切った。

 

「……宜しいのですね?」

「はい。『あの人』との縁を切る事。これが、今の私が娘に出来る精一杯ですから」

「……畏まりました。では、その方向で調整させて頂きます……数日もあれば、皆様のご期待に副える成果を挙げて見せます」

「どうか、よろしくお願いします」

 

深く頭を下げる母さん。

それを見て、千景が呟く。

 

「……正直、断られると思っていたわ」

「千景……」

「……これなら確実に、『あの人』と縁を切れる。当初予定していた話よりも、もっと確実に、遺恨無く……だけど、その」

「千景、貴方の言いたい事は分かるわ……母さんの事を、酷い扱いをしてしまうもの、ね?」

「……うん」

 

千景の手を握りながら、代わりに言葉を紡ぐ。

大社の提案を聞いた時、難色を示す程度には、母さんの扱いが酷かったのだ。

しかし……『あの人』との縁を、当初大社が提案してくれた案よりも、確実に切れる。

天秤にかけ、選んだのは私だ。

 

「……良いのよ。私の扱いなんて、気にしなくて良いの」

「母さん……」

「私は、貴方達に酷い事をした。消えない傷を負わせてしまった……ほんの少しでも償えるのなら、酷い扱いを受けようとも、構わないわ」

「……………ごめんなさい」

「謝らないで、千草。役に立てて、嬉しいくらいなのよ」

 

そう語る母さんは、どこか誇らしげで……どこか、悲しそうだった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『すみません、郡さんの御宅で間違いありませんか?』

「はぁ……確かに、僕は郡ですが?」

『大社の者、と言えば、分かりますかね?』

「大社の?」

『とある話を持ってきまして……聞いて頂けますかね?』

「……どうぞ」

 

仕事から帰って来て、明日は休みだから酒でも飲もうと考えた矢先。

チャイムが鳴ったから出てみれば、大社の人だという。

大社……千草と千景、2人を連れていった人達の組織、か。

とりあえず上がって貰う。

 

「いやぁ、夜分遅くに失礼。今ならお仕事終わって戻って来られたかと思いまして、ね?」

「えぇ、まぁ」

「こちら、夜分遅くの訪問のお詫びという事で、香川のお土産です。どうかお納めください」

「は、はぁ」

 

紙袋を受け取る。

それを適当に置いた後、大社の人を見る。

前来た人……真鍋さん?だったかと比べると、軽薄な印象だ。

20後半くらいのその人が、早速とばかりに口を開いた。

 

「お仕事疲れもありますでしょうし、本題に入らせて頂きます」

「あ、はい……」

「我々大社の方で掴んだ情報なのですがね……郡様、貴方の奥様の死亡が確認されました」

「……………は?」

 

唐突な話に、頭が真っ白になる。

アイツが、死んだ?

 

「勇者様からは、奥様は浮気相手と村を出て行かれたとの話で伺っておりました。それでですね、私共の方で各方面に確認を取らせて頂いたんですが……どうにも、他県の方で、バーテックスに襲われたそうで」

「……………」

「聞いたところによると、どうも手提げ鞄を持った腕だけが残っていた、と。で、鞄の中から財布などが出てきまして、それでようやく身元の特定が出来たそうです」

「………そう、です、か」

 

畳みかけるように与えられる情報に、パンクしている。

 

「それでですね、ここからが我々の提案なのですが」

「……なんで、しょう?」

「このままですとね、勇者様の親権は郡様、貴方に移る事になります」

「!」

 

親権。

アイツと押し付け合っていた、僕の枷。

それが、こっちに来る……?

 

「聞く所によれば、郡様は奥様と親権を巡って対立されていたとか」

「………え、えぇ」

「我々としましては、出来る限り早急に親権について決めて頂きたいのですよ。勇者様について探られたりしたとき、色々と不都合ですから」

 

スッと、目を細めて。

目の前の人が、小さな声で告げる。

 

「ここだけの話、親権をどうにかする方法、ありますよ?」

「え?」

「我々大社ですがね、暫定政府との繋がりが『そこそこ』ありまして、黒寄りのグレーゾーンに突っ込んだ話だろうと、もみ消せるんですわ」

「………続けてください」

「つまりですね。亡くなられた奥様が親権を持っていた事にして、生前奥様が後見として我々を指名していた事にするとですね、郡様の元に親権が来なくなるんですよ……あぁ、勿論親権が無いからと言って、お支払いしている援助金が無くなるとかはありません。今まで通り支払わせて頂きますとも、えぇ」

 

気が付けば、この人の話を聞き逃すまいと集中していた。

 

「しかもですね……郡様、この村から離れたいと思いません?」

「……思います、けど」

「実はですね、我々大社は今後の活動に向けて四国各地に支部を作ろうと思っているんですけども……徳島の方でですね、事務職を募集する予定なんです」

「は、はぁ……」

「我々の活動には公になると少し不都合な内容もありますので、外部との接触には一部制限がかかりますけども……どうです?住居などの斡旋もこちらで行えますよ?」

「………は、ははっ」

 

笑っているのに、遅れて気付く。

全てが変わったあの日から、どうにかしたいと思いつつも惰性でここまで続けてきた、しがらみだらけの生活。

まさか、全てを振り切るチャンスが、向こうから来るなんて!!

 

「受けさせてください!」

「即断即決、ありがとうございます!それではですね、裁判などの手続きもこちらの方で進めておきますので、書類にサインと印鑑を頂けますかね?」

「えぇ、はい!」

「では、こちらの書類、それぞれ名前と印鑑を……」

 

 

 

 

 

『終わりましたか?』

「えぇ、はい。全て無事に終わりましたので、報告を」

『そうですか。書類の方は?』

「全てサインと印鑑を押して貰いました。後はこっちで手続きをしてしまえば、大丈夫です」

『分かりました。それではそのように手配します……初任務、お疲れ様です。貴方のような人材を確保出来て、良かったです』

「いやぁ、お礼を言うのはこっちですよ……人を騙す事で世の為になる、そんな場を設けて下さって」

『今後も、この様な活動が必要になる場面があります。その時は、よろしくお願いします』

「こちらこそ……しがない詐欺師を刑務所から出して頂いた恩には、必ず報いますとも」

『えぇ、よろしくお願いしますね?』




うたのん&みーちゃんとの会話。そして郡父との切り離し策でした。
本作では、諏訪組とは若葉ちゃんだけではなく他の勇者も関わりを持つように。
これがどう今後に関わっていくのかは、頑張って書いていきますので続編をお待ちください(土下座)

そして、郡父との切り離し策。
郡父との接触を断つために、遠く徳島の地に飛んで頂く事にしました。
本人としては、お金が入ってくる上に針の筵から解放されるのでこれ以上ない提案に見えたでしょうね。
因みにですが、親権者が亡くなった場合、もう一方の親に自動的に移る事はないそうです。
調べて得た知識を元に書いておりますので、間違っている可能性はあるかもしれません。
間違い等ありましたら、メッセージ等で教えて頂けると……
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