暑いのは本当に駄目で、体力が削られてしまい……何度か寝落ちして、変な所をクリックしたのか打ち込んでた文章が消えてたりしてました(泣
私、日本の北側出身なのですが今は東京に居まして、まだジメジメとした暑さに適応しきれていません……辛いです。
千草ちゃんの勇者服の色、およびモチーフの花については、大体『これにしよう』という案は決めました。
早くお披露目したいのですが、まだ先になってしまいそうです……
「では千草様、こちらの問題は解けますか?」
「はい。この問題の場合は、まずは……」
私が四国に来てから、おおよそ2週間。
香川に勇者が全員揃ってから、一週間が経過した。
この1週間の間で、他の人の事が少しずつ分かるようになってきた。
例えば、若葉ちゃん。
ちょっと『固い』人みたいだけど、抜けている部分もあって、武術の心得があるからそっちで話が出来る。
真面目で、誰かの為に……ううん、正確には違うかな?
あの日に犠牲となった人たちの為に戦う、そういう意志。
ちょっと危ないような気もするけど、戦う意志がとても強い人だ。
例えば、タマちゃん。
元気いっぱいで、見ているだけで元気を貰える人。
周りを気遣う優しさも持っているし、結構鋭い観察眼を持っているみたいなんだよね。
私たちの中で一番小さいけれど、もしかしたら一番人として凄いかも、って思える人だね!
そんな感じで、皆の事が少しずつ分かってきた。
分かってきた、んだけれど……他の人と比べて、分かる範囲が少ない人が居る。
「……これで、どうでしょう?」
「正解です。途中式を含めて、しっかりと理解されているみたいですね」
黒板の前に立つ、すっごく綺麗な黒髪の人。
郡千草ちゃん。頭が良くて、この1週間の中であてられた問題は1問も間違っていない。
落ち着いた人で、妹の千景ちゃんととても仲が良いみたい。
……あとは、自己紹介の時に話してくれた事しか、まだ分からない。
千景ちゃんも同じだ。
落ち着いた、と言うよりは、とても静かな人、みたいかな?
千草ちゃんと一緒の時は明るい表情も見せてくれるけど、千草ちゃんが居ない時には1度も笑っている所を見た事が無いんだよね。
千景ちゃんも、これ以外には自己紹介の時に話してくれた事しか分からない。
「……あと数分で時間となりますし、早めに終わりましょうか。それでは、今日の授業はこれで終了となります」
「先生、ありがとうございました」
うーん、もっと2人の事を知りたいな。
若葉ちゃんもタマちゃんも、杏ちゃんもひなたちゃんも、少しずつ仲良くなれている。
けれど、2人だけは、2人だけで完結しちゃっている。
きっと、向こうから来るのを待っていたら、何時まで経っても会話せず終わってしまいそう。
そう思ってしまう程に、こっちに興味が無いように見える。
いや、興味が無いというと正確じゃないかなぁ?
好意的な興味じゃない、って言うのかな……警戒する相手、として見られてるみたい。
どうしようかな……
「……友奈。友奈!」
「ふぇっ?若葉ちゃん?どうしたの?」
「どうしたの、も何も……授業が終ってずっと、ボーっとしていたから声をかけたんだ。大丈夫か?」
「友奈さん、熱でもあったりしますか?……うーん、熱がある訳ではない、ですね?」
「ご、ごめんごめん!ちょっと考え事してただけで……」
「そうか?」
若葉ちゃんの声で、意識が現実に引き戻される。
何時の間にか、授業は終わったみたいだ。気付かなかったなぁ。
ひなたちゃんが私のデコに手を当てて熱があるか確認してくる。勿論熱は無いよ。
キョロキョロと辺りを見渡すと、タマちゃんと杏ちゃんが何かについて話をしているのが見える。
千景ちゃんと千草ちゃんは……あれ?
