FGO主要キャラ全員生存縛りRTA(1部)   作:でち公

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次回で終わるといいなあと言ったな。あれは嘘だ。
コマンドーした所で初投稿です。


託し託された意志

 ジャンヌ・オルタが吼えると同時に紫水晶色(アメジスト)の紫毒の業火が強大な竜へと形取り、周囲の空間を歪めて殺し尋常ならざる速度で彼を飲み込み腹に納めて、すかさず空へと飛翔する。

 

「──ッ」

 

 先程生み出した煉獄の火球を遥かに超える巨大な竜が殺意を持って空を泳ぎ出す。

 

 恐るべきはジャンヌ・オルタの適応力だろう。彼女はこの土壇場でそして尚且つ新しく手に入れた力さえも完全に掌握せしめた。故に先程までのジャンヌ・オルタとは比べ物にならぬ程により強く、より威烈な霊基へと変貌を遂げる。

 

 ファヴニールの力を完全に掌握しきった彼女は以前の時よりも出力も、効果範囲も、対応力の何もかもが桁違い。

 

 紫毒の業火を唸らせて彼を飲み込んだ竜ごと串刺しにせんと紫毒の業火を紫水晶色の剣へと凝縮して射出する。

 

「燃えて燃えて燃え尽きろォォッ!」

 

 そして今、紫毒の竜に飲み込まれた彼は現在進行形で破滅を味わい続けていた。彼女の憎悪と比例して跳ね上がり続ける熱量。灰すら焼き尽くさんと襲い来る熱波に触れるだけで死へと誘おうとしてくる猛毒。

 

 さらに当然の事ながら身動きが取れない状態の彼に牙を剥く紫毒の剣群が、何百という数を伴って常時射出され続けている。頭蓋に心臓に喉に目に、全身のあらゆる急所を目掛けて殺到する殺意の奔流。

 

 誰もがやり過ぎだと思わせるオーバーキルを行いながらも、ジャンヌ・オルタは何があってもその手を緩めるつもりは決して無かった。彼という存在を知っているが故にその様な愚挙は犯さない。

 

 ──だって、ああそうだろう? 

 

「あんたは絶対に諦めない」

 

 それこそが彼を現すただ一つの言葉。

 

「そうなったあんたは邪魔な障害も他者の想いも何もかもを捩じ伏せて止まらない私が焦がれた人なのだからッ!」

 

 だからこそ彼は──

 

「ハァァッ──!」

 

 ジャンヌ・オルタの想いも周囲の想いも何もかもを捩じ伏せてひた走る。ブレーキなぞとうの昔に壊れ、ハンドルは無くなった彼にできることはただアクセルを踏み続けることだけ。他者が何を思おうが関係ない。己の目標の為だけに彼は何もかもを破壊しながら突き進む。

 

 竜の腹を引き裂いて現れる彼の姿はもはや人とは言い難く、そしてまたその全身から溢れ出す破壊の振動が空間を揺るがし続けるその姿がより拍車をかけていた。

 

 そして轟く無色の破壊光。エミヤが作り出したロングソードに膨大な魔力と振動を込めて奔る刃がその刀身ごと空間を破壊する。

 

「カハッ──!」

 

 ロングソードを代償に振り抜かれた破壊の振動に壊せぬものなどなく。堅牢な鱗で包まれていたジャンヌ・オルタの体を空間ごと真っ二つに破壊する。

 

 腰から真っ二つにされたジャンヌ・オルタの断面から血と臓物の花が咲き乱れる──ものの。

 

「ア、ハハハ──! この程度で私が終わるかァァッ!」

 

 自身の中の()()()()()()()()()()()とともに完全にズレてしまう前にジャンヌ・オルタは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まだ終われない、まだ目的を達成しきれていないと獰猛に笑いながら彼女は軽やかに戦闘を続行する。

 

 上空で身動きの取れない状態の彼を猛毒の業火で焼いたからと言ってそれがなんだと言うのだ。その程度で今の彼が死ぬものか。

 

 ああなった彼はその程度では止まらないと信じているからこそ、ジャンヌ・オルタはそれを見越した上で紫毒の剣を絶え間なく掃射し続けていた。

 

 そしてまた、彼女は更に限界を超え始めた。

 

 己の背中に生えた翼をはためかせて彼がいる空へと飛翔し、加えて弾丸の様な速度で彼に向けて殺到する紫毒の剣を踏みつけて更にその速度を上げ始めた。

 

