あなたと奏でる物語   作:Clear2世

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10話 其の二

 

 

そうして歩夢と戻ってくるとエマ先輩の隣にネイビー色の髪をした見知らぬ女性が立っていた。

恐らく彼女が朝香果林さんなのだろう。

彼女に軽く挨拶を交わしつつ、みんなに飲み物を歩夢と渡していく。

一人一人お礼を言ってきて、人によっては財布を取り出したりしてきたが押し留める。

うんうん、お礼を言えるのは個人的にポイントが高い。お兄さん嬉しくなっちまうよ。

世の中には当たり前のことを出来ない人もいるからなぁ。

 

 

あ、ちなみにかすみには最後に特別な物を用意してあると、期待させた後におでんを上げました。最初は歩夢から渡して欲しかったのだが、まだ歩夢には難易度が高そうなので、俺から渡すことに。

受け取る前は贔屓扱いされている事に、かわいいかすみんですから仕方ないですねぇ!なんて言ってそわそわと落ち着きがなかったのだが、渡したあとの反応は……なんということでしょう。

 

「え、おでん?……おでん…………おでん!?おでんってどういうことですか!?かすみんそんな芋芋っぽく見えますかぁ!?いえ、おでんは好きですけど……ってそうじゃありませんよ!かわいいかすみんであることを除いたとしてもうら若き女子高生に渡す飲み物がおでんって……そこ!わらうんじゃなーい!」

 

おでん缶を受け取り、物を眺めしばし固まったあと御怒り心頭で詰め寄ってきた。

エコ贔屓ハンターイとブー垂れていた愛と彼方先輩筆頭に、お似合いだよーと笑われ、空気が良い感じに緩む。

笑いの渦が広がる中、俺は視線を悟られないよう注意しつつ、朝香果林さんを観察する。

 

 

エマ先輩と並んで佇む姿は姿勢も綺麗で、立っているだけで注目を集めそうなくらいに一般人とは違うオーラを感じ取れる。

モデルをしているというだけはあり、やはりとんでもなくスタイルが良い上にタッパもある。今の彼女の緩めの服からでも腰の細さがわかるし、出るとこ出て引き締まったとこは引き締まっていると言うべきか。つか、そのショートパンツから出ているおみ足も凄いが、肩から胸元までの露出すごかない?

あのほくろとかなんかえっちくないですか?

ぶっちゃけ目のやり場に困るわ。

 

露出の多い服はあまり好きじゃないのだが、不快感は全く感じないのは彼女の雰囲気もあるのかのしれない。

美人は立っているだけで得とは聞いたことはあるが……

同好会にいる先輩二人とは対極の位置にいそうなタイプか。いわゆるクール系お姉様って感じかな。

 

……でもなんだろかこの言い寄れぬ違和感というか不安感というか……副会長という役職柄、色々なタイプの人を見てきていたが彼女からは……こう、見た目だけでは判断しちゃいけませんよと俺の観察眼が訴えてきている。

ぶっちゃけるとポンコツの香りが漂ってきているんだよなぁ……ウチの生徒会長(中川菜々)と同じ匂いがしますねぇ……彼女も周りから出来る人間だと思われがちだが、中身はアニメや漫画に影響されやすいスピードの限度のないF1カーだからな。

まぁ、でも俺的には欠点の1つや2つあった方が女性は愛嬌が増して良いとは思うけどね。

 

なんて、考えていたら向こうもこっちを観察していたらしい。

目と目があい、興味深そうに声を上げた。

 

 

「あなたがエマの言っていた男の子ね……」

 

「中橋総悟。2年生普通科生徒会副会長です。以後お見知りおきを」

 

「えぇ。よろしくね。エマから聞いているとは思うけど、私は朝香果林。ライフデザイン学科の三年よ。……ふむふむ」

 

自己紹介を終えると、またこちらをじろじろと見定める様に見てくる。

……え、なに?

