チート付き転生者は生き延びたい   作:ラッへ

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お久しぶりです。大変長らくお待たせしました。
最初は週一投稿を目指していたのが、少し実生活が忙しくなっただけで小説の書き方がわからなくなってしまう始末……。


タノシイタノシイお出掛けⅢ

 あーあ、まーた仕事クビになっちゃた。

 これで何回目だろう……。

 

 路地裏にて酷く落ち込んで座り込む一人の金髪ツインテールがいた。

 一見、仕事をクビにされ落ち込んでいるはかない少女に見えるだろう。実際、その年頃で失敗するなんてよくある話だ。人間は失敗する生き物、それを認めて次の糧にすればいい。本来ならこれだけで済む話だ。そう、彼女が人間だったらの話だが。

 

 だが、彼女は人形だった。

 感情はあれど、彼女達は人間に作られたもの。いくら給料を貰える存在だとしても、何度も失敗する道具を手元に残そうと考える人は果たしているだろうか。

 否、最低でも彼女が出会ってきた人達にはそんな人はいなかった。こんな毎日生きるのがやっとの時代に、不良品を残す人などいるわけがないのだから。

 

「うええ……お腹すいた」

 

 彼女は疲れ切っていた。回収車から命からがら逃げ出してから、もう数ヶ月もたつ。

 買取られた故郷のソ連基地から逃げ出し、南に続く道をひたすら走り、途中盗んだバイクにも跨って走り続けた。結果、バイクは途中で燃料切れになり川に捨て、それでもなお歩き続けた。

 

 追っ手を振り切り、新しい街に着いた。だが、今度は体の動きが鈍り始めたのだ。街に着く間に彼女は川の水を飲み、空き家からは貴重品を盗んだ。そうして彼女はなりふり構わず泥棒などに手を染め、なんとか生きながられてきた。

 

 だが、それでも彼女に足りないものがある。

 それがバッテリーだ。

 

「バッテリー、どっしようかなー……」

 

 人形はバッテリーがないと機能しない。彼女はそれを知っていたからこそ、この地区に着いてまず探したのが仕事先だった。

 元々の社交性の性格を活かし、何とか仕事にはありつくが、失敗ばかり。そうして仕事先を転々と繰り返しているうちに、優しい人が運営する飲食店に雇われる事ができた。

 

 彼女は自分なりに上手くやってこれた、もしかしたら私はこうして一生を過ごすのかもしれない。と思える程には給料は安定していた。

 

 しかし、彼女は今日、重大なミスを起こしてしまう。

 それは彼女の注文ミス、たったそれだけが二人のお客の怒りを買ってしまい、今でも忘れられない……厨房に乗り込んできた一人の人形に絞め殺されかけたのだ。

 

 おかげで彼女は給料日前日という日にクビにされ、途方に暮れたのだ。

 明日買えるはずだったバッテリーを絶たれた彼女の四肢は、思うように動かすことが出来ずにいる。

 でも、それでも──

 

「ううん! こんな事でクタクタしてちゃダメ。あたしならきっと乗り越えられる!」

 

 彼女は持ち前の元気の良さで立ち上がり、大通りに踏み出そうと──

 

 

「クビになったてんだな、お前」

 

 ポンと、背後から肩を掴まられた。

 

「えっ!?」

 

 驚いた彼女は、鈍く感じる体に鞭を打ち前に飛ぼうとするも、肩を完全に掴まられ体を引っ張られてしまう。

 顔を上げると、そこにいたのは見ず知らずの大男だった。

 上は作業ジャケットで、下にはオイルで汚れたであろうズボンをはいている。

 何かに怒っているらしく、眉間にシワが寄っていた。

 

「ええと、私何かしたかなーって、なはは……」

 

 覚えなら幾らでもある。前に戸締りが緩い家に忍び込んだのがバレたのか、それとも闇市で物を盗んだことが見つかったのか、どちらにせよ酷い目に遭わされるのは仕方ない……と身構える彼女を他所に、男は予想外のことを言い出す。

 

「クソ、クソクソくそぉ! あの部長の野郎、低賃金で雇える人形を雇ったと思ったら俺はお役御免ってか? クソォッ! お前ら人形のせいだぞ、このクソガキガァッ!?」

 

「うっ、ご、ごめなさ……い」

 

 こうゆう場合は抵抗して何かを言わない方がいい。普通の人形は人間に手を出す事は出来ないし、反撃したところでこの大男の感情を逆撫でするだけだ。

 が、この無抵抗の姿勢が大男を逆に怒らせることになってしまう。

 

