【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ   作:虫野律

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作者のアレ具合がアップを始めたようです。


第三章 Color
短気は損気ってあれほど言ったじゃないか


「私に鍛えてほしいっていうのは、あなたですか?」

 

 ロリータファッションにツインテールの少女(偽)──ビスケット・クルーガーが微妙な顔で言い放った。

 

 アラタが此度の働きの報酬として要求したのは、ビスケを紹介することだった。

 ファルが師匠を買って出てくれた時に、ファルの能力についても少しだけ聞いた。その中にはオーラを回復させる物もある。

 この時、アラタに電流が走る!

 

 あ、これビスケと組めば、ぼくのかんがえたさいきょうのししょうこんび、が誕生するんじゃ……。

 

 元々、ビスケは適当な理由を付けて紹介させる予定だったのだ。今回の淫獣事件は渡りに船であった。

 

 流石、10年以上一流ハンターとして活動していただけあってファルの顔は広い。というか、ビスケの弟弟子にあたるのがファルという男だ。ビスケと組んでパワーレベリングをしてとお願いしたら、何とも形容し難い顔で快諾(?)してくれた。それがファルという男だ。

 

 何はともあれ、ビスケをペンドラゴン邸に召喚することに成功したのである。

 

 ビスケの問いに大袈裟に頷くアラタ。そして、キレのあるハイスライダーをインハイに投げ込む。

 

「せや! ゴリマッチョおばさんのキモいぶりっ子を是非とも伝授してほしい!」

 

 初手極大魔法(球)ぶっぱはロマンである。

 

「……ファル、あんたの弟子っていつもこうなのかい?」

 

 もはや、取り繕うことを止めたビスケ。ファルが嫌な汗を流がしながら答える。

 

「いや、そういう訳じゃ……」

 

 ファルは自分の言おうとした言葉に首を傾げる。

 

 はて、違っただろうか? 

 

「ないこともないような違う様な……」

 

 歯切れ悪く尻すぼみになってしまう。

 

「どっちよ? まぁ、いいさね」

 

 ビスケはアラタに向き直る。ため息をつく。そこに怒りは窺えない。

 

「あんた、その生き方だともたないわよ? もう少し要領よくやりな」

 

 まぁ、言っても無駄だろうけど。最後にビスケはアラタに聞こえない小さな声でそんな風に独りごちた。

 

(うわーやりづれぇ。そういうノリ要らないんだよなぁ)

 

 アラタは不満顔だ。

 

「そんなことより、私を強化してくれ。勿論、報酬はファルが一括で払う」

 

「おい」 

 

 初耳である。ファルは堪らず、ツッコム。

 

 しかし、無視される。悲しいなぁ。 

 

「そうさね。あんたの場合は……」

 

 ここで日課である感謝のイメージトレーニング100万回を終えたニコルがやって来た。勿論、朝の部が終わっただけで、これから、昼の部、夕の部、夜の部があることは自明である。

 ちなみに、ニコルの手はアラタにより再構築されてニョキっと生えている。匠の技であった(?)。

 

 何はともあれ、完全復活したニコルは元気に修行に勤しんでいる。今は束の間の休憩を取ろうとこの部屋にやって来たのだ。

 入室したニコルは自分をガン見する少女に気が付く。図らずも見つめ合う形になってしまった。

 

 この時、ビスケに電流が走る!

 

 なんという情熱的なオーラ!! 赤き灼熱の意志!! 迷いなき輝きは、上質なルビーのごとく美麗にして妖艶!!

 

「僕の顔に何か付いてますか?」

 

 ガン見してしまっていたことに気づいたビスケは顔を赤らめる。偽美少女(オバサンゴリラ)のそれに需要はない。

 

 アラタはじとっとした視線を送る。

 

「ビ・ス・ケ」

 

「あ、ごめんだわさ」

 

 ごめんと言いつつ、ニコルが気になるのか、チラチラと盗み見ている。

 それでも、一応、アラタの対応もするつもりの様だ。ビスケが気になっていたことを問う。

 

「それで修行だけど、まずはあんたの目的を教えて」

 

(うーん。まぁ、それもそうか。ただバカ正直に言う必要はないよなぁ)

 

「実は勝ちたい奴が居て……。ヒソカ・モロウって言うんだけど知ってる?」

 

「おいマジかよ」

 

 ファルは初耳である。しかし、一瞥もされない。悲しいなぁ。

 

「知ってるわ。……ある意味有名人だわさ。直接会ったことはないけどね」

 

