デュエルアカデミアJK。   作:ごごみ

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デュエル開始ィ!


#1 遊を継ぐ者

海馬ランド デュエルアカデミア入試試験会場

 

 

 

 

 

「わぁ、人が沢山。受験生の方だけではなく在校生の方まで」

 

今日は、高校の入学試験。

筆記試験は終えて今日は実技試験です。

試験会場には、おそらく私と同じように試験を受けるであろう同じ位の年頃の方達がこれから使用するであろう"デッキ"とにらめっこしたり、あーでもないこーでもないと唸っている光景が見られます。

 

そう、私がこれから試験を受ける学校には筆記試験だけではなく、"デュエルモンスターズ"を使って行われる実技試験が存在します。

 

その学校の名はデュエルアカデミア。

少し年の離れた私の親しい友人の方がオーナーを務めており、名前の通りデュエルを学ぶ場所です。

 

その為、筆記試験だけではなく、デュエルを行うという訳です。

 

尤も、私がこの学校を受けるのは、同じく私の友人であるオーナーさんの弟さんを通してこの学校の実態調査という形で入学してほしいと頼まれたからなのです。

私はこの試験会場の海馬ランドがある童実野町に住んでおり、特に希望もなく、このままなら童実野高校へ進むのかなと何となく考えていました。

それに私に拘りが無かったとはいえ、大事な友人の頼みですから二つ返事で了承しました。

本来なら実態調査は入学生の生徒に任せず、第三者機関でもあるアカデミア倫理委員会という方達が行うそうなのですが、あまりオーナーの方が信用しておらず、また、理事等上層部の方達も実態が不透明で信ずるに値しないとのことでした。

 

厳しい方なので仕方がないとは思いますが、私のような小娘を友人ご兄弟の方が信頼してくれているというのは不謹慎ながら嬉しいと思います。

 

さて、そろそろ試験が始まるようです。

受験番号が大きい方達から呼ばれるようです。

 

私の受験番号は2番です。

受験番号は成績の順位になります。

筆記試験には自信がありましたが、多数の受験者の中から2位という訳ですので、この受験票が届いた時には思わず喜んでしまいました。

 

オーナーの方は「やるからには1位を取るくらいの気概で往くがいい!2番に決して甘んじるなよ!精々実技ではヘマをしないことだな」というお言葉を頂きましたが、弟さんによると「兄サマもあれで激励しているんだ!決して責めてる訳じゃないからな。改めて筆記試験合格おめでとう!実技もお前なら余裕だろうけど頑張るんだぜい!」と仰っていましたし、確かに彼の視線は厳しいものでは無かったです。

 

また、この童実野町に住む友人の方達にも試験前に激励の言葉を頂いたため、彼らの期待を裏切らないようにいたします。

 

 

 

 

 

実技試験も恙無く終盤を迎えています。

同じ受験生の方々も緊張はしているものの、殆どの方がデュエルに勝利していました。

中には試験官の方に負けてしまった方も居らっしゃいましたが、プレイングが伴っていれば不合格ということにはならないみたいです。

 

 

「では受験番号上位4名の呼び出しを行う!受験番号1番、三沢大地!2番、"高橋遊"!3番、神楽坂…………」

 

私の名前が呼ばれました。胸を借りる気持ちで行きたいと思います。

受験番号1番の方は、白い学ランを着た偉丈夫の方です。

他の方達も受験番号が良い方達は余裕があるように見受けられます。

 

私も1人ならともかく、

常に大事な友人である"デュエルモンスターズの精霊達"がついているので全く緊張はありません。

彼らは他の精霊が見えない方達にはわかりませんが、今も私の周りで楽しそうに笑い声を上げてはしゃぎまわっております。

励ましてくれているのか、私もそれにつられて微笑ましい気持ちになり、気分が高揚しています。

 

しかし、今日のデッキでは早めに勝負が決まることが無いと考えられるので、早めにデュエルを終らして、三沢さん達のデュエルを見るということが出きなさそうなのは残念です。

とはいえ展開が遅くとも私の信頼するデッキですから、意気込みはばっちりです。

それではデュエルリングに進みます。

 

 

 

 

 

「受験番号2番、高橋遊です。本日はよろしくお願いします」

「よろしい、随分リラックスしているようだ。是非存分に君の力を見せてほしい」

「はい、それでは」

 

