【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ 作:虫野律
皆様はヒソカにまつわるとある噂をご存知だろうか。
曰く、ヒソカならばキメラアントの王直属護衛軍ですら瞬殺。
曰く、ヒソカは『
さて、真実は……。
★★★
「やぁ、クロロ。僕が変な女と
ニヤニヤと嗤いながら戯れ言を宣う。
「俺としては他人の恋路を邪魔したくはなかったんだがな。そこの魔女のせいでそうもいかなくなってしまった」
クロロの右手には『
──『幻想的転送《ジャンピングスター》』。
アラタとヒソカの戦闘の影響でボロボロの研究施設という名の廃墟に、ヒトガタが多数出現する。額には『人』を丸で囲んだスタンプが押されている。さらにヒトガタの両手の平には太陽の刻印と月の刻印がある。
もうお分かりだろう。アラタは原作ヒソカ対クロロで用いられた戦法を取るつもりだ。
現れたヒトガタ──コピー人形を見てヒソカが思案顔になる。
これはクロロが盗んだ能力によるものなのか? しかし、今、起きている現象を1つの能力で実現するのはほぼ不可能に思える。たしかクロロは盗んだ能力を2つ以上同時に使用することは出来ないはず……。それにアラタの能力も未だに不明瞭だ♣️
この時点のヒソカはクロロの『
不味いかも……♥️
「クロロ!」
アラタが鋭く叫ぶ。
「仰せのままに。ヒソカから距離を取りつつ包囲しろ」
司令塔のクロロの号令に従い、コピー人形が一斉に動き出す。奇しくもそれは、平行世界のヒソカがいつか戦ったスペードの騎士と似通った非人間的な摂理を内包している。いや、まだこちらの人形の方が人間を元にしている分人間的であろうか。
だが、感情がないことに変わりはない。死を恐れぬ兵とになってアラタとヒソカから一定の距離を取りつつ円を描くように2人を囲んでいく。
ここでヒソカは腕をひねりアラタの腕を振りほどこうとして、しかし、アラタの異常な膂力に抑え込まれる。
「……!♣️」
アラタは精孔を1000%開き、身体強化をさらに重ねていたのだ。動きながらだと制御の難しさから実用には至らないが、止まっているならば発動はできる。
もう一つ、1000%開放にはデメリットが存在する。
今、アラタは全身から血を流している。只でさえ肉体を破壊する精孔超開放は、再構築による再生が前提になっている。しかし、1000%まで拡げてしまうと再構築が追い付かないのだ。
結果が今の血塗れのアラタだ。
それでも、アラタが扱いの難しい精孔1000%開放を使ってヒソカの拘束を継続した理由は語るまでもない。
『
そこには紛れもない覚悟がある。
──ズギューン。
直感的にアラタの意図──何らかの方法での死へ道連れ又はそれに近いナニカ──を察してヒソカの性器が一層熱くなっていく。だからヒソカはもう少しアラタと繋がっている選択をした。惹かれてしまったのだ。不可解な狂気に。
しかし、ヒソカの冷静な部分は分析を放棄させない。そして、正しい気付きをヒソカに与える。
アラタには、迷いも恐れも……いや、違うのかな? 何か引っ掛かる♠️
ヒソカは確かにアラタの中に恐れがあることを理解したが、その内容までは分からない。しかし、その対象がヒソカでも、まして死ぬことでもないと、小さな違和感を抱ながらもそんな風に感じた。
超一流の評価すら過小との謗りを受けかねない次元の念使いであり、人を超越しつつあるナニカであるヒソカのフィーリングは概ね正しい。
つまり、少しだけ違う。
それは自らが死ぬことへの恐怖ではないということは真実にして、逆説的虚偽でもある点だ。
アラタは死よりも余程恐れている、心臓が破壊されることを。自分の中に僅かに残った、遠い昔に散ってしまった不思議と心地良かった少女の……。いや、もうアラタはかつての未熟な少年ではない。今ではそれをどのように呼称すべき感情であるかを理解できる。だから、アラタははっきりと認めた。
いつか愛した、誰よりも愛した少女の匂いが、熱が消えてしまうことが何より恐い……!
たとえ、それが
しかし、それ故に自らのクローンの死は1種の制約と誓約の意味を持つ。従って、アラタは命を投げ棄てる!
──アラタは左手をヒソカから放す。直ぐ様、精孔の調整により攻防力を0にした腹部へと左手を突き入れ、胃と肝臓をずらす!
次の瞬間、アラタが最大威力の爆発を巻き起こす!
