【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ   作:虫野律

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更新が遅いくせにこの駄文。もうダメね。


At The Risk Of One's Life

パドキア共和国北部に位置する荒野。空は夕闇に差し掛かっていた。

 

「……っがぁ!」

 

 道化の右腕が痩せた女の心臓を貫く。桜色の頭髪が風に煽られる。

 

 女にはオーラは残されていない。もはや、選択肢はない。あるのは不可避の死だけ。

 道化が女から腕を引き抜きく。勢い良く赤い体液が吐き出され、土を彩る。

 

「『もう少し、もう少しで何かが分かりそうなのに……』」

 

 道化が独り言を漏らす。その声は酷く不安定な二重奏。悔しさ、あるいは憧憬が道化を圧迫していく。

 

 道化から、全ての感情が消えたかのように表情が無機質になる。しかし、それに反比例し、オーラが高まっていく。

 

「『────』」

 

 やがてそれは大きな渦を描き天へと向かう。さながらバベルの塔のごとき神聖な印象を見るものに与えるだろう。

 

 薄れ行く意識の中で女がその意味を察する。破壊されたはずの心臓が哭いている。

 大切な心臓の残滓が女に最期の雫石を与えてくれた。女にはそんな気がした。

 オーラが僅かに回復。すぐさま、願う。それしか女にはできない。しかし、それでも届く思いはある。そう信じて最期の力を振り絞る。

 

(心臓を、□□を今度こそ……!)

 

 女の願いが1つの形になる。

 

──『────』発動!

 

 女はゆっくりと目を閉じた。

 

 

★★★

 

 

「ダメね。まっっったく成長してないだわさ」

 

 アラタはビスケから無慈悲な宣告(通算5回目)を受ける。

 『□□□□』を使うことを決めた日からビスケに修行を付けてもらって、はや一月。アラタは伸び悩んでいた。

 しかし、アラタに落胆は見られない。予想(・・)通りだからだ。

 

 一方、ビスケとファルは困惑していた。

 

「何て言ったらいいのかね、確かに元々持ってる手札の使い方は慣れて巧くなっているわ。でも、あんたの手札そのものの質は全く向上してない」

 

 ビスケ自身もこんなケースは経験にない。

 

「ま、そうゆーこともあるっしょ! もーまんもーまん」

 

「軽いな、おい。それでいいのかよ? ヒソカにお灸を据えるんだろ」

 

 アラタの泰然とした趣に、ファルは喉に小骨がひっかかったようなスッキリしない感覚を覚える。

 

「理由も解決策も分かってるし、ええんやで」

 

「……あんたが納得してるならわたしは何も言わないわ」

 

 ビスケは何かに気づきながらも、敢えて掘り返したりはしない。

 

(まぁ、しゃーない。そうなるとやれることは限られてくるけど、それなりに準備しますか)

 

 アラタが成長しない理由。それは、転生体作成時に決定された能力──分かりやすく例えれば、ゲームのパラメーターだろうか──がそれで固定されているからだ。これは特殊な肉体形成の副作用と言える。見方によっては呪いとも取れる。

 勿論、与えられた能力を巧く使うことや、そのパラメーターの範囲内で変化させることは可能だが、それだけだ。従って、本質的な身体能力は伸びないし、オーラ操作が巧くなることもない。

 勿論、例外もある。抽選で決定された7つに属さないものだ。例えば潜在オーラ量がそれに当たる。しかし、これも転生する前から、ほぼ完成されているとアラタは考えている。元々の年齢故に精神性が成熟しているはずだ、と。

 

 結論、戦略を考える以外にできることがほとんどないのだ。

 

『ろいやるすとれいとふらっしゅ! ろいやるすとれいとふらっしゅ!』

 

 アラタの携帯が鳴動する。着信の奇声はアラタがネタとしてガチの萌え声を収録して設定したものだ。ポチっと応答ボタンを押す。

 

「こちらスネーク!」

 