私と、試験管の方がデュエルディスクを構えます。

私のデュエルディスクは、"王様"から"儀式"の後に「俺はもう使わないからな、これはユウ。お前が使ってくれ」と託された、大事な宝物です。

 

 

「「デュエル!」」

 

 

「先行は君に譲ろう」

「ありがとうございます。私のターン、ドロー」

 

このデッキは展開が遅い為ここで先行を譲っていただけるのは大変有難いです。

さて、この手札だと……。

 

「私はフィールド魔法、《ゴーストリック・パレード》を発動します」

 

フィールド魔法を発動した為、無機質なデュエルリングがソリッドビジョンシステムにより少しおどろおどろしい雰囲気に演出される。

すると、どこからともなく賑やかな笑い声が聞こえ、影が蠢く。しかし、その姿は現さない。

如何にも《ゴーストリック・パレード》の効果にふさわしい演出です。

 

もっとも、これは別にソリッドビジョンによるものだけではありませんが……特にデュエルに支障はありません。

 

「いきなりフィールド魔法か!見たこともないカードだ。さて、ここからどんなプレイングを見せてくれるかな?」

 

試験官の方が期待するように声をかけてくださいますが、ここからは少し地味ですね。

 

「私はモンスターをセットし、魔法・罠ゾーンにカードを2枚セットします。これでターンエンドです」

「む、フィールド魔法を発動した割に随分受け身なプレイングだな。それでは私のターン、ドロー!手札から《増援》を発動!《切り込み隊長》を手札へと加える!私はそのまま《切り込み隊長》を召喚!そして効果によりもう1枚の同名カードをそのまま手札から特殊召喚する!」

 

《切り込み隊長》さんの効果によるロックですか。単純ですが強力なデッキです。ここからどういう動きをしてくるのでしょうか。

 

「私はそのままバトルフェイズに移る!1体目の《切り込み隊長》でセットモンスターへ攻撃!やれ!」

 

なるほど、そのまま攻撃へ移りますか。

 

「いえ、セットモンスターへは攻撃は出来ません。私の発動している《パレード》の効果により、直接攻撃となります」

「何!相手に直接攻撃をさせるカードだと?どういう意図かわからないがそのままダイレクトアタックだ!」

「その直接攻撃宣言時、《パレード》の効果を発動します。私はデッキから《ゴーストリック》カードを手札に加えます。私は《ゴーストリック・マリー》を手札に加えます」

「なるほど、デッキからのサーチカードか。しかし攻撃を受けてもらうぞ!」

ユウ LP4000→2800

 

《隊長》さんが大きく剣を振りかぶります。

私の身体に多少の衝撃が加えられます。

 

「んっ、戦闘ダメージを与えられたこの時、手札から《マリー》さんを捨てて効果を発動します。デッキから《ゴーストリックの人形(ひとがた)》をフィールドに裏側守備表示で特殊召喚します。お願いします《人形》さん」

 

鏡台の中に居る《マリー》さんが鏡台に振り回され、驚いた《マリー》さんが鏡から消えてしまいます。

少しすると《人形》さんが不思議そうな顔をしてデッキから出てきたと思うと、すぐに暗闇の中に溶け込むように消えてしまいます。

《パレード》による演出と合わさって、雰囲気はバッチリです。

《マリー》さんは驚かせてしまってごめんなさい。いつもお世話になっています。

 

「なるほど、優秀なリクルーターというわけか。しかし、同じ裏側守備表示なら意味はない!このまま2体目の《切り込み隊長》でダイレクトアタックだ!さぁ、また君の《パレード》効果を使うか?」

「いえ、私は手札から《ゴーストリック・ランタン》の効果を発動!その直接攻撃を無効にしてこのカードを裏側守備表示で特殊召喚します。お願いしますね《ランタン》さん」

 

《隊長》さんを死角から現れた《ランタン》さんが驚かして、攻撃を防いでくれました。

 

「また、手札からモンスター効果か!これを防ぐとはなかなかにやるな。私はこれでバトルフェイズを終了してメインフェイズ2に移る。カードを2枚セットしてターンエンドだ」

