【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ   作:虫野律

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人生はクソゲーとはよく言ったものだ

「ああああぁぁぁぁ……!」

 

 桜色の髪を振り乱し、顔を両手で覆う。夥しい量の血液が止めどなく床に落ちていく。

 道化を演じ、道化に殺される。それがこの喜劇のフィナーレだろうか。

 

 不意に女が笑う。

 

「いったーい。ヒソ君ったらセッカチさんなんだから! しょーがないなぁもう」

 

 女の顔を見て、ヒソカがほうっと感嘆する。

 

(ハンター風に名付けるなら、『血塗れの運命(ゲノムルーラー)』かな)

 

 淫乱ピンクがしたこと、それは『発』を用いて削ぎ落とされた鼻の再構築だ。治癒では無く、自らの遺伝情報を元にした再構築である。

 念能力者に於いて回復系の発の使い手は貴重だ。ましてや、ヒソカの様なバトルスタイルの人間にとっては喉から手が出る程、欲しい存在だろう。それを見越しての能力選択だ。いや、正確には特質系たる彼女の発は、初めから殆ど完成されていた。彼女の人間性が、そうさせたのだ。

 彼女がしたことは、優先度の高い方向に能力を整えただけだ。

 では、いつそんなことをしたのか?

 彼女は転生部屋に居て、スタート地点を認識した時に最初に目を付けたのは、身体精密操作でもなく、性別でもなく、部屋の隅にポツンと置かれた観葉植物だった。

 

 彼女は考えた。

 

 定食屋ならば、コップと水は確実にある。『抽選で決まったこと以外はそのまま』という旨が敢えて記載されているということは、記憶、服装、アイテム等の持ち越しを認めているということだ。

 ここでの懸念事項は、どこからが自らの所有物であるか、が明確でない点だが、この時の彼女には、不自然に置かれた観葉植物が仕掛人から与えられた攻略アイテムに思えてならなかった。

 仕掛人の手紙には、『同僚』や『世界のパワーバランス』という文言があった。極めつけは彼女自身に強力な能力を親切にも与えている。

 以上の事からある希望が芽生えた。

 

 則ち、このデスゲームは攻略出来る様に設定されている。ただ単に彼女を嬲って殺すことが目的ではない。あるいは、シンプルに殺せない、地獄に落とせない事情がある。

 

 この思考に至った彼女は、観葉植物から葉を数枚ちぎり、衣服や下着の中、果ては口の中に仕込んだ状態で転生の時を迎える。

 

 果たして、透明なコップ、水、葉という水見式に必要なアイテムを全て揃えることに成功する。この時点で会場に到着するまで、多く見積もっても残り数分。彼女はヒソカの需要を推測し自らの発の整備に取り掛かる。

 新人以上の念習熟度を与えられた彼女は、拙いながらも練を行った。結果、葉っぱが2枚に増えた。葉が2つに千切れた後に、欠片が再生していき最終的には完全な状態の葉が2枚になったのだ。

 

『発』

 

 適性は今までの自分の経歴、人格を元に決定する、とあった。であれば、遺伝子に関するものしかないという確信があった。詳細はまたの機会にさせていただくが、彼女の人生に於いて遺伝子は極めて大きな意味を持っていたからだ。加えて抽選を行ってから漠然と、作中でメモリと呼ばれていた存在を認識出来るようになっていた。彼女のメモリは初めから、殆ど埋まっていたのだ。特質系であることを合わせて考察するに、先天的に発が形成される天然型、ないしはそれと同質である可能性が高い。

 

 一度、その様に意識してからは早かった。メモリの中身をしっかりと理解できるようになったのだ。

 

 彼女の予想通り、遺伝子にまつわる発。それも、上手く伸ばせばチートと呼ばれる可能性を秘めた超ド級の核爆弾だ。

 

 これらが彼女がヒソカに突貫した理由の一つであり、綱渡りながらも攻略の確かな糸口でもある。

 

 場面を戻そう。

 

 彼女の発に感心していたヒソカが口を開く。

 

「君の名前は何ていうんだい?◇」

 

(よーし! 釣れた! ふ、ヒソカはチョロいん。はっきりわかんだね)

 

 そうやってすぐ調子に乗る。痛い目を見ても学習しない所が彼女の致命的な欠点だ。

 

(あ、でも名前考えてなかった。男時代の名前は変だし……。テキトーでいっか)

 

 工事後のニューハーフ様な口振りである。確かに、無許可強制性転換を完遂されているから、彼女の態度は間違いではない。無許可強制性転換……何か強そうな必殺技みたいだ。

 

「……アラタ。私の名前はアラタ」

 

 秘か(ヒソカ)(アラタ)める。だから、アラタだ。その場の思いつきで適当に名乗ったが、彼女改めアラタは存外、気に入っているようだ。

 

「そう。よろしくね。じゃあ、2人の将来為にもう一回♡」

 

「バカ、やめ!」

 

 アラタに反応出来る訳もなく今度は両腕を落とされてしまった。

 

(くそ、オーラがガンガン減っちまう)

 

 ヒソカは爬虫類のような粘着質な視線を向けながらもアラタをしっかりと観察している。

 

──再構築!

 

 アラタの両手が瞬く間に具現化される。

 

「おー! 凄いね♡」

 

 ヒソカはまるで子供だ。無邪気に満面の笑みを浮かべる様は、恋人との逢瀬を楽しんでいる様に見えなくもない。周りにある血溜まりと温い鉄の匂いさえなければ。

 

 あまりの光景に他の受験生達は2人からたっぷり100メートル以上は距離をとっている。シンと静まりかえっているのは必然と言えよう。

 静寂を破ったのは落ち着いた男性の声だ。

 

「……只今を持ちまして、試験の参加を締め切らせていただきます」

 

 鷲鼻とカイゼル髭が特徴の燕尾服を着こなした男性の声が辺りに響きわたる。試験官たるプロハンター──サトツだ。

 

 彼はアラタとヒソカを見つめ、人差し指を立てる。アラタはサトツの意図を察し、念の応用技の内、見ることに特化した技を発動させる。

 

(……凝)

 

 目を凝らすと、指の先に『次に念能力の秘匿を脅かす言動をした場合は、失格とみなします』とオーラによる文字がある。

 

(あちゃー、そりゃそうだよね)

 

 アラタが読みとったことを彼女の表情やオーラから確認してから、視線をサイコパスコンビから外す。

 

 サトツはため息を小さく漏らしてから、第一の試験を言葉少なに説明する。原作通り、サトツについて行くことがクリア条件だ。

 

「それでは只今より試験を開始します」

 

 アラタにとっての鬼門が始まった。

 

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