「やぁ。昨日の画像、あれはやっぱりクロロの腕かい?♥️」

 

 電話の相手はヒソカだ。どうやら、あらかじめ保存しておいたクロロの腕との自撮りを送っていたらしい。

 

「せや! いいでしょ? 私が切り落としたんだぜ!」

 

「この前クロロに会ったら右腕がなくて嫉妬しちゃったよ。僕の本命に手を出すなんてひどいなー?♦️」

 

 ヒソカがくつくつと笑う。

 

「だってーヒソカたんデレないんだもんー」

 

 刹那の間。そして、ヒソカの雰囲気が変わる。電話越しでも分かってしまう。

 

「……で何が狙いだい?♠️」

 

「2ヶ月後、サシで戦いたい」

 

 アラタの底冷えする様な声音に流石のヒソカも意外に思ったのだろう、少し沈黙する。

 

「君は僕を殺せるのかい?♣️」

 

「さぁ? でも楽しいよ。きっと」

 

「そ。じゃあ、ヤろうか♦️」 

 

「細かい日時は後でメールしとく」

 

「OK♥️」

 

「ほんじゃ、ば……」

 

 電話を切ろうとして、ふと気になってアラタは最後に1つだけ聞くことにした。

 

「なぁヒソカ」

 

「ん?♣️」

 

 少しの逡巡は誰がためか。

 

 沈黙。

 

 そして、徐にアラタが口を開く。なんの装飾も加えていない真っ白な声だ。

 

「そこにオアシスはあるか?」

 

 戦いたいと言った時とは逆の声音だ。意識した訳ではない。自然とそうなった。

 

「……意味が分からないな♦️」 

 

 アラタが無音で息を吐く。

 

「そっか。変なこと聞いて悪かったな。じゃあ、また後で」

 

 電話を切ったアラタを形容しがたい顔でビスケとファルが見ていた。

 

 

★★★

 

 

 2ヶ月後。パドキア共和国北部の荒野にポツンと聳え立つ建造物に2人は居た。

 

「よくこんな場所知ってたね♠️」

 

 数年前までここは新薬の研究施設だった。今は誰もいない。アラタとヒソカはその中にある広い部屋──とある実験が行われていた通称"フラスコ"──にいた。天井の四隅には監視カメラの亡骸がぶら下がっている。

 

「優秀な情報担当がいるんだよ」

 

「へー。ところで何で僕と戦いたい訳?♣️」

 

 ヒソカがさも不思議でしょうがないといった顔で訊ねる。 

 

「うーん? 気分?」

 

 アラタの答えを聞いて何がおかしいのか、ヒソカが笑う。

 時刻は正午になろうかというところだ。渇いた空気が肌を刺激する。 

 

(さて、ぼちぼち始めますか)

 

 空気が変わる。ヒソカもそれを機敏に察知する。じんわりとオーラの粘性が増していく。

 

──精孔超開放500%。

 

 アラタが瞬間的に濃密かつ多量のオーラを纏い、身体能力を強引に引き上げる。

 

 次の瞬間、アラタがぶれる。規格外の速攻を仕掛けたのだ。

 アラタの通った動線上の研究機材が破砕されている。アラタは細かな制動で障害物をいちいち避ける気はない。

 

(とりあえず、ぶん殴る!)

 

 一応は武術らしき体重移動で以て、異常な攻防力の拳を叩き込もうとして、急に停止する。

 ヒソカが『伸縮自在の愛(バンジーガム)』を自身の堅に被せるように厚く展開していたのだ。

 それには超高水準の隠を掛けている。加えて、アラタは凝をしていない。つまり、一般的な念能力者同士の戦闘であれば、見破れないはず。

 

 ヒソカがあっけにとられたかのように口を半開きにしてしまう。しかし、それも仕方がないだろう。

 

「君のオーラ濃度だと堅をすれば、自動的に全身へ平均以上の凝を掛けているのと同じになる。凄いね♦️」

 

