郡千草は勇者である   作:音操

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お待たせしました、第19話となります。
最近暑いですね……相も変わらず、暑さに駄目な人間の為体力を削られながらも頑張ってます。

今回、少し短めです。


第19話

「上里さん、お久しぶりです」

『花本さん?えぇ、お久しぶりです』

「少し聞きたい事があって……大丈夫かしら」

『えぇ、大丈夫ですよ』

 

ある日の夜、花本さんから連絡がきた。

とても珍しいけれど、そんな事も気にならなくなるくらいに、真剣さを感じる声色。

 

『……千草様について、なのだけど』

「千草さんについて……何でしょうか?」

『……烏丸さんから聞いたわ。千草様が、千景様に何か隠し事をされている、と』

「ッ……」

『何か、知っているの?』

「それは、その……」

 

知っているも何も、烏丸さん、というか、誰か人生経験の長い人に聞くべきではと提言したのは、私だ。

その前段階で、若葉ちゃん達から相談を受けている。

当然、何を隠しているのか等、全て知っている。

 

『……お願い、します……教えてください』

「花本さん?」

『私は……私は、貴方と違って、郡様御姉妹の傍に居られない……でも、郡様御姉妹の為になら、なんだって出来る。何だってする……お役に、立ちたいの……』

「花本さん……」

『叶うなら、貴方の居るその立ち位置に、私が行きたい……………でも、でも……悔しいけれど、貴女の方が、勇者様達のお役に立てる……だとしても、郡様御姉妹の為に出来る事があるなら、したいの……!』

 

―――胸が締め付けられるような、声だった。

そして、語る想いに、共感してしまった。

私だって、若葉ちゃんの為に出来る事があるのなら、なんだってしてあげられる。

きっと、それくらいに、花本さんは郡さん達に、心奪われているのだ。

 

「……分かり、ました。他言無用……真鍋さんにも、今は内密に」

『え、えぇ、分かりました……教えてください』

「……千草さんは、どうも、とても無茶をされているそうです。ただ、それを千景さんに悟られない様、ずっと隠していた」

『無茶を……?』

「花本さん。貴方は1ヶ月の間に、指2本よりも厚い専門書を20冊以上、ジャンルも多岐にわたるモノを読破、内容を学ぶ事は出来ますか?」

『……仮に、その1ヶ月の間、ずっと他の事はしなくてもいいと言われたら、あるいは……』

「千草さんは、考えられる範囲ですが……時間帯は夕方以降、千景さんと別れた後。勇者としての訓練なども毎日行いながら、読破されています。内容を纏めたノートも、見つけました」

 

自分で言っていて、頭が痛くなる。

恐ろしい事に、六法全書ですら、ノートに纏められていた。

流石に千草さんが気になった部分だけとはいえ、それでも、ノートにして3冊以上使っていた。

 

『……何故?』

「……勇者御記に書いていた事を元に、千景さんが考えた結論ですが……千草さんは、千景さんが故郷で得られなかった全てを、千景さんに与えようとしているのでは、と」

『与えられなかった、全て……』

「花本さん。1つ、確認をさせてください」

『何、かしら?」

 

ここからの話をするにあたって、ある事を確認する必要がある。

返答次第では、話せる範囲が大きく変わってしまう。

 

「郡さん達について、【どこまで】知っていますか?」

『………それ、は』

「教えてください」

『………郡様達にも、真鍋さんにも、内密で』

「分かりました」

『……真鍋さんから、聞いたわ。郡様御姉妹について、あの人から全て』

 

これは……もしかしたら、私達よりも詳しいかもしれない?