「千草ちゃんと千景ちゃん、もう帰っちゃった?」
「今日は部屋でゲームをする、という話はしてたが……」
「そうですね。それ以上詳しい事は知りませんが」
そっか、考え事してる間に、もう行っちゃったかぁ。
ションボリとしてると、私たちが集まってるのに気づいたのか、タマちゃんと杏ちゃんもこっちに来る。
「千景と千草って単語が聞えたんだけど、あの2人について話してるのか?」
「実は今、タマっち……先輩と一緒に、その事について話してたんです」
「2人も?」
「実は、タマと杏は昨日あの2人と街を歩いたんだ!」
えっ!?
あの千草ちゃんと千景ちゃんの2人と一緒に!?
私と、若葉ちゃんとひなたちゃんも一緒に驚いた表情でタマちゃんを見る。
凄く得意げな表情で、腕を組むタマちゃん。
「と言っても、最初から一緒に歩いてた訳でないんですけどね」
「でも杏。あの2人を誘って、断られなかったのは本当だぞ!」
「それはそうだけど…」
「凄いねータマちゃん」
「そうだろうそうだろう、もっとタマを称えタマえ」
実際、あの2人を誘って断られなかったのは凄いと思う。
「それで、友奈達は何を話してたんだ?」
「実は、私がちょっと考え事してたら、それをボーっとしてるって勘違いされちゃって」
「んで、その考え事が千景と千草、って事なんだな」
「そうなの。その、2人の事をもっと知りたいなぁって思って」
「なるほどなぁ」
タマちゃんが、うーんと考え始める。
そんな姿を見ながら、杏ちゃんが口を開いた。
「……タマっちと話していたんですけど、あの2人とは無理に距離を詰めるのは良くないとは思うんです」
「無理に、とは?」
「その……昨日一緒に行動した時に改めて思ったのですけど、千草さんも千景さんも……特に千景さんが、周りを凄く警戒されてるな、って」
「千草とはそこそこ話が出来たんだけど、千景の方はあんまりでな。向こうが警戒心を緩めてくれないと、どうしようもなさそうっていうのがタマと杏の考えだなー」
「ふむ、そうか……」
実際に2人と話をしたというタマちゃん達。
その話を聞いていると、若葉ちゃんが会話に混ざる。
「実は、私とひなたも千草さんと話をした事があってな」
「そうなんだ?」
「あぁ。少し聞きたい事があって、話をしたんだが……千草さんから、千景さんと話すのは暫く待ってほしいと言われたんだ。人見知りな事もあるし、新しい環境に慣れる時間を作って欲しい、とな」
「ふんふん」
自己紹介の時にも、千草ちゃんが言ってたよね。『人見知りしやすい』って。
……でも、あの時の千景ちゃんは何と言うか……人見知りとは違う理由で、手が震えていたように見えたんだよね。
「うーん……やっぱ、私も2人と話をしてみたいなぁ」
「そう、ですねぇ……私たちの考えを纏めると、踏み込み過ぎない程度なら会話をしてみるのは大丈夫、という感じでしょうか?」
「千景さんについては特に気を付けて、というのも付け足せば、大丈夫だろうか?」
「タマはそれで大丈夫だと思うぞ」
「そうですね。あと、2人一緒にか、千草さんだけの時に話しかけると良いかと」
「なるほど……うん、私、ちょっと話しかけてみるよ」
皆からの話を聞いて、『やっぱり話をしてみたい』と考えが纏まる。
無理に距離を詰めない様に、でも、相手の事を少しでも知る事が出来るように。
難しいかもしれないけれど……それでも。
私は、2人の事が、知りたいな。
さて、と。
「どんなことを話題にすれば良いかな?」
そんな事を呟いていた。
殆ど知らない相手に話しかける。
その時、何を話題にして話しかければいいだろう?