 アラタの恐ろしい所はいくつもあるが、とうとう実戦レベルの凝を習得する必要性を破棄してしまったこともその1つだろう。

 

(俺も我ながらチートだと思う)

 

 一旦距離を取る。

 

(だけど、『伸縮自在の愛(バンジーガム)』を盾にされると迂闊に手を出せない)

 

 ヒソカは『伸縮自在の愛(バンジーガム)』に変化させていたオーラをニュートラルな状態に戻している。 

 

(とか、俺が考えてるって思ってんだろうな)

 

 アラタもこの程度は想定済みだ。

 

 一方、ヒソカは期待以上(・・・・)だと内心でほくそ笑んでいた。

 初めて見た時からアラタの異質さには気づいていた。それが異常な戦闘性能を孕んでいると簡単に推測できた。

 では何故、気のない素振りを見せていたのか。単に気分でそうしたというのもある。だが、主な理由は他にある。それについては後述させていただく。それよりも、今、重要なことはヒソカがアラタを玩具と認めたことだ。

 

 ヒソカのオーラが破滅的な狂気を帯びていく。

 

「僕も少しだけ本気を出すよ。簡単に壊れないでね♠️」

 

 薄く自らの全身に纏わり付かせていたオーラを『伸縮自在の愛(バンジーガム)』へと変化させる。筋肉、靭帯に沿うように繊密に形成されている。

 

(うわー。『伸縮自在の愛(バンジーガム)』なら出来るんだろうけど、実際に見るとやべーな)

 

 アラタは思わず半笑いになる。アラタ主観では戦闘民族がガンツスーツを着ているように見えている。

 

「もう察しているね。こんな風に『伸縮自在の愛(バンジーガム)』による擬似筋肉を纏うことで身体能力を向上させる♥️」

 

 しかし、それだけではない。アラタは一目でその悪辣さに気づいていた。

 

「……信号の神経伝達省略。オーラによる筋肉であることからイメージした挙動が正確かつ即座に実現する」

 

 肉体の神経に依存せずに動けるということだ。それは一瞬のミスが命取りになる戦闘では大きな意味を持つ。

 

 アラタの言葉を聞き、ヒソカは笑みを深める。

 

「さらに、『伸縮自在の愛(バンジーガム)』の性質上触れることもハイリスクになる防御性能と衝撃吸収性。そして、接着による攻撃時の捕獲性の高さもある。厄介だ。強さよりも、厄介さが際立っている。そんなとこか」

 

「御名答。ただ……♦️」

 

 ヒソカが瞬動する。

 

 ひたり。頬に熱を感じる。ヒソカの手が触れている。

 

(早い! 認識も反応できなかった!)

 

 耳下でヒソカが囁く。

 

「ちゃんと強さも際立ってるよ♠️」

 

 手を払いのけ、急いで距離を取るも、違和感。『伸縮自在の愛(バンジーガム)』が頬から延びている。 

 地力で上回る相手にチェーンマッチは質の悪い死刑だ。だが、2つの点でそれは当てはまらない。

 

 1つ。

 

「こんなの肉ごと引き千切ればいいだけじゃん」

 

 そういうや否や、アラタは『伸縮自在の愛(バンジーガム)』に触れるのも厭わず、頬を剥がす(・・・)。次いで『伸縮自在の愛(バンジーガム)』が接着された手も、精孔を閉じ、『絶』の状態則ち攻防力0にして、握り潰すようにして引き千切る。

 

「ほら。彼女からのプレゼントだ」

 

 アラタが千切った腕を投げる。

 

「サプライズかい? 嬉しいよ♠️」

 

 ヒソカが腕をキャッチする。まじまじと潰れた肉と骨を観察する。温かな鉄の匂いが鼻腔をくすぐる。

 

 そして、出会った時と同じようにに『血塗れの運命(ゲノムルーラー)』が発動される。 

 

──再構築。

 

 即、再生。

 

「その能力、いつ見ても反則だね♥️」

 

 肉を剥がし、再生というルーチンをこなせば『伸縮自在の愛(バンジーガム)』からは簡単に脱することが出来る。

 

 2つ。

 

──『虹色の遺伝子組み換え(カラーコーディネート)パワー&スピード複合型(コードパープル)』! 