「へっ、抵抗しないのか。じゃあ遠慮なく、解体させてもらうぜ」

 

「……え?」

 

「なんだ、お前仕事クビになったんだよな? じゃあお前の主はいねぇーし、解体したところで問い詰めるやつはいねぇよなぁ?」

 

 今度こそ、彼女はこの男が何を言っているのか分からなくなった。

 しかし、彼女の本能が危ない、と告げていることだけは分かった。

 逃げなければ。

 

「だ、誰か! 助けてー!!」

 

 声を絞って、彼女は助けを呼ぶ。

 しかしこれまたどうしたのか、大通りは騒がしいというのに、人が一向に来る様子がない。それどころか耳を澄ませば逃げろ! と声が聞こえるではないか。

 

「助けなんてこねぇーよ。この街の警備は最近ばったりと見なくなったからな」

 

 しかし、この大男はそんなことどうでもいいらしく、尻ポケットから解体ハンマーを取り出す。

 解体するのにハンマーなんて、正気の沙汰じゃない事は確かだ。

 

「俺は元解体業者だ。へへっ、そうだな……人形を解体して売れば稼ぎになる……」

 

 大男は逃げようとする彼女の腕を掴み、まるで部品を床に散らかすように彼女を床に突き飛ばす。

 

 やめてくれ、と彼女は素直に思う。

 でも、私は悪い事をしてきた悪党だ。こうなるのは定めだったのかもしれない。……でも、あたしはただ生きたかっただけだ! 

 こんな夢も希望もない世界で、いつか戦争のない平和で楽しく過ごせる場所に辿り着けると思っていた。そう想うことが出来たから今まで頑張って来たのだ。

 それがこの仕打ちなんで、到底納得出来ない! 

 

「神には祈り終えたかぁ? それじゃあ、死ねえええええ!」

 

 だからこそ、やめてほしいと思う。

 ……殺したくなるから。

 

 古びたジャンパーの内側に手を伸ばし、そこから一丁のサブマシンガンを取り出した。

 全長27センチしかない、サブマシンガンとしては最小クラスの大きさであり、持ち運びにはもってこいの大きさになる。

 この銃の名前はVz 61スコーピオン。

 ……あたしが故郷で違法改造され、その時に渡された銃だ。

 

「なっ……」

 

 大男は一瞬なにを向けられたか理解できず、振りかざす手を止めてしまう。

 しかし、その正体に気がつくと大男は嘲笑うかの様にハンマーを振り下ろそうと、覆い被さるように襲いかかってくる。

 

 彼女は思いを固め、安全装置を確認しセレクターを前に押してフルオート射撃に切り替えた。

 

「人形が撃てるかぁ!?」

 

 殺気を漲らせて襲いかかってくる大男の迫力に、負けじと手にしたスコーピオンを強く握り、引き金を引き絞った。

 

 パパパパパッ! と、数発の銃弾が大男の肩から手までを襲う。

 7.65mmと口径は小さいながらも超至近距離からの銃撃。それは、大男を無力化させるには十分な火力だった。

 

 大男は痛みに地面をのたうちまわる。しかし、それだけで体を鉛玉が貫通した痛みを取り除くことは出来ない。例え治療を受けたとしても、傷が完全に治る確率は皆無だ。

 この男は人形だからといって相手を侮たり、敗北したのだ。

 唯一幸運だった事を言えば、発射された数発の銃弾が最後の弾だったことぐらいだ。

 

「はははっ、ザマあみやがれ!」

 

 彼女は立ち上がり、薄汚い路地裏で苦しみ暴れる大男の腹に一発蹴りを入れ、すっかり静かになった大通りに走り出した。

 

 

 

 しかし、彼女は気づいていない。自分がある重大なミスを犯してしまったことに。

 

 ……そう、曲がりないにも彼女は大男を喋れる状態で見逃してしまったのだ。つまり、大男が今回のことを告発すれば──

 

 

 

 ◇

 

 

 

 路地裏から大通りに踊り出た彼女をさかず出迎えたのは、大勢の群衆……は居らず、代わりに数十人もの倒れ伏した傭兵たちがいた。

 

 

「ん? なにこれ?」

 

 この光景に、彼女はラッキーと感じた。

 本当ならこのまま直ぐに離れたいところだが、何か良いものを持ってるかもしれない。あたしはそんな思いから、先ずは一番近くに倒れ伏していた傭兵の元に歩み寄り、脈を測ってみる。……死体漁りはしたくないし。