「若葉ちゃん達は、自分から話しかけたんだよね?」
「うむ。確かにそうだが……私と同じ内容で話しかけるのは無理だろう」
「そうなの?」
「あぁ。なにせ、『何故バーテックスと戦うのか?』だからな」
『『『えぇ……』』』
タマちゃん、杏ちゃんと3人で同じ反応をしてしまう。
そんな私たちを見て、ひなたちゃんは苦笑い。
「千草さんの希望で内容を話す事は出来ませんが……少し千草さんの事を知る事が出来ました、とだけ」
「まぁ、そういう事だ。なので、私の事は参考に出来ないぞ」
「そっかぁ」
何と言うか、真面目な若葉ちゃんらしいというか……
さて、そうなるとどうしようかな?
皆でうーんと悩んでいると、タマちゃんがポンと手のひらを叩く。
「友奈と千景、千草は出身地が違うんだ。地元の話とかはどうだ?」
「あ、それは良いかも!」
「だったら、前の学校の話などもどうでしょう?」
「香川に来る前の話、か。確かに、話題としては適切かもしれないな」
タマちゃん、杏ちゃん、若葉ちゃんの言葉に頷く。
そうだよね、違う場所から来ているんだし、前住んでいた所の話をするのは可笑しくないよ。
なんで思いつかなかったんだろう?
話題も決まったし、早速行こう、と思って……
「そ、そう言えば、御二人の趣味って、なんなのでしょう?」
ひなたちゃんの意見に、皆で首を傾げる。
若葉ちゃんは趣味と言って良いのか分からないけど居合がある。
タマっちは登山を含めたアウトドア系、杏ちゃんは読書が好きだと公言している。
ひなたちゃんは……若葉ちゃんの写真を撮る事、なのかな?
ただ、2人の趣味は確かに知らないなぁ。
「そう言えば、何なんだろうな?ゲーム屋に居たし、やっぱゲームか?」
「千草さんは読書の可能性もあるよね?」
「恋愛物はあんまり読まないってだけで、他のジャンルで結構読んでるのかなぁ…千景は冒険物とか読むらしいぞ?」
「そう、なのか?2人の雰囲気からしたら、意外だな……ミステリー小説とかを読むのかと思ったが」
「冒険物かぁ……面白い本を知ってたら、教えて貰おうかな?」
そんな事を話しながら、ふとひなたちゃんの方を見る。
どこか焦ったような、そんな表情。
……どうして、そんな表情を浮かべているんだろう?
気になるけれども……ここは、追及するべきじゃない、かな?
話題を逸らした、って事は……ひなたちゃんは何かを知っているんだろうけど、他の人には知って欲しくない事、なんだよね?
なら、聞かないでおこう。
「地元の話よりも、そっちの方が気になるなぁ」
「よし、友奈!ちょっと聞いてみてくれ!」
「うん、聞いてみるよ」
また、チラッとひなたちゃんの方を見る。
どこか安心したような表情だ。
……うん、今は、ひなたちゃんの浮かべた表情について、考えないでおこうかな。
その方がきっと、今の穏やかな雰囲気を壊さないだろうから。
皆と別れて、寮へと向かう。
趣味について、という話題で話しかけるのは決まった。
けれど……2人は今、ゲームで遊んでいる、のかな?
うーん、今話しかけに言っても良いのかなぁ……
どうしよっかなぁ、と考えていると、もう寮に着いちゃった。
「んー……行ってみるだけ行ってみて、断られたら後日改めて、かな」
ここまで来ちゃったし、まず声をかけてみよう。
それで駄目だったら、また違う日に声をかけてみよう。
そう決めて、千草ちゃんの部屋をノックする。
千景ちゃんが千草ちゃんの方に寄っていく光景を何度も見かけているから、千草ちゃんの部屋に居ると思ったからだ。
3度ノックして少し待つと、ドアが開かれて千草ちゃんが出てきた。
「あら、高嶋友奈さん?」
「こんにちは!」
「えぇ、こんにちは。どうかしたの?」
「えっと……食事会以来、あんまり話をした事、無かったでしょ?だから、お話したいなーって」
「そう……少し、待ってて貰える?」
「うん!」
千草ちゃんは、千景ちゃんよりも話しやすいって聞いてたけど、本当みたい?