 

 髪色が紫色に変化する。スピードとパワーを兼ね備えた遺伝子配列を実現。それに伴い、人の枠に収まる範囲内で肉体の外見も変化する。速く、強く動く為に適した身長になり、関節の位置も微調整される。

 

(これでフィジカル面はそれなりだろ)

 

 総合的な近接戦闘力が同レベル帯ならば、例えノーガードの殴り合いになったとしても不利にはならない。それどころか、回復手段と莫大なオーラ量を持つアラタが有利でさえある。つまり、チェーンマッチではむしろアラタが恩恵を受ける以上、ヒソカがそれを選択する理由はない。

 

(いくぞ)

 

 床が爆ぜる。アラタの踏み込みが異常な運動エネルギーを撒き散らす。

 

(いくら『伸縮自在の愛(バンジーガム)』越しとはいえ、全ての衝撃を遮断できる訳ではない)

 

 今のアラタの打撃力は超一流の強化系能力者が重い制約と誓約を課した発により強化したものに匹敵する。例え凝をせずに堅だけであったとしてもだ。

 

 アラタの爆撃のごとき拳打が放たれる。

 

 が、ヒソカはそれを規格外の反射神経、バトルセンス、戦闘経験、擬似筋肉の特性で以てかわす。

 

(避けたな。つまり『伸縮自在の愛(バンジーガム)』越しであっても容認出来ないダメージを負うということだ) 

 

 ならば、ひたすらに攻撃するのみ。アラタは絶え間なく必殺の打撃を放ち続ける。それは音速に迫る、いや、瞬間的には音を置き去りにして、衝撃波を撒き散らしながら破壊を具現化していく!

 

 だが……! 

 

(当たらない。それどころか、隙を見て『伸縮自在の愛(バンジーガム)』を付けようとオーラを広げてくる。いくら接触しても対処出来るとはいえ、出来るだけ囚われたくはない。これは攻めにくい)

 

 ヒソカは自身とアラタを繋ぐ為ではなく、アラタの四肢を絡めたり、床と繋いだりといった目的で『伸縮自在の愛(バンジーガム)』を付けようとしているのだ。こうすれば、肉を剥がす隙をノーリスクで生み出すことが出来る。

 巧く四肢を絡められれば、肉を剥がすことすら封じることができる。このヒソカの行動は理に沿っている。

 アラタもそれを分かっているからなるべく『伸縮自在の愛(バンジーガム)』に触れるリスクを最小限に留めたいのだ。

 

 アラタが莫大な破壊力の拳を比較的オーラの薄いポイントに穿つも、紙一重でかわされ、すぐにカウンターがとんでくる。

 遺伝子操作された動体視力と反射神経の恩恵によりアラタも被弾はしないが、決して互角とは言えない。現段階で余裕があるのはヒソカの方だ。

 

 則ち、技量の差がここで明暗を分けているのだ。身体能力が高水準になればなるほど、技術の持つ意味は通常よりも大きくなる。僅かな違いが大きなズレを産むからだ。

 その点、ヒソカに隙はない。一見、非効率的な演出過多の魅せる動きに見えるが、それは違う。我流ながら、合理性を追求した戦闘者の極地。それが、戦うために産まれてきたと言っても過言ではない道化の世界。少なくとも表面上は平和な日本で生きてきたアラタでは、文字通り死んでも埋められない差が確かに存在する。

 

 結果、ヒソカは最小の労力で最大のパフォーマンスを安定して実行し続けられる。これはアラタでは及びもつかない効率的挙動だ。

 