「そのエンドフェイズ時、《ゴーストリック・パニック》を発動します。私は先程特殊召喚した2体の《ゴーストリック》、そしてセットしてあった《キョンシー》さんの3体を表側守備表示にします。そして表側守備表示にした《ゴーストリック》の数まで相手モンスターを裏側表示にします。2体の《切り込み隊長》を裏側守備表示へ。皆さん、出番ですよ」

 

暗闇から突如現れた《ゴーストリック》の皆さんが《隊長》さん達を驚かせて、皆さんを裏側守備表示にしてしまいました。

 

「何!?私のモンスターが……」

「そしてリバースした《ゴーストリック・キョンシー》の効果を発動します。場の《ゴーストリック》モンスターの数以下のレベルの《ゴーストリック》モンスターをデッキから手札に加えます。私は《ゴーストリックの猫娘》を手札に加えます」

 

《キョンシー》さんの効果で、騒ぎに釣られたように《猫娘》さんがやってきました。

さぁ、まだですよ。

 

「そしてリバースした《人形》さんの効果はこのエンドフェイズ時に発動します。フィールドの全てのモンスターを裏側守備表示にします。そして裏側守備表示にしたモンスターの数以下のレベルの《ゴーストリック》モンスターをデッキから裏側守備表示で特殊召喚します。《ゴーストリック・シュタイン》を特殊召喚します。来てください《シュタイン》さん」

 

《ゴーストリック》モンスターの中でも一際大きなモンスターの1体である《シュタイン》さんです。

身体は大きくても優しそうな表情をしています。

 

「くっ、相手のターンなのにまるで自分のターンのように展開するのだな。良いタクティクスだ」

「ありがとうございます」

 

褒められてしまいました。嬉しいことです。

 

「さて、それではチェーンするカードも無いしようやく私から君のターンだ。いくら君の《ゴーストリック》が攻撃力の低いカードばかりとはいえ、このまま《パレード》の効果でダイレクトアタックをされると厄介だな」

「いえ、《パレード》の効果によって相手プレイヤーが受けるダメージは0となります。このままでは私が直接攻撃してもダメージは通りません」

「何、随分重いデメリットだな。さてどういう返しをするか楽しみだな」

試験官 LP4000 手札2

ユウ  LP2800 手札2

 

期待されているみたいです。

私の《ゴーストリック》にしては随分と展開が早く、既に場にはモンスターが4体も居ます。《パレード》の効果か、皆さんどこか浮き足立っています。

もっとも、皆さん裏側守備表示の為、それが"視え"ているのは私だけでしょう。

笑い声はきっと試験官の方にも届いているかと思われますが。

さて、これなら……。

 

「それでは私のターン、ドロー。私は手札からフィールドを《ゴーストリック・ハウス》に張り替えます」

 

フィールドが《ハウス》に変わったことで《ゴーストリック》の皆さんが少し落ち着いたように見えます。

何故ならここは、普段《ゴーストリック》の皆さんが溜まり場にしている《ミュージアム》とは別のお家ですからね。

そしてこの《ハウス》はこの子達が本領発揮する場所でもあります。

 

「何!2枚目のフィールド魔法か!しかしこれは通さん、リバースカードオープン!《サイクロン》でそれを破壊だ!」

「ふふっ、それではこちらもそれを通すわけにはいきません。私は手札の《猫娘》さんを見せて伏せてあった罠カード、《ゴーストリック・アウト》を発動します。これにより私の場にある《ゴーストリック》カードを守ります」

「くっ、魔法カードに耐性をつけるとはやるな」

「ありがとうございます。私は場の《ランタン》さん、《シュタイン》さん、《キョンシー》さんを反転召喚します。そして《キョンシー》さんの効果でレベル1《ゴーストリック・スペクター》を手札に加えます。

そして私は《ゴーストリックの猫娘》を召喚。

《ゴーストリック》モンスターの共通効果で、場に《ゴーストリック》モンスターが居る場合のみ、彼らは表側表示で召喚できます」

「なるほど。やはり君の《ゴーストリック》モンスターは随分変わった効果を持つのだな。さぁここからどうする?」

「はい、私はそのままバトルフェイズに移ります」

「何?君の《人形》は反転召喚しないのか。プレイミスか?」

「いえ、先程お見せした《人形》さんの効果は強制効果です。エンドフェイズ時に表側表示で残したいモンスターが居るので」

「考えあってのプレイングというわけか。よろしい、ならば来い!」

「はい、それでは攻撃に移ります。《パレード》と同様、《ハウス》は相手が裏側守備表示のモンスターのみの場合、相手プレイヤーに直接攻撃をすることができます。

そして、私も戦闘ダメージを与える事が可能です。更に《ゴーストリック》モンスター以外の与えるダメージは半減されます。私は《シュタイン》さんで直接攻撃します、お願いしますね《シュタイン》さん」

