【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ   作:虫野律

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多分、一発ネタ的な駄文。


第一章 原作知識があればハンター試験なんてチョロいよね
テンプレ的狩人転生の第一歩!


『雑魚専wwww』

 

『じょ、冗談だよぅww』

 

 深夜2時を回った頃、6畳の自室で1人の青年が某巨大掲示板にて、ハンターハンタースレに書き込みをしていた。

 

【雑魚専】ヒソカの強さ検証スレ【最強(笑)】

 

『雑魚キャラ瞬殺! 僕100点!』

 

『旅団(裏方)惨殺! 旅団だって敵じゃない!』

 

(ぶくくwwヒソカとか強者ムーヴかましてるだけの噛ませキャラでしょ)

 

 どうやら青年は、ヒソカなるキャラクターを扱き下ろしているようだ。ニートが暇潰しに架空の人物をバカにする。なんと悲しい光景だろうか。

 

『いやでも、バンジーガムは応用力があるし、ヒソヒソも強化に近い系統だし、弱いってことはないんでない?』

 

 ヒソカを擁護する書き込みがあったようだ。青年は直ぐにレスを返す。

 

『強化に近いっつっても本職の強化系未満だろ。バンジーガムだってインフレしてきた今となっては一発芸みたいなもんだwwwドッキリテクスチャ? 知らない子ですねwww』

 

 あくまでヒソカを認めないつもりらしい。ヒソカに親でも殺されたのだろうか。青年は書き込みを続ける。

 

『戦闘狂? 変態? ただのファッションでしょwwあ、でも子供好きのペドってのはガチもね。子供は自分より弱いからwww』

 

 余程ヒソカが気に入らないらしい。能力検証スレで人格にまでケチをつけ始める。

 青年のあんまりな書き込みに対して不思議なレスがつく。

 

『そこまで言うならお前が倒してみろよ』

 

(はぁ? なに言ってんだこいつ?)

 

 青年の反応は尤もだ。漫画のキャラを倒せとは意味不明である。

 

 しかし、唐突に世界が暗転する。

 

(! なんだ? 何が起きた?)

 

 次の瞬間には青年は窓もドアも無い小さな部屋にいた。中央には木製のテーブルが置かれている。部屋の隅には観葉植物がある。

 テーブルの上にはA4サイズの紙が1枚と抽選でよく見るガラガラがある。回して小さな玉が出る装置だ。

 ここに至り青年は嫌な予感が膨れ上がる。

 

(まさかな。そんなことって……)

 

 ニート歴の長い青年は、ネット小説もそれなりに嗜んでいた。昨今の異世界転生ものの流行も当然知っている。

 A4の紙を手に取る。文章が書かれている。

 

『やぁ。幸運なるニートよ。ようこそ転生の間へ。私は君の豪気な発言に感動した! どんな強者も恐れぬ物言い。ゆとりだ、さとりだと言われている最近では君のような強気な若者は随分と減ってしまった。そんな中、君は一際強い輝きを放っている! 私はそんな君に一つのプレゼントを送ろうと思う。それは……』

 

 青年の手が震える。予感は確信に変わりつつある。

 

『天国へのプレミアムチケットだ! どう? 嬉しいだろ。あ、ちなみに極めて簡単な条件がある。なーに心配いらないよ。君ならすぐに達成出来るさ。その条件は……』

 

 喉が渇く。何か飲み物はないか。しかし、そんな物は無い。

 

『転生後1年以内にヒソカを倒すこと! ね? 簡単でしょ? ちなみに失敗したら地獄行きだけど、君からすればリスクなんて無いよね。いやぁ、実についてるよ、君は。そこに抽選機があるよね。私はいらないと言ったんだがね。世界のパワーバランスがどうのと同僚が煩くてね。君にはランダムでハンターハンター世界での肉体、能力を与えることになっている。すまないね。余計な手間をかけさせてしまう。それじゃ、よろしく頼む。あ、10分、何もしないと地獄に行くことになるから、早くした方がいいよ。ま、どっちにしろ地獄行きだろうけどwwじゃあ、地獄へのカウントダウンよーいスタート!』

 

 仕掛人からのメッセージを読み終わった途端にテーブルに砂時計が出現する。サラサラと冷酷に時を刻む。

 

「クソ! 何だよこれ!」

 

 まさかの事態に悪態をついてしまう。地獄行き。地獄がどんな場所かは分からないが、きっと今の快適なニート生活よりずっと酷いに決まっている。そんなのはごめん被る。

 青年はヒソカをネタにしていた。だが、やはり本音ではその凶悪さと武力を認めていたのだろう。勝つことなどほぼほぼ不可能。であれば、焦るのも必然だ。

 

(何か抜け道はないか?)