 こういったことを言うとヒソカが余裕綽々である様に思えるかもしれないが、それも違う。確かにまだまだ余力も切り札もあるが、それでも死を感じる程度には余裕がない。

 その証拠にアラタが『虹色の遺伝子組み換え(カラーコーディネート)パワー&スピード複合型(コードパープル)』を発動してから、ヒソカは一度も被弾していない。時には敢えて攻撃を受けて、戦いを盛り上げることを好むヒソカをして、全回避をしなければいけないと感じさせているのだ。驚異的と言っていい。

 さらにヒソカを悦ばせていることがある。それは、アラタが一撃も受けていないということだ。

 

(スピード用の遺伝子操作をしているから動体視力や反射神経のスペックで俺も回避は出来ているが、これでは……)

 

 今のところは、外形上だけは互角の打ち合い。しかし、アラタは常軌を逸したオーラ量を消費し続けて、漸く拮抗に見せかけているだけだ。対してヒソカが消費するオーラ量は少ないのは先に述べた通りだ。『伸縮自在の愛(バンジーガム)』が純粋に変化系のみの能力であることに加えて、ヒソカの念習熟度と擬似筋肉の体積の少なさが異常な費用対効果を現実のものとしている。

 要するに、長引く程不利になるのだ。そして、アラタもそれに気づいている。

 

 数分の立ち会いで理解させられた実力差が、アラタに次の一手の前倒しを検討せざるを得なくさせる。技術では赤子と大人程隔絶しているのだ。それも致し方無い。

 

 故にアラタは決断する。

 

(予定(・・)よりも早いが、仕方がない。使うか)

 

 ここでアラタは切り札を1つ。

 

 今までヒソカの攻撃は全て回避していたアラタが初めてその拳打を受ける。オーラで大幅に底上げされた耐久力ですら骨が軋む。

 明らかに変わったアラタの動きにヒソカが片眉を上げる。

 

「何故避けなかったんだい?♣️」

 

 『伸縮自在の愛(バンジーガム)』がガードした右腕に触れる。『伸縮自在の愛(バンジーガム)』はヒソカの意思次第で付けるも剥がすも自在な為、チェーンマッチを避ける意味でガムの接着性は抑えている。つまり、拘束性はない。すかさず右手でヒソカの左手首を、左手でヒソカの右手首をしっかりと掴む。

 

「なーに。本命(・・)を交えてヤろうと思ってね」

 

「本命? ……!♥️」

 

 ヒソカは自らの背後に急に現れた良く知った気配に震える。悦びにうち震えたのだ。

 

 アラタの能力でいいのかな?♠️

 

 しかし、分からないことがある。

 

 仮にアラタの能力だとしたら、アラタの発と系統はなんだろう? 回復、再生や身体能力の向上は強化系が一般的だが、それではこの現象は説明できない。再生に関しては具現化系でも可能だけども、後ろの彼は念獣の様な浅い存在感ではないから、仮に念獣の類いだとしてもシンプルな具現化系ではないはず……♦️

 

 ヒソカが凶悪な笑みを浮かべる。

 

 必要な情報が足りないね。でも、それがイイ。未知を攻略するゲーム性がとても愉快だ。余計な情報無しで楽しみたかったけれども、未だ分からないことが多くて十分楽しめる♠️

 

 戦闘欲求(性感帯)を激しく愛撫する玩具が前にも後ろにも居る。楽園があるとしたら、まさしくこの瞬間のこの場所だろう。

 

 ヒソカの性器が熱く隆起し、ぞくぞくと射精感が蠢きだす。

 

 そして、ヒソカの後ろからお気に入りの玩具が声を発する。

 

「どうやら俺はヒソカと戦わないといけないらしい」

 

 ヒソカ背後に現れたるは闇色に染まった魔王──クロロ・ルシルフル!

 ここでアラタ&クロロVSヒソカの構図が完成する!

