せっつー分が足りなくて書きなぐっていたら、1万3千と文字数がエラい事に。
分割したかったけど、切れドコロがなくてそのままそぉい!
虹ヶ咲スクールアイドル同好会に歩夢が加入してから数日後。
午前中の数学、物理、英語という学生の中でもトップクラスに受けたくない配置順の授業を受けて、昼休み。
生徒会で歩夢が作ってくれたサンドウィッチを方手に食しながら、副会長としての職務を果たしていた。
「『図書室で一々貸し出しカードを書く手続きが面倒で仕方ありません。もっと手軽に貸し出しできれば、利用者も増えると思います。書籍含め全て電子化にして下さい。副会長、どうかご決断を』まぁ、言わんとする事は分からんでもないが、電子媒体より紙の本に触れる事が好みの人だっているしなぁ。俺だってそうだしね。今の情報化社会の波に乗ろうとする姿勢は悪くないが、全ての物を一斉に変更するのは時間も金もいるしな。この案は見送りって事で。……しかし、貸し出しカードを書くのはめんどいのは同意なんだよなぁ。貸し出し情報はデータで管理しといた方が俄然楽だろうし……これくらいは打診しておくか。菜々会長、それでいいかー?」
「えっ?……あ、はい。そうですね……」
菜々会長の許可も取ったし、次のご意見番はっと。
……にしてもこのタマゴサンドめっちゃウメェ。
卵の半熟具合は申し分なく、ふんわりとなめらかな味わいの中に黒胡椒のちょっぴりピリッとした刺激が適度にマッチしており、卵の量も過不足なく食パンとの黄金比率をバランス良く保たれている。
これがどれ程の手間と時間をかけて作ったかなんて想像に難くない。しかも、登校前の貴重な朝の時間に作ってくれているのだから、ホント出来すぎた女の子だ。
作業片手間に頂いているが、ちゃんと
ちゃんと食べる前にはいただきますを。食べ終わった後にはいただきますはしような!周りに人がいようがいなかろうが、これは最低限のマナー……いや、人としての道徳として欠かしちゃいけないものだゾ。
副会長との約束だ!
そんなわけで、歩夢に感謝のメッセージを送っておこう。
スマホを取り出し、アプリを起動して素早く打ち込む。
そうごん:サンドウィッチめっちゃ(゚д゚)ウマー
そうごん:アユム、カンシャ!オレ、オマエ、スウハイスル∩(´∀`∩)
これでよし。では次のお便りに行ってみよう。
2年生女子、P.N『姉はハワイでダンスを習っていたからな』さんから。
「『食堂のコロッケ蕎麦が不味いです。コロッケが汁でgzgzになるのが耐えられません。副会長!なんとかしてください!』ばっか、こいつわかってねーなぁ。その汁で衣がgzるのがいいんじゃねーか。コロッケの魂まで浸透させるのが通の食べ方だってのに。そんなにgzるのが嫌ならgzgz言ってないで蕎麦とコロッケを別にして頼めばいいじゃねーか。ま、俺はgzラーではなく何も乗っけない素朴派なんだが……奈々会長はどうだ?gzラーか?それとも素朴派?」
「ぐ、ぐずらー……?コロッケ蕎麦は美味しいと思いますけど……」
ふむ。会長はgzラーではないが、ある程度のgzgzは受け入れると。
つーか、意見を寄せてくるやつらみんなこぞって副会長、副会長って指名してくるんじゃないよ!ハンドルネームとか別にいらんっての。確かに全校集会でご意見番を募ったとき、気軽に「気軽に投稿してくれよなー。ラジオ番組みたいにリスナーからのお便り感覚でいいから、ドシドシ応募してくれ。めんどい事は全部会長がなんとかしてくれるからさ」とは言ったけども。あれは比喩だったんですよ生徒の皆さん!
こんなに俺と皆で認識の差があるとは思わなかった……!