 加速、加速加速加速──! 音速の壁なぞ優に超え、衝撃波を撒き散らしながら彼女は彼に接近する。

 相対する彼と比肩するべく、彼女もまた至高の領域へと到達して彼の下へと飛翔する。空間を捻じ曲げながら突き進むそれはもはや人間とは決して呼べない。ファヴニールすらも超越する彼女は更なる領域へいかんと無限の覚醒に手をかけ始める。

 

「私は必ずあんたという存在に届いてみせる!」

 

 その想いに比例するように彼女の攻撃速度が跳ね上がり始める。第一宇宙速度にすら届き始めた彼女の怒涛の連撃にさしもの彼も全てに対応出来ず両腕が切り落とされる。

 

 空を舞う両腕、もはや万事休すかと思われたが──

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女が放ち続けていた紫毒の剣の位置を的確に置換することによって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。仮止めするまち針のように紫毒の剣を利用し、聖杯の力を以って己の肉体に癒着させる。

 

 当然彼の体を致死の猛毒が蝕み始めるが、知ったことかどうでもいい。彼はただ滅尽の意志のみを灯らせてジャンヌ・オルタが覚醒したように、彼自身もまた更に己を超越し始める。

 

 先程までは二振りの剣の手数があったからこそ対応出来ていた。けれどその内の一振りは先程の攻撃に耐えられず壊れてしまった。ならばもう対応出来ないと? 

 

 否、それこそ否だと彼は常の無表情を崩して獰猛に嗤い始める。

 

 二振りの剣で対応出来ていたのであれば話は簡単、今までの倍の──否、十倍の速度で対応すればいいのだと巫山戯た発想とともに聖杯が其れを成し得る為だけの強化を施し始める。

 

 赤熱し始める魔術回路を赤く輝かせてその残光を残してジャンヌ・オルタを上回る勢いで加速していく。彼もまたあの程度で彼女が斃れる訳が無いと知っているからこそ、更なる迎撃行動へ移行している。

 

 不屈の闘志を輝かせながら人の身で神域へと踏み込み始めた彼は刀を神速で振るって振るって振るい尽くす。袈裟斬り、逆袈裟斬り、唐竹割り、右薙ぎ、左薙ぎ、逆風。

 

 ジャンヌ・オルタを両断せんとあらゆる経験を総動員して尋常ならざる速度で的確に斬り続ける。瞳に宿る滅尽の意志で彼女という存在を射抜く。

 

「ぐぅッ……!」

 

 そしてついに、無数の斬撃の果てに彼の攻撃がジャンヌ・オルタへと届いた。彼女の血肉を削り取る破壊の振動を纏った斬撃。その威力は彼女はおろか、自らも分解させられる程の威力を持って彼の斬撃が唸りを上げる。

 

 ──ああ、だがしかし。

 

 悲しいことにここで人と英霊の基礎ポテンシャルの違いが如実に現れてしまった。

 

 彼が刀を振るうよりも早く、彼の肉体がついに悲鳴を上げ始めた。彼の両腕の骨は粉々に砕け散り、肉はズタズタに断裂して噴水のように血をブチ撒ける。皮一枚でギリギリ繋がっているという惨状が彼の肉体に引き起こる。

 

「──計算を誤ったか……」

 

 如何に聖杯と呪術を以って肉体を改造したと言えど彼の元の肉体は脆弱な人の肉体であったことに変わりはない。要は早い話、彼のあまりにも速すぎる進化と成長に肉体の方が先に音を上げてしまったのだ。如何に強靭な精神を持つ彼であってもそれを動かす為の肉体がこうなってしまえばどうしようも無い。

 

 皮肉なことに彼にとって必要なのは肉体が精神に追いつくまでの時間という事だったのだ。

 

 そして当然、その隙をジャンヌ・オルタが見逃すわけもなく、彼の心臓目掛けてその鋭い竜爪を奔らせる。

 

 けれど、ああそうだとも──

 

「「させるかァァッ!」」

 

 ──彼は決して一人ではない。

 

 渾身の力を以ってジャンヌ・オルタの竜爪を上へと弾き飛ばすアルトリア・オルタ。続いて彼からジャンヌ・オルタを引き剥がすようにジークフリートが剣を振るってジャンヌ・オルタを吹き飛ばし、その隙にジャンヌが彼を守るために遠くに引き離す。今の一合でジャンヌ・オルタとの彼我の差を痛い程に理解したがそれでも尚彼女は、彼女達はジャンヌ・オルタという特級の存在に立ち向かう。

 

「へえ、やるっての?」

 