 

ゆっくりと、《シュタイン》さんが試験官さんに向かって行くと、愛嬌のある動きで大きな手を振りかぶります。

しかし、相手の魔法・罠ゾーンから光が放たれます、あれは。

 

「私は《聖なるバリア -ミラーフォース-》を発動!迂闊だったな、高橋君。君のプレイングは低ステータスのモンスターを生かす素晴らしいものだったが、伏せカードは警戒せねばならないぞ。君の場の裏側守備表示である《人形》以外のモンスターを破壊!」

「いえ、私の場の《ゴーストリック》カードは先程発動した《アウト》の効果で破壊されません」

「何だと!?あれは《ハウス》を守る為だけでは無かったのか。くっ、迂闊だったのは私の方か」

「はい。これで《シュタイン》さんの攻撃は通ります」

試験官 LP4000→2400

 

「そして、《シュタイン》さんの効果、デッキから《ゴーストリック》魔法・罠カードを手札に加えます。私は《ゴーストリック・ナイト》を手札に加えます。

続けて《ランタン》さん、《キョンシー》さん、《猫娘》さんで直接攻撃」

試験官 LP2400→1600→1200→800

 

皆さんが試験官さんを攻撃(?)します。

正直、私には戯れているようにしかいませんが、なにはともあれ可愛らしいですね。

 

「くっ、一気に逆転をされてしまったか」

「私はバトルフェイズを終了して、メインフェイズ2、

《ゴーストリック》モンスターの共通効果で、1ターンに1度、《ゴーストリック》モンスターは裏側守備表示にすることができます。私は《ランタン》さん、《キョンシー》さんを裏側守備表示にします。

そして、カードを1枚伏せてターンエンドです」

「1ターンに1度裏側守備表示に……?

本当に変わっているな。しかし《シュタイン》と《猫娘》は表側攻撃表示、何かあるか」

「ふふ、それはお楽しみに、です」

試験官 LP800 手札2枚

ユウ  LP2800 手札2枚

 

「ならば私のターン、ドロー!」

「スタンバイフェイズ、私は伏せていた《ゴーストリック・ナイト》を発動します」

「このタイミングで先程サーチした永続罠か。それではメインフェイズ、私は《切り込み隊長》を……何!?反転召喚出来ないだと!?

これは一体……」

「先程発動した《ナイト》の効果です。私のフィールド上に《ゴーストリック》モンスターが存在する限り、相手プレイヤーは反転召喚を封じられます」

「しかし、生贄召喚は出来る!私は場の《切り込み隊長》1体を生贄に《無敗将軍(ジェネラル) フリード》を生贄召喚!」

 

うふふ、かかりましたね。

《猫娘》さんは《ナイト》の維持の為だけでは無いのです。

 

「この時、《ゴーストリックの猫娘》の効果発動。私の場に《猫娘》さん以外の《ゴーストリック》モンスターが存在する限り、レベル4以上のモンスターが召喚、特殊召喚に成功した時、そのモンスターを裏側守備表示にします。お願いしますね、《猫娘》さん」

 

いつの間にか《シュタイン》さんの掌の上で遊んでいた《猫娘》さんが私の言葉に合点承知!と言わんばかりにガッツポーズすると、身体を透過させて、召喚された《フリード》さんの背後に回りました。

そして姿を表した《猫娘》さんがお手々で《フリード》さんの背中をポンッと叩くと、驚いたような表情をした《フリード》さんが煙のように消えて裏側守備表示になってしまいました。

 

「何だと!?くっ、《猫娘》を表側表示のまま置いておいた理由はこれか……。私は《ナイト》の効果で何もすることができない、ロック返しというわけか。私は伏せるカードも無いのでそのままターンエンドだ」

 

「かしこまりました、それでは私のターン、ドロー。そのままメインフェイズで全ての《ゴーストリック》の皆さんを表側へ。この時、《キョンシー》さんの効果で《ゴーストリックの魔女》をデッキから手札に加えます。そしてバトルフェイズ、《シュタイン》さん、お願いします」