あん時菜々会長を生贄に捧げて、俺が楽する権利を生贄召喚したはずなのに。なんで余計に仕事が増えているんですかねぇ。菜々会長に会長宣言、略して会宣でも伏せられていたのだろうか。
そういえば、今ってもう生贄って用語じゃなくて、リリースしてアドバンス召喚になってんだっけな。俺的には生贄って言葉の方がなんか、少年心をくすぐる感じで好きなんだけどな。
ウィンかわいいよ、ウィン。ウィンちゃんデッキと言っておきながら、今で言う禁止制限をこれでもかというぐらい詰んで、色々な決闘者を蹴散らしたのは良い思い出。
……お?スマホから振動が。さっそく歩夢からの返事が来たかな。
割と機械類には苦手意識のある歩夢だけど、メッセージを打ち込む速度はめっちゃ早いんだよな。今どきのJKって感じがする。
紛う事なきJKなんですけど。
ぽむ:ワタシ、トッテモ、ウレシイ(≧▽≦)
ぽむ:生徒会のお仕事はどう?何か手伝える事があったら、なんでも言ってね☆(ゝω・)v
ぽむ:次にあなたは「ん?今、なんでもって」と言う
そうごん:ん?今、なんでもって────( ゚д゚)ハッ!
ぽむ:(*´ω`*)
ああ見えてノリの良いとこある歩夢マジ天使。
最後の顔文字みたく、俺の顔もほっこりとしていることだろう。
あ、いつの間にかサンドウィッチなくなってんじゃん。
どうやら夢中で食べていたらしい。ご意見番もこれで全部目を通したし、一段落したかな。
「ごちそーさんでしたっと。……ンーッ!午後からの授業も適当に頑張りますかぁ」
立ち上がってそのまま大きく伸びをする。
午後の授業までは時間があるが、どうすっかなぁ。同好会の部員探しと称して、学園内をうろつくか、それともかすみの様子を見に────じゃなかった。からかいに行くのもいいか。
なんて、なにをしようかなと次の行動を考えていると、俺が退出するのかと思ったのか、菜々会長が焦った様子で声をかけてきた。
「あ、あのっ!総悟さん」
「ん?どうかしたか?」
「えっと……その…………きょ、今日も良い天気ですねっ!」
なんだその会話に困ったら取り合えず天気の話題を振ってから話を膨らまそうと言わんばかりの定型的な文は。
取り合えず菜々会長に合わせることにする。
「そうだな。こんだけ天気が良いと、外に出て思いっきり体を動かしたくなるな」
なんか言ってて体がうずうずしだした。この後グラウンドに出て、軽く体を動かすのもありだな。
時間的にそんな長くできないが、軽く食後のシャトルランとかしてもいいかもな。
「そ、そうですよねっ。こんな日は絶好のスク────」
思わず言いかけようとして、慌てて口を塞ぎだす菜々会長。
言いたい事があるならズバッと言っちまった方がええんやで?
「絶好のスク……なに?」
「絶好の……絶好の…………!そ、そう!スクールライフ日和ですねっ」
「そう……そうか?確かにそうと捉えられなくもないが……なぜそこだけ英語?」
絶対に今思いついただけだな。途中まで目が泳いでいたし。
学校生活日和ってなんだろうか。……普段よりも授業の内容が頭に入りやすくなるとか、良いイベントが発生しやすくなって経験点もらったり、やる気が上がりやすい日の事?
俺のやる気は常に表情が黄色以下だけどな。
……にしても、なんかさっきから様子が変だな。
「そ、それより!調子は如何ですか?」
「すこぶる健康だが?今なら手刀でボトルチャレンジが出来るくらいには」
これまた無難な事を聞いてきたが、素直に答えておく。
俺だって触れずにキャップを開けることくらい訳無いですよ!菜々会長!
「そうなんですか!?それは是非見たいです!……じゃなくて!違う、私が聞きたいのはそういう事じゃなくて〜!」
三つ編が左右に振れる程に頭を抱え出す。
……とてもじゃないが、他の生徒が持つ生徒会長への印象と、今目の前にいる生徒会長では180度像が違うよな。
かすみと一緒に生徒会へ乗り込んだ時での会長は違和感しかなかったし。
かすみ曰く「あの生徒会長、学園に通ってる生徒全員の名前と顔を覚えているんですよ。かすみん、そんな人間離れした所がちょっと苦手だったり……そういうところも含めてなんかロボットみたいで」とのこと。
知ってはいたが、改めて聞くととんでもないわな。
一応言っておくと、俺は覚えているわけがない。そもそも、全員分なんて端っから覚える気がないしな。
生徒会絡みで知り合った生徒や、部に顔出して話した生徒とかは覚えてるが、関係のない人物までは……ねぇ?