少なくとも、私の事を完全に警戒している、って訳じゃないみたい。
待っててと言ったのは、千草ちゃんに大丈夫かどうか聞いてみてくれるのかな?
待つ事数分、千草ちゃんが戻ってくる。
「待たせてしまって、御免なさいね。入って」
「良いの?」
「えぇ。どうぞ」
「それじゃあ、お邪魔しまーす」
許可を貰って、部屋の中に入る。
私の部屋と比べると……ちょっと殺風景な感じがする。
小物が全然ないみたい。ゲーム機とゲームソフトが数本だけで、あとは大社が用意してくれた家具だけ。
そんな部屋のベッドに、千景ちゃんが腰掛けていた。
「こんにちは!」
「こ、こんにちは……」
「急に来てゴメンね?」
「い、いえ、謝る事じゃないわ……それで、話って?」
うーん……警戒されてるなぁ……
人見知り、って聞いたけど、やっぱり違う様に見えるんだよね。
何と言うか……怖がられている、のかな?
いや、それだけだと人見知りとあまり変わらないんだけど……
なんだろう?
あ、いけないいけない。今はそこを深く考えるよりも、やらなきゃいけないことがあるよね。
「2人の事をもっと知りたいな、って思ったんだ」
「私たちの、事を……何を、知りたいの?」
睨むように、千景ちゃんが私の事を見る。
その眼には、今まで見た事が無いような、暗い何かが宿っている様に見える。
「2人の趣味、かな?ほら、私たちって、出身地位しか相手の事を知らないでしょ?」
「しゅ、み……そんな事の為だけに、来たの?」
「そんな事、なんかじゃないよ?同じ教室で過ごす大切な仲間の好きな事なんだよ?大切な事だよ!」
「……そ、そう、なの?」
「うん!」
私の言葉に、千景ちゃんは戸惑いを隠しきれていないみたい。
……そんなに、戸惑うような事を言ったかなぁ?
首を傾げると、千草ちゃんが会話に混ざる。
「大切、ね……それじゃあ、貴方の事も、教えてくれるかしら?」
「私の事?」
「えぇ。趣味を話すって、ちょっと恥ずかしくてね……良いかしら?」
私の趣味、かぁ……
……思えば、誰かに自分の事を話すのって、あんまり無いなぁ。
相手の話を聞くばっかりで……
でも、今は、話さない方がきっと気まずい雰囲気になりそう、だよね。
「……うん、良いよ。じゃあ、私から話すね。私ね、趣味は……武道、なのかな?少なくとも、身体を動かすのは好きだなぁ。後ね、美味しいモノを食べるのも好きだよ」
「武道?そうなの?」
「うん。若葉ちゃんとは違って、剣道や居合じゃなくて、格闘の方で」
「へぇ……美味しいモノを食べる、って言うのは、この間のうどんもとても美味しそうに食べてたものね」
「あはは……アレは美味しかったよねぇ。また皆で食べに行きたいなぁ」
「……えぇ、そうね。それは良いかも」
何かを探るような、千草ちゃんの目つき。
千景ちゃんの様に、怖がっている訳ではなさそうで。でも、警戒はされている。
……うーん、なんでだろう?
