【完結】ヒソカは雑魚専? よろしい、ならば転生だ   作:虫野律

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先の展開がお分かりになっても、ネタバレに繋がる様なご感想は、ご予想も含め、控えていただけますよう、お願い申し上げます。
お時間を割いて読んでくださった方にお願いしてしまい、申し訳ないです。


もう嫌! こんな(なんちゃって)シリアス!

 2次試験を終え、3次試験の会場に向かうためにアラタは飛行船の1室──2流ビジネスホテル程度──で今後のプランを整理していた。小さなテーブルにはメモ用紙が用意され、傷のないキレイな左手にはペンが握られている。

 

 幸運にも1人部屋を与えられた訳ではないが、誰も同室になりたがらなかった為、結果的にベッド2つの部屋に1人だ。

 

 時間はあと少しで夜の8時になろうかというところだ。3次試験は明日の朝から始まるらしい。思い返せば濃い1日だった。ニート生活からは想像も出来ない忙しさだ。

 

 シンと静まり返った室内には、チクタクとアナログ時計の奏でるリズムだけがBGMだ。

 

 そろそろ、寝ようかと立ち上がった瞬間、オーラが勝手に練り上げられる。

 

(! まさか、外部から操作されている!?)

 

 アラタは自己暗示にも似た制約と誓約により操作系の能力は受け付けないはずだ。

 

 今度は、右手が天井を指差すような形になり顔の前に移動する。

 

(完全に俺の意思を無視して動いている! しかし、何故!? どうやって?)

 

 予想外の事態に幾つもの疑問が浮かぶ。しかし、どれも答えは分からない。

 

 そして、人差し指の先にサトツがした様に、オーラで文字が形成される。文字はやがて幾つかの単語になり、拙いながらも文章の形式を備える。それを見たアラタの顔に最初に浮かんだのは、疑問。しばし沈思黙考。オーラの文章が追加され、また思考。そして、一つの可能性、筋書きに到達する。

 

(そんな! まさか。いや、でも、それなら……)

 

 今、アラタが考えていることは未だ仮説に過ぎない。しかし、一度、気づいてしまうと、あり得ないと笑い飛ばすことは出来ない。

 

 頭の中ではぐるぐると混乱にも似た思考が止めどなく流れる。

 

 チクタクチクタク。

 秒針の音を再び認識した時には、アラタはいつも通りの感覚、つまりは操作されていない状態に戻り、オーラの文字も消えている。時計は悠に8時を回っていた。

 

 一気に情報量が増えたアラタは一先ずの結論を出した。

 

(よし! ヒソカとセックスしよう!)

 

 なんでやねん。今までのシリアスはどこへ行ってしまったのか。

 

 アラタはこうしちゃ居られないと、部屋を飛び出して行ってしまった。

 テーブルにはごちゃごちゃと纏まりのない文字郡が解読の困難な程、汚い字で詰め込まれたメモ用紙が置きっぱなしだ。アラタが先程のオーラの単語を見て半ば無意識ながら、記していた物だ。

 

 解読出来る部分だけ取り上げてみよう。

 

『嘘つき』

 

 これだけでは何が何やら分からない。何より一番分からないのは、ここからヒソカとセックスすることへ繋げるアクロバティックな思考だ。ヤベー奴だと受験者達の間では満場一致で採択されているが、それ以上じゃなかろうか。アラタは今頃、よろしくヤっているのか、追いかけてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

「ちょーっとジジイの相手をしてくれんかの?」

 

 すわ、援助交際か!? というのは冗談でネテロはアラタにボールを奪うゲームをしようと言っているのだ。原作では、ゴンとキルアがやっていた奴だ。

 

「えー、あたしぃ、カレ↑シ↓のとこに行かなきゃいけないみたいなぁ↑?」

 

 誰だお前。丁度、ハンターハンター連載当初の時期に生息していたギャルみたいな話し方だ。アラタは絶滅危惧種保護系の幻獣ハンター志望なのか。

 

「まぁ、そう言わずに。もしワシからボールを奪うことが出来たら、ハンターライセンスやってもいいぞ?」

 