前以て、アラタは腹を開き、胃と肝臓へ『
つまり、クロロも、ここにいるアラタもクローンであり、その製造は戦闘開始よりも前であったのだ。クロロが現れたのは『
実験場の床をえぐる爆発。しかし……!
ヒソカは全身体表から噴出するオーラを体外へ顕在させると同時に『
「ヒソカに近づき次第、両手を合わせろ」
だが、クロロによる無慈悲な爆撃が敢行される。
何故時間差で爆発させるようなまねをしたのか。
1つはアラタやコピー人形が爆発による同士討ちで、爆弾として機能する前に破壊されるのを防ぐ為。
1つは爆発のエネルギーで吹き飛ばされた『
そして、最後の理由はヒソカのオーラを削る為。確かに一斉爆破による絶大な運動エネルギーを防ぐには大量のオーラ(バンジーガム)を消費するだろう。しかし、小さい爆発でも回避できないならば、『
というより、コピー人形はコピー元の性能により若干の個体差がある。その為、同じタイミングで近づき、同時に爆発させるのが難しいことから、必然的にこの選択になった側面もある。
クロロの眼前では、ヒソカとコピー人形がダンスを踊っている。演目は『爆殺遊戯』といったところか。アラタの狙い通り、ヒソカは順調にオーラを減じている。
この時、クロロは自分へと操作系の念を掛けた者──アラタの死により、服従命令が解除されることを期待したが、むしろ逆に強まっていると感じた。
死後に強まる念、か。魔女の
これはアラタの狙い通りであった。単なる希望的観測や願望ではない。知っていたのだ。
『死者への往復葉書』
アラタがこのカードを欲した理由は、少女への未練だけではない。もう1つヒソカ攻略の為の理由が存在した。
時はハンター試験の2次試験が終了した日の夜まで遡る。そう、操作系らしきナニカによりアラタが意思に反して動かされたあの時だ。
★★★
時刻は夜の8時を回っている。
他者からの操作に耐性のあるはずのアラタが操られている。少しだけ動揺するもアラタはすぐに冷静さを取り戻す。
(考えられる可能性の1つは、俺の対操作系用の制約と誓約が機能していない場合)
少年がそうであったように感情が平坦になっていく。
(確かに、本来デメリットを設定するはずの制約と誓約が実質的にメリットしかない点から、むしろ無効であることは納得できる。……イルミとのことがなければ)
おそらく原作中最高ランクの操作系能力者の発を無効化した。この事実がアラタに制約と誓約の無効という結論を安易に取らせてはくれない。
(ただ、杓子定規的に有効、無効になるのではなく、部分的に有効という可能性もある)
しかし、それを立証する手段が今はない。
(他に考えられるのは……)
ここまで思考した時、人差し指の先にオーラで出来た文章が完成する。
『シカケニン』『ハ』『ヘイコウセカイ』『ノ』『ヒソカ』
(ん? 仕掛人は理不尽系の神様じゃ……)
アラタはある可能性に数瞬で思い至る。
(念能力! しかし、ヒソカは変化系。……いや、違う。たしか後天的に特質系に覚醒することもあるはず。その中でも操作系、具現化系がそう成り易いから特質の隣になっているだけで、変化系であっても可能性は十分にある。ゴンの強制成長も特質系の要素を含んでいると解釈できるのが良い例だ。ただ、気になるのは平行世界の文字だが、これも俺が世界を越えていることからも十分あり得ると見ていいだろう。結論として仕掛人はとんでもない嘘つきってことか)
ここで、新たな疑問が浮かぶ。
アラタの思考に呼応するように、オーラが『モクテキ』という単語を形作る。
(そうなんだよ。目的が分からない。ヒソカが仕掛人ならば何で俺を呼んだ? 素直に考えるならば、『一年以内にヒソカを倒さなければ地獄行き』の条件と原作ヒソカの嗜好から戦闘することと考えられるが……)
ゆっくりと形成されるオーラの文字。それが堪らなくもどかしい。
『モクテキ』『ハ』『イキルイミ』
(イキルイミ……生きる意味、か? しかし、それが俺を呼ぶことにどう繋がる?)