「同好会です!スクールアイドル同好会の調子ですよ。その、部員集め……捗っているのかと」
聞き辛そうに、髪を撫でながら聞いてきた。
一応気にかけてはいるのか。それが生徒会長としての責務なのか、それとも中川菜々個人としてなのかは……この場合は後者だろうな。
「順調も順調。同好会はメンバーが3人に増えたところだ。この調子なら、あっという間に10人揃っちまうかもな」
「そうですか……部員増えたんですね」
「これも俺の日頃の行いとコネのお陰さ。……ちなみにだが、菜々会長的にはどう思ってんの?スクールアイドルについては」
「学生生活の限られた時間の中で歌やダンス、パフォーマンスを磨いて大勢の人に笑顔を届ける。素晴らしい活動だと思っています。大好きな事を思う存分にやって、大好きをたくさん伝えるこれ以上にないくらい素晴らしい手法ですし、1日じゃ語り尽くせないくらいギューッと魅力がたくさん詰まっている…………と、世間一般では思われている事を私も思っています」
絶対お前の意見だろ。
最後の方に取ってつけたような事を言っているが、何時もの暴走する時と同じ勢いだし。
今まで口にして無かっただけで、さてはスクールアイドルファンかなんかか。
知ってから間もない俺とは違い、かなり詳しそうだ。
……どうやら、スクールアイドルに関心がある事を隠したがっているような……?同好会についてはどう思ってんだろ。
「ふーん……それじゃ
「……総悟さんは同好会がなぜ活動停止になった経緯についてはご存知ですか?」
「あぁ。おおよその事情はかすみから聞いた」
以前まではいた4人のスクールアイドルについてもさらに詳しく聞いた。
桜坂しずく、エマ・ヴェルデ、近江彼方、優木せつ菜。かすみから聞いた話だけでも一人一人の個性が強く、初ライブ前に各々のやりたいことが上手く収束できず、散り散りになっていったと。
良くバンド活動なんかで聞く音楽性の違い……方向性が皆違っていたのだろう。個性が強いってことはそれだけ他人には譲れない何かがあるってことだろうし。
「ま、意見の相違からのすれ違いなんて良くあることだ。新入部員確保は当然として、離脱した4人にはしっかりと戻ってきてもらうさ。かすみもそう望んでいたしな」
かすみからの話からすると、自ら退部を申し出たとかスクールアイドルに対する熱が冷めたとかではなさそうなので、呼び戻せる可能性は低くはないと思っている。
「そうでしょうか?優木せつ菜という人は自分の意見を押し付けて、スクールアイドル同好会を崩壊させようとしたんですよ?」
「捉え方によってはそう捉えられなくもないだろうが、かすみはその優木のせいだなんて一言も言っちゃいないぞ。意見の衝突、すれ違いなんてそんなん日常茶飯事だ。……委員会同士の会議や予算会議だってそうだろ?」
「……」
「大事なのはその後だ。活動の方向性を定めるなり、当人の意思を聞いたり話し合ったりしたか?話さなくても伝わる事もあれば、話さないと伝わらない事だってあるさ。……ま、菜々会長に言ってもしょうがないだろうが」
「いえ……そんなことはないです。とても為になりました。優木せつ菜さんに会う機会があれば伝えておきます」
そう言ってペコリと頭を下げてくる。
「そうしてくれ。……あぁ、それとだ。スクールアイドル同好会はまだ崩れちゃいない。倒れかけた柱を立て直そうと皆で必死になってるから、はよ戻ってこいと伝えてくれ」
「ふふっ……わかりました。総悟さんなら大きくて、もう崩れないような物を築き上げてくれますもんね。……そう、それはきっと空高くそびえ立つ天空のお城のように!!」
「や、期待してるとこわりぃんだけど、ラ○ュタは無理だっつの。神の雷とか出せないから」
「そうでしょうか……?総悟さんならザ○ル!と言って手から電撃を出すことくらい造作もないのでは!?」
「君は俺をなんだと思っているんだね?」
サ○ス!と言ってメモ用紙を紙飛行機へと折った物を手のひらをこちらにドヤ顔で向けている菜々会長目掛けて飛ばす。
それをラ○ルド!と唱え、ノートを盾に構えたが紙飛行機はまるで意思を持つようにゆっくりと上に傾き、菜々会長の頭上についた途端エンジンが切れたかのように落下していった。
ふんっ、貴様の行動なぞお見通しよ。
あいたっと涙目で頭を擦る菜々会長を眺めつつ、先程から感じていた違和感について考える。
なんかやたらスクールアイドル同好会の事を気にかけてる節があるし、俺よりも詳しいんだよな。いくら生徒会長だからといって、部内の出来事にそこまで詳しくなるか普通?