でも、そこは気にしない。

重要なのは、『御二人について知っている』という事。

 

「では、あの村での御二人の境遇についても、知ってますね?」

『えぇ』

「なら、話が早いです。千草さんは、普通の人が得られるだろう全てを、千景さんに与えようとしているんです……家族からの愛情を、教師から与えられるはずだった知識を、友人から得られるはずだった様々な経験を……全て、1人で」

『それはっ……それは、流石に無理よ。そんな事、大人ですら出来ない、出来るはずが無い!』

「そう、ですよね……でも、千草さんはそうしようとしていて……実際の所、可能な限りそうあり続けていました」

 

保護者が与えてくれるモノ、教師が与えてくれるモノ、友人などが与えてくれるモノ。

全てを、1人で。

それも、ただの小学生が。

 

「千景さんが、言っていました……千草さんが、香川に来てから積極的に私達に関わろうとしたりしたのには、理由があったんだ、と。『自分以外にも頼れる人を作って欲しい』と、行動で示していたんだ、と」

『千草様の行動に、そんな理由が……?』

「えぇ、そうです……それも、ご自身の抱いている他人への恐怖や、心の痛みを無視して」

『……ッ!』

 

花本さんが、息をのむのが聞えた。

……真似出来るか?と言われたら、即答は出来ない。

そういう事を、平然と、千草さんは行っていた。

 

「……考えてみれば、そうですよね。御二人が経験したのは、私達が想像出来ない程苦しい出来事だった筈です。現に、千景さんは他者を拒むようにまでなった……そういう出来事です」

『……他者への不信、不安、怒り……それを、全て無視して』

「はい……全ては、千景さんへの模範となる為に」

 

辛く苦しい目に遭ってもなお、他者に歩み寄る。

その様な目に遭うようになった原因の1つとも言える母親を、赦し、寄り添う。

どのような葛藤があったのだろうか。

私には、想像も出来ない。

そして、その葛藤を、理性で抑えるのが、どれだけ大変なのかも、私には分からない。

ただ、そう簡単なモノではないだろう、という事だけは、分かる。

 

「……きっと、千草さんは、他人に見せないだけで、苦しい思いをされている。千景さんは、どうにか寄り添いたい、そう思っています」

『だから、千草様と話をしたいと……その前段階として、千草様の口から、本心を聞きたい、と』

「そうです」

 

現状、千草さんの部屋に忍び込み、こっそりと勇者御記を見たからこそ、千草さんの本心の一端を知る事が出来ているだけ。

このまま千草さんに詰めかけても、話を聞く段階で、勝手に勇者御記を覗いた事を話さざるを得ない。

そうすれば、千草さんと千景さんの間に、消えない傷が出来る可能性がある。

それを、千景さんは恐れた。

だからこそ、千景さんは、千草さんから本心を聞き出す方向で動き始めている。

 

『……どうにか、聞き出す方法を考えないといけないわね』

「はい。聞いただけでも、無茶をされているのが分かる程です……いつ、限界が来るかもわかりません」

『………教えてくれて、ありがとう。私の方でも、何か考えてみるわ』

「お願いします。今は、1人でも多く協力者が欲しい。ですが、協力を得られるのは、御二人の事情を深く知る人だけですので……」

『そう、よね……………取りあえず、何か方法が無いか考えてみるわ。お互い、時折連絡を取りましょう』

「そうしましょう」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……何か、何か方法は無いかしら……」

 

上里さんに確認をとったところ、思った以上に深刻な問題であった。

千草様は、ご自身の精神状態を完全に無視して、千景様の為に動かれている。

このままでは、精神面のみならず、身体にも異変が生じて可笑しくない。

早急に、解決しなくてはならない。

 

しかし、内容が内容だけに、相談出来るのは限られている。

どうすれば、解決に近づける……?

 

「あれ、どうしたの?悩み事?」

「安芸先輩……えぇ、少し、考え事を」

「ほほーう?どれどれ、先輩に相談してみなさい」

 

悩んでいると、先輩が声をかけてくる。

……さて、どうしたものか。

安芸先輩は、郡様御姉妹の事を知らない。

故に、相談出来る事なんて……………いや、あるには、あるか。

 

「……では、少し相談を」

「うんうん」

「仮に、ですけれども……そうですね、安芸先輩のご家族の方が、明らかに、安芸先輩に隠し事をしてるとします」

「ほうほう?」

「隠し事は、ご家族の方の負担になるような事で、それでも隠そうとしている。安芸先輩は、それを知りたいと思った時、どうします?」

「……え、結構ガチな相談だったわね、コレ……うーん、どうしようかな……」

 

安芸先輩が、顎に手を当てながらウンウンと唸り始める。

 