 アラタの目が怪しく煌めく。また、糞みたいなことを考えているに決まっている。

 

「ハンターライセンスわ↑自分で取れるから要らないよ↑ぅ↓」

 

「ほ、ほ。言うじゃねえか」

 

「その代わり、グリードアイランドのカードをちょう↑だーい」

 

 グリードアイランド。このゲームを知っているのはおかしくはない。存在自体は公表された物だ。しかし、クリア報酬にゲーム内のカードの外への持ち出しが含まれるという情報はプロハンタークラスでないと入手は困難だ。

 

「……どこでそこまでの情報を手に入れた?」

 

 ネテロは好好爺然とした装いを脱ぎ捨て、抜き身の日本刀の様な本性を見せる。

 しかし、この女、その程度でビビる様な可愛げがある奴ではない。

 

「ひ・み・つ♡」

 

 それにしても、この女(男)、ノリノリである。まだ女歴は1日もないのに何の抵抗もない様だ。

 誤解のない様に言っておくが、アラタは元々、同性愛者等の性的少数者ではなく、ありきたりな異性愛者だった。筈だが、ちょっと疑わしいですね(真顔)。まぁ、見た目は完全に女だから一切問題無い(?)ね。むしろ、男の見た目であった方がずっといいね(確信的迫真)。

 

「無理矢理、自白させる手段は幾らでもあるが、まぁそこまでのことじゃねぇから聞かないがよ」

 

 どうやらネテロは、日本刀を鞘に納める気になったようだ。こんだけウザイ話し方されたら、バッサリいきたくなるだろうに、観音様のごとき慈悲深さだ。なお、能力の方は無慈悲でえげつない模様。

 

「わーい。やさすぅいー」

 

(なんか、この喋り方、疲れてきたな)

 

 でしょうね。人間、慣れないことはするもんじゃない。

 

(飽きたしやーめた)

 

 マイペースの極みだ。これは本来の主人公ともいい勝負だ。

 

「で、欲しいカードというのは何じゃ?」

 

 ネテロは聞くだけ聞いてやる、というスタンスで訊ねる。

 

「私が欲しいのは、『□□□□□□□□』と『□□□□』。ダメ?」

 

 2種類も要求するとは本当に肝が据わってるというか、いい性格してるというか、まじヤベー奴だ。

 とりあえず、無駄に洗練された上目遣いをやめて欲しい。ガワだけ見るとそれなりに見えるのが、憤死ものだ。

 

「そうじゃのう、それだけの要求をするなら相応のハードルを越えないとなぁ?」

 

 また2次試験の時の様に、サディスティックな笑みを浮かべる。気のせいでなければ、画風が変わったような激変ぶりだ。

 

(んー? ちょっとミスったかなぁ?)

 

「ハードルと言うのは?」

 

「ワシからボールを奪うこと。勿論、ワシは念を使う。そして、お主だけは発を禁止する」

 

 勿論、ワシは念を使う。なんというパワーワードだろうか。

 

「はぁ?」

 

 つまり、百式観音も4大行も応用技も全て有りのネテロから、発を使わずにボールを奪うことがクリア条件だ。難易度インフェルノで縛りプレイしろや! ということらしい。

 

(難易度高過ぎワロタ)

 

 クソゲー愛好家の偉人(ドM)達も匙を投げかねない鬼畜仕様だ。

 

「発位いいじゃん。ずるくない?」

 

「……お主、特質系じゃろ。どんな能力か知らんが、はめ技でクリアされたら興醒めだしの」

 

「何故バレたし」

 

「ピエロの男に流を使ってそれなりの攻防力比率で蹴りをしてたじゃろ。いくらお主の錬度が低いとは言え、あの威力は強化系が苦手な系統以外有り得ん。後は特質系の奴特有の妙な気質を持っているように見えた」

 

 これは勘に近い、経験則によるものだがの。ネテロはそう結んだが、その判断を確信していることはアラタにも分かった。ネテロは依然として試すようにアラタを見ている。

 アラタはウンウンと悩む素振りを見せる。

 