 

 青年は久しく使っていなかった脳細胞を活性化させる。だが、普段やらないことをやっていきなり出来る道理はない。あーだのこーだの考えているうちに3分経過してしまう。いつもはカップラーメンの3分も長く感じるのに。

 

(……念能力。チートクラスの念能力を引くしかない)

 

 結論は出た。所詮は運任せだが致し方無い。

 突然A4の紙に文字が浮かび上がる。

 

『PS.念能力の系統や適性は今の君の人格や経歴によって決定される。よかったな、これでイージーモード確定だ。地獄に簡単に行けるよ』

 

 僅かな希望も掴み損ねてしまう。はぁ、とため息をつく。

 

(あーあ、どーしょーもねーな)

 

 思い返せば自分の人生なんていつもこんなもんだ。いつものことだ。この程度。

 青年の中である種の熱が急速に冷めていく。同時に不安定だった感情が鋭く洗練されていく。悪く言えば諦めて開き直ったのだ。しかし、この場面でそれは最善の一手。冷静さを取り戻した青年は生き残る可能性──蜘蛛の糸──を正しく認識するだろう。まだ、青年は死んでいない。時間は5分以上残っている。

 

(ガラガラを回そう。くじ運は悪い方だけど……)

 

 青年がハンドルに手を触れた瞬間、またしてもA4の紙に文字が追加される。

 

『抽選は全部で7回。抽選で決まったこと以外は基本的に今の君のままだから、悪しからず』

 

 そもそも何を決める抽選なのか。説明のおざなりさに渇いた笑いが出る。

 

(やるか)

 

 一回、二回…………七回。

 

 7つの玉がテーブルに並べられた。すると、玉が光を放ちテーブル上にホログラムが出現する。人と文字が空中に浮かんでいる。

 

『性別・女、年齢・21、容姿・投影の通り、身体能力・下の中、念習熟度・新人以上中堅未満、スタート地点・例の定食屋内エレベーター、特殊技能・身体精密操作』

 

 ホログラムに映し出されているのは、ピンクのストレートのロングヘアーが特徴の女だ。服装は今の青年と同じグレーのスウェットを着ている。

 

「これは……」

 

(色々とツッコミたいが、それは一先ず置いといて詳細は分からないのか)

 

 青年がスマホにするように空中の文字にタッチする。ウィンドウが出現し詳細が表示される。

 

「……」

 

 しばし、黙考。可能性は限りなくゼロに近い。一年も持たずに死ぬことになる。そうなっても何ら不思議ではない。だが……。

 

『残り30秒で~すぅ。準備はいいかにゃぁ?』

 

 突然アナウンスが流れる。女のやや鼻に掛かった甘ったるいアニメ声だ。萌えキャラに良く馴染みそうだ。

 

 青年は素早く準備を整える。整えると言っても所謂、心の準備を整えることが肝だ。

 

(さぁ、何時でも来い)

 

 ニートに似つかわしくない精神力。アンバランスな能力。それが青年のパラメーターだったが、これからは少しだけ違う。

 

 また、世界が暗転する。

 

 

 

 

 ヒレ肉の香ばしい匂いが食欲をそそる。本来ならそうなるはずだが、彼、改め、彼女にとって今はそうではない。

 サービスで提供されたであろうお冷やをぐっと煽る。緊張から喉が渇いていたのだ。水分が喉に心地よい。

 

「本当に転生したのか」

 

 自らの声にギョッとする。先ほどのアニメ声のアナウンスの声だ。よりによってこんな声か。もうちょいなんとかならなかったのか、と思うも現実は変わらない。

 

(出来るだけのことをしないと)

 

 いくら地下深くと言ってもエレベーターが到着するまで其ほど余裕は無い。出来ることなど、たかが知れている。しかし、やらないよりはマシだろう。そう言い聞かせてやる気を無理ヤリ出す。

 

 

 

 数分後、エレベーターが到着する。ぎぎっと老朽化を主張し、早く降りろ、と扉が開く。

 

 会場では熱気、殺意、敵意、希望等、様々な感情がみてとれる。壁際によって周囲を観察するとしよう。

 彼女の元に1人の中年男性がやってくる。鼻が特徴的な小太りの男──トンパだ。

 

(おー原作キャラ。すげー)

 

 なんだかんだと言いつつ彼女もハンターハンターのファンなのだ。胸が高鳴るものがあるのも事実だ。

 

「よう。あんた新人だろ。俺はトンパってんだ。10年以上も受験しているベテランさ。何か分からないことがあれば聞いてくれよな」

 

 人好きのする笑顔は、成る程、騙されても仕方がない。

 

(ベテラン浪人生ですね。わかります)

 

 彼女はトンパをバカにしているようだ。そんな態度だからこうなっているのに、懲りない奴である。ただ、いつもの調子が戻ってきている。メンタル的にはいい傾向だ。

 

「そりゃ、どーも」

 

「お近づきの印にジュースをやるよ。じゃあ、お互い頑張ろうな」

 