 それに対してジャンヌ・オルタは決して少なくない憤怒と憎悪をその身から零す。そしてそれに呼応するように彼女の周りに紫毒の業火が揺らめき出す。その業火の熱に当てられるだけでアルトリア・オルタ達は猛毒に汚染される。

 

 目や口などの身体中の穴から血を零して崩壊していく霊基に全身を激痛で苛まれながらも彼女達は決して彼の前から引こうとはしない。

 

「無論だ、私は望幸のサーヴァントだからな。今度こそあいつを一人で死なせやしない!」

 

「はっ、上等じゃない。けど、今のあんたらが私に相手に勝てるとでも思ってるの?」

 

 それは純然たる事実だ。今のジャンヌ・オルタ相手に彼女達は勝つことは決して出来ない。それは先程の一合で痛感している。

 

 ──しかしそれがなんだと言うのか。

 

 勝てないからと、負けてしまうからと言ってそれが立ち向かわない理由には決してなりはしない。

 

「今の貴様に勝つには今を生きる望幸に頼るしかない我が身がとてつもなく呪わしい。せめて望幸と共に戦えるほどの力があればと今ほど悔やんだことはない」

 

「けれどそれは私達が彼を一人で戦わせていい理由にはなりません!」

 

 例え数秒程度しか稼げなくとも、彼がその間に傷を少しでも癒せるというのであればその数秒に命を懸けてみせよう。

 

 そうさ、何故ならそれこそが──

 

「次代のために希望を残すのが英雄の役目だからだァァッ──!」

 

 ジークフリートはそう吼えて彼を守るために己の意志でその剣を振るう。猛毒に体を蝕まれて滅びゆく身体を鞭打って更に激しくさらに猛々しくジャンヌ・オルタに向けて斬撃を放つ。

 

 分かっている、分かっているとも。戦いに生きたジークフリートだからこそ、今のジャンヌ・オルタには絶対に敵わないということが。たとえ奇跡が起ころうが今の彼女はそれすらも超越して捩じ伏せられてしまうというのが。

 

 そんな彼女に勝てるのは正しく彼女と同じ、奇跡すらも超越できる存在である己のマスターしかいないのだと。

 

 悔しい、悔しくて悔しくて仕方がない。俺も彼等のようになれればとそう思いながらジークフリートは剣を我武者羅に振るう。

 

「ォォオオオオオッッ──!」

 

 その決死の猛攻をジャンヌ・オルタは涼しい顔で捌き切り、ぐらぐらと煮え滾る憎悪と憤怒を以てジークフリートの霊核を撃ち抜かんとその竜爪の一撃を奔らせる。

 

「ごはっ──!」

 

 だが、その一撃はジャンヌ・ダルクがその身を犠牲にすることで確かに防ぎきった。霊核が貫かれたことにより霊基が保てなくなる。

 

 されど胸へと突き刺さるジャンヌ・オルタの手を離すまいと口から大量の血を零しながらもがっちりと抱き抱える。

 

「今の、弱体化してしまった私にはせめてこれくらいしか出来ません。ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「良くやったジャンヌ・ダルク!」

 

 ジャンヌ・ダルクがその身を賭して生み出したほんの僅かな隙を最大限に活用すべく、アルトリア・オルタは聖剣に周囲の魔力と己の魔力、そして己を構成する霊基をも注ぎ込んで最大最強の一撃を放つ。

 

──約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)

 

 零距離で放たれた黒き極大の光がジャンヌ・ダルクごとジャンヌ・オルタを呑み込む。地を砕き、空間すらも湾曲させるほどの一撃を放った彼女の体はその反動に耐えきれずに消えていく。

 

 それでも彼女は全身が消えるその時まで宝具を放ち続ける。

 

 大切なマスターのために。これから傷ついてしまうことが分かっているからこそ、今は少しでもその傷を癒してもらうために全身全霊を注ぎ込む。

 

 そしてこの特異点が修復出来た暁には、ここに来る前に彼と約束した叶えて貰う願いは何にしようかとほんの些細な幸せを脳裏に浮かばせて──

 

「ァァアアアアッッ──!」

 

 ──残る霊基を全て魔力へと変換して己の宝具に注ぎ込む。

 

「ジーク……フリィィトォォッ!」

 

 消える直前に残されたジークフリートに全ての望みを託して彼女は消滅する。そしてまた、その想いを託されたジークフリートはその身に身震いしてしまう程の決意の炎を灯して己の宝具を大上段に構える。

 

──邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る

 