 

「あの……何か変なもんでも付いてます?」

 

「あぁ、不躾でごめんなさいね。エマが会いたいっていう男の子だからつい」

 

「か、果林ちゃん!しーっ、しーっ!」

 

エマ先輩がわたわたと手をばたつかせて俺と朝香先輩の間に入ってくる。

それ以上は言わないでと人差し指を立てていた。

エマ先輩の事だから変な事は吹き込んでいないとは思うが……

 

 

「ねぇねぇ、大丈夫なん?」

 

「ん?何がだ?」

 

後ろから袖を引っ張ってきたのは愛だった。心配そうにこちらを見ている。

内緒話でもしようと手を口元に当て、こちらの耳に届かそうと爪先を伸ばしてくる。

 

「アタシが聞いた話だと果林って、色々な部や同好会に誘われた事があるらしいんだけどどれも全部断っているらしいよ」

 

「せやかて愛だって特定のとこにはいろうとしなかったじゃん」

 

「そりゃぁそうだけど……」

 

「安心しろ。さっきも話してたが俺の勧誘術に死角はない」

 

「いやさっきの振り返りのせいで不安しかないんだけど。死角しかシカイにないんだけど」

 

「……さてはお前、そんな心配してないだろ」

 

「あはっ、バレたかー」

 

 

両手を頭の後ろに組んで、ニッコリと笑顔で下がる。

こいつがダジャレを挟んで来る時ってだいたい本人に余裕がある時だしな。

さて、エマ先輩と戯れていた朝香先輩だったが、エマ先輩もこちら側(同好会組)の方に来たとこで勧誘が始まる。

 

 

「それにしてもスクールアイドルね……エマが活動していたのは知っていたけれど、私に出来るかしら」

 

「大丈夫ですよ。ここにいる彼女等、歩夢と愛に璃奈。最近加入したばかりの3人ですが、最初は同じ不安を抱えていました物の今では立派なスクールアイドルですよ」

 

「は、はい!私もスクールアイドルなんて到底出切っこないと思っていたんですけど、総くん……彼と一緒なら頑張れるって思ったんです」

 

「そうだよ!一緒に私たちとスクールアイドルやろうよ果林ちゃん。困ったことがあっても総悟くんがいるし、絶対に楽しいよ!」

 

誰だって初挑戦の事に大なり小なりと不安はある。

少しでもそれが解消されるようにと実際に最近加入したてのルーキーの名前を出す。私と同じ立場の人でも出来るんだと思わせることが大切だ。

歩夢とエマ先輩の援護射撃もあって、朝香さんの不安はさらに削られただろう。

それは有り難いのだが、貴方達揃いも揃って俺に全面的な信頼置きすぎじゃありません?歩夢は長年の付き合いだからわかるけど、エマ先輩はそうじゃないですよね?

 

 

 

 

「(立派なスクールアイドルって……私たちライブどころか、本格的なトレーニングすらしてないのに……)」

 

「(それは言っちゃ駄目だよりなりー!アタシたちはまだデビュー前ではあるけど同好会に入った時点ではスクールアイドルには違いないんだからさ!)」

 

 

おいそこー余計な事は言わないでいいからなー。

俺は何一つ嘘はついちゃいないぞ。立派なんてもんは人によって受け取り方が違うしな。

この場合での意味合いだと愛が言った通り、同好会に加入したその瞬間にてみんな立派なスクールアイドルだ。

立派な(新人)スクールアイドルである。

 

「……かすみさん?先程から胸を撫でてどうしたんですか?」

 

「……かすみんは思うんだ、しず子。神様ってどうしてこうも不公平なのかなって」

 

そして後ろから聞こえる少女の悲痛な声は聞こえておりません。

てかやっぱ女性の目から見ても朝香さんってスタイル良いんだな。

 

 

 

「そうね……スクールアイドルに興味はあるけど……」

 

興味はあるけどって、断る手段の常套句じゃね?

朝香さんの反応からしてだと脈はありそうって感じはするけど。

 

「でも私でいいの?フリフリの可愛い衣装とか私、似合わないわよ。体のラインが出るような衣装とか露出の高い衣装なら自信あるけど」

 

「ろ、露出ですか……」

 

今までの経験からなのか自身有りげにクール系の衣装が似合いうと強気に言う朝香さんに対し、逆にふんわりとしたピンクで彩られたかわいい系の衣装が似合う歩夢から、困惑気味に呟かれた。

歩夢あんま露出の激しい服って普段から着ないもんな。

目の前の朝香さんなんて、既に歩夢からしたら刺激が強すぎるだろう。

うーん、朝香さんはこう言っているが清純派スクールアイドルが着てそうな衣装も似合うと思うけどな。

というか、スタイルの良い彼女からしてみればどの衣装を着ても大体着こなせる気もするが。

 

 

「そう。例えば……彼が気にはなるけど凝視するのは失礼だから、なんとか目を背けようとしている胸元のほくろ……とか」

 

やべぇ、バレてた。

自身の胸元のほくろを指差して、こちらにウィンクを飛ばしてくる。

そして同好会メンバーからは冷ややかな視線を飛ばしてきているのを感じる。

 