 

──クロロの完全体クローンの製造。

 

 アラタがしたことだ。以前は不完全な自己クローンしか構築できなかったが、制約と誓約により実用化に至った。

 主な制約と誓約は3つ。

 先ず自分以外を再構築する場合同様、自己以外のクローン製造の場合、クローン1体につき、対象の体液を一定量以上摂取しなければならない。これはオリジナルから採取した物でなければならない。クローンから体液を摂取してもこの制約は突破出来ない。 

 そして、2つ目。クローン1体につき『10年』と『クローン体の寿命として設定した時間の10倍』を合計した時間分をアラタの寿命から差し引く。

 具体的に今のクロロの場合に当て嵌めると、以前入手したクロロの右腕から血液を摂取。これでギリギリ1体分の構築必要体液量をクリア。そして、クロロの寿命を7日に設定し、構築。つまり、10年と70日の寿命を代償に、7日だけの寿命以外は瑕疵のない生命体を創造したのだ。

 重過ぎると感じるだろうか。しかし、よく考えてみてほしい。場合によってはアラタの実力を上回る存在を、創造の際の初期コストのみで、1年以上顕在させられるのだ。さらにそのクローン体は変化も成長もする。クローン自身のオーラもメモリもある。

 これらの理由だけではまだ少しリスクとリターンが釣り合っていないように感じるかもしれない。その違和感は正しい。生命の創造がこれ程の制約と誓約を要求する最も大きな理由は他にある。

 それについては後述するとして、他者のクローン体製造上、アラタが最も憂慮していたことに関し、先に述べる。

 それは他者のクローン体にアラタの命令に従う理由がないということだ。完全な生命体故にオリジナルと同様に自由意思に基づき行動するからだ。

 

 では、どうするか。

 

 アラタはさらに寿命を代償に捧げ、命令に服従させることにした。則ち、命令対象はクローン体のみで、1つの命令につき『1年』と『拘束期間(命令実行期間)の100倍の寿命』の合計をアラタの寿命から差し引く。

 

 クロロへの命令は1つ。

 

 『7日の寿命が尽きるまで私に絶対服従しろ』。

 

 この命令は制約と誓約の穴をつくような裏技的命令になる。だが、アラタのオーラないし念はこれを容認した。つまり、2年と335日の寿命を代償に瑕疵無き命令として完全な効力を与えられる。この発を以てアラタのメモリは完全に埋まるがアラタに後悔はない。

 尤も、アラタの理想はヒソカのクローン体を製造することだった。だから、ヒソカと性交を重ねて精液や唾液を摂取しようとしたが、残念ながらそれは叶わなかった。しかし、原作でもヒソカと同格、あるいはそれ以上に描写されていたクロロから腕(とその血)を入手出来た為、そちらで攻略チャートを組み立てることにした。

 

 さて、ここで寿命の定義について疑問が浮かぶかと思う。老衰で死ぬまでの予想時間なのか、健康寿命なのか、事故死等も含めたさながら死ぬ運命の日までの時間なのか。

 他にも幾つかのパターンが考えられるが、アラタにとって寿命を削るとは、染色体末端のテロメアを短くすることである。テロメアは細胞分裂を司っており、細胞分裂をすることで生物は若さを保っている。そして、人が出来る細胞分裂の回数には限度があり、その残りの回数が少なくなるにつれて、テロメアも短くなる。要するに、テロメアの長さ=残りの寿命が成り立つ。

 ……このようにアラタは考えているのだ。ただし、この等式は医者どころか理系ですらないアラタがほぼフィーリングでそう思っているに過ぎない。実際のところは未解明な部分もあり、これ程単純ではないと考えるべきだが、アラタの念はこの認識を前提に成立している。学術的な真偽はともかく、現時点でアラタはテロメアを短くすれば死に接近する状態になっているのだ。裏を返せば、生物学的論理性を越えて、テロメアの長さに寿命をリンクさせる制約と誓約であるとも解釈できる。

 

 何はともあれ、アラタに絶対服従のクロロが存在するに至ったのだ。

 

 ここから戦いは加速する。

 

 




地雷おいひぃれす(´ρ`)
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