これについてはいくら思考しても良く分からない。
『マエ』『ノ』『オレ』『ハ』『シンダ』
新たな文章。
(『前の俺は死んだ』でいいんだよな。ここで言う『俺』はおそらく俺自身だ。そもそも、
どうやらこれ以上文章は追加されないらしい。オーラの動きが停止した。まだ、外部から操作されている奇妙な感覚は途切れていないが、アラタの読み通りなら特に害を与える現象は起こさないだろう。
(……この転生の秘密を知った俺から俺へと送られたメッセージ。そして、俺は死んでいる。加えて『前の』の文言)
場を沈黙が支配する。
思考の果てにアラタの中で1つの筋書きが完成する。荒唐無稽な推測だ
(いや、しかし、それなら……)
しかし、十分あり得る。
(今の俺は2回目。いや、それ以上もある。そして、このメッセージの送り手は今の俺の前にヒソカに呼ばれた別の世界線の俺。そして、その俺はおそらくはヒソカに殺されている。何らかの形で繰り返されることに気づいてメッセージを送ったんだ。操作系の発を使ったのは、他者による操作に耐性ができていることの反対解釈(自分自身の操作は可能との解釈)により、前回の俺からのメッセージであることについて一定の信憑性を抱くことを期待したからだ)
さらにアラタは最も重要な事実を見逃さなかった!
(前回の俺が死んでいることを敢えて伝えたのは、『死者への往復葉書』での情報共有を出来るかもしれないから……!)
ニヤリと口角を上げる。
(流石に俺の思考を良く読んでいる)
こうしてアラタは『死者への往復葉書』を求めるに至った。
そして、もう1つのカード。
『□□□□』
これについてはこの時のアラタからすれば、ほとんど勘と言っても差し支えないヒソカの状態予想とちょっとした思いつきで、希望的観測を元にネテロに要求したものだ。ネテロとの戯れイベント発生がアラタの予想外のタイミングだった為に確証がないままにゆすったのだ。
これが『死者への往復葉書』使用後ならば違っただろう。
勘ではなく、必然として『□□□□』を求めていたはずだ。
それから数日後、『死者への往復葉書』を使い、前回の自分へと手紙を出す。
すると翌日、返事が来た。
そこに書かれていた最初の一文は……。
『「激辛コーンポタージュ~山葵を添えて(笑)~」って最高だよな!』
これを見てアラタは手紙の相手が自分自身だと確信した。これを愛飲しているニンゲンは自分以外知らないからだ。しかも、少女が自殺した日に製造中止になっていたりする。そして、ハンターハンター世界では誰も知るはずがないことからも(元の世界でも知ってる人は絶滅危惧種)、より信頼出来ると判断した。
そして、何度も文通を重ねて様々なことが分かってきた。それらの情報を元にアラタはある目的を設定し、攻略チャートを組み直した。
願わくば、この牢獄のような世界を撃ち破ることを……。
★★★
クロロの狙いは1つ。前述した『
未だにコピー人形は何体も残っているが、中には上手く接近し爆発を当てている個体もいる。ヒソカ相手に良くやっている。
だが、クロロにも分かっている。未だヒソカは遊んでいるだけだ。その気になれば、コピー人形を振り切りクロロを襲うことも可能なはず。
勿論、クロロ自身が最大の警戒をして隙を見せていないのも、ヒソカがクロロへ攻撃を加えない理由だ。
いずれにせよ、ヒソカが人形遊びに興じている内が最大のチャンス。
好機を逃すまいと『
そして、すぐにその時は訪れる。ヒソカが人形に興味を失ったのだ。
「うーん。なんかつまんないな。もういいや♣️」
ヒソカがそう言うや否や、コピー人形が一点に引き寄せられる。一瞬でオーラを空間に広げ、必要箇所を『
引き寄せられた人形が密集し、不気味な球体を形成する。
はぁ、とクロロがため息をつく。こうなっては仕方がない。もう1つのパターンを実行する他ない。すでにそのページは開いている。栞はとあるページへと入れておく。
栞を『
ヒソカがクロロを向く。クロロに緊張が走る。ここからはより集中し続けなければならない。
瞬間、ヒソカがクロロへ超高速機動で肉薄し、トランプで斬りかかるも、数本の頭髪を切り落とすに留まる。クロロがかわしたのだ。
しかし、クロロは戦慄せざるを得ない。アラタからヒソカのヤバさはよく聞いて、しっかりと予想していた。それでも、実際に目にすると全てが規格外。クロロがヒソカに勝る点と言えば、使える発──手札の多さ位だろう。
「今度は何を企んでいるんだい?♥️」
