八雲が剣をやめずに鍛錬を重ね、
『鬼滅の刃』の呼吸法を会得し、
剣魂・最強の鬼と出会い、
正規とは全く異なる八雲が繰り広げる物語が幕を開ける!
息抜き作品です。一話一話がダイジェスト風で短いです。それを踏まえた上で、お読みください。
「ここが大江戸学園か……」
島一つを学園にした町並みの光景に俺は呟く。
「本土とは……随分、違うな……」
独り言に答える独特な喋り方。だが、周囲に人影はない。
当然だ。声を発したのは彼が腰に差す刀なのだから。
「まるでタイムスリップしたような江戸の町並み。ここまでこだわる理由は理解できないな」
「私には……こちらの方が好ましい……」
「
「ああ……そうするとよい……
これは大江戸学園を訪れた正規とは異なる主人公・秋月八雲とその剣魂・コクシボウの物語である。
◇
俺、秋月八雲は転生者である。二度目の世界は前世の日本とは微妙に異なる歴史を辿っていた。
未だに刀があるし、政権を牛耳っているのは徳河という一族で、島を丸ごと使った学園まである。
まぁ、そんなことは庶民には関係ない話だ。俺が一番注目したのは刀があることだ。
俺は前世から刀が好きだった。別に人を斬りたいとか物騒な考えは持たない。ただ、刀がカッコいいと思ったから好きなんだ。
前世では刀なんて触れなかったがこの世界では違う。許可さえあれば帯刀が許される。刀を持てるんだ。
だが、その許可も簡単には貰えない。権力、財力、武力など一定以上の力が必要だ。
権力も、財力もない。だったら、武力━━剣の腕を磨くしかない。
幸いにも剣の才能はあったらしく、道場で修行するとメキメキと上達していった。
ただ、同世代の女の子に負けたのはショックだった。それをバネに俺は更に修行を重ねた。
そうしてひたすら修行していた俺は『全集中の呼吸』まで会得してみせた。
実は刀好きな俺は刀で戦う漫画『鬼滅の刃』も好きで呼吸法が使えないか、試行錯誤していた。すると本当に呼吸法を会得できた。
そして実家の倉に眠っていた剣魂に出会い、極めるべき呼吸法は決まった。
「いい加減……現実逃避はやめろ……」
「…………わかってる。はぁ〜、早々に躓くとはな」
「まさか……住む場所がないとはな……」
コクシボウの声に現実逃避をやめた俺はため息をつく。
そう、俺が編入手続きをしにいくと学校側の不手際で寮に入れず、住む場所がなかった。
そのあとは空き家になった奉行所の管理物件を紹介してもらい、そこで生活することになった。
道中、荷物を盗まれそうになったが、コソ泥に遅れを取るほど柔な鍛え方はしていない。未然に防いだ。
だが、土地勘がなく店の場所がわからなかった俺は出会った徳田新という少女に道案内をしてもらった。正確に彼女の剣魂・マゴベエが案内してくれている。
彼女は元気で親切だった。ただ、
「まさか馬までいるとは」
「……よい馬だ……」
「この子は銀シャリ号。よろしくね」
新は馬に乗っていた。ここまで江戸を再現しているのかと思ったが、馬は新が飼っている一頭しかいないらしい。ちなみに名前の由来はお米のように真っ白ということだ。
あとコクシボウの声は基本的に帯刀した俺にしか聞こえないテレパシーのようなもので、他の人には聞こえない。コクシボウは見た目が怖いし、威圧感があるから普段は隠してる。
そうして俺はようやく店に着いたが、カギがかかっていた。
すると南町奉行・逢岡想が現れ、ガキを持ってきてくれた。お奉行様自ら思ってきてくれたのに驚いたが、その後の話を聞いて納得した。
「なるほど……不良どものせいで前の店主が出て行ってしまったと」
「はい。店から追い出すのが目的だったようで、営業再開したからまた戻ってくる可能性が高い」
不良グループのせいで店主が追い出され、次に俺が来た。また営業妨害するだろうから忠告しに来てくれたようだ。それでもお奉行様自ら来てくれるのだから彼女の人格の良さが窺える。
そして警備のために同心の仲村往水を紹介された。愛想笑いを浮かべる信用ならない感じの少女だが、
「できるな……」
「ああ、幾度も……死線を超えている……」
「はい? 何か言いました?」
「いえ、なんでもないです」
「はぁ、じゃああっしはこれで失礼します」
戦いを経験しているのは一目見ればわかる。おそらく同心とは、裏の顔を持っているのだろう。
少なくとも期待はしない方がいい。まぁ、不良程度は幾人いようと返り討ちにできる腕はある。年寄りと暮らしていたから、お茶の入れ方には自信がある。茶菓子もコクシボウが満足いくものを自作していたから大丈夫だろう。
コクシボウは剣魂のくせに舌が肥えているから市販品じゃダメだったからな、と納得がいく茶菓子が完成する作り続けた苦労を思い出していると新が声をかけてきた。
「ねぇねぇ、あたしが用心棒になってあげようか?」
「用心棒?」
「そう! 不良がやってきてもあたしが追っ払ってあげる」
どうやら苦い記憶を思い出しているのを不良に対する不安と思われたらしい。
確かに彼女の腕前は一流だ。用心棒としてこれ以上ないほど適任だろう。ただ、
「俺の方が強いよな、絶対」
「彼女は……八雲に数段劣る……」
それが二人にとっての認識だった。新が実力者でも自分より弱い者を雇う理由はない。
「だが、客寄せとしてはありか?」
正直、剣道をやってる影響か俺は目付きが鋭いと良く言われる。これでは怖がって客が寄ってこない。コクシボウに至っては論外。
だが、新は見目麗しい美少女。それに人を惹きつける魅力がある。彼女がいるだけで客が寄ってくるかもしれない。
俺は新を雇うことにした。ただ、雇うと決めたときの想の顔が気になった。この意味を知るのは翌日のことだった。
秋月八雲
本作の主人公で転生者。幼少の頃より、鍛錬を積んだことで柳宮新陰流免許皆伝の腕前。更に『全集中の呼吸“常中”』を会得しており、月の呼吸の使い手。その実力は作中最強。
戦いに興奮する戦闘狂であり、強者との戦いを楽しむ癖がある。
コクシボウ
『剣魂の将』と対をなす『剣魂の鬼』。刀の銘は鬼眼丸。
最古の剣魂の一体であり、レギュレーションを遥かに超えた戦闘能力を誇る。月輪の刃を発生させる能力を持ち、応用で鬼眼丸からも月輪の刃を発生させることができる。