外に情報が漏れて人づてから聞いた可能性もあるが……だとしてもだ。同好会が廃部になりかけているという事実は広まっているとしても、誰が、何をして、なんてまで深いとこまでは広まらないはずだ。
それも大事になってるわけでもなく、人知れず同好会は消滅しかけていったって感じだ。なおさら噂とかが拡大していくのは低いと思うんだがな。
……はっ、まさか!
「そうか……謎は全て解けたぞ」
「あいたた……紙とはいえ、先端は痛いですよ……総悟さん?」
「そういう事だったんですね、中川さん。あなたがあの時、なぜああいった行動を取ったのか、私には不可解でなりませんでした」
「(コ○ン君の世界に登場してきそうな探偵みたいな事を言い始めました……)私には今の総悟さんの行動原理が不可解なのですが……」
「なに、初歩的な事だよナカソン君」
「ナカソン………………え、もしかして私の事!?」
「おかしいと思ったんだ。去年の半ば頃からか。貴方が学園中どこを探しても見つからない事が多々あった。生徒会の仕事がない時や急を要さない作業であったり……放課後等時間を確保出来る時間帯なんかは特に……まるで人に見られたくはない何かをしてるかのようにね」
「(き、気付かれていた!?確かにその頃からスクールアイドルの活動をしたくて、時間を見つけてはレッスンしたりしていたけど……そ、そうだ!)そ、それはどうしても見たい漫画とかがあったからですよ!総悟さんも私の家の事、ご存知ですよね?」
「残念だがその供述には既に裏が取れているのだよ。この生徒会に隠しおいてある漫画やアニメのブルーレイ数々……ある日の朝、数を数えておいて放課後の時と数が合ってるかどうか描く人をしたのさ。それも君がいなくなったという報告を生徒から受けた日にね」
「た、たまたまここにはない作品を読んでいたのではないでしょうかっ。いやぁ〜総悟さんが貸してくれたハ○ターハン○ーの続きが気になって、持ってきていたんですよ!」
「それもないな。その日は形だけとはいえ、月1の持ち物検査があった日だからね。そんな日にわざわざ不要物を持ってくるか?いやない。あなたは聡明な人物だ。所々抜けているとこがあるとはいえ、この個性的な人物たちが集う学園の長。生徒の会の長、生徒会長なのだよ。それでいて、あなたの家は趣味ですら規制をかけてくる程の厳格な両親。……学園から素行について問い合わせのリスクがあるような行動を取るはずがない」
「うっ……そ、それは」
「まぁ、長々と語ったが……一番の根拠はこれだな。……菜々程のお人好しが人の目を盗んでまでして、漫画とか読む人間じゃないってな」
「あ……」
迷探偵(誤字にあらず)ごっこたのすぃぃぃぃいい!
言葉に詰まり、俯いていた菜々会長だったが、俺の言葉に顔を上げる。
これぞ持ち上げまくって上げに上げて、奈落の底へと叩き落とす……作戦の逆、厳しく叱った後にわーしゃしゃしゃしゃよーしよーしとしっちゃかめっちゃかに褒めまくる戦法!
自身の口調の気持ち悪さにやや鳥肌……寒イボがやばいが、是非もないよネ!
なんか菜々会長の瞳が潤んでいて頬は上気し、俺を見てくる視線が有象無象の同級生なんかに向けちゃいけないような感じがするがいいのかい?そんなホイホイと信用しちゃって?俺はお前みたいな秩序・善属性なんかではなく、背中を向けた師に対して背後からブスリ♂と刺しちゃう(意味深)悪属性・混沌な奴なんだぜ?
「以上の事から導き出される答えは一つしかない。真実はいつも一つなのだよ。会長!さては、さては────」
「(……はっ!?なんて見惚れている場合じゃなかった!もしかして、総悟さんにバレた!?元々感が良くて頭の良い人だとはわかっていたけど……でもどうしたら?人数が集まってない以上私の正体を明かすのはまだ早い気がするし……で総悟さんならなんとかしてくれるんじゃないかと期待してる私もいて……どうしよう!?ここはどう答えるのが正解なの!?教えてください安○先生!)」
大きく息を吸って、そのまま貯めた後金○一みたく菜々会長を指して、高らかに告げる!
