【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ 作:虫野律
第2試験会場では、例の怪音が鳴っていた。
「ヒソカさんや、この音は何かねぇ?」
魔女の物真似かな?
「さぁ?◇」
ヒソカは肩を諫める。
(ノリ悪! もっと面白おかしくいこうぜ)
怪音が聞こえていた建物から2人の人物が出てくる。
「はーい、注目!」
怪音の源である巨漢のハンター──ブラハと露出が激しい女性ハンター──メンチが2次試験の試験官だ。
「これから2次試験を始める。一回しか説明しないからちゃんと聞くよーに!」
メンチが歯切れよく言いきる。緊張が受験者に拡がる。次はどんなえげつない無理難題を課されるのか。
「私達、グルメハンターの試験は、ズバリ料理よ!」
料理、食に対し並々ならぬ情熱を燃やすメンチによる最初の篩掛けが行われる。
「はぁ? 料理だぁ!? 舐めてんのか! 俺はブラックリストハンター志望なんだ。おままごとは一人でやってろや」
「そうだ! そうだ!」
……アラタは某国議会でも上位に食い込めるであろうキレとノビとコクのあるヤジを飛ばしている。
本来はグルメハンターを舐めている想像力の足りない受験生を落とす意図を持っていたメンチだったが、アラタのせいで何かモヤっとしてしまう。
アラタの考えはこうだ。
(この料理試験の下りは、はっきり言ってタダの茶番だ。本番はネテロ会長が来てから。時短の為にもメンチにはさっさとぶちギレてもらって、無理難題を吹っ掛けさせないと)
アラタの2次試験前半のスタンスは、『煽り倒して行こうぜ! ~議会ヤジ風味~』だ。
因みにブラックリストハンター志望のナイスガイ──以下ブラックさんと仮称する──はハンター協会の仕込みである。サクラに釣られるバカを炙り出す仕事を請け負っているのだ。本職は一つ星のブラックリストハンターである。戦闘能力はこの場でトップクラスだ。
「飯なんてレンチンとお菓子とジャンクフードで十分だぞ!」
「そうだ! そうだ!」
レンチンがどうのと言っているのもアラタなら、ヤジを飛ばしているのもアラタである。身体精密操作で声帯閉鎖、ブレス、共鳴を巧みに操り声質をしっかりと使い分けている。
アラタの奇行に一つ星ハンターも困惑する?
答えは、否だ。
ハンターなんてネジの外れたキチガイ集団だ。
「お! 嬢ちゃん見所あるじゃねぇか! あの軟弱露出狂にモット言ってやってくれ!」
アラタに便乗してきた。実に楽しそうである。
仕込みであって、ある程度の台本もあったのだが、メンチの顔を見るにそんなことは頭から抜けている。
「グルメハンターは金の無駄だ! 即刻、資格停止だ!」
「よ! 流石だぜ! 誰も恐くて言えないことをスパッと言っちまうとは、イカすぜ!」
ブラックさんもノリノリだ。
「今まで使った無駄金を直ちに返納せよ! 冗談は変態的な格好だけにしろー!」
「ぷっはwwそんなんだから彼氏に振られるんだぞー!」
ブラックさんは同僚のプライベートなことにまで言及し出す。ブラハが面白い位に焦り出す。
「イイコだから、変態プレイは妄想だけにしましょうねーwww」
ブラハの顔から血の気が無くなっていく。怪音──ブラハのお腹の音も小さくなっている気がする。
(フヒヒ。いい感じぃ。チョー楽しー)
メンチについて少しだけ述べさせていただく。メンチは、有り余る元気をもて余していた10代の頃にちょっとだけやんちゃをしたりもしていた元ヤンさんだ。今となっては、いい思い出だが、その本質はまっったく変わっていない。ハンターになってからはエネルギーを上手く発散する矛先が沢山あるので、昔のようにガンギレでメンチを切るなんて久しくしていないだけのことだ。
つまりは、この2人のナメタモノイイを静かに我慢するなど不可能である。結果、試験を忘れて殺意の波動に目覚めてしまう。プロハンターらしい強靭にして美しい堅──オーラを練り上げ、多量の顕在オーラを体表に纏う技術──だ。堅により攻防力が飛躍的に向上する。強化系寄りの放出系であるメンチは強化効率も良くステゴロも得意だ。むしろ大好物だ。ちなみにアラタは他の特質系能力者に比べても強化効率が極めて悪いのでステゴロは大の苦手だ。
「あんたら、ふざっけんじゃないわよ!」
シナリオではブラックさんがメンチに殴りかかり、返り討ちにあい、戦闘専門のハンターで無くても高い武力と覚悟が必要と知らしめることになっていた。勿論、オーラは使わないつもりだった。会長からも念押しされている。
しかし、メンチは上司の指示などシカトする。もはや、ネテロの言葉など頭に無いので、シカトしている自覚もない。
瞬間的に体幹にオーラを集めバネのような踏み込みを実現する。さらに地を蹴る絶妙のタイミングでオーラに指向性を持たせて爆発させることでロケットばりの加速をする。
メンチは本気だ。もはや、どうなったっていい。こいつらだけは必ず殺す。
ゴンさんリスペクトだろうか。いずれにしろアラタは絶体絶命だ。
(ちょ! 聞いてな)
アラタの思考をぶったぎるようにメンチが肉薄する。このままでは、アラタで作ったメンチカツが完成してしまう。
「殺すのは困るなあ♠️」
ヒソカが急所だけは外れるように、バンジーガムを接着、伸縮することでアラタを少しだけずらす。ヒソカの希望としては、メンチの攻撃によりアラタの下半身を爆散させて再構築能力の限界を見極めたかったのだが、ブラックさんにメンチの蹴撃を止められてしまう。
「おいおい。相変わらず喧嘩っぱやいじゃねぇか。いい年なんだから自重しろっつーの」
お前が言うな!
