郡千草は勇者である   作:音操

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一か月以上経ってしまい本当に、本当に申し訳ありません(土下座
ゲームもあるんですけど、コロナの影響で仕事がドタバタしておりまして…
今後も投稿頻度が遅くなってしまうかもしれませんが、失踪だけはしないようがんばります(汗

今回、アンケートを設置させて頂きます。
ちょっと悩んでいる事について、皆様の協力を頂ければと思いまして。



第6話

「若葉ちゃん」

「ひなたか。どうした?」

「眉間に皺、寄ってますよ?お悩み若葉ちゃんみたいですね」

「……分かってしまうか」

「もちろん、若葉ちゃんの事ならなんでも御見通しですよ」

 

全ての勇者が揃ったあの日から、数日が経過した。

それは学校が始まってから同じ日数が経過した事も意味している。

そんな今日、学校の昼休みに私、『乃木若葉』はある事を考えていた。

昼を食べ終え、早めに教室に戻り考え事をしていた訳だが、ひなたに気付かれてしまった。

 

「敵わないな、ひなたには」

「うふふ……それで、何を考えていたんですか?」

「……郡さん達について、少しな」

「郡さん達、ですか?」

「あぁ」

 

私たちの中で、最後に香川に来た2人の人物。

郡千草さんと、郡千景さん。

ここ数日、同じ教室で学ぶ者として、同じ勇者として行動を共にしてきたが……

 

「……あの2人から、警戒されているな、と思ってな」

「それは……」

「朝話しかけても、昼食を誘っても、放課後の鍛錬を誘っても、夕飯を誘っても……全て、切り上げられたり断られたりしているんだ」

 

思い出して、溜息を吐く。

今後行動を共にするのだから、友好的な関係を築けるように積極的に話しかけたりしている。

土居さんや高嶋さん……いや、友奈だ。友奈などとは、今の所良好な関係を築けていると思う。

伊予島さんも、本人の性格を考えれば、悪くない反応を貰えている。

ひなたは言わずもがな。

だが……郡さん達だけは、上手くいかない。

 

『郡さん、おはようございます』

『おはようございます、乃木若葉さん』

『……おはよう、ございます』

『今日も1日、頑張りましょうね』

『それじゃあ、また』

 

『郡さん、良かったら昼食を一緒に食べませんか?』

『そう、ね……』

『……姉さん』

『……ごめんなさい。また今度ね?』

 

『放課後、一緒に身体を動かしませんか?』

『放課後は千景とこの辺りを散策する予定があって……』

『……またの機会に』

 

『こんばんわ。友奈達も誘って、一緒に夕食を……』

『少し疲れちゃってて……後で食堂に行くわ』

『姉さんと一緒に行くから……』

 

放課後の鍛錬や、夕食の時は仕方ないとして。

朝と昼食の時に、会話を切り上げられたり、共に食事をするのを断られる時。

どうにも向こうから拒絶されている様に感じる。

『私たちに話しかけるな』と、言外に込められている様に感じてしまうのだ。

 

「特に、千景さんから警戒されているようでな……どうしてだろうか、どうすれば良いのだろうか、と考えていたんだ」

「それは……難しい話ですね」

 

険しい表情で、ひなたが呟く。

珍しい、と私は感じた。ひなたが、私の幼馴染がこのような表情を浮かべるのは、そう多くない。

 

「ひなた。何か策は無いだろうか?」

「ん~……そう、ですねぇ……」

 

ひなたがここまで悩むとは。これもまた珍しいと感じる。

これは、中々の難題なのだろう。

悩む事少々、突然、ひなたが目を見開き、片方の手で手のひらを『ポンッ』と叩く。

 

「閃きましたッ!」

「お、おぉ?何か考え付いたのか!」

「はい!」

 

そう言うと、ひなたは自身の両手で、私の両手を包み握る。

そして、グイと身をこちらに寄せた。

目を輝かせ、私にこう言った。

 

「若葉ちゃん、私に良い考えがあります!」

 