「本当にカードくれるの?」

 

「ボールを奪えたらな」

 

「……分かった。やるよ」

 

 アラタに何か考えがあるのだろうか。此方も画風が変わったかの様だ。ネテロが、お前はもう死んでいる的な雰囲気で、アラタが、計画通り! みたいなそれだ。混ぜるな危険という有難い教訓を知らないのだろう。カオスである。

 

 さて、突然で申し訳ないが、アラタの奴隷ことニコルとの一幕を語らせていただく。時は、力が欲しいか(笑)とかアラタがほざいた直後に遡る。

 

 

★★★

 

 

「欲しい……。力が、全てを屈服させる力が欲しい!」

 

 ニコルの魂から絞り出した慟哭は悪魔に届いたのだろうか。

 ニコルの求めた物、それは自分の人生を決定してきた様々なものからの本当の意味での解放を可能とする力だ。それは権力かもしれないし、知力、武力や財力、あるいは魅力かもしれない。ニコルにとっては力の内容は何でもよかったし、今はまだ具体的には分からなかった。

 ただ、ニコルも分かっているのだ。今の生活は砂上の楼閣、あの女の気分一つで豹変するものだ。

 普通ならば、逃げれば良い、と考えるだろう。しかし、ここでニコルの元来の性分がそれを許さない。

 

 それは、超が付く負けず嫌いであることだ。

 

 従って、逃げるなどあり得ない。安易に殺すなどもっての他。真の意味で自分に屈服させてこその解放だ。そして、屈服させる対象は、あの女だけに留まらない。今まであの女の行いを見て見ぬフリをしてきた自分にだけ優しい法律上の両親。あの女と結託し、ニコルを傷付ける為に初恋の少女を演じた生ゴミ。ニコルの苦しみを面白いドラマでも観るように安全な所から見下していた使えない使用人。ニコルの家の財産や権力にしか興味のない自称友人達。他にもニコルの中に居る敵は多岐に渡る。

 とにかく、ニコルは自らの力で以て敵の大群を一人残らず屈服させ、今まで自分を苦しめてきたものから解放されたいのだ。

 

「お、おう」

 

 ニコルの剣幕に悪魔(笑)も押され気味だ。いい気味である。

 

「力が手に入るなら、何でもする! 金もどんな手を使ってでも必ず用意する! 殺しも盗みもどんな犯罪もやる! だから、蹂躙する力を! 力を!」

 

(うわー。ちょっと人選ミスったかなー。特殊型のサポートポケモンだと思ったらゴリゴリのAぶっぱの物理アタッカーじゃん)

 

「カタカタカタ」

 

 アラタの奇行を真顔で見ていたギタラクルが、アラタに何事か伝える。

 

「今さらやっぱり共有持分を3分の2渡せとか言ってもダメですぅ! 大体、私が言ったのより増えてんじゃねぇか!」

 

 仕方ないね。過半数とか3分の2以上とかはしょっちゅう分岐点になる重要な数字だ。

 それにしてもニコルは知らず知らずの内に、老舗の大手企業に売り込むことに成功したようだ。流石はエリート。就活の苦労など知ったことかと言わんばかりだ。なお、入社後は真っ黒クロ助な待遇が待っている模様。

 

 わざとらしい咳払いを一つしてアラタはニコルに向き直り口を開く。

 

「よろしい。気に入った。今後は我輩に絶対の忠誠を誓うこと。それが条」

 

「誓う! 忠誠を誓う!」

 

「お、おう」

 

 食い気味にがっつくニコルにドン引きである。もしかして手始めにアラタを屈服させようとか考えてるのだろうか。頑張って欲しいものだ。勿論、ニコルに。

 

(力つっても無理矢理、精孔を開いて念に目覚めさせるだけなんだけど、満足してくれるか不安になってきた)

 

「では、力を与えよう。しかし、これは危険を伴う故に我輩の試験が終わった後に……」

 