「自分に隠し事しててー、それのせいで大変な目にあってるのに必死に隠しててー?……なんとか聞き出そうとするとは思うのよね、私」

「でしょうね」

「まぁそうなんだけど……ただ、無理に聞こうとすると喧嘩とかしそうだし……うーん……」

「……やっぱり、そうなりますよね」

 

更にウンウンと唸る事1分程。

唐突に、先輩が立ち上がった。

 

「うん、悩むのは止めた!」

「はい?」

「2人っきりになって、他言無用って事で聞き出す!やっぱり腹割って話すのが一番よ!」

「……はぁ」

 

……まぁ、確かにそうではありますけど。

それが出来れば、どれだけ楽か……

……………いや、もしかしたら。

もしかしたらだけど、最善手の可能性が、ある。

ただ、その場合、千草様に話を聞きに行くのは、千景様ではなく、自分だ。

 

「……参考にさせて頂きます」

「お、参考になるなら良かったわー!」

「すみません、少し席を外しますね」

「あ、はーい」

 

一応許可を得て、部屋を出て行く。

当然、考え事をしながらだが。

 

最善手の可能性、というのも、私の立ち位置が重要だ。

千草様が頑なに隠しているのは、相手が千景様だからこそ、だろう。

千景様の為にと行動されている御方だ。千景様に心配をかけぬよう、隠しているのだ。

それを考慮すると……千景様ではない、他者の方が話しやすい、という可能性はある。

 

では、他の勇者様や、上里さんが相談相手になれるか?となると、少し難しいかもしれない。

なにせ、直接千景様と話が出来る距離に居る。

何時、情報が洩れるか分からない相手に、相談出来るか?となると、難しいモノがあるだろう。

 

その点、私は大社に居る。直接話を出来る距離では無い。

それに、大社本部において、郡様御姉妹の件を知っているのは、私と真鍋さんのみだ。

そして、私が深い事情を知っていると、千草様は知らない。

千草様から見れば、『多少事情を知っていて、話をしたとしても、周りに漏らす事が出来ない』、そういう人間と映るはずだ。

なにせ、仮に大社内にこの話が漏れたと知られたら、疑われるのは私だけ。

千景様に知られたとして、疑われるのは私だけだ。

そんな危険を犯すような人間とは、流石に思われていない……そう、だと思う。

 

この立ち位置を活かせば、相談相手を名乗り出る事が、出来るかもしれない。

……可能性は、ある。ならば、後は詳細を詰めれば……

 

「……千草様の為に、千景様の為に……」

 

やろう。やってみよう。

何もしないより、万倍マシだ。

お役に立つのだ。恩を返す時だ。

 

「そうね、上里さんと連絡を取りつつ、詳細を詰めて……詰め終わったら、千景様に確認をとり、千草様からお話を聞く。この流れで行きましょう」

 

やる事は決まった。

ならば、まずは詳細を詰めなくてはならない。

如何にして千草様と2人きりの状況を作るか。

他言しないと信じて頂くにはどうすれば良いのか。

そして……千景様から、御許しを頂けるか、どうか。

 

「……やらないと、何も始まらないわ、花本美佳。今は行動する時よ」

 

1人、決心する。

『自分の巫女は貴方だけだ』と言ってくれた御方の為に、出来る事があるのだ。

ならば、何でも、やってやる。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ある日、私は1人ある場所を歩いていた。

香川県にある、大きな病院。

その、最上階の、とある一室の前で、立ち止まる。

1つ、大きく深呼吸をして、心を落ち着かせ、ノックした。

 

『どうぞ』

 

返事が聞えたのを確認して、中に入る。

……私が最後に見てから、大凡1ヶ月程、か。

多少顔色が良くなったその人は、私を見て、目を見開いた。

 

「ち、かげ……?」

「……………久しぶりね」

「千草は、どうしたの?」

「姉さんは、今日は出かけてるの。私一人よ」

 

伊予島さんと土居さんに、協力して貰った。

姉さんと1日、付き合って欲しいと言うと、快諾してくれたのだ。

だから、ここに居るのは、私とこの人だけ。

 

「今日来たのは、聞きたい事があったからよ」

「聞きたい事?何かしら?」

 

首を傾げるこの人を無視して、パイプ椅子に座る。

 