 

 

 

 

「郡さん」

「乃木若葉さん?」

「……何か用、かしら?」

 

放課後、私は郡さん達の所へと向かう。

姉妹2人で、何かを話し合っているようだ。

いつもなら、この後誘っても断られていたが、今回はひなたの策がある。

 

「正確に言うならば、千草さんの方に」

「……何かしら?」

「少し話をしたいと思いまして」

 

ひなたの策とは、『2人同時にではなく、どちらか片方を対象にする』と言うモノだ。

確かに、2人同時に誘ってしまうと、片方に用事があったりすると誘えなくなってしまう。

だが、1人だけならそう言う事も無い。

勿論、誘った人に用事がある場合にはもう1人を誘えるように内容は考えている。

 

「……えぇ、良いわよ」

「姉さん?」

「千景、ちょっと行ってくるわね」

「…………部屋で、待っているわ」

「分かったわ」

 

『千草さんからお誘いするのが良いかと』というひなたの言葉に従ったが、成功の様だな。

……ただ、千景さんのこっちを見る目がかなりキツイのだが。

立ち去る千景さんを見送り、千草さんがこっちを見る。

 

「それで、話って?」

「まず、ひなたと合流させてください。今回の話は、ひなたも一緒の方が良いと思うので」

「……えぇ、分かったわ」

 

数秒、何かを考えた後、私の言葉に頷いてくれる。

諸事情により職員室へと向かったひなたと合流する為に、歩き始める。

 

「……千景は誘わなかったのね、今回は」

「最初は誘う事を考えたのですが、まず千草さんから話をしたいと思いまして」

「……千景は人見知りしやすくて、誘っても断られると思うわ。だから、私だけ誘ったのは正解かもね」

「何時かは千景さんとも話をしたいとは思うのですが……」

「そうね……もう少し、待ってあげてくれないかしら。新しい環境に慣れる時間が、あの子には必要なの」

「引っ越して来られたばかりですからね」

 

こうして話してみて、やはり千草さんは千景さんよりこちらを警戒していない様に感じる。

そして、千景さんがこちらを警戒する理由も、納得できる。

自己紹介の時も、人見知りしやすいと千草さんが言っていたし、そう言う事らしい。

 

「上里ひなたさんは……あぁ、職員室に行くって言ってたわね」

「聞いていたんですか?」

「狭い教室の中だもの、聞こえるわ……盗み聞きしているみたいね、これじゃあ。ごめんなさいね?」

「いえ、気にしないでください」

 

どうやら、千草さんは細かな事が気になりやすいタイプなのかもしれない。

それでいて、悪いと思ったらすぐに謝ってくれる辺り、悪い人では無いのだろう。

……いや、悪い人だったら勇者に選ばれていないか。その辺は考えるだけ無駄だ。

千草さんも千景さんも、神樹様に選ばれた、勇者に選ばれる程の良い人なのだ。

そんな事を考えながら歩いていると、職員室が見えてくる。

すると、丁度良いタイミングでひなたが出てきた。

 

「失礼しました……あら、若葉ちゃん。それと、千草さん?」

「ひなた、丁度良かった。これから時間は空いているか?」

「えぇ、今日の用事は終わりましたが……?」

「それは良かった。千草さんと話をするときに、ひなたにも居て欲しいんだ」

「私が、ですか?」

 

首を傾げられる。

まぁ、その反応は想定内。

千草さんに聞こえないよう、ちょっと耳を貸して貰う。

 

(千草さんは、実戦経験は無いが覚悟はしている、と言っただろう?)

