【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ 作:虫野律
あの日、アラタはニコルんの手配により救出され、その後、一週間ほどの昏睡を経て目を覚ました。
それから更に二週間。それなりに回復し、ニコルんの家で怠惰を極めていると、そいつは現れた。
──キィ……。
深夜、皆が寝静まった頃になんとなく目を覚ましたアラタは、ドアが開く音を耳にする。
(ん?)
ドアが開いた。と思ったらよく知る気配がうっすらと感じ取れる。曲者はほとんど絶の状態で来訪したらしい。ご苦労なこった。
1人の人間がアラタの部屋にするりと侵入した。
「やぁ♥️」
ヒソカだ。パッと見、五体満足のようだ。
(うげ、やっぱりヒソカかよ。何しに来たんだ? 今は戦えないぞ)
「何しに来たん?」
ヒソカがにっこりとマジキチスマイル。
「復讐♠️」
「ウッソだー」
だって殺気が無い。
「じゃあ気分かな?♣️」
ヒソカがクツクツと笑う。
「何それ。『ヤりたい』っつーのをオブラートに包んでんのか?」
オブラートに包むキャラではないだろう。むしろ曝け出すスタイルだ。
「そうだと言ったらどうするんだい?♦️」
心底楽しそうだ。
「私、好きな人が居るの。だからごめんなさい」
唐突に青春映画のヒロイン風の演技を始めるアラタ氏(妊婦)。声質が変わりすぎてキモい。
仕掛人たるヒソカに与えられた身体精密操作能力は失っているが、失うまでに修得した技術はある程度再現可能だ。いわゆる身体が覚えているというやつである。こいつに余計な能力を与えた仕掛人は極悪人そのものだ。
アラタの恋してます宣言に、ヒソカが呆けた顔をする。
「……え?♠️」
「え?」
2人の間には致命的な認識の違いがあるようだ。しかし2人とも世間一般からずれている自覚はあるので得意のスルースキルを発揮し、何事も無かったかのようにシリアス()な雰囲気を醸し出す。なんという悲しい光景だろうか。
「……」
しばしの沈黙の後、ヒソカ(真顔)が口を開く。
「……産むのかい?♣️」
「そのつもりだけど……ハ! まさか妬いてるのか!?」
そんなわけはない。
「嫉妬で子宮を抉り出してしまいそうだよ♦️」
ピエロが子宮を抉り出す絵は間違いなくホラーである。
(うしし。誰の子か教えてやろうそうしよう)
アラタが卑猥(?)な顔になる。ヒソカは微妙な顔になる。
頬を赤らめてはにかむ。大変器用である
「あなたの子よ」
今度は昼ドラ不倫女風だ。こっちはそこそこ似合っているような気がしないでもない。しかし膜の無い処女である。
「……身に覚えがないんだけど♠️」
「!? そんな……。あんなに激しく(戦いを)求めてくれたのに! ヒドイ!」
キモい!
ヒソカが言う。
「念……かな」
「……さぁ?」
(まぁ、普通に考えたらそうだよね。バレるわな)
「ふーん」
しかしヒソカは深く突っ込む気はないようだ……が、ふいに顎に触れてきた。
「何もしてないのに父親になるのって損じゃない?♣️」
「……まぁ、確かに」
(男の感覚ならそうかもね。なんとなく分からなくはない)
「私と敵対しないって約束するなら好きにしていいよ」
アラタは胸と
「うーん、それはちょっと……♠️」
ヒソカは乗り気ではない。
(こいつ……)
「おい。貴様、ヤってからヤるつもりだったな?」
「勿論♥️」
(鬼畜変態ピエロ。少年マンガに出ていい人間(?)じゃねぇな)
ヒソカを見る。話の内容とは裏腹に、殺気も無ければ“ズキューン”もしていない。
(本題はなんだ?)
「いい加減、本題を言え」
またマジキチスマイル。そしてたっぷりともったいぶってから言い放った。
「一緒に暗黒大陸に行こう♥️」
「は?」
ヒソカは愉しそうだ。アラタは愉しくなさそうだ。
「アラタなら付いて来れるだろう?♠️」
(それは……)
「そうかもしれないけどさ。自分、子育てあるんで」
ヒソカがキョトンとする。
「産みの親なんて居なくても問題無いよ♣️」
「……確かに」
実体験に基づく正当な意見である。
「じゃあ決まりだね。出産が終わった頃に迎えに来るから♥️」
「おい。ちょっ……」
アラタが言い終わる前に完全な絶を実行されてしまった。もうどこに居るかは分からない。
「はぁ……」
ため息が出る。
一難去ってまた一難。どうやらアラタは呪われているようだ。
(まぁでも俺の人生なんてそんなもんだよな)
あるいは運命なのかもしれない。
カーテンの隙間から月明かりが射し込んでいる。
ふと思う。
(子どもの名前訊いとけばよかったかな)
でも、とりあえず今は眠ろう。なんか疲れた。
ややあってまた夢に堕ちる。寝顔は穏やかだが、前途多難である。
次はどんな
血塗れの運命はまだまだ終わらないようだ。
エピローグを人生で初めて書いてみました。
これで本編完結のつもりです。
こんな小説をここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!