「────
「はいっ!仰るとおり私が………………………………………………はい?」
ふっふっふ……図星過ぎて言葉を失っているな。
見よ、このビーンソルジャーが鳩鉄砲を食らったかのような間の抜けた表情!冷血機動会長と呼んでビビってる生徒たち2見せてやりたいね。
「今まで隠れてスクールアイドルになる為の特訓をしていたんだな!まったく……水臭いじゃないか。言ってくれればすぐに仲間に迎えたというのに。……いや、人の良い会長の事だ。かすみに対して冷たい態度を取ったから言いづらかったんだな。だが案ずることはないぞ!我が同好会は来る者拒まず!去る者理由があれば追わず!例え敵対関係にあったとしても、最終的には手を取り合う。うむ、菜々会長が大好きな王道展開というやつだな!」
まぁ、俺はどっちかというと仲間やヒロインの為に、勇者が最後の力を振り絞って自爆特攻をして、魔王と共に永遠の眠りに付き……世界は救われたけど大切な者が失ってしまったみたいな後味悪い話も好きだったりするけどな。
この事をいつぞやかに歩夢に話して、あの菩薩みたいに慈悲深い歩夢が引きつった笑みを浮かんでたけど。
さぁ、菜々会長よ。何も迷うことはない。お前の座右の銘である好きな事を好き放題やる絶好のチャンスだぁ!生徒会長であるアンタが加入してくれたら、融通が聞くだろうし、色々無ちゃだって押し通れる。
歩夢にかすみ、見ていてくれ!最高の成果を二人に捧げまいと奮闘する俺の勇姿を!
「(え、えぇー……これはどうするべきなんでしょうか?)」
私、中川菜々……いえ、優木せつ菜はかつてない窮地に立たされていました。
総悟さんが一手一手と逃げ道を塞ぐように切り返してきた時は焦りましたが、私の事を信用してくれると知った時は天にも昇ってしまいそうな気持ちになりました。
……それもほんの一時だけでしたけど。
安○先生……助けてください。どうすれば私はこの窮地から逃れることが出来るのでしょうか?
的を射た推理を披露しながらも、結論は的を叩き壊すくらいにズレていた名探偵さんに対して、どう返答すれば傷つけずにこの場をやり過ごせるのでしょうか。
安○先生でなくてもいいので、何方か私に知恵を授けてください!
『諦めたら?そこで試合終了ですよ』
あ、安○先生!?なんか区切り方がおかしくありませんか!?
それに先生、そんなに痩せていましたっけ……?
「さぁ、菜々会長!ここに名前を記入するだけで、今日からスクールアイドル同好会の一員だ。俺達と共にスクールアイドルの覇道を共に歩もうではないか!」
は、覇道……!な、なんて心躍る響きなんでしょうか!
私の脳内に現れた安○先生?にバッサリと見捨てられていたら、いつの間にか総悟さんがこちらに近づいてきていました。
うぅ……なんて真っ直ぐな目なんでしょうか。その熱意に屈してしまいそうで、私の手がサインしようと震えてしまっています!
「む、どうした手が震えているぞ?……ははーん。さては新たな一歩を踏み出すことに不安を感じているんだな?安心しろ。我が虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会では初心者でも楽しく安全に、そして最高のパフォーマンスが出来るように俺がいる限り、最大限のサポートをするしな!」
総悟さんがマンツーマンでスクールアイドル活動の補佐をしてくれる……?
……………………ヤバいです。想像するだけで楽しいが溢れて止まらないです。サイン……すごくしたいです。でもまだ10人集まっていないのに、条件を提示した私がそれを覆すのは良くないですよね……あぁ、なんか頭がクラクラしてきました……考えすぎて知恵熱が出ちゃいそうです。
……あれ?総悟さん?なんでそんな私をじっと見つめて──
「……ちょいと失礼」
────止める隙もなく、伸ばしてきた腕に反応できず眼鏡を外されてしまいました。
こ、これは私が優木せつ菜だとバレてしまうのでは!?
「思ったとおりだ。会長眼鏡なくても全然イケるじゃん。眼鏡かけて知的でクールな感じも似合っていたが、こっちの方が素朴で幼さをちょっと出してるところがいいな。うん、悪くないかな。俺としては(こういうスタイルも)好きだな」
「……はぇ?」
どうやら私が見バレする心配はなかったようでいやいや待ってください。今総悟さんはなんと言いました?知的?クール?そんなことは全然ありません。両親にスクールアイドルをしている事がバレないよう振る舞っているだけであって…………好き?スキ?それともスキー?え、違う?好き?
…………………………………………………………う、うぇえええええええええぇぇぇ!?す、すすすすす、好き!?そ、総悟さんが私の事をスキナンデェェェェェ!?