 

「総くーん?」

 

この間注意したばっかだよねと呆れを含んだ視線と一緒に向けてくる幼馴染。

いや、こればっかは仕方ないでしょ。俺だって健全な男子学生だし。

 

「や、まぁ……こんだけ綺麗な人な上に、そんな自ら強調されてる服を着てたら気にはなるっての」

 

「ふふっ、お褒めに預かり光栄だわ。気になるんだったら遠慮せずにもっと近くで見てもいいわよ」

 

バツが悪そうにして答えると、俺の反応に気を良くしたのか朝香さんは楽しそうにこちらへと近づいてくる。

腹部に手を当て、前屈みになって近寄ってくるもんだから先程よりもインパクトが凄い。

え、なに何なの!?彼方先輩とエマ先輩といい虹ヶ咲の3年生はスキンシップが過剰な傾向があったりするの?初対面の異性に素肌を晒すのも厭わないとか露出願望とか視姦されたかったりするの?ビッ○だったりするの?サノバ○ィッチなの?

なんにせよガン見していると現同好会メンバーからの評価が下がるので、直視しないよう目をそらす。

っておい誰だ俺の背中つねった奴!声には出さずに済んだが、いたかったぞ!

 

「照れているのかしら?ふふふっ、かわいいとこあるじゃない」

 

逸らした視線の先に回り込むようにして、朝香先輩が下から覗き込むように見てくる。

どうしてもこの人は俺をからかいたいようだ。

 

「もうっ果林ちゃんってば総悟くんをあんまりいじめちゃかわいそうだよ〜」

 

「そうですよぉ。そんなセクシーな身体を使ってかすみんのセンパイを誘惑するのはやめてください!」

 

そんな俺を見兼ねたのかエマ先輩が俺の前に庇うように立ち、かすみが私の所有物だと言わないばかりに右腕を抱きしめてくる。

いつから俺は君の物になったと言うのかね?

 

「かすみさん。ちゃっかり先輩を専有しようとしないの」

 

まともな事を言っているように聞こえるが、君も同じ事してるよね?

反対側である左腕をそっと控えめな力ではあるが、抜け出させまいとしないばかりに両腕で組んでくる。

 

ていうかこれどんな状況よ。俺は朝香さんをスカウトしにきただけだったのに、いつの間にか後輩の女の子を二人侍らす(ように見える)二股野郎に成り下がってない?

こんな場面を他の生徒に目撃されたら、俺は明日からどんなレッテルを貼られるのだろうか。

 

 

「あらあら、取られちゃったわ。仲がいいのね」

 

微笑ましそうにこちらを見る朝香さん。

アカン。このままでは流れが完全に向こうの方に行ってしまっている。

交渉事で相手にペースを持ってかれるのはあってはならない。

少しでも有利に、より確実にこちら側として好条件で引き込むのが上手い交渉術だ。

ここらで流れを変えるべく一発パンチのある発言をしなけれ。ば

名残惜しくはあるが、二人に離してくれと言って一歩強く足を踏み出す。

 

 

「朝香さん!」

 

「ど、どうしたの急に大声を上げて」

 

ビクッと肩を跳ね上がらす朝香さんを強く見つめながら、彼女をビシッと指を指して俺は大きく息を吸って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お ま え が……ほ し い!!」

 

「!?」

 

『!?』

 

シンプルイズベスト。長々と前置きを語るのも大事だと思うが、このように飾らない言葉をストレートに投げ込むのも有りだと思うんだ、うん。

これは俺の直感なのだが、この人は難しい言葉を並べるよりも簡素な言葉で熱く想いをぶつける方が効果有りだと思ったからだ。

朝香さんの顔を見る限り、ハトが46cm砲を食らったかのような表情をしてるし、インパクトは抜群だっただろううん。

 

「そ、そ、そそ総くん!?いったい何を言って……!?」

 

「お~……なんて熱くて情熱的な言葉なんだー。でもこれってスカウトじゃなくて、告白じゃないの~?」

 

「センパイ!勧誘ですよ、か、ん、ゆ、う!こ、告白じゃないです!」

 

現同好会メンバーから動揺の声や非難の声などを浴びせられる。

告白だと?君らは一体何を言っているのかね。

 

「告白じゃない。勧誘であってるぞ。俺らが彼女を欲しているのは事実じゃないか」

 