「千草ちゃんの趣味は、何?」
「私は……そう、ね。ゲームや読書は好きよ。あとは……料理、かしら?」
「料理出来るの!?すごーい!」
「出来る、とは言っても、多少出来るってだけよ……そうなると、趣味とは言えないかもしれないわね」
「でも、凄いなぁ。私、ちょっと調理実習でやったり、家族の手伝いをしたくらいだもん」
「……調理、実習、ね。そう言えば、そんなのもあったわね」
どこか遠くを見る千草ちゃん。
懐かしむような表情なら分かるけど、その表情は『苦々しい』としか言えないモノで。
……何か、嫌な思い出でもあったのかな。
なら、余り思い出させないであげよう。
「じゃあ、千景ちゃんは?」
「私、は……ゲーム、かしら」
「千景はね、ゲームがとても上手いのよ。ゲームに関しては、いつも助けて貰ってばかりだし、負けてばかりよ」
「そうなんだぁ!」
「ね、姉さん……でも、それくらいしか、無いわね。読書もそこまでだし、料理はからっきしよ」
千草ちゃんに褒められた千景ちゃんは、とても嬉しそうな表情を浮かべる。
直ぐに顔をプイとそむけられてしまったけど、一瞬見せたその表情は、とても可愛かった。
「そんなに凄いって聞くと、見てみたいなぁ」
「……他人に見せられる程のモノじゃないと思うけれど」
「そうなの?」
「えぇ……そもそも、姉さん以外に見せた事がないから、分からないけど」
「その唯一知ってる千草ちゃんが、とても上手って言ってるんだもん、きっと凄いんだよ!」
「……そう、なのかしら」
首を傾げる千景ちゃんを見て、ふと思う。
千草ちゃん以外に見せたことが無い、と言ってた。
……大人しい雰囲気と、インドアな趣味が合わさって暗い人だと思われて、イジメを受けていた、のかもしれない。
そう考えると、今の発言も、人に怯える理由も、辻褄が合うんだよね。
……そう仮定して、話をする事にしよう。
「もし良かったら、見せて貰えないかな?」
「……えっ?」
「私もゲームはする事あるんだけど、あんまり上手く出来なくて……他の人がどんなプレイをするのか見たら、上手くなれるかなぁって」
「……ゲームの腕は、やり込んだ時間で上がると思うのだけれど」
「そうかもしれないけれど……お願い!」
パンッ、と手を合わせてお願いしてみる。
その音にビックリしたのか、目を丸くしてこっちを見る千景ちゃん。
そんな私達を見て、聞きに徹していた千草ちゃんが会話に入ってくる。
「なら、千景と私の対戦を見てもらいましょう。参考になるかは分からないけど、ね?」
「……姉さんが良いのなら、私も良いけれど」
「フフッ……高嶋友奈さん、好きな方の画面を見てて」
「じゃあ、まずは千景ちゃんから!」
千景ちゃんの斜め後ろ、こちらを意識し過ぎないように少し距離をおいて座る。
携帯ゲーム機の小さい画面は、ちょっと見えにくいけれども、千景ちゃんを警戒させない事の方が重要だからね。
「格闘ゲームをやるけれど、高嶋友奈さんは経験は?」
「ちょっとやったことがある程度、かなぁ……あ、そうだ、千草ちゃん」
「どうかしたの?」
「その……フルネームは、止めて欲しいなーって思って」
ふと、気になったので言ってみる。
フルネームで呼ばれると、どうしても距離が遠く感じちゃう。
「……そう、ね。友奈さん、で良いかしら?」
「うん!千景ちゃんも、呼びやすいように呼んでね!」
「え、えぇ……高嶋さん」
フルネーム呼びじゃなくなって、少しホッとする。
少なくとも、これを拒否される程拒絶されてないんだ、って分かったからかな?
「さて、と。この格闘ゲームは知ってる?」
「あ、私の持ってるのと同じだよ!」
「そう、それなら良かったわ。私はこのキャラをメインで使ってて……」
「……私は、このキャラクター」
持っているゲームだから、どんなキャラクターなのかも分かる。
千草ちゃんのキャラクターは、一発一発が軽いけど、コンボが繋がれば一気に相手の体力を削れるタイプのキャラクター。
対する千景ちゃんのキャラクターは、設置などを駆使した難しいキャラクターだ。
「……御免なさいね、友奈さん」
「えっ?」
「解説とか、そんな事は出来ないわ……全力で、やるから」
「このゲームを含めて、対戦する場合は、全力よ」
「そう言う事なの……一戦終わるまでは、何もしゃべらないわ」
「そ、そっか……」
今まで、一度も見た事の無い、真剣な表情で。
私の方に一度も視線を向けずに、2人がそう言う。
キャラクターの選出が終わり、対戦が始まる。
『ラウンド1、ファイト』
システムボイスが流れて―――――真剣勝負が、始まる。
時に見合い、牽制し合う2人。
指の動きは私なんか比較対象にならない程に速く正確で。
1回でもヒットすればコンボで体力を持っていける千草ちゃんのキャラを、千草ちゃんのキャラクターが先の行動を読んで技を設置し、近づけさせまいとする。
その設置技の裏をかいて千草ちゃんはジリジリと距離を詰める。
千草ちゃんのキャラクターが、1回ダッシュすればリーチに相手を捉えられる距離まで近づいた。
けど、そこにたどり着くまでに半分の体力を持っていかれていて。
対する千景ちゃんのキャラクターは、1度も攻撃を喰らっていない。
千草ちゃんと千景ちゃん本人を見てみる。
千草ちゃんの方は真剣そのものといった表情、汗すらかく程に集中しているみたいで。
千景ちゃんは……表情は真剣だけれど、千草ちゃんよりは余裕がありそう、かな?