「知名度を集めるには一つでも多く武器を持っといたほうがいい。個性で話題性を集めるスクールアイドルもいれば、普通じゃ考えられないような意外性で注目を集めるのもいる。……が、それも一定ラインのルックスは必要だろう。それもアイドル……人の理想像が生み出すとなる偶像ならな。そう考えると菜々会長はかなりの基準値を叩き出しているだろうな……ふむ、肌もきめ細やかときた。歩夢から聞いたが、女性の肌の手入れは俺達男が想像するよりもずっと大変だと聞く。むむむ、努力値もかなりの物だと見受けられるな」
はわわ!?今度は頬を触られました!?
そ、そ、そ総悟さん!いくら私たちの仲とはいえ、これはやりすぎなのでは!?あぁいえ嫌ってことはぜんぜんまったくそんなことはないんですけれどちょーっと触り方がこそばゆくてですね────
「ひゃっ」
「うぉっ、す、すまん。…………って俺はさっきから何をしてるんだ!断りもなく異性に勝手に触れたりして……すみません生徒会長様土下座でも靴の裏を舐めたりでもなんでもしますから通報だけは……どうか通報だけは……!」
総悟さんの大きくてちょっとゴツゴツした手が私の頬に当てられていたのですが、そのまま親指でゆっくりとなぞられてしまい、思わず声を上げてしまいました。
び、びっくりしました!いえ、さっきからもう心臓がバクバク鳴りっぱなしなんですけども!
その後の総悟さんのバックステップで距離を取られからの鮮やかな謝罪土下座コンボにも驚いてますけど!
あまりにも自然な流れで、躊躇なく地面に頭を擦りつけて謝ってくる姿にはこれがジャパニーズDOGEZAです!とエマさんに見せたいくらい見事な土下座でした。
「ど、土下座なんてしないでいいですから!通報なんてしませんし、服が汚れちゃいますから早く立ってください!」
「そ、そうか。本当にすまん。ちょっとテンション上がりすぎた。あまりにも無遠慮すぎたってかデリカシーに欠けてたっていうか……」
「いえ!そ、その………………べ、別に嫌だったわけではないので……」
「え?」
うぅー……!難聴スキルとか今時のラブコメ主人公ですか!
今の私絶対顔真っ赤になってるよね……は、恥ずかしいけどここは伝えておかないと総悟さんが落ち込んじゃうかもしれないし……
「で、ですから!……嫌ではなかったですから。……総悟さん相手だと」
「そ、そうか。なら、良かった……のか?」
気恥ずかしそうに、そっぽを向きながら頬をかく総悟さん。
…………か、かわいいです!いつもの自信たっぷりで私の事をからかってくるあの総悟さんがこんな表情するだなんて。
「……」
「……」
お互い言葉を発せようとせず、沈黙が続く。
話題がないだとか、話が続かないとかそういうわけではなくて……どこかふわふわと浮ついたかのような空気。総悟さんとアニメ鑑賞していた時とはまた違う感じがするけど、この感じ……嫌いではないです。
……そういえば、総悟さんさっきなんでもするって言っていたよね?……ちょ、ちょっとくらいなら……おねだりしてもいいよね?
「もう一度……」
「え?」
「もう一回だけ……さっきと同じ事、してくれませんか?」
「同じ事って……え、何を?」
……この人はわざとやっているのでしょうか?
「頬に……手を、添えてくれませんか……?」
「あー……いや、無闇やたらに異性に触れるのは良くないと思われ」
「最初に触って来た人が言うんですか。……さっき、なんでもするって、言いましたよね?」
「……言ったっけ?」
「言いました」
「いいか、会長よ。なんでもするって言うのはそれは本人の出来る範囲のことでしか叶えられないしこういう時のなんでもしますってのは大体ネタで終わるかなんやかんやでウヤムヤにするかで何が言いたいのかというとそのまま鵜呑みにするのは良くないとおもいm」
「お父さんに同級生の男の子に触られたといいます」
「喜んで触れさせていただきます」
「そう、それでいいんです。……あ、あとなるべくでいいんですけど……雰囲気はちょっとロマンティックにお願い……できます?」
「無茶振り……!」
このくらいは……いいですよね?
たまにはこうしてコミュニケーションを取るのも良いのではないでしょうか?総悟さんの周りには何時だって、色んな人がいます。総悟さんにとっては、私なんて大勢いるうちの一人でしかないかもしれませんけど……
私にとっては……こうして素の私を見せられる人は……あなたしかいないんですよ?
少しくらいあなたを独り占めしても……いいですよね?
「ロマンティック、ロマンティック……こういう感じでやりゃぁいいのか?会長……いや、菜々」
「は、はいっ!」
ま、まさかの名前呼び……!