「事実だけど言い方!さっきの言葉をどう受け止めれば勧誘だと思えるのさ!」

 

「あえて、『我がスクールアイドル同好会はモデル経験のある』を抜いて見たんだが……伝わらなかったか」

 

「伝わるわけないっしょ!たこ焼きを作ろうとして、タコ抜きで作ろうとするくらい省いちゃいけないものでしょうが!」

 

愛から怒涛のダメ出しを食らう。

言いたいことはわかるが、もんじゃ焼き屋の看板娘ならもんじゃ焼きで例えた方がいいんじゃなかろうか。

わかりやすい例えだけど。

 

 

「……い、今までいろんなお誘いをもらったけど、こんな情熱的なのは初めてよ……」

 

顔を手で扇ぎ、赤くなった顔の体温を下げようとしている朝香さん。

お、なんか満更でもなさそうな感じでない?

どうだ!ほれみろーと!みんなに顔を向けてみるが、誰一人喜んだ顔はせずものっすっごい形容しがたい微妙な表情をしていた。

うんまぁ、自分で言っておいてなんだがあの流れからのこの発言はないよね。

一部始終を見ていた同好会メンバーならまだしも、何も事情を知らない人が一連の流れを見たら『美少女を大勢連れ歩いている上に女生徒二人を侍らしているクズがさらに美女を手籠にしようとしている』図にしか見えないよね。

やだ、私ってばほんとうにクズ……

 

「あの中橋総悟君からお誘いを受けるなんてねー。それもエマの探し人が君だなんて」

 

「なんかやけに持ち上げられているみたいですが、俺はただの虹ヶ咲学園生徒会所属副会長兼スクールアイドル同好会(仮)部員なだけですよ」

 

「それだけ長い肩書を持っているならただのって言わないんじゃないかしら……ちょっとまってちょうだいね」

 

ごそごそとやたら高そうな洒落ているショルダーバッグの中を漁り、何かを探している。

何を出そうととしているんだ?

 

「これよこれ。ほら、このページ」

 

雑誌を取り出したかと思うと、付箋が張られてあるページを開きこちらに見せてくる。

目の前に差し出されたので、後ろにいるみんなも覗き込むように指された箇所を見ると――――

 

 

 

「これセンパイじゃないですか!?」

 

「もう、そんなわけないじゃないですか。まったく、かすみさんってば…………うそっ!?本当に先輩だ!」

 

「えぇっ!?わ、私にも見せて!」

 

「なになに……『新学期新入社員新生活。昨日までの古い自分とは今日でさよなら。新しい自分へと踏み出そう!絶対に失敗しない春の心機一転コーデ!!』……この見出しソーゴが考えたの?」

 

「なわけないじゃん」

 

俺だった。

俺を除く同好会メンバーが驚きに目を丸くさせ雑誌と俺を交互に見ていた。

でかでかと1ページ存分に使って、春服の特集が書かれていた。

上は白の長袖Tシャツに下はデニムのブラックジーンズ。その上にライトブルーのステンカラーコートを羽織り、黒のレザーブーツを履きスカした態度で写っていた。

いわゆるちょい背伸びをした落ち着き目系のコーデだった。

つーか、ご丁寧に俺のプロフまで載ってんじゃん。誕生日に好きな物、嫌いなもんまで。

 

「実は私もあなたには個人的に興味があったのよ。たまたま読む機会があったから読んで見れば、自分の通う学園の副会長が載っているんだもの。同業者だと思って、毎月同じ雑誌を買っていたのだけれど……あなたが載っているのはこの一冊のみ。モデルじゃないの?」

 

「正式なモデルではないですね。これは母のツテでたまたまやっただけですよ。本来は俺なんかよりも断然イケメンなモデル君がやる予定だったらしいんですが、突如辞めてしまって……その代打ですよ」

 

虹ヶ咲学園に入学する前のある日の休日。母さんから立ってるだけでいい本日限りのバイトがあるんだけどどうする?と言われ、どうせすることもなかったので二つ返事で了承した。

昔から交友関係が広く、人付き合いが好きな母さんはたまにこうして俺に短期のバイトを持ってくる事があり、今回もそれなんだろうなーと予想していた。

バイトの内容は仕事場に付くまで母さんは教えてくれなかったが、到着するまで自分で考えていたら、まぁ写真撮影かなんかだろうなと思ったら案の定だったんだが。

 