画面の方に視線を戻す。
少し目を離した隙に、状況は動いていたようだ。
設置技を抜け、ついに千草ちゃんのキャラクターの射程圏内。
怒涛の連撃でヒットを狙う千草ちゃんと、その攻撃を的確に防ぎ時間を稼ぐ千景ちゃん。
残り時間はあと10秒。
防ぎきれば千景ちゃんの勝ち、1度でもコンボを決められれば千草ちゃんの勝ち、といった所。
それをどちらも理解していて、だからこそこの数秒の攻防が激しくなる。
「ッッ!」
ついに、千草ちゃんの攻めが守りを抜けてヒットする。
そのままコンボに移行しようとして―――
『タイムアップ』
無常なタイムアップ。
あと数秒あれば、千草ちゃんの勝利だったかもしれない。
けれど、その数秒が、遠い。
「………届かなかったわね、また」
「……今回は、今までで1番危なかったわ」
集中状態から解放され、全身の力を抜いて穏やかに会話する2人。
そんな2人の言葉で、そのプレイに魅入っていた私の意識が現実に帰ってくる。
「す、凄いよ2人とも!プロの人みたい!!」
「そ、そんな事ないわよ、友奈さん」
「うぅん、本当に凄かったよ!!格好良かった!!」
「……そう、かしら?」
「うん!」
首を傾げる2人に対し、凄かった、恰好良かったと何度も伝える。
「……まぁ、それはそれとして。参考には、なったかしら?」
「うーん……上手すぎて、真似は出来そうにないかなぁ……」
「そう?でも、私から言えるとしたら、何事も練習すれば上達するはず、って事かしら」
「それもそうだね。私も練習すれば、2人みたいに上手くなれるかな?」
「それは、貴方次第ね」
「……じゃあ、今度練習に付き合って貰えない、かな?」
「……私たち、が?」
「うん!」
名案、と思い、お願いしてみる。
ゲームを通じて、2人の事を知る事が出来るかもしれない。
そういうのを除いても、一緒に遊んでいけば、少しずつでも仲良くなれるかもしれない。
そう思ったけれど……どう、かな?
「千景は、良いかしら?」
「……………姉さんが、良いのなら」
「……そう」
千景ちゃんの言葉に、千草ちゃんが少し悲しそうな表情を浮かべる。
ほんの一瞬だけど、確かに浮かべたその表情は、なんだったのだろう?