 今すぐに貰えないと察した辺りから、ニコルから剣呑な空気が漂い出す。よく見るとオーラが漏れ出している。更によく凝らして見ると精孔が開きかけているような気がする。いやいや、いくら凝をしても精孔までは見えない。きっと色々あって疲れているせいだ。アラタはその様に自分を納得させる。

 

「えー、予定と違うけどもういいや。チチンプイプイ」

 

 軽い口調でふざけた呪文を唱えてオーラを出来るだけ多くぶつける。正直言って精孔を開くやり方なんて分からないから、テキトーに大は小を兼ねるの精神でケセラセラしたのだ。やられる方はたまったものではない。

 ここで注意したいのは、アラタのオーラ量だ。強化系統は極端に苦手だし、大体のオーラの技術もど下手だし、素の身体能力もショボいが、その潜在オーラ量は人類最強を軽く上回る程である。アラタのチートクラスの発を実用化するには、このオーラ量が絶対条件なのだ。

 つまり、何が言いたいかというとニコルが心臓麻痺で死んでしまっても何ら不思議はないということである。

 

「! これは、なるほど、こうするのか」

 

 なんということでしょう。ニコルはふつくすぅい纏をしているではありませんか。アラタやギタラクルと自分を見比べ瞬時に正解に辿り着いたようだ。

 死ぬ程のオーラをぶつけられていながら、この対応。ニコルも間違いなく天才、それも尋常ならざる才気の持ち主の様だ。

 

「えー。こんなのって有り?」

 

 下手するとアラタより纏が上手いまである。というか確実に上手い。

 徐にギタラクルが針を取り出す。

 

「コラコラ。それは取引(・・)の趣旨に反するんじゃないかい?」

 

 取引というワードに何か思い入れでもあるのだろうか。一瞬だけ、刹那の間、ギタラクルが緊張したかのように見えた。いや、これもアラタの気のせいだろう。冷酷で独裁的な人形のごとき人間が言葉程度で緊張する訳がない。

 

「カタ?」

 

「ダメですぅ。ニコルんは私の物ですぅ」

 

 しょうがないなぁとでも思ったのか、ギタラクルは針を仕舞い込み、引いてくれた。

 2人が茶番を演じる間にも、怪物は加速度的に進化していく。

 

「この熱い蒸気の様なものは顕在量の増減、身体での分配比率の変化、形状の変化、気配の希薄化、それにその人を見るに物体への付加も可能なのか」

 

(え! ちょっと嘘でしょ!? 教えることガンガン減ってるよヤベー。このままじゃ恩を売れない)

 

 なんちゃって悪魔はセコイ思惑が頓挫しそうになり焦り出す。

 

「焦るな、ニコルんよ。先ずは基本的な知識、概念を正しく理解するのだ。急いて、取り返しの付かないことには成りたくないだろう?」

 

(悪魔ロールプレイ飽きてきた。もういいや)

 

 だから、マイペース過ぎるだろ。そして飽きっぽ過ぎ。

 

「……分かりました。貴女がそうおっしゃるのでしたら、従います」

 

「じゃあさ、私達、試験に戻らなきゃいけないから携帯とか通信機器を持ってたら渡して。ニコルんと連絡取れないと困るから」

 

 いきなり普通の口調になってもニコルに動揺はない。華麗にスルーしている。

 

「これをどうぞ。カメラ機能が充実した最新の携帯です」

 

 ニコルが差し出したのはてんとう虫型の携帯電話だ。機能的にはガラケーとデジカメを足した感じだ。

 

「ニコルんとは今はメールでやり取りするしかないのね」

 

「いえ、僕は携帯は2台持っているので、メール以外にも普通に通話できます」

 

「さっすが、オタク臭いだけはある! よーし、じゃあ移動中も力について伝授できるね。これは捗るわ」

 

 はしゃぐアラタだったが、すぐに真顔になり、真剣な声音で最初の命令をする。

 

「もし、私が不思議な動画を送り、夜の12時までに電話をしなければ、その動画をなるべく多くの人に見て貰える様に公開しなさい。これが最初の命令。いい?」

 