母さん曰く、学生時代の後輩が元モデルの元スタイリストをしていたようで、今回の話を母さんに話し誰か紹介できる人がいないかと聞いた結果俺に話がきたというわけだ。

正直、俺みたいなフツメンよりも立ってるだけで絵になる男なんて山ほどいるだろうと、意見はしてみたが母さんと後輩さんは――――

 

『むしろそっちの方が衣装映えするからいいわよ!』

 

といい笑顔で告げてきたのだった。

まぁ、イケメンが雑誌に載るのってどこの雑誌でもあることだろうし、話題性は出るだろうよ。喜んでいいかわからんが。

 

服の選択権は俺にあって、そっから良い感じに仕上げていくっていう話だったのでせめてもの意趣返しに上は緑のなアロハシャツ。下は緑の短パンと言う全身グリーン一色の陽気なハイカラ短パン小僧コーデで行ってみたら、その雑誌に載っているコーデに大幅変更された挙げ句、母さんには盛大に笑われ写真撮影を取られるという失態を犯してしまったが。

そのコラムには俺が選んだコーデとか書かれているが、俺が選んで着たものと言えば靴下だけである。

写っていないけど。

 

 

「そうだったのね。……でもあなたも中々かわいい顔してるわよ?私は結構好みだし、自信を持ちなさいな」

 

「えっ?あ、はいどうも。ありがとうございます?」

 

なんかよくわからんフォローをされた。

結局俺ってイケメンじゃないのね。わかっていたけど。

 

「なんで疑問系なの……さっきの殺し文句といい面白い子ね」

 

「あの、一応言っておきますけどさっきのはスクールアイドル同好会として、あなたが欲しいと言ったわけであって俺個人としてで言ったわけでは……」

 

「あら、ざーんねん。あんなに内から燃え上がるような想いは初めてだったのに……お姉さん悲しいわ」

 

「うっ……い、いや。多少個人的な感情がないとは言い切れませんけど!でも割合的には圧倒的に同好会としての側面が強くてですね!具体的には6:4くらいの比率で……ってあれ?邪な感情結構抱いてないか俺」

 

悲しそうに呟く朝香さんに、いたたまれなくなった俺はそれだけではないと早口で付け加えた。

くっ、普段であれば年上の女性であれど適当に話をぶった切って打ち切りエンドとするんだが……今回はこっちが勧誘してるからな。あんま不用意な発言をして彼女の機嫌を損ねて拒否られても困る。

なんかいい感じのアドバイスをもらったり、上手い具合に割り込んだり誰かしてくれないかな。みんなの方に助けを求めるべく目を向けると

 

 

「せっかくだし、写メとっておこっと」

 

「あ!愛先輩、かすみんにも後で送ってほしいです!」

 

「わ、私にもお願いします!」

 

「ねぇねぇ果林ちゃん。今度この雑誌わたしも読んでみたいんだけど、貸してくれないかな〜?」

 

「彼方ちゃんもエマちゃんの次に借りたいで〜す」

 

「この雑誌まだ販売されてたりするかな……」

 

「うーん……去年のだしブック○フとかじゃないと置いてないかも……」

 

 

おいなんで花に群がる虫みたいに雑誌を見ているんだ。

俺が写ったコーデとか見てどうすんねん。

あ、これ以上拡散させたり二次配布はすんじゃないぞ。このメンバー内だけで止めておけよな。

愛辺りにはそこんとこ言っておかないと友達に見せたりしそうだな……いや、個人情報が載ってるからさすがにしないか。

 

 

「賑やかなメンバーね。私はもう読み込んだから好きにしなさいなー」

 

読み込んだってそのページだけじゃなくて、雑誌そのものを何度もって事ですよね?

そこのページだけ付箋があるのはたまたまですよね?

聞いてみようと思ったが、遠回しに俺の事興味ありまくりなんですか?と言ってるようなものなのでやめた。

まぁでもこれで流れはこっちにきたみたいだし、結果オーライとしよう。

 

 

「それでスクールアイドルの話ね。なってもいいけど一つ条件があるの」

 

条件か。今まで勧誘しメンツからは特に条件提示されてなかったとはいえ、これは予想の範囲内だ。

むしろ廃部する可能性があるのに、無条件で加入してくれたあいつらの人が良すぎるだけだ。

いや、別に朝香さんが図々しいとかそんな事を言ってるわけじゃないけどね?

