年が明ける前に投稿できてよかった……
そんなわけで、朝香果林さんとの待ち合わせ場所にやって行きましょうというわけなんですが……
「なんでお前等までいるん?」
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会だよ全員集合!
なぜか俺とエマ先輩だけでなく、8人という大世帯でやってきていた。
通行の邪魔にならないようにはしているが、こんなにぞろぞろと引き連れて来なくても良かったのではと思ったり。
まぁ、俺が来てくれと言ったわけじゃないのですが。
「まーまー、良いじゃん良いじゃん。ソーゴがどう勧誘するか気になるし?」
「あ、かすみんも気になります!センパイがどんな手を使って籠絡させるか、参考にしちゃいますよぉ」
「何に役立てるつもりなの……」
「籠絡とは人聞きの悪い。俺はただ普通に同好会へ入部してくれと頼んでるだけだ」
『普通に……?』
「おい言いたい事があるなら言え」
エマ先輩を除く全員が訝しげに首を傾げる。
まったく失礼な奴らだ。今まで俺がどんなに清く正しく懇親丁寧にスカウトしてきたかわかってないな!
意見、意義など申し立てたいことがあえばどうぞと言うと、一人だけすっと手を上げた愛がじゃあさーと続ける。
「アタシを同好会に誘おうとして教室に呼び出した手口って覚えてる?」
手口言うな。なんかあの手この手を使って騙し上げたみたいじゃないか。
そんなもん覚えてるに決まっている。
3話前の事とは言え、昨日食べた夕食が何だったかと思い出す事みたいに造作もない事。
「大事な話があるから来てくれって言ったな」
「抜けてる!アタシを呼び出す為に長ったらしい質の悪いトークしてたでしょ!」
「トークにジョークを挟むのも必要なことだと思うんだ」
「ちょっと上手い!でもこの話の流れだと60点ってとこだね」
高得点じゃねーか。
「私の時は……先輩が今とはまるで違う人のようだった」
「センパイ、お財布まで出してましたからね。あの時の先輩街中であやしいお店に連れて行こうとするしつこい男の人みたいでしたよ」
「うん、怖かった」
「えっ……酷くない?」
「そ、それだけ先輩は私たちの為に必死になってくれていたんだよ」
「しずくは良い子だなぁ!ほれ、おにーさんが200円やろう」
「えっ!?お、お気持ちは嬉しいですけどお金は頂けないですよ!」
辛辣なコメントをする一年生組の中、たった一粒の清涼水であるしずくのフォローに頭を撫でようと右手が伸びかけたが、なんとか思いとどまった。
後輩とはいえ異性の頭を撫でるのは良くないからね。
でもなんかしずくのやつ妙に残念がった表情してないか?あれだよね。もらった金額が予想以上に少なくて、シケてやがんぜ!的な感じだよね?……それはそれでしずくとの今後の接し方に悩むとこだが。
こんな事を言っているけど、以前かすみを撫でた事はあるというね。でもかすみはなんか手の掛かる妹みたいっていうか、褒められるのを待っているペットの猫って言うか……ね?
本人が聞いたら噛み付いてきそうな事を考えつつも、撫でる代わりに渡した硬貨2枚を俺に返却しようとしてきたしずくだったが――――
「しずくちゃん。心配しなくてもそれはお金じゃなくてチョコレートだから」
隣にいた歩夢から物の正体を言い当てられてしまった。
むぅ、歩夢の目を欺けることは出来なかったか。
「そ、そうなんですか?」
「うん。ほら、ここから剥がせればぺりぺりぺりーって」
「あ、本当だ……」
歩夢が指した場所通りに、しずくが不慣れな手付きでゆっくりと剥がしていくと銀色の外装から剥けた円型の物体は茶色のチョコレートへと変貌した。
「わっ、なつかしー。それって駄菓子屋で売ってるやつだよね?」
「あの10円で買えるやつだよね〜。彼方ちゃんも昔は遥ちゃんに買って上げてたな〜」
「日本のだがしってこんなに丁寧に作られているんだね〜。わたし、本物とぜんぜん見分けがつかないよ〜」
「でもこれは100円玉……100円玉のって売っていたっけ?璃奈ちゃんボード「ハテナ」」
「そう言われてみたら、りな子の言うとおり見た事がないような……あるような」
「ないと思うよ。それ総くんの手作りだし」
『手作り!?』
まだ銀色のままであるもう一枚の100円玉チョコレートを皆が興味深そうに見て、駄菓子談義をし始めたのだが愛が自分の財布を取り出してモノホンの100円と比較をしたりしていると、歩夢がなぜか自慢げにネタバラシにかかる。