「実は彼氏なんだけどさ、浮気が酷くて……。ついでに男も少年もイケる変態で、お灸を据えたいのよ」

 

 これは酷い。微妙に本当のことを言っているが、まるで現実感がない。出来の悪い3Dアニメの様な違和感がある。

 

 また、ビスケが微妙な顔をする。ビスケにはアラタがどんな風に見えているのだろうか。  

 

「……本当のことを教えたくはない、ということね。まぁ、いいわ。修行を付けてあげる。ただし、私も暇じゃないから短期間だけよ」

 

「ほな、商談成立や!」

 

「じゃあ、早速だけど今の錬度を見せて頂戴」

 

 ここまで口を挟まなかったニコルだが、先程から登場する修行というワードに辛抱堪らなくなった様だ。自分も参加すべく、口を開く。

 

「あのー僕」

 

「勿論だわさ! さ、貴方もこっちに来て!」

 

 ニコルが何か言う前にがっつくビスケ。原石も原石。死ぬまでにニコルを除くとお目にかかれない才気を育成しないなど勿体ない。是が非でも引き込みたいのた。アラタとの扱いの差が凄い。露骨過ぎる。

 

(クソワロタ。ニコルんモテモテやな。地雷女に)

 

 客観的に見てアラタがその地雷女筆頭である。ニコルは泣いていい。

 

「はい。2人とも全力(・・)で練をして。あ、別に鍛錬の成果を見せろって意味じゃなくて、普通に練を見せるんだわさ」

 

 ビスケの言葉に従い、ニコルがオーラを練りあげる。

 

 さて、現在のこの部屋だが、比較的広めの1階の客室である。壁には上質な油絵の具を用いた半世紀前に亡くなった著名な画家の抽象画が風情を醸し出している。一見無個性に見えるソファも魔獣の本革使用の稀少な物だ。その他、ちょっとキモい位、お高い物のオンパレードである。テーブルに置かれたアラタのバッグが格差に咽び泣いているようだ。

 

 精神と時の部屋(セルフ)でワクワクすっぞ(修行)しているニコルの戦闘力は890程。低いと感じるかもしれないが一流プロハンターレベルである。極めて低い素の身体能力ではあるが、補って余りある強靭、苛烈にして大容量のオーラに依って実現している。オーラ量で言えば、超一流の念能力者の数倍に及ぶ。

 

 さて、もうお分かりだろう。ニコルが全力で錬をすると空間が軋む。下手をすると調度品に傷が付きかねない。

 

 しかし、ニコルはできる男だ。各種インテリアを避けるように器用にオーラを展開している。その為、異常な圧を放っているにもかかわらず、静かなものだ。

 

 これにはビスケもご満悦……を通り越して震えている。

 

 なんてオーラ! 敵意を向けられている訳でもないのに感じる恐怖にも通ずる熱! 暴風の様な烈! そして、なんと言っても、それを完全に掌握している技巧! 私ですら難しい繊細かつ正確なオーラコントロール!

 

 ……て言うか、この子、私より巧くない? 

 

 ビスケの理想は自分より強い男である。従って、ぺろりと舌なめずり。ニコルは息をするようにフラグを建てていく。

 ビスケは某ギャンブル狂いの美少女みたいな顔を即刻、止めた方がいい。アラタが不審な動きを見せていますよ。 

 

 カシャリ。

 

 いいの撮ったで! と敏腕ゴシップカメラマンアラタはネタコレクションを収集する。タイトルは「プロハンタービスケット・クルーガー(56)、未成年者へ性的暴行か!?」にしようそうしよう。

 

 ふしし、と笑っていたアラタは急に深刻な顔になる。拾い食いでもして、もとい拾い吸血(?)でもしてお腹を壊したのだろうか?

 

(……ちょっとこのままだと上司の威厳が無くなるってばよ)

 

 だからそんなもの最初から無い。

 

 今度は急に悪どい顔を浮かべる。嫌な予感しかしない。

 

(いいぜ! 全力って言ったビスケがなんもかんも悪い。俺は師匠の言葉に嫌々従っただけ! だからむしろ俺は被害者!)

 

 完璧な理論武装(屁理屈)を完了してしまったアラタは清々しい顔をしている。殴りたいこの笑顔。

 

 集中、集中、集中。アラタは全力で精孔を開いていく。後のことなど知ったことか! とぐりぐりと拡張する。

 

 アラタのただならぬ様子にビスケもつい練をして身構えてしまう。濃厚なオーラが漏れているのだ。念能力者ならば、条件反射で練をしてしまうのも致し方ない。

 

 そして、準備が整う。誰にも邪魔されずに精孔を開くことに静かに集中した場合、アラタはどの程度拡張できるのか? 