じっと真剣な表情で見つめてくる総悟さんに、私はガチガチに緊張しながらも見上げます。
……こんなにも異性の顔を間近に見るなんて、お父さんを除けば初めてかな……
「菜々……」
あ……総悟さんの大きい手が私の頬に……どこか暖かくて、優しく包み込んでくれるような感覚に見を包まれます。
「んっ……総悟さん」
この時間がずっと続いてくれるよう、私は目を瞑ってこの幸せな気もちを噛み締めます。
はふぅ……こんなに幸せでいいんでしょうかぁ……
「すみません、何度ノックしても返事がなかったのですが、急ぎの要件が………………何をしているのですか?」
とある漫画の登場人物の台詞でこういうのを見た覚えがります……幸福な時間は突如として終わりを告げる物だと。
「…………うぇええぇ⁉こ、これはですね、そのそういうのじゃなくて……ち、違うんですよ!」
「違うとは?私の目にはお二人が今にも口づけを交わそうとしているように見えますが」
「くくく口付けぇ!?」
口付けってキス?接吻?マウストゥーマウス?チュー?
………………………(さっきまでの自分の姿を客観的に捉える)はぅあ!!
ち、ちがいますよ!別に私は発情していただとか恋人の関係でもないのにキスを強請っていただとかはなくてですね!これは昔見た少女漫画のワンシーンに憧れて私もしてもらいたくなったなーとかそういうわけでは!
…………ゴメンナサイ。少し……いえ、かなり憧れていましたです、はい。
「……」
あぁああ!彼女の私たちを見る目がますます辛辣な物に!
どどど、どうしましょう!?
「落ち着け。疚しいことをしているわけじゃないんだし、堂々としとけばいんだって」
私だけに聞こえるよう小声で呟き、最後に任せなと言い残して総悟さんは彼女の元へ向かって行きました。
……頼もしい反面、総悟さんは私のようにドキドキしたりしてなかったのはちょっとモヤモヤします。
……それと私は疚しい気持ちが少しありました。本当にすみません……
「やー、わりぃわりぃ。お見苦しいとこを見せちまって。以前見せてもらった演劇部の稽古が凄くてな。生徒会長にもその現場で見た俺の感動を共感してもらおうとな」
「ここでですか?それならば体育館や講堂等、もっと相応しい場所があるのでは?」
「それだけの為に使うのはちょっとな。それに体育館は食後の運動って事で他の生徒たちが使ってるし、講堂はその演劇部から使用申請が出てるしな。移動すんのも面倒だし、ここでやる方が手間も省けるし……ってことだったんだな」
「なるほど。そういうことだったのですね。……ですがここは生徒会室です。私のような生徒だけではなく、先生がいらっしゃる可能性も大いにあります。リスクを避ける意味でもあまり意味の無い事は慎むべきなのではないのですか?」
それは目の前の総悟さんと言うよりも、私に言っているように見えた。
一瞬ですけど、話してる最中に私に目を向けていましたし。
……黄色のリボン。背筋を綺麗に伸ばし上級生にも物怖じせずに話し、言葉の節々からも彼女が誠実で真面目な人だというのが伝わってくる。
確か、彼女の名前は────
「一理ある……が、三船。別に意味のない事をしていたわけじゃないさ。ああやって関係のないこと、一息入れることによってリフレッシュとなるんだからな。頑張りすぎてもアカンし、休憩は大事よ?」
そうだ。三船さん、三船栞子さん。
今年入学した新入生の中でも、彼女は有名だ。
入学式での新入生代表の挨拶を彼女が努めていたし、彼女の家は日本でも有数な名家での出身。
生徒会に興味でもあるのか、たまにこうして生徒会に足を運んで来るんですよね。
「だからといって不純異性交友は」
「なーに言ってんだ。俺等はただ劇の物真似をしていただけ。不純も何もないさ。それともなんだ?俺たちが空き教室でたまに見かけるカップルたちみたいなことをしてるとでも?」
「……何方か伺っても?」
「言うわけないだろうが。恋愛は個人の自由。場所はちったぁ、考えろといいたいがな」
「あなたが言えた言葉ではありませんね」
「これは手厳しい」
な、なんかいつの間にか話が終わろうとしています……さすが総悟さんです!全く動じずにこの窮地を切り抜けるなんて!