「うそっ、これをソーゴが!?」
「まさに職人芸……商品化されてもおかしくない」
「総悟君ってば器用なんだね〜。ご褒美に彼方ちゃんを抱きしめれる権利を与えてしんぜよ〜」
「…………」
「センパイ?なんで手を出したり引っ込んだりしてるんですかー。そっちじゃなくてこっちの方がきーーーっと柔らかくて抱き心地が良いと思いますよぉ?」
「やわら……かい?」
「りな子!今どこを見て言ったの!?」
そんな感じでわいわいと話していると、気が付いたら目的地に到着していた。
……のだが。
「えっとね……果林ちゃん近くにいるみたいなんだけど、まだ掛かりそうだっていうから、わたし迎えに行ってくるね〜」
目的の人は来ていませんでしたと。
エマ先輩がスマホで連絡を取ってくれて、この付近にはいるみたいらしいが……なぜエマ先輩が迎えに行く必要があるのか。
待ち合わせの場所を指定してきた本人が来ていないと考えると……まぁ、トラブルや事故だったらエマ先輩がもっと慌てているだろうし、その朝香果林って人が方向音痴か指定した場所を自分で勘違いしたとかか。
この待ち時間暇だな〜……喉も乾いたし、自販機で飲み物でも買ってくるか。せっかくだし、みんなの分も買ってくるか。
朝香果林って人のもだ。
みんなに一言伝えてから近くの自販機に行く事にした。
「……本当に近くだったし、付いてこなくても良かったんだぞ?」
「私もちょうど喉が乾いていたんだ。それに人手は多いほうがいいでしょ?」
「なんのことだかわかりませんね」
「とぼけちゃって。総くんの事だからみんなの飲み物を買ってこようとしてたんでしょ?わかるよ、幼馴染だもん」
「……そんなにわかりやすいか、俺」
ちょっと飲みもん買ってくるとしか言ってなかったはずなんだけどな……歩夢には最初から目論見が見抜かれていたようで、あの場で一緒に行くと言ったのだった。
「てきとーに選んでいきますか。俺は……これにするか」
ポチッと硬貨を自販機に投入してからボタンを押したのは多量のフレーバーが混ざった炭酸。
人によって評価が偏る一品だ。ちなみに俺は嫌いではない。好きでもないが。
でもなんかたまに飲みたくなるんだよね。
「歩夢はー?どれがいい?」
「えっと、私は――――」
「言っておくけど俺の奢りだからなー。好きなの選んでいいぞ」
「……もう、自分の分は自分で払うのに……ありがとう。みんなの分、私が半分だそうか?」
「それじゃ歩夢に奢る意味ないだろ。ほれ、早く決めな」
「んー……ならそこの緑茶かn――――」
「わかった緑茶の下にあるこれだな」
ピッ、ガコンっ!
歩夢が言い切る前にとあるメニューが置かれてあるボタンを押す。
取り出し口からそいつを握ると、手のひらにじんわりと暖かさが広がってくそいつは――――
「ほら、ご所望の品ですぜ姫」
「……………………あの、総くん。これって」
「言うな!俺にはわかる。わかるともさ!そいつが欲しかったんだろ?歩夢好きだったもんなそれ」
「うん。確かに好きか嫌いかって聞かれたら好きって答えるけど、今は別にいらないかな」
「なに?好き嫌いはよろしくないぞ。なんでも食べてもっと大きくならんと!」
「さっき自分で言った事思い出してみて」
一通りツッコミを入れるとため息を吐き、俺から受け取った缶をまじまじと見つめる歩夢。
その歩夢が呆れるほどの物とは――――
「おでんだよね……これ」
ラベルに書かれた具材の数々と共に書かれたひらがな3文字。
360度どこをどう見てもおでんである。
「なんでこんなものが自動販売機にあるの……」
「こんなものとは失礼だぞ。おでんのスープってめっちゃうまいじゃん」
「いや美味しけどね!だからって缶単位でまるまる飲みたいかって聞かれたら……」
「おい見ろ歩夢!これ卵の代わりにうずらの卵が入ってるみたいだぞ!」
「えぇぇ……どこに食いついてるの」
「ま、冗談だけどな。ほら、歩夢が飲みたかったのはこれだろ?」
「あ、うん。ありがとう……」
今度はちゃんとした緑茶を歩夢に向ってひょいと投げ渡す。
他のみんなのやつは直感でなんか好きそうなやつを選んでいくとするか。
「それで総くん。このおでん缶は……」
「かすみにでもあげとけ」
「えぇ……」
なんて事を言う総くんだけど、きっと総くんの事だからかすみちゃんのは別で買うんだろうなぁ。
……そうだ。さっきの駄菓子で思い出した事があったんだけど、総くん覚えているかな?