「ねぇ……姉さんに、何をしたの?何を言ったの?」

「千草、に?」

「えぇ、そう。そうよ。姉さんに……何を、した?」

 

苛立ちを、憎しみを込めて、睨み付ける。

 

「姉さんの日記を、読んだの。そうしたら、書いてあったのよ。『母さんから、千景の事を託された』、って。ねぇ?姉さんに何を言ったの?何を吹き込んだの?」

「ち、かげ」

「答えろ!!姉さんに、何を吹き込んだ!!!」

 

そうだ。

姉さんが無茶をする一因は、確実にコイツが関わっている。

だから、聞きに来た。

私の言葉に、態度に、何かを感じ取ったのか。

考え込む仕草をして、口を開いた。

 

「……『千景の事を、お願い』って、言ったわ」

「……それ、だけ?」

「えぇ。千景にとって、千草こそが頼れる寄る辺。だから、これからも守ってあげて欲しい、そう思って、そう言ったの」

 

……それ、だけ?

本当に、それだけなの?

なら、どうして、姉さんはあんなに……?

 

「……千景。千草に、何があったの?」

「……どうでも良いでしょ?貴方は、もう私達の母親じゃないんだから」

「ッ!!」

 

不安そうに聞いてきた言葉を、切り捨てる。

……そうだ。この人は、母親じゃない。赤の他人なんだ。

ただ、姉さんの御記に書いてあったから、情報を聞き出しに来ただけ。

そうでもなければ、ここに来ることも無い。

 

「何?何辛そうな顔してるのよ?今更母親面しないで……姉さんが普通に接してくれるから、勘違いでもしてるの?なら覚えておいて……貴方はもう、血が繋がってるだけの他人よ」

「………分かってる。分かってるわ」

「なら……」

「でも、でもね……私は、他人だとしても、困ってる子供を、見捨てたくないわ」

 

……………何と、言った?

コイツは、今、何と言ったの?

『見捨てたくない』、なんて、ほざいたのか?

 

「……………で」

「……ち、かげ?」

「……どの口で、ほざいた!?あの日、全てを捨てた人間の癖に!!」

「が、ぐぅ……!」

 

気が付いたら、その喉に手を伸ばしていた。

 

「何て言った?何をほざいているの?お前がした事を忘れたの!?」

「か、はっ」

「あの日、お前は!私を!姉さんを!全て切り捨てて!!自分だけ、楽になったんでしょう!?そんなお前が、『困ってる子供を見捨てたくない』だと!?ふざけるな!!!」

「あ、が……」

「お前のせいで、私は、私と姉さんは……!!」

 

そう、そうだ。

コイツのせいだ。

コイツが逃げたせいで、より酷くなったのだ。

姉さんが苦しい思いをしたのも、コイツのせいなのだ。

怒りを、恨みを込めて、首を絞める。

辛く、苦しそうに喘ぐ姿に、僅かに溜飲が下がる。

……溜飲が下がったからこそ、気付いてしまった。

 

「……何よ。何よ、その眼は」

 

どうして、そんな眼が出来る。

 

「なんでよ」

 

首を絞められているのに。

 

「……何なのよ、その眼は!?」

 

どうして……穏やかな眼を、しているの。

気味が悪くて、手を離してしまう。

せき込む姿を見ながら、私は一歩退いてしまう。

 

「どうして、そんな眼が出来るの……どうして……?」

「げほっ、けほっ……こうなって、当然だと、思っていたもの」

 

少し呼吸を整えて、言う。

 

「恨まれて当然……だからこそ、何があっても、甘んじて、受け入れるつもりでいたわ……千草は、優しくしてくれたけど……本来なら、こうなっても、可笑しくはないもの」

「ッ……」

「千景、貴方のその怒りは、正しいモノよ……憎んでくれていい、恨んでくれていいわ」

 

そう言うコイツの眼は、どこまで、穏やかで。

穏やかで……姉さんと、似ていた。

 

「私は、もう過ちを犯さない。貴方達に向き合う。逃げないし、目を逸らさない……そう、決めたの」

「……………」

「だから、教えて欲しいの。千草に、なにがあったのか……」

 

………口だけなら、何でも言える。

出まかせの可能性だって、ある。この場を凌ぐ為の、そういう言葉かもしれない。

 

『今すぐ許す訳じゃないわ。ただ、償おうと……変わろうとする母さんを、見てあげましょう』

 

姉さんの言葉が、脳裏を過る。

姉さんの、言葉……………

 

「……………チッ。分かったわよ」

「……ありがとう」

「礼は言わないで……姉さんの変化について、知りたいだけ」

 

大きく溜息を吐いて、椅子に座る。

……姉さんの言葉が無ければ、私は、どうしてたのだろうか?