 オレンジジュースだ。底を見てみると何やら加工したらしき跡がある。種を知っていれば何てことはない。子供騙しもいいとこだ。

 

「ぎゃあああ!」

 

 悲鳴が上がる。ヒソカだ。気に入らなかったのか、気まぐれか、奴が他の受験生を屑殺したんだ。

 

(あちゃー。あいつワシより強くね)

 

 指で輪っかを作り覗きながら、おどけてみせる。完全に本調子だ。彼女は本来、何事にもふざけて取り組む輩だ。自分の命と地獄での苦役が控えていてもそれは変わらないようだ。ある意味、鋼のメンタルと言えよう。

 

(ほんじゃ、行きますか)

 

 決意を胸に彼女はヒソカにずんずんと大股で近づきだした。全てを諦めて介錯してもらうつもりだろうか。一体何を考えているのか。

 

(……作戦その一!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一目惚れしました! 付き合って下さい!」

 

 は? ヒソカに告白しやがった。バカかこいつ。淫乱ピンクの奇行に周囲もざわつきだす。

 嘘だろ、あの女。

 イカれてやがる。

 今年諦めようかな……。

 まさに阿鼻叫喚だ。一瞬で場の空気を変えてしまうに留まらず、ライバルを減らすことに成功している。恐ろしい女だ。

 

(事後に寝首を掻く作戦実行だ!)

 

 凄惨な殺傷事件の現場でいきなりの愛の告白。目的を知らなければ淫乱サイコパスにしか見えない。これには流石のモロウ氏も困り顔だ。ヒソカにこんな顔をさせるとは、大した奴だ。

 しかもだ。先ほど、エレベーターの中で何やらボイストレーニングらしき奇声を上げていた成果か、非常に可愛らしい声である。鼻に掛かったうざい声は、鈴を転がすような繊細なハイトーンへ変貌しているではありませんか。詐欺もいいとこだ。

 

(身体精密操作! これで声帯とブレスをコントロールすれば声は変幻自在だ!)

 

 そういう使い方するとは、異能バトル物に喧嘩を売ってやがる。

 

「うーん。気持ちはあんま嬉しくないけど……◇」

 

 そりゃあ、嬉しくないだろうよ。だけど、それは言わないのがお約束ではなかろうか。ヒソカも大概だ。

 

「そんなぁ! 何でも! 何でもしますからぁ!」

 

 ちょっと前までバカにしくさってた相手にこの変わりよう。尻軽クソビッチここに極まれり。

 それにしても、この女、役者である。目薬も使わず、いかにも堪えきれないといったように涙を溜めている。

 

(身体精密操作! これを使えば涙も演技も自由自在!)

 

 だから、異能(ry

 淫乱ピンクの気持ちが通じなかったのだろうか。ヒソカの声音に変化が産まれる。

 

「君、使える(・・・)んだよね。何が出来るのかな?♠️」 

 

(フィッシュ!)

 

 ヒソカは魚である。クソみたいなルアーが余りにもしつこく投げ込まれるから、しょーーーがなく噛みついてやった優しい魚だ。

 

「ここではちょっと……。後で2人っきりの時に、ね?」

 

 ね? の前にうっっっざい溜めを作り、きっっっもい上目遣いでヘドロを吐き出す。もう早く殺してくれ。ヒソカだけが希望だ。

 

「うーん。でも君、果実って言うより生ゴミって感じで美味しそうじゃないんだよね◇」

 

 流石はヒソカ氏である。正鵠を射ている。ささ、いつもの様にスパッとやっちゃってくだせぇ。

 

「うぅ……。ぅぐぅぐ」

 

 とうとう嘘泣きをヤリだしやがった。チートみたいなもんを貰ってるだけあって無駄に上手いのがむかつく。 

 

「ぅぐ。じゃぁ、少しだけ……」

 

 そう言って、ヒソカに耳打ちをしようとして身長が足りないせいで不発に終わる。あざとい。あざとすぎる。さっきまで男だったとは思えない。思いたくない。

 

 淫乱ピンクとの絡みを早く終わらせたいと思ったのか、ヒソカはクソビッチに合わせて少し屈んでくれた。

 誰だ、お前? ヒソカにしては優し過ぎる。そういう気分なのかもしれないが、珍しい光景だ。

 

「……! ……だよ」

 

 全てのハンターハンターファンの思いをスルーして女は何事か呟く。

 ヒソカに再度変化が訪れる。

 

「ほう♡」

 

「どう優良物件でしょ?」

 

「嘘じゃないなら付き合ってもいいよ◇」

 

 どんな魔法を使ったんだ。ヒソカを口説き落とすことに成功しそうだ。マジやべー奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、これでいいかな?♡」

 

 突然、ヒソカが愛用のトランプで主人公の鼻を削ぎ落とす。

 

(え?)

 

 数瞬遅れて、熱、そして痛み。

 

「いっぃぃぁ…………!」

 

 少し低めの女の声が響きわたる。

 

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