ふらり、ふらりと足元が覚束ない人物が廊下を歩いている。ここは、ロドスアイランドの基地内部である。
そして、この足元が覚束ない人物こそロドスの重要人物である通称『ドクター』である。
そのドクターがこのような状況になっている理由として、日々の過酷な業務がある。業務内容は皆も知っている通りである。そんな激務をクッキーやチョコレート、ちょっと危ない薬で乗り越えているが無理が祟ってこのようになっている。
「(…ふぅ、やっと今日の業務が終わった。けど、明日の作戦の書類を確認せねば…。)」
このドクター、この状態でも仕事をしようとする見事なまでの仕事中毒である。そんな仕事中毒のドクターに話しかける少女が1人。
「…-い、おーい。聞こえますかー?」
「…っん!?」
突然話しかけられ驚くドクター。周りを見渡すも人影はいない。そんな状況に疑問を持っていると。
「下、しーたー!ここだよ、ドクター。まったく、これで何回目?」
ドクターの足元に声の持ち主はいた。彼女はドゥリン。ロドスの一員であり行動隊A4に所属しているオペレーターだ。そして彼女、身長が131cmと小さく、今回のようにドクターに気づかれないことがよくある。
「ああっ、ドゥリンか。ごめんまた気づかなくて。少しボーっとしてた。」
「私に気づかなかったことは、いいけど。ドクター大丈夫?私が言えることじゃないけど、ボーっとしながら歩くと危ないよ?」
ドクターの謝罪に対して、頬を膨らませていた彼女は、それをやめたが同時に眉を下げ、心配そうな表情を浮かべる。
「大丈夫だよドゥリン。あと少ししたら休むから。心配してくれてありがとね。おやすみドゥリン。」
そう言い、ドゥリンの頭を撫で、執務室の方に向かう。歩き出すドクターの服の裾を掴み呼び止めるドゥリン。
「待って、ドクター。」
「おっと、どうしたドゥリン?」
「まだ、お仕事するの?もうこんな時間だよ?」
ドゥリンの言葉に対して詰まるドクター。立て続けにドゥリンが
「毎日、夜遅くまでお仕事してるの?」
「まあね、記憶がない分を取り返さないといけないし、それにみんな頑張っているからね、こっちもみんなの頑張りに応えないとね。」
ドクターの言葉にさらに表情を曇らせるドゥリン。
「ドクター、しゃがんでくれる?」
ドゥリンの言葉に頷き素直にしゃがむドクター。ドゥリンはしゃがんだドクターのいつも被っているフードとマスクを静かにとっていく。
「やっぱり。…ドクター最近ちゃんと寝てる?すごい隈だよ。それに顔色も悪いし。」
「睡眠はちゃんと取ってるさ。アーミヤ達からも言われているからね。」
「違うよ。私が言ってるのは疲れが取れてないってこと。」
「まあ、起きた時に身体のだるさはあるけど。」
「そんな睡眠じゃ、また倒れちゃうよ?」
「うんわかってはいるんだ。けど、今頑張らないと、急いで失った分を取り返さないといけない気がしてね。」
ドクターが乾いた笑みを浮かべる。そのドクターの顔を見たドゥリンは、ドクターの手を取り歩き始める。
「…ドクター、こっちに来て。」
「おおっと!?どぅ、ドゥリン!?どこへ行くんだい?」
急に引っ張られ驚くドクター。そんなドクターに笑みをこぼすドゥリン。
「どこって。私の部屋だよ。」
「え?いや、これから執務室に行こうとしてたんだけど!?」
「だーめ、ドクターはこれから私と一緒に気持ちよく眠るっていう仕事があるんだよー。」
「ええ!?い、一緒に寝るって、いやドゥリン?どういうこと!?」
一瞬にして顔が赤くなり慌てふためくドクター。このドクターすごく驚くな。
「ドクターが何を想像してるかわからないけど、本当に寝るだけだからね。」
慌てふためくドクターに悪戯が成功したときのような笑顔を浮かべるドゥリン。
「それに、お仕事は明日できるでしょ。ドクターの睡眠は今にしかできないのだー。」
