ダンガンロンパ 絶望エクスプレス 〜希望駅8時発 絶望行き急行列車〜 作:MOGIぴー
「あ、悪魔分校…?」
悪魔分校…モノクマはそう言った。
「そう、わかるぅ?」
「フン、気味の悪い名前だな」
「ちょっと!! 命名したの僕なんだけど!! 学園長への冒涜はやめてよね!!」
「どうでもいいからさ、その分校が何だって言うのかしら」
モノクマは、コホンとわざとらしい咳をしてから話し始めた。
「まぁ簡潔に言うとね、今からオマエラは悪魔分校に監禁されるわけなんだよ」
「か、監禁…!?」
車内はどよめく。だが、冷静な者もいた。
「…既に自分たち、監禁されてるし…今更驚くことじゃないと思うよ」
ため息混じりな泊君の発言に「相変わらず動揺しないね泊クンはさ」とモノクマは称えるように言う。
「しかし、私たちの監禁場所をその分校に変えることに意味なんてあるのですか?」
たしかに、狂来さんの言うとおりだ。
モノクマは何を考えているんだ…?
「いい質問クマねぇ、採用! お答えしましょう! …悪魔分校にオマエラが囚われたあと…殺人が起きたら、そこから解放してあげます!」
解放。その言葉に全員が反応するのにそう時間はかからなかった。
「こ、ここから出られるの!?」
「だけどさー、学級裁判だっけ? あれでクロ当てないと入弥たち生き残れないんでしょ?」
「もちろんだよ。でもオマエラさぁ、解放してあげるって言葉の意味をはき違えてるんじゃない?」
「ど、どういうことです?」
「悪魔分校から解放してあげるっていう意味で、オマエラを解放するわけじゃないクマよ。勘違いしないでよねクマ」
そうか。ようやく理解できた。殺人が起きるたびに、監禁される場所が変わっていくんだ。悪魔分校で殺人が起き、学級裁判が終われば次の場所へ移動するってわけか。
「そういうことだよ、空閑クン」
「え? …僕今声に出てた…?」
「ボクはエスパーだからね」
意味不明なことを言っているモノクマ。
「エスパーって何だどー?」
「車の窓についてるあれじゃね」
「それワイパーだよ!」
「えーっと…サッカーでゴールの前守ってる人かな…?」
「それはキーパーだよ水宮」
「あーもううるさいよ! 学園長の前で私語なんて許さないよ!」
「…うるさいわね、あなた」
「はぁ? もう、次私語言ったやつおしおきね!」
モノクマはかなり憤慨している様子。
「ほら、もう悪魔分校に着くよ」
ほら、と言われても…窓には鉄板がはられていて外を見ることはできない。
「ご乗車ありがとうございました。まもなく、悪魔分校前、悪魔分校前です。お乗り換えはありません」
「乗り換えないなら言わなくていいよ」
即座に飛んできた四十万さんのツッコミは、この空間がまだ穏やかであることを象徴しているかのように思えた。
重力が横にかかり、崩れそうになる。列車が徐々にスピードを下げているのだろう。
ここに連れてこられてから初めて、ついに、外の景色を見ることになるかと思うと、何だか少し安心する。特に状況が変わるわけでもないが、自分自身どこかで安堵していることに気付いていた。
車輪とレールの間から吐き出される音だろう。女性の甲高い叫び声のような音が車内に響く。やがて、少しづつ、横にかかる力と音が消えていく。そして、ついにその二つは止まってなくなった。
「はい、着きましたよ~」
モノクマの声と同時に扉がスーッと音もたてずに横へスライドした。
扉の先は眩しい光が覆っていた。僕は安心しながらも、微塵の警戒心を捨てずに先へと進んだ。
「ここは…」
扉を抜けた先は簡易的なホーム。そして真正面には巨大な建物がそびえていた。
「これがワイらが今から監禁される…悪魔分校…」
しかし、見た目は決して悪魔では無かった。名前が全くと言っていいほど外見と似合っていない。それに周りに見えるのは青い空と…。
「え…」
僕の目に飛び込んできたものを理解するのには、時間が必要だった。
「お気づきになったかな、空閑君。そう、この空間はね、檻に覆われているのです!」
僕たちの真上から地平線にかけて黒い格子状の檻が、僕たちを見下ろすかのように存在していた。
「監禁とはそういうことだったのですか」
「文字通りでしょ? どう? この青い空の中に不釣り合いで、でもとっても映える檻は!」