 

シュタインさんが最後の一撃を加えようと歩いていきます。

しかし、場に出ている《ランタン》さん、《人形》さん、《猫娘》さんが《シュタイン》さんの大きな身体に乗っかって遊んでおり、その動きは最初の攻撃よりものそりのそりと、ちょっと遅いです。

それを《キョンシー》さんは困ったように見ており。

また、手札にいる為、私にしか見えない半透明の《魔女》さんが声を上げて叱っているようです。

後ろで《スペクター》さんはそれを楽しそうに見ています。

するとようやくシュタインさんは《人形》さんと《猫娘》さんを乗せていない方の片手で攻撃し終えました。

 

試験官 LP800→0

 

「お見事、本当に素晴らしいプレイングだった。もし機会があれば私の本当のデッキでデュエルしたいものだ。

勿論筆記が2番で実技がこれなら安心して今日は帰れるだろう。お疲れ様」

「ありがとうございます、良いデュエルでした。

また機会があれば是非お願いします。

勿論、次も負けるつもりはありませんよ」

「ふふっ、言うな。ではこれで試験は終了だ。改めてご苦労だった」

 

これで試験は終了、一息つくと周りから「ワァッ」と歓声が聞こえてきました。

見渡すと、どうやら試験を受けていた4名の中で私が1番デュエルの終了が遅かったらしく、皆さんに注視されていたみたいです。

お互い合計5ターンとはいえ、私の《ゴーストリック》の効果処理が長い為ですね。

受験番号1番の方もこちらを見て拍手されています。

少し、照れくさいですね。

 

ん、あれは……1番の方の後ろに居る茶髪の受験生の少年。

こちらを見て笑顔で大きく手を振りかぶっていますが、その横で半透明で浮いてる"あの子"……なるほど、何か理由があったのでしょう。

"今朝""彼"と会った時は彼の側に居た気がしますが……、あの子も手を小さく振ってこちらにウィンクしてくれています。

私はそれに向かって小さく会釈しました、気付いてくれたみたいです。

どうやら、デュエルアカデミアに行っても旧知の友人と会えるようで少し胸が暖かくなりました。

 

軽く四方にお辞儀をすると私は試験会場を出ました。

試験結果は後日郵送ですし、"約束"がありますので。

 

 

 

 

 

海馬ランド 来賓室

 

 

 

 

 

「失礼します、高橋遊です。只今試験が終わりました」

 

私は試験会場からそう離れていない、同施設にある大層高そうな来賓室の前に訪れています。

此処にオーナーの方と、その弟さんが居らっしゃるからです。

試験が終わった後に、こちらで落ち合うという約束をしていました。

ノックすると程なくして「入れ、ユウ」と返事が聞こえてきたので入室します。

 

そこにはオーナー、いえ、海馬コーポレーション代表の"海馬瀬人"さん、そして"海馬モクバ"さんが待たれていました。

彼らとは、もう随分と長い付き合いになります。

瀬人さんが高校生の時からですから。

モクバさんも昔より凛々しくなった気がします。

彼とは同い年なのですが、学生をせずに副社長をされている凄い方なのです。

 

「よぉ、ユウ!試験見てたぞ!あれなら入学にあたってバッチシ問題無いぜい。まぁ、お前にテコ入れだなんて必要無いってわかってたけどな」

「ありがとうございます、モクバさん。瀬人さんも先日ぶりです」

「ふぅん、試験デュエル程度無傷で勝利せねばな。まぁ、キサマが使った《ゴーストリック》のテーマ的には仕方無いか。とはいえキサマがデュエルアカデミアに入学するからには下らんデュエルは絶対に許さんからな」

「へへっ、ユウなら言われるまでもないと思うけどな。

改めて入学おめでとう、ユウ。態々オレ達の頼みを飲んでくれてありがとよ」

「こちらとしても、随分キサマの為に特殊な待遇を用意してやったのだ。有り難く施しを受けるんだな」

 

そう、私が実態調査を引き受ける代わりに、私が本来入学するにあたって払わなければならない授業料や教材費などの学費を免除して頂けることになっているのです。

勿論この実態調査は生徒側、学園側にも知らされていない為、表立っての特待生というわけではなく、実費で負担していただけるということです。

そこまでして頂くのは気が引けますが、これくらい当然だ、と瀬人さんに丸め込まれてしまいました。

 