(え、えぇ、そうですけど……)

(その辺り、聞いておきたくてな。大社に伝えられるお前にも聞いていて欲しいんだ)

 

そう、今回の目的は千草さんの覚悟、について聞く事だ。

『実戦は経験していないの。でも、足を引っ張らない様に頑張るから』

『不安に思うのも当然だと思うわ。でも、覚悟はしているつもりよ』

そう、彼女は言っていた。

しかし、それがどれほどのものか、直接聞いてみたい。

 

(……分かりました、協力しましょう)

(助かる)

「……それで、上里ひなたさんも一緒に来るのかしら?」

「え、えぇ。折角ですので、ご一緒させて貰いますね」

「分かったわ」

 

ひなたも同行してくれるようだし、これで準備は整った。

さて、早速話が出来る所へ移動しよう。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

(あぁ、どうしましょう、どうしましょう……!)

 

私、上里ひなたは完全に焦っていた。

というのも、若葉ちゃんの行動が、現状完全に悪手である事に気付いてしまったのです。

 

状況として。

まず、千草さんは若葉ちゃんと2人きりでの会話、1対1の状況だと思っていたという事。

恐らく、若葉ちゃんの事ですから、最初は私と合流する旨を伝えていなかったはず。

若葉ちゃんのお誘いを受けたのは、1対1、つまり、周りを警戒せず、目の前の相手のみに気を付ければ良い状況だから、というのが確実にある筈です。

そこに、私と言う2人目の警戒対象が現れた。

これでは、仲良くするための第一歩なんて踏み出せそうにもありません。

 

そして、さっき私を誘った時の行動、これもマズいです。

誰から見ても、今のは『千草さんに聞かれたくない隠し事をしている』と言う風にしか捉えられない。

絶対に、千草さんはこちらを警戒するでしょう。

 

(事前に話の内容を確認するべきでした……うっかりひなたです……)

 

千草さん……いえ、郡さん達について、大社のとある人から私だけ話を聞いています。

その人曰く、郡さん達は高知で辛い目に遭っていたのだ、と。

 

『郡様御姉妹は、両親ともうまく行かず、住んでいた場所でいじめに遭っていたそうです。そのせいもあって、御二人は対人恐怖症、と言うべき状態ですし、故郷の事もあまり良く思われていません』

『上里様、どうか、御二人のお傍に居る時には、あまり故郷の話や昔の交友関係の話などはしないよう、気を遣って頂けませんか?』

 

この話は内密に、と言われています。

お二人は、いじめに遭っていた事をとても気にされているのだ、と。

できれば、そう言う過去があった事を知って欲しくないのだ、と。

そう語る大社の方……真鍋さんの表情は、とても辛そうで。

きっと、この人はもっと詳しい事情を……どれだけ郡さん達が辛い目に遭われたのかを、知っている。知っているからこそ、お二人を助けてあげたいと頑張っているのだと、分かってしまった。

大社の人間としてではない。大社の人間としてサポートするにしては、深く関わり過ぎですから。

きっと、これは……そう、良き大人として、お二人を助けたいと思ったから、その為に私に頼ったのだと思います。

 

そう、大社の人が、勇者をサポートする者としてではなく、一人の大人として助けてあげたいと願う程に、辛い目に遭われた方。

そんな人を相手に、完全に警戒させてしまうような事をしてしまっている。

それに気づいてしまい、どうにかしないとと焦っています。

でも、焦ったままでは良い考えは浮かばず、若葉ちゃんの目的地……若葉ちゃんの部屋へと着いてしまいました。

 

「どうぞ、上がってください」

「……お邪魔します」

 

あぁ、どこか諦めたような表情の千草さんが考えている事が分かってしまいます。

若葉ちゃんの部屋は、寮の2階の端。しかも、隣は私の部屋。

つまり、千草さん視点では『逃げる事は難しく、何かあっても周りの人に気付かれない場所』です。

『何をされても、逃げる事は出来ない。此処は大人しく従うしかない』

きっと、そういう諦めの感情が、先ほど顔に出ていたのでしょう。

 

「………それで、話って、何かしら?」

 

若葉ちゃんに勧められるまま、部屋の奥の方に座った千草さんが、今までに見た事が無い、鋭い目つきでこちらを見ながらもそう言う。

完全に警戒されていますね……

それに気付いているのか、気付いていないのか、真剣な表情で若葉ちゃんが口を開く。

 