 うーん、脈は流れてるから生きてるね。ただ傭兵の体がビクンビクンいっててなんか可愛い。

 それなら遠慮なく漁らせてもらおう。えーと、何か目ぼしいものは……お! 身分証明書発見! これは高く売れるぞ〜。

 その時、遠くから何かが走ってくる音が聞こえてきた。

 

「えっ、こっち来る……!」

 

 驚く事実に目を見開き急いで隠れる場所を探す。

 残りのバッテリーの事を考えると余り遠くには行けない。先ほどの路地裏なんて論外だ。

 そして、首を忙しく回し目に留まったのが、近くのゴミ捨て場に置かれた大量のゴミ袋だった。

 この量なら体をすっぽり埋めれる。

 もはや選り好みしている余裕などなかった。

 

 

「くそぉ! お前たち!! ここに倒れてる奴らも運ぶぞ!」

「へいっ!」

 

 どかどかと、数名の男たちの声が聞こえる。

 げっ、この声って最近この街に居座ってる傭兵のモヒカン頭のやつじゃん。あたしあいつ苦手なんだよねぇ。

 

 

「隊長、あの人形はなんなんすかぁ!? 何で人形がレーダー銃みたいのを使ってるんですか! 青いリングが発射されたかと思ったら当たった奴らが倒れやがった! ここの奴らだって!!」

「うるせぇ! 今俺たちはあの人形に隊を壊滅させられて、見逃されたんだぞ! さっさと倒れてる仲間を回収して拠点に戻るぞ!!」

 

 傭兵たちの気性の荒い声が響いてくる。

 へー、あの傭兵達負けたんだ。なんだかんだいって弱いんだね。

 

 

「くそぉ、せめてあの女とガギを人質にできてたら!」

 

 此方に一人向かってくる足音が聞こえたと思ったら、怒り任せにゴミ袋の山を蹴っ飛ばしてきた。

 衝撃でゴミ袋の山が少し崩れ、表面のゴミ袋を退かして無理やり身体を捻れただけの私は、山から左腕が顕になってしまった。

 

「……あぁ?」

 

 ま、まずい!? どうしよ銃で威嚇しようか!? いや、こんな状態じゃ直ぐに動けないよ! 

 

「ったく、誰だ可燃ゴミの日に人形をゴミ捨て場に捨てたのは」

 

 考えあぐねていると、一向に動かないあたしに傭兵は廃品だと思ってくれたらしく、何とかゴミ捨て場から離れてくれた。あ、危ねかった! 

 

 ……ただゴミだと思われたのは心外だ。こちとら金がない時だって、接客の為にわざわざ体を洗うため川に赴いていたというのに。このまま飛び出して抗議したかったが、そんなことをしたらどえらいことになってしまう。

 今は居なくなってくれるまでじっとしてよう、大人しく聞き耳をたてる。

 

「でもよぉ親分、このまま黙って泣き寝入りするんすか? 今回の方が広まれば俺たちの評判は──

 

「馬鹿野郎、泣き寝入りなんかするかよ」

 

 おおと歓声を上げた彼らは、次にモヒカン男の喋る台詞に耳を傾ける。

 あたしは次に発せられた言葉を聞き、驚愕した。

 まるで、時間がゆっくりと曖昧に過ぎ去ったかのような、あらゆる音が無に変換されていく。気づけば、傭兵達の騒がしい声はもう聞こえてこない。代わりに、頭からは先ほどの会話が壊れたラジオみたいにリピートしていた。

 

 

「以前破棄された基地から略奪したやつ……″ AA-02 アレス″を使うぞ‼︎

 この街から奴らが出る前にカタをつける!」

 

「しかし親分。それじゃあ街にも被害が」

 

「はっ、こんな陳腐な街が一つ消えたところで誰も気にはしねぇよ!!どのみち住民共には今回の失態を見られてる、皆殺しだ!」

 

 





愚作にも関わらず最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回、まさかのAA-02 アレスの登場です。これに対し主人公組は何を繰り出すのか。
それにしても、まさか少女視点だけでほぼ1話分が終わってしまうなんて。全く話が進まない……次回でこのパートが終わるといいんですがねぇ(他力本願)
それと、もしかしたら今回のお話のサブタイトルを変更するかもしれません。
それでは、また次回お会いしましょう。
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