私には"親"が居ないので、渡りに船ではありました。

 

「それじゃ、ユウ。

これ、先に渡しとくぜ。

アカデミアで使えるPDAだ。盗聴対策もしっかりしてるし、プライバシーにも問題無し!オレらへのホットラインにもなるから連絡はこれで適宜頼むぜい。

あっちで使える学生用の通貨"デュエルポイント"も多少は入れてあるけど……正直お前には要らないよなぁ。

あと、これ、黒基調の"オベリスクブルー"の制服。ロングスカートとパンツスタイルの両方用意したぞ。ミニスカが嫌なんだよな?……オレもユウがあんまり露出しているのは良い気分じゃないしな

 

大変ありがたいことです。

PDAは、生徒全員に配られますが、私のはKC特製でちょこんとデフォルメされた"青眼"のマークが入っている薄めの青です。依頼された仕事をするための道具の1つではありますが、大変便利ですし、こういう小さいところに瀬人さんの愛嬌があって可愛らしいと思います。

 

こちらの制服も入学にあたってお祝いとしてご兄弟から特注でプレゼントしてくださいました。

デュエルアカデミアでは全寮制寮で3つの寮があります。

成績が良い順に"オベリスクブルー"、"ラーイエロー"、"オシリスレッド"です。

何となくオーナーの意向が見えるのは、付き合いが長い私の気の所為では無いかと思われます。

オベリスクブルーは成績の良い中等部からのエスカレーター組の方達がいる寮で、どんなに成績が良くても本来ラーイエローからのスタートになりますが、女子生徒が高等部から入学する際には全員オベリスクブルーからのスタートになるようです。

寮にはグレードの違いがあり防犯性からそうなるシステムのようですが、少しズルしている気もしますね。

 

そしてこちらの制服、普通の制服と違い、こちらもKCで特殊な加工や編み方をされているみたいでオールシーズン楽に着ることが出来るようです。

それに、私の望む通りのシルエットになっていました。

制服は改造可能ですから、これらの加工を注意されるという事はないようです。

 

最後にモクバさんが何かボソボソと呟いていましたが、独り言でしょうか。

彼なら連絡事項等があればハキハキと喋るタイプなのでとくに連絡漏れ等のミスをすることはないでしょうし。

 

「それとデュエルディスクも、そのままお前のやつを使って大丈夫だぜ。なんてたって"アイツ"の……」

「ふん、どういう原理であのとき1つしか無かったデュエルディスクが2つに分裂したのかは知らんが、それは正常に作動する。お前が"アテム"から受け取ったそれは貴様が持つに相応しいだろうよ。

オレが言うのだから間違い無い。肌身離さず持っていろ。

またオレとのデュエルをするならそのデュエルディスクでやれ」

 

そう、私のデュエルディスクはあの"戦いの儀"の際に、"遊戯"さんから分裂した"アテム"さんから頂いたものです。

本来デュエルアカデミアでは新しいアカデミア用のデュエルディスクが支給されますが、私はこれ以外を使う気にはならないので、便宜を図っていただけました。

 

「それと、今日は勿論使っていなかったみたいだが"あのカード"達もオレとのデュエルで使え。

手加減してオレに勝てると思うなよ。

アカデミアで緊急時以外に使うことは許さんがな」

 

そう、本当は今日《ゴーストリック》を使う際には融合デッキ、いや、"エクストラデッキ"からカードを出す事が可能でしたが、事情により出してあげる事が叶いませんでした。

出さなくても勝てる場面ではあったとはいえ、私としてはデュエルで使ってあげたいのですが、特殊な事情により大勢の方の目に触れる場所では召喚することができないのです。

"彼女ら"は今も気にしていない、とでも言うように私の周りをふわふわ浮かんでいますが。

それに、私には沢山のデッキがあります。

出来るだけ満遍なく使ってあげたいので、"特殊な召喚法"を使用しなくても良いデッキを主にあちらでは使用することになるでしょう。

尤も今日は試験ということで気合を入れて、最も信頼するデッキである《ゴーストリック》を使用しましたが。

 