 その答えは……。

 

(逝くぜ! 全力全開だぁー!)

 

 1000%開かれた精孔からアラタの暗黒大陸クラスの潜在オーラが一気に解放される。

 

(ヒャッハー! きんもちイイ↑~!)

 

 まず最初に起こった現象は窓がガタガタとポルターガイストよろしく震えだした。次に壁に掛かっていた時価1200万ジェニーの幼稚園児の落書きの様な抽象画が床に落ち、次いでテーブルに然り気無く置かれていた298万ジェニーの硝子細工がパキリと割れる。

 

 これには流石のビスケも顔がひきつる。ネテロが子供に思えてくるオーラ量。確かに、そういう存在も居るだろう。世界は広い。

 だが、それを繊細な高級品満載のこの部屋で躊躇いなくぶっぱなすイカれた頭の奴にこれから修行をつけなければいけないことを考えるとそんな顔にもなるというものだ。

 

 それにアラタのオーラ……。

 

 ビスケは一抹の不安を覚えるが、そんな馬鹿なと思おうとして、ないとは言い切れないような気がして余計に修行が不安になってくる。

 

 まぁ、でも、悩んでいても始まらないだわさ。

 

 ニコルはニコルでやべーけど、アラタはアラタで相当厄介だ。気合いを入れなければいけない。

 

 ビスケは元来の面倒見の良さ、母性により2人を本気で育成することにした。才能、精神性、歪み。まだ、見えていない部分も多いがビスケは2人から目が離せなくなっていたのだ。

 

 さぁ、そろそろ錬を止めさせようか、とビスケが思った時、アラタですら全く予想していなかったことが起きてしまう。

 

『候補から□□を選択してください。音声案内終了後、30秒以内に選択しなかった場合、自動で決定されます』

 

(!!!)

 

 急にアラタの頭の中に響いた声に、オーラを乱される。皆を見る。皆の視線はアラタとアラタのバッグの間を行ったり来たりしている。

 この現象の原因がバッグにあるのだ。それが怪しいオーラを立ち上らせている。

 

(おいおい。こういう感じになるのかよ。しかも、このタイミングで決定するのか)

 

 アラタはこの現象に心当たりがあるようだ。

 

「皆、声が聞こえるか?」

 

「声? 俺は聞こえないが」

 

 ファルが視線を送り、ビスケとニコルに問うも2人は首をふる。

 

(俺だけか。じゃあ、やっぱり俺のオーラに反応して『□□□□』のカード化が解けたんだ。それでオーラの持ち主──所有者である俺に選択させようとしてるのか)

 

 ネテロから貰ったグリードアイランドのカードが起動したんだ。おそらく誤作動に近いはず。常識はずれのオーラの圧に暴発してしまったのだろう。

 

(どうする。選択だけして保存できるならいいが……)

 

『選択終了後、◯◯を1週間以内に開始しない場合は当該□□□□は消滅します。候補は……』

 

(えー。だったら最悪このアイテムは使用しないのもアリか)

 

 ちらりとニコルと、ついでにファルも見る。ファルはともかくニコルの才能ならば、理想に近くなる可能性が高い。少しだけ時期が不確定になるが悪くはない。そもそも、このカードのメリットはとある時期が明確で、計画を立てやすいこと。後は保険的な意味合い。それら以外では特にメリットはない。

 従って、どうしても必要と言う訳ではない。このアイテムはお蔵入り。

 

 それでもいいか、とアラタが思い小さく息を漏らした時、とある人物が候補に挙げられた。

 

『……ヒソカ・モロウ』

 

(! これは……。これは選びたい。しかし、そうするとこのアイテムを利用してのヒソカ戦は遅くとも3ヵ月半後にはしないといけなくなる。でも、この機会を逃すと□□にヒソカを選択できるかは未確定だ)

 

 少しだけ悩む素振りを見せるが、アラタの心はヒソカの名を聞いた瞬間には決まっていた。何故なら、こんなに皮肉の効いた愉快なことって他にない。少なくともアラタにはそう感じたからだ。

 

 きっと彼女もそっちの方が面白そうと言ってくれるだろう。

 

 正確に彼女の心は分からない。でも、今のアラタにはそんな風に思えた。

 

(ヒソカ・モロウ! □□はヒソカだ!)

 

『選択を確認しました。それでは『□□□□』を具現化します』

 

 

 

 

──そして、約3ヶ月の時が流れる。アラタの真の闘いが始まろうとしていた。

 

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