受験者らの心がまたしても一つになる。ジャンプらしく友情に目覚めたに違いない。実にホッコリする光景だ。
それはそれとして、これだけ煽られたら、仏も3度を待たずして天罰を下すだろう。メンチは十分、健闘した。
メンチは人生のパイセンからの有難い忠告を無視してパイセンことブラックさんに打撃戦を仕掛ける。
ブラックさんは、1つ星ブラックリストハンターの肩書きに何ら名前負けすることなく洗練された技術で以て連撃をかわし、いなし、そして、メンチの僅かな癖を短時間で読み切り意識の埒外のタイミングに、掌底を腹部に優しく添える。ブラックさんの、ともすれば、場違いとの謗りを受けかねない穏やかな所作は、嵐が気紛れに沈黙したかのような薄ら寒いものを、固唾を飲んで見守る受験者達に与える。
「いい加減にしろ!」
ブラックさんが言うや否やメンチが平行に弾かれたように飛んでいく。ブラックさんは掌底からオーラを一瞬で大量にメンチへと叩きつけたのだ。ただそれだけのことだが、彼程の錬度を誇ると必殺の爆撃に変貌する。
硬質な破裂音にも似た衝撃が耳をつんざく。
メンチが2次試験会場に衝突したせいだ。本来寿司を作る筈だった建造物に大きな亀裂を生じさせ、メンチは漸く止まる。
「やったか!?」
まっっったく反省していないアラタによる合いの手が入る。見上げた芸人根性である。
「……! 来るぞ!」
油断なくメンチを観察していたブラックさんの言葉だ。メンチが作り出した光景に受験者達から驚愕が錯綜する。
「な! バカな!」
「何が起きている!?」
「トリックなのか!?」
メンチの発、『
メンチの発は放出、強化、操作をバランス良く鍛え上げることで完成する系統複合能力だ。包丁やフォークを念力のように手を触れずに大量に操作するというシンプルなものであるが、それ故にオーラの費用対効果、汎用性や使い勝手は抜群にいい。極めて完成された能力と言える。
「んー。悪くはないけど好みじゃないね◇」
ヒソカの琴線には触れなかったようだ。メンチの今日一番の幸運だ。この点以外は散々なので、プラスかマイナスかなら、当然、マイナス──厄日である。
(うわー、念能力をフルオープンだよ。場所を弁えろよな。ダメだなー、メンチ君は)
お前が言(ry
「あーあ。こりゃ始末書じゃ済まねぇな」
お前が(ry
身勝手にもブラックさんは呆れ顔だ。この2人、自分の言動を棚にしっかりと収納している。こんな奴らが強大な力を持っていると思うと残念でならない。
メンチが明確な殺意をアラタに向ける。
(メンチ、ブッチしちゃってるよ。絶対勝てねーわ。怖いわー)
アラタも年貢の納め時だろうか。
(でも大丈夫! ヒーローがそろそろ来るはず!)
アラタが徐に空を見上げる。すると、上空の飛行船から着地地点を見極めようと地上を覗いた最強の一角、ネテロ会長と目が合う。
(あ、やべ。何か嫌な予感が……)
──ふむ。ワシに気づいたか。それにあのオーラ……。面白い。ちぃと遊んでやるか。
アラタの
ちなみに、ブラハとメンチの登場からネテロ到着までのタイムは10分もかかっていない。これにはRTAガチ勢もご満悦だ。流石アラタさんやで! 自分で寿命を縮めるとは恐れいったぜ!