「ねぇ、覚えている?昔のこと」
「どれくらい昔かによるなー。16年前とかって言われたらちと怪しいが」
「そんなに前じゃないよ。えっとね……小学校に上がる前くらいの頃なんだけど」
私が話しかける間も総くんはみんなの飲み物を買っていく。その後ろで私は昨日の出来事を振り返るかのように語っていく。
「二人で商店街の駄菓子屋に行った時の事。覚えてない?」
「いや、覚えてないな。そんなことあったっけ」
あ、この感じ絶対覚えているやつだ。一瞬だけど総くんの動きが固まったもん。
私はそれに意に介さず話を続ける。
「総くんがおばさんからお金をもらったんだって大はしゃぎしていたんだよね。それで私にお菓子をご馳走してくれるって言ってくれて」
「あー……そういやそんなこともあったようなかったような……」
物凄く微妙な顔をしながらも出てきた飲み物を私に手渡してくる。
総くんが私に生まれて初めて自分のお金で奢ってくれた事だもん。忘れるはずがないよ。
「意気揚々と駄菓子屋に来たのはいいけれど、手持ちのお金だけじゃ一人分しか買えなくて、総くんは自分の分を我慢して私の分だけを買ってくれたよね」
「そりゃその為に行ったわけだしな……母さんのやつ、歩夢にお菓子でも買ってあげなさいとか言っておきながら駄菓子一人分の金しかくれないとか、今考えるとどうなんだって話だよな」
まぁ、金の有り難みとか俺が人並みの心を持っているかどうかとか試したんだろうけどさと付け加える総くん。
おばさんそういうとこは厳しいもんね。総くんには自由にさせてたり私に優しくしてくれたりするけど、勉学とか常識には厳しい教育ママって感じかな。
最近おばさんと話していないし、たまには会ってご飯とか一緒に食べたいなぁ……
「それでその帰り道総くんはこう言ったんだよね」
「なぁ、歩夢さん。過去の思い出話に浸るのも良いんですが、それくらいにしない?飲みもんもほらこの通り買い終わったわけだしさ」
この話題……私が次に言う事に余程触れられたくないのか、話を切ろうとする。
でもダーメ。覚えてないって嘘をつく人のことの言う事なんて聞く耳もちませーん。
「そうだ!お金がなければ自分で作ればいいじゃん!って」
「やめろぉ!俺の黒歴史を掘り返すんじゃない!」
腕の中に抱えている飲み物の数々がなければ今頃総くんは頭を抱えていたかも。それぐらいに総くんは大きな声で叫ぶ。
ふふふ、あなたからしたら思い出したくないかもしれない出来事なのかもだけど、私からしたら素敵で大切な思い出の欠片なんだよ……?
「あの頃の俺は青かったんや……子供の頃はなんだって出来るんだって普通に思ってたし、好奇心と直感には逆らえなかったんだ……」
「昔から総くんって気になったらすぐ様に行動するよね。えっと……あれは小学5年生の夏休みだっけ?街のホームレスさんが何しているか気になるって言い出して」
「夏の自由研究の題材にしたな。歩夢と一緒に気前の良い駅前在住ベンチ横住まいのおっさんにあれこれ聞いたよなー。懐かしいわなー」
私が危ないからやめようよって止めても「安心しろ。いざとなったら不審者撃退用の催涙スプレーと簡易スタンガンと防犯ブザーもあるから、最悪歩夢だけ逃げりゃいいしヘイキヘイキ!」と色々な防犯グッズをバッグや服の中に装備して行く気満々だった。
懐かしむようにどこか遠くを見る総くんだけど、今考えてもとんでもない事をしてたよね……普通に誘拐案件だもん。
あのおじさんが良い人だったから良かったものの……一歩間違えれば警察沙汰になるし。
結局夏休み明け、自由研究の発表の時私を含めた周りの子はおばあちゃん家の実家での出来事や植物の観察日記等々……極めて普通の題材が発表される中、一人だけホームレスの一生と称した研究タイトルは一際異質を放っていた。
私今でもあの時の担任の先生の顔覚えてるもん……前の生徒の発表まではニコニコしてたのに、総くんのタイトルを聞いた途端に笑顔が消えて、真顔になってたし。
最終的に総くんは先生に呼び出しを受けて両親共々お説教を受けていた。
その後私が同伴していた事を隠していたけれど、おばさんにバレてたんこぶの数を倍に増やしていたよね。
私とお母さんに頭を下げてきたおばさんに、私は総くんを怒らないで上げてって言って、お母さんは気にしないでって笑っていたっけなぁ。
「って昔話もこれくらいにするか。そろそろエマ先輩が連れてきてもおかしくないかもしれんし」
「あ、うん」
そう言って総くんは先に行ってしまう。
……かと思ったら少し先で立ち止まって、私の方に振り向き。
「ほら、行くぞ歩夢」
「……うん♪」
私はその横に並ぼうと駆け出す。
……やっぱり総くんは総くんのままだなぁ。子供の頃お金を作る事は断念した総くんだけど、中学2年生の時にあの頃のリベンジだと言って、100円玉のチョコレートを作って……私にくれたよね。私の為だとは決して言わず。なんでって聞いてもやりたくなったからやったとだけ。
総くんからしたら本当に自分の為なのかもしれないけど。
総くんの周りにはたくさんの女の子が増えてきて……総くんの事を想う女の子もその中にはいるみたいだけど、私が幼馴染なのは変わらないもんね?
スクールアイドル……私にできるか不安だけど、総くんが喜んでくれるなら私もみんなに負けないように頑張ろう!
みんなより出遅れている分、一歩一歩着実に……総くんと一緒に歩き進んで行こう。
果林さん回……のはずが本人は登場していないというね。
どっちかというと歩夢回&総悟くんのちょっとした思い出話回。
結局年内に同好会メンバー顔合わせならず……か(´・ω・`)