「はい、勿論です。それにあちらでは融合召喚メインのデッキで主にデュエルしようと思っているので、特に問題無いとは思います。

勿論、それ以外のデッキもたまに使いますけど」

「ふぅん、わかっているならいい。ではオレらからは以上だ。他になにかあればモクバから連絡させる。

磯野に車を出させる。

…………精々励むがが良い、ユウ

「今日はゆっくり休めよユウ!じゃあまた入学日に会おうぜい!!!兄サマも素直じゃないなぁ

「はい、ありがとうございます。よろしくおねがいしますね」

 

そうして私は来賓室から退出して、試験会場前に受付を行っていた駐車場に戻りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海馬ランド デュエルアカデミア試験会場前

 

 

 

 

 

今日は瀬人様の側近として秘書業務ではなく、珍しく運転手という役割で待機している。

本来ならばこのようなドライバーは別の専門の業務に携わっている社員が担うのだが、今日私がお送りする方は別だ。

僭越ながら瀬人様、モクバ様の信を得ている私がお送りしなければならないのは、

海馬コーポレーションにおける最重要VIPの1人、高橋遊お嬢様。

彼女を無事に送り届けるという任を彼ら直々に仰せつかっているからだ。

そろそろ彼女がやってくる時間だが……。

 

「あっ、磯野さん!お久しぶりです。お元気でしたか?」

「お久しぶりです。ユウお嬢様。はい、私は至って健康でございます。

ではお車はこちらです、ご案内致します」

「ふふっ、もう長いお付き合いですからそんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。

でも、行き帰りにタクシーのように使ってしまい、お忙しい中申し訳ありません」

「いえ、業務ですから。それに貴方様を送迎を行わせていただけるなんて、私としても名誉なのです」

「あはは、可笑しいですね。私なんかの為にそう言っていただけると、嬉しいのですが、照れてしまいますね」

 

そう言って少し頬を紅潮させているユウお嬢様。

彼女は足こそ長いものの身長145cmと大変小柄で、当時私達が知り合ったばかりの頃はモクバ様とお変わりない体格であったが、彼女はあまり身長に恵まれなかったご様子。

それをご本人が気にかけるところは見たことが無いが、そのことを知ったモクバ様がガッツポーズしていたのは私、磯野の墓場まで持っていく秘密の一つだ。

 

また、彼女はその身長、そして我々の贔屓目抜きに美しくも可愛らしい顔立ち、そして銀色がかった桃色の頭髪、身長と違い、大変恵まれたお身体をお持ちで正直昔に比べ治安が良くなったとはいえ、この童実野町で一人歩きをすれば狙われてしまうことは間違いない。

さらに、レアカードの大量所持者でもある。

その為KC、警察が協力して彼女の身辺警護をしているのは彼女だけが知らない話だ。

 

一度警察関係者がその情報を悪用して彼女に対して"悪行"を行おうとしたこともあったが……。

私ですらその者の末路は知らない。

ただ、その時の瀬人様の怒りようは……。

モクバ様も激怒されており、一切の同情に値しないとはいえ、彼らの逆鱗に触れたからには目も当てられない相応の道を辿ったのだろう。

主である彼らだけではなく、"決闘王"、そして"城之内克也"も激怒していたのだから。

 

それ程までに瀬人様、モクバ様に留まらず、彼らの信頼と愛情を受けているのは、単に容姿のみならず、その温厚な性格、人柄、そしてデュエルの腕だ。

彼女はかつての"王国"以来様々な場所でデュエルをしてきたが、その何れも殆どを勝利している。

その年齢故表沙汰にこそなってはいないが、"バトルシティ"や"KCグランプリ"でも幼いながらに大立ち回りをしていたものだ。

故に彼女と親しい人物は世界中に多いのだ。

 

 

「そういえば、磯野さん、私この前新しいチーズカツレツのレシピ考えてみたんです」

「ほう、チーズカツレツですか。

新しいというからにはどのような?」

「ふふっ、気になりますか?それは───、」

 

 

ただ、私にとってはデュエリスト、というよりも料理人仲間だ。




何だ甘々な海馬お兄様は……海馬兄弟は(というかKC)はお家騒動の際に色々オリ子ちゃんと関わりがあったご様子。
イメージは某駄天使を大人しくさせたようなコ。

磯野さん、描写上ロリコンっぽくなっちゃってごめんなさい。
私はDMの中で上位に好きなキャラクターです。

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