僅かに湧いてきた疑問を、無視する。

 

「……姉さん、最近無茶をするようになったのよ」

 

スマホの写真を、見せつける。

そこに写っているのは、六法全書含めて28冊の本と、その内容が纏められた大量のノートだ。

 

「これは……?」

「1カ月の間に、姉さんが読破した本。それも、夕方以降、私と別れてから勉強して、これだけやっている事になるわ」

「それは……確かに、これだけの量を、その時間でやるとしたら、よっぽど詰め込んでも、深夜まで時間を使う事になる」

「でしょう?それに、聞いた話だと、姉さんは朝の6時には起きて、早朝トレーニングをしてるみたいなのよ」

 

トレーニングの件については、乃木さんから聞いた話になる。

なんでも、ふと偶然早く起きた時、外を走っている姿を見た、と。

その後、戻って来たタイミングで話を聞いたら、週に5日はトレーニングをしている、と。

 

「……ねぇ、姉さんから、何か聞いてない?」

「……………そう、ね。思い当たる事が、少しだけ」

「教えて、今すぐに」

 

私の言葉に、悩む仕草をして。

でも、しっかりと私の事を見ながら、口を開いた。

 

「……千草は、私の想像を遥かに超えて、貴方の事を支えようとしているの」

「………続けて」

「私が想定していたのは、千景の姉として支える事。でも、あの子が考えていたのは違ったわ……姉として、保護者として、緒に遊び、考え、学び、教え、良き人として成長出来るように導く……大人ですら出来ない事を、やろうとしていたわ」

 

……ノートに書いて合った事だ。

やはり、姉さんは、大人ですら出来ない事をなそうとしていたのか。

 

「……そして、千草は……それが、出来てなかった事に、気付いてしまった」

「それ、は……」

「千草は、悔いていたわ。千景の事を自立させてあげられなかった。千景に対して過度に干渉してしまった……千景の為にと固執しすぎて、行き過ぎた固執は依存となって、自分の依存が、千景を自分に対して依存させてしまった、って」

「……………そん、な」

 

私が、甘えてしまっただけなのに。

姉さんが、そこまで自分を追いつめてしまった、なんて。

 

「それで……きっと、私の言葉が……『千景をお願い』という言葉が、狂わせてしまったのね」

「……どういう、事?」

「追い詰められた千草には、私の言葉が……きっと、言葉以上の意味に、聞こえてしまったの。私が込めたのは、『姉として支えてあげて欲しい』という意味だった、けれど……もっと深く、重く、受け止めてしまったのだと、思うわ」

 

『それこそ、己が身を滅ぼしてでも、千景の為に動く程に』

その言葉を受けて、一瞬、頭が真っ白になってしまう。

 

「……それって、じゃあ、姉さんが無理をしてるのは」

「……千景?」

「無理をしてるのは……私の、せい?」

 

声が、震えてしまう。

それでも、言葉にして吐き出さないと、こころが、たえきれなくて。

 

「わたしが、わたしが、ねえさんにあまえたから、わたしのせいで、ねえさんが……」

「千景、千景!」

「わ、わたしがあまえちゃったから……ねえさ、ねえさんが……!」

「違う!全ては私のせいなの……貴方は、貴方達は、何も悪くないの!!」

 

 

 

あぁ、そっか

 

わたしが、あまえてしまったから

 

ねえさんは、くるって、しまったんだ

 

 

 

ねえさんをくるわせてしまったのは―――――わたし、なんだ




少しゆゆゆらしく、少女を曇らせる事に成功した、かな?
中々描写が難しいので、上手くいっているか不安ですが……

郡姉妹のこの山場については、あと数話使う予定です。
そうしたら作中時間も大きく進む予定ですので、もう暫くお付き合いください(土下座
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