愉快そうにヒソカが笑いながらも、追撃を緩めはしない。疑似筋肉による筋力強化とイメージの即応性。ただでさえ、ヒソカのオーラはコールタールのように深く重く、則ちある種の上質なワインがそうであるように深く身体に染み込み、多大な影響を与えるのに、それに加えて疑似筋肉とのマリアージュはもはや前衛芸術を彷彿とさせる。
ヒソカの斬撃が今度は右腕をかする。右腕はクロロの生命線だ。だから、細心の注意を払っていたはずなのにかわしきれなかった。
クロロは無表情を保ちながらも、まともにやったら自身が劣勢に立つことを正しく認識していた。今、ギリギリ渡り合っているのは、クロロの持つ戦闘経験からの見切り──瞬間的な動作予測により回避に専念しているからだ。
「っ!」
しかし、それでも全てを見切ることは出来ない。
ヒソカの右のボディブローがヒット。信じられない重さと衝撃がクロロを内側から破壊し、吐血せしめる。肋骨も何本か折れたようだ。肺に刺さっていないのが唯一の救いだろう。インパクトの瞬間に反対方向に跳んだことがダメージの軽減に繋がった。
劣勢ながらも技術でなんとか凌いでいるクロロに対して、ヒソカはそのような小細工をしていない。ヒソカはヒソカで並みではない戦闘経験とバトルセンスの持ち主故に、クロロと同質のことをしようと思えば出来るだろう。
それでも、敢えてそれをしないのはヒソカとの実力差に、精神的ダメージを負う様をみたいからだ。ヒソカは強者のそういう敗北感にまみれた感情を垣間見るのが、堪らなく好きだった。
また、ヒソカの攻撃がヒットする。態勢を立て直そうとするも、その前に今度は蹴撃を受ける。これで内臓の一部が破裂した。
ヒソカがクロロを捉え出す。だが、すぐに致命傷を与えないあたり、まだ何かをクロロに期待しているのだろう。その顔は嗜虐に歪んでいる。
このままではクロロが確実に負ける。
しかし、ここで漸く条件が整う。
もう十分だろう。
そう判断したクロロがこのリンチを崩さんと動き出す。このまま肉弾戦を続けても加速度的に不利になるのはクロロである以上、クロロから仕掛けるのはやむを得ないと言える。
ヒソカの鋭い抜き手が心臓へと放たれる。
起死回生ならぬ、起死回
腕を引き抜こうとして、ヒソカはそれが出来ないことに気がつく。それだけではない。身体が動かないのだ。
操作系能力……?♦️
ヒソカの脳裏に先程のアラタの自爆が過る。
「君もあの女と同じことをするのかい? だとしたらもう飽きたんだ。他の演目にしてよ♠️」
「まぁ……そう……いうな」
クロロから血液が零れ落ちていくにつれて、顔色が悪くなっていく。しかし、オーラはそれに反比例し、漆黒の夜空のように闇が増していく。
先程、栞を挟んだページの能力を発動させる。チャンスは一回だけだろう。色々な意味で。
──『
夜に太陽が煌めく。
対ヒソカ用のクロロの切り札だ。
アラタが炎熱系の能力を要求した為、急ぎフェイタンから仕入れた。『
想像してみてほしい。自身の身に纏う衣服が燃える様を。それはまさに地獄の苦しみに違いない。
一瞬でヒソカが燃え上がる。
ゴムが燃え上がり、漂う黒煙が、圧倒的な熱エネルギーの前ではゴムはただの可燃物に過ぎないことを証明している。
「これは……!♣️」
この能力は術者の受けたダメージで威力、則ち熱量が決まる。クロロは心臓を始め臓器を破壊され、骨を折られている。残り僅かで確実に死ぬダメージを負っているのだ。その前提から繰り出される太陽は尋常でない熱エネルギーを無差別に撒き散らす。
結論、ヒソカの選択肢は熱が届かない所まで逃走するか、クロロ殺害による能力を期待して止めを刺すかの2択しかない。
だが、クロロはそれをさせないように、このパターンに陥ったと判断した瞬間に残りのメモリを全て使い、20秒足らずの時間のみの、それもこの一回だけ使用可能なシンプルな身体拘束能力を作成している。系統的にはそこまで相性が悪くないものの、残りのメモリ量を鑑みると強力に成りにくいが、既述の制約に加え、『クロロに致命傷を与えた者に対象を限定する制約』と『五感を失う誓約』を課して漸くそれなりになった。
今、クロロは光も匂いも痛みも音もない闇の中に居る。
『五感を捨ててから自爆しろ』
この非人道的命令を何の心的抵抗もストレスも無しに強要するアラタは正しく人格破綻者と言えるだろう。アラタにとってはクロロ等使い捨ての道具以外の何物でもない。欠点は購入料金が少々高く付くこと位だ。
「……地獄……に行こ……うか」
クロロが自身の右手首に押した太陽の刻印と左手首に押した月の刻印を重ね合わせる!