 ニコルはアラタの雰囲気とオーラが変わったのを察知して神妙な面持ちで静かに、かしこまりました、と告げる。

 ついでにこの蒸気が感情や精神に影響を受けるものと推察する。

 

 なるほど、全体像が見えてきた。

 

 ニコルの成長スピードはギタラクルをして、上位1%の中でも上澄み中の上澄みたる圧倒的なものと認識させる。 

  

「よろしい」

 

 アラタは念に関する注意点だけ先に伝えて、ニコルの下を発った。

 

 それでは時間を戻そう。嫌な予感はデフォだから気にしないで欲しい。

 

 

 

★★★

 

 

 

「それじゃあ、始めるぞ?」

 

「うい」

 

「では、始め!」

 

 ネテロがオーラを練り上げる。全力には遠く及ばないものであるが、一撃でアラタの堅を突破し致命傷を与え得る凶悪さだ。

 

「一つ、言っておかなければならないことがあるんだ」

 

 アラタがネテロの気勢を削ぐように軽妙な調子で告げる。

 

「なんじゃ? 今さら止めたいというのは聞けんぞ」

 

「違う。違う。先ずはこれを見て欲しい」

 

 そう言ってアラタは携帯の画面をネテロに向ける。普通ならば能力の発動条件を疑う所だが、今回に限ってはその心配はいらない。

 ネテロは妙な胸騒ぎがしつつも、小さな画面を注視する。距離にして数メートルは離れているがネテロにとっては障害にならない距離だ。

 

「あー、そういうことか。これは油断したのぅ」

 

 画面には、宙に浮かんだ調理器具と食器、その中心に居るメンチがバッチリと動画で映し出されている。見ようによってはメンチが浮かんだ包丁等をコントロールしているようだ。

 

「私が決められた時間まで電話をいれないと全世界に公開される手筈になっている」

 

 勿論、トリックか合成と認識されるのが普通だろう。それはアラタも重々承知している。だから、追加で次の様な命令を出した。

 

「動画タイトルは『グルメハンター・メンチの念能力徹底考察~念能力の基礎から理解編~』よ。これに解説文と解説音声を付ける。ここまですれば疑いながらも興味を持って調べる輩がそれなりに出るわ」

 

 それは不味いでしょ? と囁くように、されど、しっかりと届くように付け足す。まるで魔女のように危うげな空気を放っている。

 

「勿論、私はそんなことしたくないわ。全ては会長(・・)が決めることよ。さぁ、ご決断を」

 

 ニタァと嗤う様は、暗い奈落の底に溜まったヘドロを思わせる。

 

 ネテロは、はぁ、とため息をつく。

 

「あーワシの思慮不足が原因だ。わかった。負けを認めるよ」

 

 そう言ってボールを投げる。ボールが山なりにゆっくりと軌道を描くが、アラタはここで気づく。

 

 慌ててボールの軌道から離れる。遅れてボールが床に落ちた瞬間。

 

 破砕音。砕ける床。

 

 そう、ボールには周がかけられていたのだ。これはネテロのちょっとした負け惜しみじみたイタズラだ。当たれば、アラタは重傷を負うがネテロにとっては気にするようなことではなかった様だ。ちっと舌打ちをして不発を嘆いている。

 

「これはネテロ会長に乱暴されたと告発動画も付け足す必要が有りそうね」

 

 にっこりと微笑むアラタに、ネテロもにっこりと微笑む。

 2人の相性は頗る悪い。犬猿の仲とはこやつらのことである。

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 日本の某所、あまり評判の良くない大学病院の個室で、高校生位の年頃の1人の少年と1人の少女が窓の外を見ている。

 

 静かに少女が口を開く。

 

「君が死んだら肺を頂戴」

 

「……」

 

「その代わり、私が死んだら心臓をあげる」

 

「……」

 

「名案でしょ?」

 

 振り返り、少女が楽しそうに微笑んだ。

 

 これは、彼女が彼だった頃のもう随分と昔にした約束。

 

 今はもう……。

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