ダンガンロンパ 絶望エクスプレス 〜希望駅8時発 絶望行き急行列車〜   作:MOGIぴー

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(非)日常編 Ⅳ

『オマエラ、至急体育館までお集まりください。来なかったやつはお仕置きだからねー』

 

「何だよモノクマ」

 僕はモノクマに言った。

 さっきの放送で、校内に散らばっていた生徒は全員この体育館へと集まった。

 何人かは脱出する方法を探っていたみたいだが、疲弊した顔を見るあたり、その方法は見つかっていないようだ。

「オマエラに集まってもらったのは他でもない、コロシアイをしてもらうだめだよ」

「自分はコロシアイなんてものをするつもりは無いよ」

「そんなことやるより脱出方法を見つけ出すほうが有意義です」

 泊君の発言に相模君が同意する。

「脱出なんて最初からできないよ。誰かを殺さなきゃね」

「ここに他人に殺意を持ってる人が居ないんだからさ、そもそもコロシアイなんて起きるわけないでしょ?」

 夕道さんが鋭い指摘をする。

 しかし、モノクマは「いやいや」と言った。

「今誰も殺意を持ってないなら持たせてあげりゃいいんだよ。だからオマエラを集めたの」

「意味がわからん」

「わしにも理解出来んわ」

「ボクにも……」

「はい、私語は慎んで。今からオマエラには『動機』をプレゼントしちゃうよー!」

 動機? モノクマの口からそう聞こえた。動機を与えるというのか? 

「動機? どういうことだ」

「そのままの意味だよ亜麻崎君。殺人が起きるように動機を与えるんだよ」

「はぁ? 言ってる意味さっぱりなんだけど」

 七井さんが怒ったように言う。

「明日の正午までに殺人が起きなかったら、オマエラの秘密を暴露しちゃうってことクマ」

「僕たちの秘密?」

「そうだよ。ここに16人分の封筒があります。それぞれ名前が書かれてて、中にはその人その人の秘密が記されています!」

 モノクマは僕たちの名前が書かれた封筒を手に持っている。

 僕の名前が書かれた封筒の中には、僕自身の秘密が記されているってことなのか……? 

「ほらよ! 受け取れい!」

 そう言うと、モノクマは封筒を勢いよくばらまいた。封筒はそのままパタパタと地面に落ちていく。

 自分の名前が書かれた封筒を拾ってみる。ただの封筒ぼようだ。

 中身を取り出してみると、1枚の紙が入っており、そこにはこう書かれていた。

「両親を殺害した本当の犯人は……」

 いや……。これ以上読んでも無駄だと僕は判断した。両親のことを知っているとは、やはりモノクマは只者では無いことがわかる。それに、両親が死んだ事件の「僕しか知りえない真相」まで知っている……。本当に油断出来ない。

 僕はその紙を折りたたんでポケットにしまう。

 他の皆も中身を確認できたようで、紙を捨てたり、破り捨てる者もいた。

「何でこのことをお前が知っているんだ!」

 亜麻崎君が今にも襲い掛かりそうな形相でモノクマを見ている。だが、モノクマはひるむどころかそれを見てニヤつく。

「僕は何でも知ってるんだよ。殺人の動機になりうる重大な案件をね」

「……でも、ボクは人殺しなんてしないよ。罪悪感に飲まれるより、秘密がバレた方が気楽だと思うよ」

 四十万さんが言う。

「秘密や嘘で常に自分を塗り固めているやつも……既に紛れ込んでるんじゃないのか」

 伊野君の一言で再び疑いの眼差しが飛び交う。

「秘密や嘘のためなら人の命を奪うことも躊躇わない、外道な考えの輩がね」

「ちょっと……何言ってるの」

「それって入弥のこと言ってる?」

「何?」

「入弥は自分が1番かわいいもん。だから他人のことを簡単に裏切って蹴落としていくよ」

「つまり、誰かを殺すことにも躊躇は無い、と言いたいのか?」

「殺したりしないよ、後々面倒くさそうだし」

 ぶっきらぼうに言う七井さんだが、泊君は至って冷静だ。

「七井さん! あなた、何を言ってるかわかってんですか!」

 と相模君が怒りを露わにして七井さんに言う。

「本当のこと言ってるだけじゃん。それに、同じことを思ってる人は他にもいるでしょ」

「だからって不安を加速させるようなことを口走らないでほしいです」

 七井さんと相模君の間には目に見えない火花が散っているようだ。

「落ち着いて2人とも。言い争っても意味無いよ」

 すかさず僕が仲裁に入る。これ以上争っても無意味だ。

「フン、あんただって、皆には話せない秘密があるんでしょ」

 七井さんが僕を見る。

「そうだね。でも、僕は人を蹴落とそうとは思わないし、誰かの命を奪おうなんてことも思ってないよ」

「どうだか。普段善人面してる奴ほど、心の奥底ではなにか企んでるかもしれないし」

 善人面……か。自分自身が今、善人という名の仮面を被っていないのかと問われれば、ノーと答えるだろう。本当の善人はこの秘密を後ろめたく思わない。いや、そもそもそんな秘密さえ生まれるはずがない。

「そのような発言を控えてほしいんだ。……今更また互いに信じられなくなったら、この状況を打破できなくなる」

「そもそも皆お互いに信じられるの?」

 僕は他の者たちを見る。皆目を伏せる。

 仕方がないことだと思う。他人を完璧に信じることは難しい。他人を信じるためには、最初に必ず疑わなければならないからだ。

「あたしは信じていくつもり」

 水宮さんが強くそう主張した。

「今はまだ全てを信用できるわけじゃない。だったら、今から信じていけばいいんだよ」

 その言葉の効果なのか、場の雰囲気が若干和らいだのを感じた。

「あれれぇ、さっきまで一触即発みたいな状況だったのに、すぐにまた良いこと言っちゃってさ。つまんないよボク」

 モノクマが頬杖をついて僕たちのやり取りを眺める。

「お前の思い通りにはいかないよ、モノクマ」

 僕が代表してモノクマに言い切る。

「空閑君まるで主人公みたいだね、カッコイイ~。仲裁もお手の物じゃん。超高校級の仲裁人に改名しちゃう?」

「水宮さんの言う通り。僕も皆を信じることにする。誰も殺さないし殺させもしない」

 今誓ったんだ。人が理不尽に死ぬのはフィクションの中だけでいい。絶対にこの現実で、人を死なせはしない。

「残念だけど現実は非情なんだクマ。ぜーったい、だーれか死ぬもんね」

 相変わらず耳障りな声で吐き捨てた白黒のぬいぐるみは、音もなくその場から姿を消した。

 モノクマがいなくなっても、誰も口を開くことは無かった。

 

 

 

 部屋に戻った僕はそのままベッドに倒れこんだ。

 何でこんなことになったんだろう、と考える。

 僕たちに配られた動機。他の人のリアクションを見る限り、良いことではないのは確か。

 僕に配られた動機もとても自ら公開しようとは思えない。が、公開されたくないからと言って人殺しに成り下がりたくはない。

 願うなら他の皆も思いとどまってほしい。

 悶々としながらも、少しずつウトウトと意識が朦朧としてくる。

 やがて僕は眠りに落ちていった。

 

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