耳をつんざく爆発音──衝撃。
かつて倫理観を無視した非道な実験が繰り返されたこの研究施設、通称"箱庭"が砕け散る。本来の『
天井も壁も破砕され、戦場が空と繋がる。4月のパドキア共和国は春の匂いが空に流れている。
パラパラとコンクリート片が零れ落ちる。
暫くしてから、何処からともなく1人の女が現れる。アラタが絶を解いたのだ。身体精密操作で精孔の完全閉鎖が可能なアラタの絶は、生物としての限界(生物である以上、通常は極微量のオーラは漏れてしまう)を超えた性能を誇る。
「おーおー。すげー威力。だが、敢えて言わざるを得まい」
わざとらしく咳払い。口を閉じハミング。共鳴具合を確認したら、腹式呼吸で声の支えを再度形成する。
そして、きりりとした表情で言い放つ。
「やったか!?」
アラタは隙あらばネタをぶっこもうとするナイスガイもといプリティウーマンだ。
「……」
静寂が耳に突き刺さる。
(よし、ヒソカを探そう)
今の下りは無かったことにしてシリアスな顔で辺りを探し始める。流石のメンタルである。
そして、すぐにそれを見つけた。
(これは腕……だよな)
ヒソカの物らしき腕が転がっている。爆発の衝撃でもげてしまったのだろう。肘から先しかない。
腕の近くを探すと今度は頭蓋骨が抉れた頭部を発見した。顔は僅かにヒソカの面影を残している。皮膚が焼け、眼球も燃やし尽くされて眼窩がぱっかりと穴を空けている。
(……ふーん)
アラタがどこか白けたような微妙な顔をする。
──『
アラタから常軌を逸した圧が放たれ始める。
そして、じっとある方向を見つめる。その先には瓦礫が積み上がっている。
「出て来な」
アラタが声を発するとすぐに1人の男が瓦礫の影から現れた。ヒソカだ。五体満足のヒソカがゆっくりと姿を現した。
「いつから気づいていたんだい?♥️」
「……最初から」
「へぇ~♦️」
ヒソカが感心と愉悦を滲ませ、目を細める。
(まぁ、『死者への往復葉書』で教えてもらわなければすぐには気づけなかったろうし、対策も出来なかった。悪いなカンニングしてて)
アラタは別の世界線の自分と相談を重ねている。さらに原作知識も持っていることから言っても、甚だ有利であるはずなのだ。それでも、戦いになっているのはヒソカだからであろう。
「これ、僕の奥の手なんだけど、そんなに簡単に見破られると自信無くしちゃうなぁ♠️」
ちらりとヒソカの頭部らしき物を見やる。成る程、確かに奥の手と言うだけはある。視覚では本物にしか見えない。気のせいでなければ、匂いまで感じる。
(精巧すぎる立体映像が、先入観を前提にした錯覚に陥らせ、結果、生首が在るならば感じるであろう匂いまで感じさせている。こんなところか)
要するに、ホログラム映像(厳密にはホログラム
──『
ヒソカの奥の手の一つ。これは『
からくりはシンプルだ。鏡面の質感にした『
それだけだが、要求される技術や才能は異常な次元だ。系統複合型であることに加え、針の上に球体を置くような繊細なオーラコントロール、さらに具現化した微粒子の掌握、極めつけは光学に関する知識まで必要になる。凡人には一生をかけても実用化は能わないだろう。
だが、この能力だけではクロロの命をかけた自爆を耐えることが出来た理由にはならない。
クロロが戦っていたのが幻影だった訳ではない。いくら精巧な幻影とはいえ、クロロレベル相手に視覚による思い込みだけでは、触覚や聴覚、果てはオーラ感知を含めた広義の五感を騙し続けることは出来ない。洗練された精神や確かな経験により違和感を覚えるからだ(逆に言うとそのレベルでないと視覚による思い込みだけで五感を支配し続けられる)。
では、どうしてヒソカは無事なのか。その理由もアラタは知っている。
(なんてオーラだ。まさに死そのもの)
──『
この能力の存在こそが、ヒソカに『自身こそが最強である』との揺るぎ無き自負を与えている。
滑稽な道化にして、最強最悪の死神。
アラタの戦いは漸く本番を迎える。