「わかったよ、今日はドゥリンの言う通り寝ようか。ぐっすり寝れれば明日のパフォーマンスもよくなるだろうし。」
ドクターの返事に対し歩くスピードを緩めることで返事をするドゥリン。
「そういえば、なんであそこに居たんだ?この時間になら寝てると思うんだが。」
「んんー?えっとね、巡回任務が終わってシャワーを浴びて寝ようとしたら足音が聞こえてね。それが不規則でフラフラした音だったから気になって出てきたの。そしたらドクターがいたんだー。」
「だから、いつもと違う格好なのか。」
「ふふん、そうだよー、寝間着の私はどう?」
「かわいいよ。ドゥリンの雰囲気にぴったりだよ。」
「ありがとドクター。」
そんな会話をしながら歩いていく2人は、ドゥリンの部屋についた。
「それじゃ、ドクター入って入ってー。」
「ああ、しかし少し緊張するなー…って、ええ!?」
部屋に入った途端、驚きの声を上げるドクター。その視線の先には行動隊A4の隊長のヤトウの……仮面があった。
「なぁ、ドゥリン。この部屋って2人部屋?」
「そうだよー。私とヤトウの部屋だよ。大丈夫だよ。ヤトウは任務とか外だとすぐに起きるけど、この部屋のなかだと早々に起きないよ。」
そう言いながらベッドの上で布団を敷いているドゥリン。一方、ドクターはというと。
「(もしかしたら、ロドス7不思議であるヤトウの素顔が見れるのでは!?)」
別のことにテンションを上げていた。
「ドクター、また理性が溶けてる顔してるよ?大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。(こんなチャンス見逃せない、ゆっくりとだ、ゆっくりと向けばいい…そうゆっくりと)」
ドクターは、ゆっくりとヤトウが寝ていると思わしき場所へ視線を向ける。ドゥリンに悟られることなくゆっくりと。そしてついにヤトウの素顔が…見えなかった。彼女は寝るときに布団を頭から被るタイプだったようだ。
「…うぅ。(ついに見れると思ったのになんで…)」
膝をつき落ち込むドクター。こうしてドクターの勇気を代償にロドス7不思議の秘密は守られた。
「うにゅ?どうしたのドクターそんなとこで蹲って?はやくこっちに来て。」
「うん、わかったよ。」
ドクターを自分の寝床に誘うドゥリン。上着を脱いだドクターは誘われるがまま彼女の隣に入り込んだ。
「それじゃあ、ドクター私の寝床にようこそ。まず、こっちを向いて。」
「んっ、いいけど。…っぬん!?」
ドクターを襲った衝撃。それは、暖かった。まるでこちらを微睡みの底へ誘うように。それは柔らかかった。こちらを安心させるうように。
「やっぱり、ドクターは抱き枕にちょうどいいなぁー。大きいし、あったかい。それに…いい匂いもする。よく眠れそうだよー。」
ドクターを襲った衝撃の正体。それは、ドゥリンがドクターに抱き着いたのだ。まるで、ドクターを抱き枕にするのが本命だったかのように!
「ドクターも私を抱き枕にしてもいいんだよー。一緒に寝ようっていったからね。」
「…。」ぎゅ
ドクター、陥落!ドゥリンの誘いに対して即答であった。
「どう、ドクター。抱き枕の感触は?」
「…あったかい。これなら快眠できそうだ。」
その答えを聞いたドゥリンは、ドクターの耳元に顔を寄せ
「ドクター。寝るときは責任とか仕事とか忘れていいんだよ。頑張ることをやめてただねてればいいんだよ。」
といいゆっくりと頭を撫で、背中をやさしくたたく。ドゥリンの声が体温がドクターを眠りに誘う。
「…ドゥリンありがと。あと、おやすみ……。」
「うん、おやすみドクター。」
次の日、ロドスの朝は1人の女性の声で始まった。
その日からだろうか、ドクターがオペレーターと一緒に寝るようになったのは。
「おはよう、ドクター。前よりも顔色はいいみたいだね。…こんどは一緒にお昼寝でもする?」
ドゥリンちゃんかわいい。