「では、単刀直入に。先日話されていた、貴方の覚悟についてお聞きしたい」

「……理由を、聞いても?」

「バーテックスの脅威を知っている者として、実際に奴らを見ていない貴方がどのような覚悟で此処に来たのかを、知っておきたいからです」

「……互いの認識をすり合わせしておきたい、という事ね?」

「そう思って頂ければ」

 

そう言うと、少し考えるような仕草をする。

ですけど、それも数秒の事。直ぐに視線を若葉ちゃんへと向ける。

 

「では、まず私の方から話しましょう。その上で、貴方の考えを私に教えて欲しい」

「分かりました」

 

話はしてくださるみたいですね。

姿勢を正し、千草さんが話をするのを待つ。

 

「まず、バーテックスに対する認識から話しましょう」

「お願いします」

「では……バーテックスは、あの地震が続いた日に、空から現れた謎の存在らしいわね。特徴として、銃火器などは一切通じず、神聖な力を宿した武器による攻撃でしか倒せない。あと……人を食い殺す、という事は知っているわ。何か間違っている事はあるかしら?」

「いえ、大丈夫です」

 

千草さんの認識を肯定する。

 

「補足、と言いますか……バーテックスはあのような見た目ではありますが、かなり素早いですし、噛みつきだけでなく体当たりだけでも人を重症に追い込める程に強いです」

「そう……えぇ、分かったわ。戦う時は、気を付けるようにするわね」

 

若葉ちゃんの補足の言葉。

それを、千草さんはあっさりと受け入れた。

驚く訳でもなく、怯えるわけでも無い。

『あぁ、そうなんだ』程度に、あっさりと。

 

「……驚かないのですね、千草さん」

「?」

「いえ、『あの見た目で速いのか』とか、そういう反応をされるかと思っていたので」

「あぁ、そういう事……確かに、そういう事は思ったけれど、実際に戦闘までした人が言う事だもの。そうなんだ、って納得するしかないでしょう?」

 

……なんででしょうか。

普通に聞けば、『こちらの話を聞いてくれているんだ』と納得出来るところなのですが。

僅かではありますが彼女の境遇を知っているモノとして、『本当にそう思ってくれているのだろうか?』と疑ってしまいます。

 

「……では、バーテックスを相手する覚悟についてなのですが」

「変わらないわ。私は、バーテックスと戦う」

 

若葉ちゃんの質問に、千草さんは即答する。

それが逆に不安に思ったのでしょう、若葉ちゃんが少し考えて口を開いた。

 

「……大丈夫ですか?」

「えぇ……少なくとも、私はやれる。いいえ、やるしかないのよ」

「やるしか、ない?」

 

千草さんが言った言葉に、若葉ちゃんが首を傾げる。

『しまった』と言いたげな表情をされているので、本来は言うつもりでは無かったのでしょうか。

 

「今のは、どういうことですか?」

「……少し、事情があるってだけよ。気にしないでくれると助かるわ」

「……分かりました、この件についてはこれ以上詮索はしません」

「そう、それは助かるわ」

 

私の言葉に対する返答に、ここが今聞き出せる限界なのだと察する。

しかし、少しだけ知っている私には、今の言葉だけでも分かることがある。

恐らく、彼女は……

 

「……事情については、私も聞きません。別の事を聞いても?」

「何を聞きたいの?」

「何かしらの事情があるとしても、貴方は勇者となり今後バーテックスと戦う事になる……何の為に、戦うのですか?」

 

勇者になった事情ではなく、勇者として戦う目的、ですか。

私も気になる事ではありますが、答えてくれるのでしょうか……

千草さんを見ると……先程までとは違い、普段と変わらない表情をされていますね。

 

「目的、ね……参考までに、乃木若葉さん、貴方の目的を聞いても?」

「私の目的、ですか?」

「えぇ」

「私の目的は……あの日、私と友達になってくれたあの子達を、そして多くの人たちを襲ったバーテックスに、報いを受けさせる。そして、バーテックスに奪われた世界を、取り戻す。その為に、私は戦います」