「…檻とも言えるけど…『籠』にも見えるね」
「か、籠だと…?」
「ほら、鳥籠ってあるだろ。鳥籠も格子状だ」
「つまり、僕たちはその巨大な『鳥籠』の中って訳か…」
「呑み込みが早いね。オマエラが籠の中の鳥だとするなら、差し詰めボクはその鳥たちを世話する飼い主ってとこだね!」
「いや、あんたも檻の中じゃん…」
「その鳥籠の中にこんな大きな校舎が佇んでいるとはね」
たしかにそうだ。
「鳥籠」という名の檻の中には僕たち16人の高校生とモノクマ、そしてこの学園生活の舞台である悪魔分校が収まっているのだ。
「じゃあオマエラ、ちゃっちゃと荷物を持って、分校内にある自分の部屋に移動させてね。あ、もちろんここでの行動に制限は無いよ。何といっても、この檻がある限りは脱出することなんて不可能なんだからね」
そう言ってモノクマは先にスタスタと歩いていってしまった。
ここから出られないなら、仕方がない。
僕は荷物を肩にかけて、分校へと歩き出した。
僕は荷物を床に置いた。そしてすぐに部屋を見渡した。
列車の個室ほど豪華ではなかった。むしろ「普通」だ。壁紙こそヨーロッパを感じさせるが、ベッド含めた家具等、床や天井は「普通」だった。列車と比べれば質素だ。だけど、僕はこちらのほうが落ち着く。
おっと、グズグズしてる暇なんてないんだった。
~食堂~
僕が食堂に着いた頃には全員がそろっていた。
「遅いぞ、空閑」
「ご、ごめん」
「いいんじゃないの、ヒーローは遅れてやってくるって言うし」
「はは、それは俺のことかい…」
「あー入弥、このナルシスト苦手だわ」
「あ、あたしも…」
「…悲しい…しかしそれもまた一興だ…」
「変人を絵に描いたような雰囲気だどー」
「あのさ、そんなことを話しに自分たちは集まったわけじゃないだろう」
呆れた様子で泊君は頬杖をつく。
「自分たちはこの悪魔分校の探索をするために集まったんだ」
「それは承知してるわ…」
「わしももちろん」
「…あ、すまねぇ、話聞いてなかった」
「今からこの校舎内の探索をグループに分かれて行う。グループは自分が決めておいた」
「仕事が早いですね」
「…ここにいる生徒たちをまとめられるのは自分しかいない…って勝手に思っただけどけどな…」
「で、グループはどうなってるの?」
「亜麻崎君、伊野君、相模君は西側の1階2階。江吉良さん、狩切さん、狂来さんは西側の3階。夕道さん、四十万さん、七井さんは東側の3階。邑田君、紫神君、最上君は東側の1階2階。そして自分、泊金人と、空閑君、水宮さん、蒼城さんが北側の1階2階」
「おー、よろしく頼むで」
「任せとき、しっかりと髪を切ってあげるから」
「た、探索じゃないのですか…」
江吉良さんのグループは少し心配だ…。狂来さんが一番頼れそうだ。
「よろしくな」
「お願いします。あ、猫派は嫌いです」
「え、ワイのこと…? こ、怖い…」
こっちは亜麻崎君のグループ。相模君がまともそうだし、おそらく上手くやってくれるだろう。
「鉄伽さん、入弥さん、頑張ろうね」
「よろしくね! 楽しみだなぁ!」
「…え、何が?」
こっちは夕道さんのグループ。超高校級のスタッフである夕道さんがいるし、心配はなさそう。
「よーし頑張るどー」
「ついに俺の真の力を開放するときが来たみたいだね…」
「真の力? まさか、ビームでもうてんのか!?」
えっと、こっちは最上君のグループなんだけど…。大丈夫かな。
「ということで、よろしく。空閑君」
「あぁ、うん、よろしく」
「空閑君と泊君の二人と一緒かぁ、とっても頼れそうだから、頼らせていただくね!」
「え、最初から他力本願する気満々じゃないか…」
「…」
最後にここは泊君のグループで、僕もその中の一人。
「ところでさ、このメンバーにした基準ってあったりするの?」
「…いや、男子は男子で、女子は女子で固めただけ。後は余った4人を一緒くたにするだけだし」
「じゃあ別のグループのメンバーも適当?」
「そういうことになるね。明らかに混ぜたら危険とも言えるグループもあるみたいだし」
「あたし心配になってきたよ…」
「…まあ安心して大丈夫だと思うけどね…」
泊君の適当なメンバー決めに多少の不安はあるが、謎に大丈夫な気がするのは僕も同じだ。