 

「私は、私の目指すスクールアイドルになりたい。それでもいい?同好会には入るけど、グループ活動はあまり得意じゃないっていうか……」

 

「ソロ活動中心でいきたいと。問題ないですよ。むしろウチはその方針で行くつもりでしたし」

 

こちらとしては願ったり叶ったりの条件だ。

金を要求したり、モデルをまたやってみないかとか言われる想定もしてなかったといえば嘘になるしな。

前々から考えていたことだ。かすみから同好会が散り散りになった話と原因を聞いて思った事。

みんなにはこの場で伝えておくとするか。

 

「そういうわけだ。聞いていたと思うが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は……グループ、ソロ。その概念に拘らない活動方針とする!」

 

『え?』

 

朝香さんを含めた全員の手が止まり、こちらに視線が向く。

まぁ、誰にも一切伝えていなかったからな。

 

「スクールアイドルと言えば、ユニット活動をしているイメージは強いわけではあるが、決してソロ活動がないわけじゃない。そうだよなかすみ?」

 

「は、はい。多くはないですけど、ソロで有名なスクールアイドルはいますね」

 

「以前の同好会で皆考える事やりたい事は違うけれど、それはそれで味があって面白いと。そんな感じだったよなしずく」

 

「えぇ……それで前は上手くまとまることができずに……」

 

「そう、それだ。そういうことだよ。こんだけ個性的なメンツが集まっている中、それぞれが定まった方向性を持った上で無理にグループ活動をしようとしたから上手いこと行かなかったんだろうよ。だから、個々が同好会に集まり一つにまとまりはすれど……進む方向性は別々で良いと思う。最強のスクールアイドルを目指すのもよし、最かわのスクールアイドルを目指すのもよし、自身の描く理想のスクールアイドルを目指してお互いが切磋琢磨し、時には協力して高め合う。そんな感じでどうよ?」

 

要は自分の好きにやっていいよーってことだ。

他の運動部で言えば……そうさな、水泳部を上げるとするか。大会で個人の得意な種目に参加する人もいれば、団体戦で一つのチームとして参加する人もいる。

それと同じだ。思い思いにやりたいことをやって、気が向けば皆一つになってユニットを組むなりしてグループ活動すりゃいいと思う。

個性の固まりである全員を制御するよりかはそっちの方がらくで――――もとい、強みを薄めてしまうからな、うん。

 

「めっちゃ良いこと言う〜彼方ちゃんもそれに賛成ー」

 

「はいはーい!かすみんも賛成で〜す。最強にかわいくて驚異的にキュートなスクールアイドル目指して頑張りますから、応援してくださいね、センパイ♡」

 

「かわいいよりもゴツさがすごい気がする……でも私も賛成。まだどんなスクールアイドルになりたいかはわからないけど……みんなとなら頑張れそう。璃奈ちゃんボード「むんっ」」

 

 

「わたしもそれで良いと思うよ。グループとしてはまとまらなくて良いってことだよね?」

 

「えぇ。正直まとまろうがまとまらなかろうがどっちでもいいんですけどね。そこは然程重要じゃないですし。そこら編は縛られずに、自由気ままに好きな事をやっていきましょ。グループ活動はまぁ、気が向いたらとかでいいんじゃありません?」

 

言いたい事は全部伝えたし、改めて朝香さんの方へと向きなおる。

同好会の方針について異を唱える人はいないみたいだし、今後はソロ活動主体で行く事になるな。

俺はこの勢いのまま、朝香さんの方へと手を出して伝える。

 

「朝香さん。スクールアイドル同好会のメンバーとして共にスクールアイドル界に今までにない刺激を!旋風(センセーション)を巻き起こしましょう!」

 

「今までにない刺激……ふふっ!いいわよ、面白そうね。そういうことなら喜んで入部させてもらうわ!」

 

差し出した手は俺よりも小さくしなやかな手で。それでもしっかりと握られたのだった。




初投稿から約10ヶ月。ようやく全メンバーを登場させることができました……!
次回できっと最終回かな(すっとぼけ)


生徒会長 最近出番があまりない。原作だとそろそろスタンバっているはず。

クール系お姉様 朝香果林さん。アニメだとシャニマスの咲耶みたいな事してて笑いそうになったけどイメージにはあってた。
スクスタだとシナリオやイベントストーリーが出てくるにつれ、ポンコツ度が増してく人。
負けず嫌いだったり内に秘めた情熱が凄かったりと、知れば知るほどクールとは程遠い感じもしなくはない。
でもそこがいい。

美少女を侍らすクズ (スカウトに)手段を選んじゃいられないんだ!モデル経験があったり駄菓子作成術を持ち合わせていたりとスキルは高い。
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