「……立派ね、貴方は」

 

真剣な表情で……いや、バーテックスに対する怒りが現れた、険しい表情で若葉ちゃんが語る。

それを聞いて、千草さんは『立派だ』と呟く。

 

「立派、ですか?」

「えぇ、そうよ。多くの人の為に、世界の為に戦える。凄い事だと思うわ」

「……貴方は、違うのですか?」

「そうね。直接的な被害を受けた貴方と、そうした被害を受けていない私との違いもあるかもしれないのだけれど……私の目的は、そんな大きなモノじゃないの」

「では、貴方は何の為に?」

 

多くの人の為でもなく、世界の為でも無い。

若葉ちゃんからすると考えられない、千草さんの目的。

それは、恐らく……

 

「私の目的は、『千景を守る事』よ」

「千景さんを、守る……」

「えぇ、そう。私にとって最も大切なあの子を、あらゆるものから守る。その為に、私は戦う。世界を守るとかそういうのは、あの子を守る過程で生じる副次的なモノよ」

「……あくまで、千景さんが第一、であると」

「そうよ」

 

力強く言い切る千草さん。

……辛い環境を共に耐えてきた千景さんこそが、最も大切だ、と。

そんな千景さんを守る為に、自分は戦うのだ、と。

そう言う千草さんの姿は、今まで見てきた中で一番輝いて見えました。

 

「付け足して言わせて貰うわ。私にとって、千景が第一と言ったけれど……私自身と比べても、あの子の事が上に来るの」

「自分よりも上、ですか?」

「えぇ……私にとっては、そうなのよ」

 

目を細めて、千草さんが微笑む。

 

「そんな千景を、守りたいの。だから、その為ならバーテックスとも戦ってやるわ……これが、私の戦う目的よ、乃木若葉さん、上里ひなたさん」

「……分かりました。教えて頂き、ありがとうございます」

「私からも、感謝を。ありがとうございます、千草さん」

「貴方の戦う意志、確かに感じました。また、覚悟の方も十分に」

 

頭をさげ、礼を言う。

言いたくない程辛い過去を隠しながらではあるが、戦う目的などを教えてくれた。

それだけでも、対人恐怖症の可能性がある千草さんからすると勇気のいる事だったのでしょう。

 

「良いのよ。戦いを知る人間として、経験の無い人間が戦えるか不安に思うのは当然の事でしょうから」

「分かっていたのですか?」

「えぇ。この間質問をされたときに、何となく察したわ」

「……申し訳ありません、貴方の意志の強さを知らず、疑ってしまいました」

「初対面の相手の事だもの、知らなくて当然よ。気にしなくて良いわ」

「しかし……」

「良いのよ、乃木若葉さん」

「……ありがとうございます」

 

謝る若葉ちゃんを、あくまで気にしていないと言って許す千草さん。

しかし、強引にも思えるその行動に、私は別の意図を感じます。

そう……『これ以上は聞かないで欲しい』という、拒絶を。

 

「今日聞きたいと思っていた事は聞けました。改めて、ありがとうございます」

「いえ、私も得る物があった良い時間になったわ。こちらこそ、ありがとう」

「それは良かった」

「……乃木若葉さん。千景を待たせているし、今日の所はそろそろ帰らせても貰おうと思うのだけれど……」

「先ほども言いましたが、今日聞きたい事は聞く事が出来ましたので、大丈夫ですよ」

「そう?なら、今日はこれで……明日からも宜しくね」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「宜しくお願いしますね、千草さん」

 

こちらの挨拶を聞いた後、千草さんが部屋を出ていく。

それを見送り、若葉ちゃんの方を見る。

 

「若葉ちゃん、どう思いました?」

「……難しいな、というのが正直な感想だ」

「まだ判断するには情報が足りない、という事でしょうか?」

 