「……それじゃあ、お互いの予定がある日にでも」
「う、うん!……今日の次は、何時頃になるかな?」
「そう、ねぇ……明日は何も無ければ千景と街を散策しようと思っていたから、それ以降かしら」
「じゃあ、明後日から、私の予定が空いてる日に2人の予定を聞くよ。2人の予定が空いてたら、その時にお願いしても良いかな?」
「えぇ、分かったわ」
提案を受け入れられて、ホッとする。
次の予定が何時になるかは分からないけど、完全に拒否されなかったというだけでも、今は十分。
「……今日は、もう自分の部屋に戻るね!」
「あら、そう?」
「うん!」
私の言葉に、千草ちゃんが意外そうな反応をする。
時間的には、まだまだ早いとは思う。
けれど……千景ちゃんが、疲れている様に見えたんだ。
今日は、少し話が出来て、次も話す機会が作れる可能性が出来た。
それだけで満足。
「それじゃあ、また今度ね!」
「えぇ、また今度」
「……さようなら、高嶋さん」
「またね、千草ちゃん、千景ちゃん!!」
「……姉さん」
「どうしたの?」
「……『またね』って言葉、最近良く聞くわね」
「そうね」
「……遊ぶ約束なんて、いつ以来かしら……?」
「……『あの頃』より前、だった筈、ね」
「そう、よね」
高嶋さんが出た後、姉さんと話す。
今からだいぶ前、もうおぼろげにしか思い出せない頃の話。
まだ、私たちが蔑まれる存在になる前に、まだ友達と呼べる人が居た頃に、その友達と遊ぶ約束をした事も、あったかしら。
あの村での、虐げられ蔑まれ続けた日々に飲み込まれて、『だった筈』『あったかしら』と付けなければならない程、確証を持てないけれど。
「……姉さん」
「うん」
「……怖いわ、私」
「……うん」
「悪意の無い接触が、敵意の無い眼差しが……私たちを害さない人が、怖いわ」
「……そう、よね。私たちの周りは、そうだったもの」
私の言葉に、姉さんが頷く。
そう。私と姉さんがまだあの場所に居た頃は、周りは害意、敵意、嫌悪感を隠さない人ばかりだった。
この間の土居さんといい、今回の高嶋さんといい、それら悪感情を持たずに接してくる人なんて、もう何年も会っていない。
だから、怖い。
……だから、思う。
「……姉さんは、なんで、あえて接触しようと思うの?」
「千景……」
「怖いのが同じなのは、分かるわ。なのに、それを押し殺してまで……どうして?」
姉さんが恐怖を感じているのは、分かる。
他人には分からないかもしれない。でも、私には分かる。
上手く隠していても、僅かな仕草や表情に現れる『それ』を、見逃さない。
だけど、それを押し殺して、あえて接触する事を選んでいる。
……逃げても良いのに。あの場所では、逃げてきたのに。
「……千景には、分かっちゃうのね」
「えぇ。姉さんの事だから」
「……千景、私は―――」
プルルルルッ、と携帯から音がする。
姉さんが机の上に置いていたスマホから、音がしている。
表示されているのは、『真鍋さん』の文字。
姉さんが、スマホを手に取って、電話に出る。
「はい、もしもし。真鍋さん、ですよね?……はい、郡千草です」
姉さんは、あの時私に何を言おうとしていたのだろうか。
それについて、考えようとして……
「はい、はい……えっ?」
姉さんが、電話越しに伝えられた『何か』に対して、目を見開くのが見えた。
「……それは、本当、なんですね?……はい、はい……そう、なんですね」
困惑、しているのが分かる。
それと共に見えるのは……驚きと、恐怖、だろうか。
姉さんの事なら大抵分かる。
でも、これらの感情が露わになる程の『何か』とは、一体何が伝えられているのか。
「………分かり、ました。千景には、私から。後でまた、電話をかけ直しても、良いでしょうか?……はい、ありがとうございます。それでは、また」
電話が、終わったらしい。
未だに困惑した表情のまま、私の方を向く。
「姉さん、なにがあったの?」
「……千景。落ち着いて聞いて欲しいの」
「……うん」
「……母さんが、見つかった、って」
高嶋ちゃんとの絡み回となりました。
高嶋ちゃんを書くのは中々難しいですね……『なんか高嶋ちゃんらしくない』と思われましたら、私の力不足です、申し訳ありません。
もっと原作キャラについて勉強しないとなぁ……と思う日々です。
そして、次回はオリジナル回、『あの人』との話となります。
色々悩んだ結果、どういう話にするかは決めましたが……オリジナルな展開となるので、受け入れて貰えるか不安です。
不安でポンポン痛くなってきますが、決めた事なので頑張って書いて行きたいと思います。