僕と泊君の思考は似ているようだ。
…泊君を見ていると何だか不思議な気持ちになってくる。そう、なぜかわからないけど、少しだけ懐かしさも感じる。泊君とは初対面のはずなのに…僕が感じているこれは何なんだろう。
「どうしたのかな、空閑君」
「え」
つい見入ってしまっていたみたいだ。
「自分の顔に何かついてるかい」
「いや、何もついてないよ!」
そう返した。泊君は不思議そうな顔でこちらを見つめる。
「じゃあ早速探索に行こうよ」
水宮さんは先にスタスタと歩いていく。相変わらず無表情な蒼城さんも、数秒後に水宮さんの後を追うように歩いていく。二人に続いて僕と泊君も歩き出した。
「北側には保健室と職員室があるみたいだね」
北側の1階は保健室、職員室、端には事務室などがあるみたいだ。
2階には会議室が複数ある。どうやら北側は教員が主に使用する部屋が多いらしい。
そして僕たちがいるのは職員室だ。部屋の大半が山積みの書類が置かれたデスクだ。しかし、誰一人として教員はいない。もちろんここは檻の中だから。
「うわ、デスクの上汚いね」
「中学校の職員室もこんなだったよ」
「…そのまま人だけ消えてしまったみたい」
人がいないことを除けば、普通の職員室だ。しかし、その人がいないことが異常すぎるのだ。
「疑問に思うなぁ」
突然泊君が口を開いた。
「え、何が?」
「この悪魔分校ってのは、あのモノクマってやつが用意したコロシアイ生活の舞台のはずだ。なのに、こうして目の前には至って普通の職員室がある。教師が誰もいないこの世界で、こんな職員室をわざわざ作る必要があったのかな」
「言われてみればそうだね」
「より本物の学校ぽく見せる演出とか?」
「あんな性格のやつがそんなことするかな…」
職員室の存在はたしかに謎だが、それなら、会議室だって謎だ。保健室はけがをした時に手当てをするためにあるんだろうけど、会議室なんて絶対必要ない。
考え込んでいると、誰かが横をすっと過ぎていった。
その主は目の前にあるゴミ箱をあさり始めた。
「あ、あの…蒼城さん…?」
僕の声にかまわず、彼女、蒼城さんはゴミ箱をあさる。
「…捜査は捨てたゴミから……」
え…。小さい声で彼女はたしかにそう言った。
捜査は捨てたゴミから…。その言葉って…。
トンと肩をたたかれて、僕の思考は停止し、また引き戻される。
「…これ」
蒼城さんはそう言って、紙切れを差し出してきた。
困惑した。何かよくわからない紙切れを渡されていることに。
おそるおそるその紙切れを受け取ってみてわかった。そうか、ゴミ箱から見つけたものだったのか。どうやらこの紙切れは新聞紙の一部のようだ。
「―――脱—————生――者は―――――」
ただ、ほとんど読めない。まわりは破り取られているし、文字の至る所がシミで汚れていて読めやしない。見た感じは何の役にも立たなさそうだが、なんとなくこの新聞の切れ端は何か重要な情報を持っているような気がしてならなかった。僕の推理作家としての勘が「何かある」そう言っていたのだ。
「何だ、その紙切れ」
「あぁ、どうやら新聞紙の一部みたいで」
「でも破れてるし、シミも多くてほとんど読めないね」
「何かの記事みたいだが…。ここから何かを読み取るなんて不可能だろう」
「うん…でも僕の勘が言ってるんだよね。この切れ端が後で重要になってくるって」
「…あたしは空閑君がそう思うならそれでいいと思うよ」
「自分もそれでいいと思うよ。何だかわからないけど、君に任せてると上手くいく気がする」
「ありがとう」
自分が信用されている…。こんな感覚……。
あれ…。
こんな感覚…。
前もどこかで…。
…。
僕は考えるのをやめた。
僕の脳みそが考えることをやめさせようとしてきたんだ…。
危険信号を送っている…。
怖い。
僕は首を振って、
「さ、次の探索行きますかっ!」
奇妙なくらいの陽気な声で、自分でもびっくりするくらい陽気な声で3人に言った。
どうも、忙しいMOGIぴーです。
みなさん外出自粛期間はどうされていましたかね。俺は遊んでました()。
久しぶりの更新ですね。早く裁判パートが書きたくて、進めてます。
次の更新もいつになるかはわかりませんが、よろしくお願いします。