眉間に皺を寄せたお悩み若葉ちゃんの言葉を聞いて、首を傾げる。

ですが、どうも違うみたいです。

首を横に振った若葉ちゃんが、少し考えてこちらを見る。

 

「良くも悪くも、千景さんありきというのが、難しいと感じたんだ」

「それは、その……」

「きっと、千草さんはバーテックスを相手に、臆することなく戦うだろう。千景さんを守れるのならば、その命すら捧げられる、のだろうな」

「……そう、ですね。あの人は、きっと」

 

千景さんを守る、その為に戦うのだと語っていた時の、とても真剣な表情。

そして、千景さんの優先順位が一番上だと語った時の、とても優しい表情。

あれは、嘘を言っている人が浮かべられるモノでは無い。

若葉ちゃんも、同じことを思ったのでしょう。

 

「いつも一緒に居る事を考えると、千景さんも千草さんの事を大切に思っている事は想像できる」

「そうですね」

「……2人で支え合える間は、きっと大丈夫だろう。しかし、もしどちらかが大怪我をしたり、命を落とした場合は……」

「……残った方も、戦えなくなる」

「あぁ」

 

郡さん達は、故郷で辛い目に遭いながらも、互いに助け合って今まで生活されていた。

同じ時を、同じ辛さを共有する相手の事を、とても大切に思われているのでしょう。

比翼の鳥、というモノを思い出す。

2羽が互いに支え合わないと飛べない、片方の翼と、1つの眼を持つ鳥。

郡さん達は、まさに比翼の鳥の様に、互いに相手の事を助け、支え、今まで乗り越えてきたのでしょうね。

もしも、そんな己の半身とも呼べる存在が居なくなったら……比翼の鳥と同じく、残された方も何も出来なくなってしまう。

 

「戦う意志については確かなモノだと分かったが、違う問題が分かった。これは、千景さんにも早く話を聞きたいところだな」

「えぇ。ですが若葉ちゃん、千景さんに話を聞くのはまだ先ですよ」

「千草さんからも言われているからな。千景さんが警戒を緩めてくれるまでは待とう」

 

若葉ちゃんの言葉を聞き、頷く。

きっと、一月では足りないくらい時間がかかるでしょう。

ですが、焦って聞きに行ってはいけない。

無理に聞きに行ったら、それこそ千景さんが心を開いてくれるまでの時間が伸びてしまう。

私たちは、2人に酷い事をしない。そう分かって貰うまで、時間をかけて接していくしかない。

 

「……しかし、この事は友奈や土居さん、伊予島さんにも伝えておくべきだろうか?」

「そう、ですねぇ……恐らく、球子さん達もお話をしようと思うハズです。先入観の無い状態で全員が郡さん達と1度お話をしてから、情報を共有したいところですね」

 

球子さんや友奈さんは積極的に関わろうとするでしょう。

杏さんは、球子さんと一緒に行動されることが多いですから、きっと一緒に話をする事になりそうですね。

思慮深い杏さんの感想は気になりますし、球子さんや友奈さんは色々と気を遣ってくれるタイプの人なので、私たちとは違う事に気付いてくれるかもしれません。

そうした情報を集め、今後どう接していくか決めたいですね。

 

大社には……真鍋さんにはお伝えするのは確定でしょう。

御二人の事について最も詳しいようですから、何か聞けるかもしれません。

ただ、上層部までこの話を持っていくかどうか……悩みますね。

やることも、考える事もとても多いですが、頑張らないといけません。




香川組と郡姉妹の絡みとなりました。
今後数話を使って、原作キャラと関わらせつつ本作の郡姉妹について掘り下げられればと思っています。

冒頭にも書かせて頂きましたが、アンケートを設置させて頂きました。
気軽に投票して頂ければと思います。

千草ちゃんの勇者服、色はどうしたら良いと思いますか?

  • 赤系(姉妹で似た色に)
  • 西暦組と違う色(ゆゆゆ組と被るのは可)
  • 西暦組、ゆゆゆ組と被らない色
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