 そんなジークフリートにジャンヌ・オルタが生み出した紫毒の剣が無数に殺到する。やらせるものかと殺意を以て放たれるそれはジークフリートの霊核はおろか、全身のあらゆるところを串刺しにしていく。

 

 ──だが、それがなんだという。

 

 霊核が砕かれようが、全身を串刺しにされて致死の猛毒に侵されようがそんな事など、彼女達に託された想いに比べればなんということはない。

 

 全身に走る痛みを無視して、それどころか己の何もかもを代償にして本来であれば連射性に富む筈の宝具を、たった一撃に全てを注ぎ込む。

 

 魔力に命、そして覚悟と想いすらも注いで注いで注ぎ尽くして悪竜を殺す宝具を発動する。

 

 天に轟かせるほどの真エーテルの奔流。滅びの蒼き光がジャンヌ・オルタを照らす。当然そんな攻撃食らってやる義理などないと回避行動に移るが──

 

ガンド!

 

 ──その瞳に涙を浮かばせて、泣きそうな表情で此方を見つめる立香が震える身体を押さえ付けてジャンヌ・オルタに目掛けてガンドを放つ。

 

 ジャンヌ・オルタは彼女が震えて何も出来ないと踏んでいたからこそ予想外の一撃を放たれたことによりその回避行動は失敗に終わる。

 

 怖かっただろうに、恐ろしかっただろうに。それでもそんな心を押さえ付けて援護をしてくれた立香に対してジークフリートは感謝の念を送る。

 

 ──ありがとう、()()()()()()()()()

 

──幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)

 

 正真正銘、最後の一撃。あらゆるものを注ぎ込んだジークフリートという英雄を象徴する最強の宝具が滅びの光を伴って空間ごとジャンヌ・オルタを押し潰した。

 

 極大の爆発と共に空間をも揺るがす振動がこの固有結界の世界を満たす。

 

 けれど、それでも尚彼女は──

 

「──まだだァァッ!」

 

 またしても()()()()()()()()()()と共に爆炎の中から現れる。その身に無数の傷を負いながらも更にその強さは増していく。窮地に陥れば陥るほど、其れを打開するために彼女という存在はより強くなっていく。

 

 そんな姿を黒に染まりつつある視界の中で既に消えかかっているジークフリートは苦笑を浮かべる。これ程の覚悟を以てしても届かないのかと、そう思いながらも彼は既に次代に希望を残すための手は打っていた。

 

「マスター……。不甲斐ないことだが、俺はここで消える」

 

 もはや五感は死に絶え、何も聞こえないし、何も見えない。

 

 ──けれどそうだ、確かにこの魂が感じている。

 

「だからせめて、俺は君の未来の為に()()()()()()()()()()()

 

 ──己の後ろに立つ全て照らし灼き焦がす程の至高の光を。

 

 故にジークフリートは己の最も信頼するそんな彼の為に、絞りカスになってしまった残る自分の全てを宝具へと注ぎ込み彼に託す。

 

 英雄は光となって消滅する。されど、その後には必ず希望があるのだ。

 

「──ああ、お前達の意志は俺が引き継ごう」

 

 彼は地面に突き刺さるジークフリート達が託した意志を引き抜き、二振りの剣を構える。万華鏡のように煌びやかに光るその瞳はそれを手にした事で彼本来の何処までも透き通った蒼空を想起させる瞳へと変化する。

 

 想いを託し託され受け継いでいく尊き光。彼等の意志から感じる暖かな魔力を感じながら彼は更に竜へと近づき始めたジャンヌ・オルタと改めて相対する。

 

「──決着の時だ、ジャンヌ・オルタ。地獄の底に叩き落としてくれる」

 

「やってみろォォオ──!」

 

 彼等が決死の覚悟で稼いでくれた時間。その時間を一秒足りとも無駄にすることはなく、彼は己の肉体を精神と完全に同調させた。

 

 その身から滾る破滅的なまでの力と些細ではあるが、それでも何よりも暖かく尊い力。その二つを合わせて彼はジャンヌ・オルタと火花を散らせて激突する。

 

 ──託し託された想いを胸に彼等は駆け抜ける。

 




ブレイクゲージって所謂「まだだ!」なのでは?ボブは訝しんだ。

なんか色々とやってしまってますがネタは出し惜しみはするなと偉大なるオダセン聖も言ってるだえ。
なのでこれから先の展開も明日の自分がどうにかしてくれると信じましょう(丸投げ)

そんな話をしたところで失踪します。

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