チート付き転生者は生き延びたい   作:ラッへ

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一週間に一、二回のペースで最新していき……いけたらいいなぁ。


人型機動兵器開発計画書

 とある鉄血工造が所有する工廠の勤務室に、一人の男が頭を抱えて蹲っていた。彼の名はロマン・イリニフ、幼い息子を持つここ工廠の所長である。彼は元は軍人だったが、その優れた才能と頭脳を鉄血に買われ、いまでは工廠の最高責任者の座を手にし、また今は亡き愛しき妻と三歳になる息子に恵まれることが出来た。

 ならば、何故そんな幸せな人生を歩む彼が頭を抱えて蹲っているのか──それは、今彼は左遷の危機に立たされていたからだ。

 

 彼は鉄血工造が進める戦術人形の研究・開発に理解を示しているように見え、内心ではそれをあまり快く思っていなかった。確かにAIは戦闘では有能な兵器だろう。しかし、だからといってAIに頼り過ぎのも良くないと彼は考えていた。

 戦争とは人間同士のエゴのぶつかり合いであり、その為の兵をAIに任せてしまっては、戦争がいつまで経っても終わらなくなる。あくまで人間が始めた戦争は人間が終わらせるべきだと彼は結論付けていた──は、あくまで表向きの話であり、実際はただ単に超カッコいいロマン兵器を開発して操縦したい! という欲望に塗れた物だった。

 もちろん、彼の表向きの考えは民を守る兵もない者たちや、豊富な感情を持つ人形が存在するこの世界では受けいれられるわけもなく、逆に彼が働く鉄血工造で発覚した場合左遷されることだってあり得る。

 彼からしたらこれは大変困ったことだ。せっかく工廠を手に入れたというのに、肝心のロマン兵器を開発することが出来ない。……そもそも、鉄血工造でロマン兵器を開発しようとする事自体がお門違いもいいところだが、既に彼からはそれを考えられるだけの理性は欲望に駆逐されてしまっていた。

 

 彼は似たり寄ったりな考えを持つ人材を集め開発チームを結成し、秘密裏にロマン兵器の開発を命じた。とにかく大きく、強く、それでいて眺めているだけで厨二心溢れる漢の兵器を。

 しかし悲しきことかな、開発チームが設計、開発したどの兵器もガラクタばかり。中にはどう見ても車輪に花火がついたような見た目にしか見えない英国の某珍兵器も存在したが、彼が望む兵器は開発出来ず終いだった。

 このチームに費やされた私的流用の資金も残り僅かとなり、出来て残り一回。私的流用した資金が発覚しいつ左遷されるか分からないこの状況には、流石の彼も頭を冷やす結果となり、今年で三歳となる愛息子の為にも、ここいらで計画を打ち切る事を真剣に考えていた。

 そんな彼には、今日の楽しみがあった。

 

「クックック、遂にうちの息子がお絵かき出来るようになったのか……これは報告してくれた代理人には報酬を渡さんとな!」

 

 そう、彼の愛息子である造田博が遂にお絵かき帳を使ってお絵かきを始めたと、代理人から報告が来たのだ。

 これには親馬鹿丸出しの彼にとってはノーベル賞受賞並の号外であり、是非とも見てみたい一品でもあった。

 

「……来たか」

 

 彼は廊下から響いてくる足音に反応し、前方を見据える。

 間も無くして、ノック音と共にドアが開いた。

 

「失礼致します、ロマン・イリニフ様。例の物を持って参りました」

 

「正直なところ、私目も是非ご覧になりたいのですが……ご本人から見ちゃダメと仰せられているので」

 

 入って来たのは博の面倒を頼んでいた代理人、いつものメイド服を着た彼女は丁寧に厳封された封筒を大事そうに抱えていた。心なしか満悦の表情が顔に滲み出ているように見える。

 

「なるほどな……それまでして見せたくない絵。よくぞ回収してくれた! 代理人!」

 

「身に余る光栄です、ロマン・イリニフ様。今回は博様がお留守の間を狙い、いつの間にか自宅に住み着いていた見た事ない民用ペットロボット『ハロ』の監視網を潜り抜ける為にボールの如く蹴っ飛ばし、やっと掌中に収めることが出来た最高の一品になります」

 

「そうか、そこまでしてくれていたのか……ご苦労であった。報酬に休暇を与えるから、もう下がっていいぞ!」

 

 彼は代理人から伝わってくる動作と様子からなみならぬ過激な任務だったのだろうと見抜き、休暇を与える事にする。

 報酬に休暇を与えられた代理人も、顔をほころばせながら頭を下げる。

 

「わかりました。それではこれにて失礼します」

 

 代理人が音もなく退出したところで、彼は厳重に厳封された封筒をゆっくりと慎重に剥がして行く。

 中から取り出したお絵かき帳の表紙には、メーカーのデザインだろうか、縁部分には水色を配し、中央には白地に赤で大きくVの文字が記されていた──それが某作品の作戦マニュアルの表紙と一致している事を、知るものは居なかった。

 

 彼は胸が高鳴るのを抑え恐る恐るページを開いてみると、最初のページには「人型機動兵器=モビルスーツ開発計画書」と子どもの字で書かれていた。

 

「もう漢字が書けるようなったのか! うちの息子は天才だな!」

 

 彼は、自分の息子が漢字を書けるようになったのを知りハイテンションで次のページに目を通し──そして、そのあまりにも途轍もない内容に意識が遠のいた。

 

「何だ……これは」

 

 絵描き帳の絵を見た彼は驚きの声をあげる。そりゃそうだろう。彼が幼児の絵だと思い見た紙には、今まで見たこともないような兵器の図面が描かれていたのだから。

 

 

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