「それで本日の要件ですが、昨日頼んでおいた件の進捗具合を聞きに」
「あぁ、各部の活動状況と予算の件だろ?やっといたぞ。ちょっとまってな」
「……もう、終わったのですか?」
「あぁ。各部の部長に確認も昨日のうちに取れたしな。ほれ、全部リストにまとめといた」
そう言って総悟さんがキャビネットから取り出したのは一つのキングファイル。
……かなりの枚数の用紙が挟まっているんですが……あの量を一日で?
「中を拝見しても?」
「あぁ。その為にまとめといたんだ、思う存分見な。それといつまでも突っ立ってないで、座ったらどうだ?その量の重さを立ちながら見るつもりか?筋トレしたいっつーなら止めはせんが」
「……ではお言葉に甘えさせていただきます」
入口近くの椅子に座り、三船さんは真剣な表情で読み始めました。
「……一言言ってくれれば、手伝いましたのに」
見たか!と言わないばかりにピースしながら、こちらに戻って来た総悟さんに不満を隠さずに私は聞いてみました。
「あの程度なら一人でどうにかなるしな。生徒会長様の手を煩わせる必要もないと思ったんだよ」
「あの程度って……私なら数日はかかりますよ……」
「ふっふっふ、こんなんでも特待生兼副会長だからな」
今に始まったことじゃないですけど、総悟さんのスペックの高さには脱帽します。
……私よりもよっぽど生徒会長に向いているのではないでしょうか?
「……文章も見やすく、項目も綺麗に分けられています。この完成度をたった一日で……」
三船さんもあまりの出来の良さに目を見開いています。
そうでしょうそうでしょう!総悟さんはものすっっごく優秀なんですから!
「正直侮っていました。遊び歩いているだけではなかったのですね」
「おいおい、失礼なコト言うじゃないか。俺ってそんなにぷらぷらしてるように見える?」
「私があなたを見かける時、あなたは女子生徒中心に話し込んでいたと記憶しています」
「……総悟さん?」
「え?なんでそんな目で見るん?ここは総悟さんの仕事っぷりに評価を改めるとこじゃないの?ていうか、この学園は女子の比率が男子よりも多いんだし、仕方ないだろ。つまり俺は悪くねぇ!」
まったく総悟さんってば……それが総悟さんの仕事に繋がってきてるのは知ってますから、わかってはいますけどね。
……でもやっぱり不満は出ますけどね。
「……やはり見込んだ通りです。……あなたならば、きっと」
三船さん?
「三船?なんか言ったか?」
「なんでもありません。資料についてはありがとうございました。想像以上の出来でした」
「副会長だからね。再度言うが、その資料は」
「持ち出し厳禁。読むなら生徒会室か、生徒会役員になることですね」
「わかってんならいい。そろそろ午後の授業も始まるし一旦ここまでだな。他のメンバーに話をしとくから、誰かいる時間帯なら何時でも読みに来ていいぞ」
「わかりました。ではまた後ほど伺います。生徒会長、副会長失礼しました」
そう言って綺麗にお辞儀をし、三船さんは出ていきました。
「ったく、あいつは頑張るねぇ……役員でもないのにようやるわ」
「総悟さんは三船さんと知り合いだったんですか?」
「んー……顔見知り以上友達未満って感じだな。良く学園の事情を知ろうと生徒会室に来るだろ?そん時に一言二言話すくらいだ」
「そう……なんですか?」
私と話をした時はちょっと冷たい印象でしたけど、総悟さんと話している時とは三船さんの表情が柔らかかった気がするんですよね。
……まぁ、生徒会長モードの私が事務的すぎるってこともあるのかもしれませんが。
「そ。……それより、そろそろ予鈴が鳴るな。早く教室に戻ろうぜ」
「うわっ、本当です!急がなければ!」
このお昼休みで色々ありましたが、私のことも。……さ、さっきの総悟さんとのやり取りも有耶無耶になっちゃいましたし、結果オーライなのかな?
よし!午後の授業もはりきって受けないと!
最近虹ヶ咲学園のSSが増えてきましたね。
この調子でドンドン増えてきてホスィです。
ゲームの方はもうちょっとでランク100に届きそうです。スキップチケットはほとんど使用してないです。称号カウントだれんもん……(´・ω・`)
なんで修正したんや!
おまけ もしも菜々と恋人関係でちょめちょめするような関係だったら(時系列めちゃくちゃ)
※以下壮絶なキャラ崩壊含むので注意!!
『そうごさぁんっ!もっと、もっと奥にください……っ』
『まったく、生徒会長たるものが生徒会室でこんなに乱れるなんてな。他の生徒が見たらどう思うんだろうな?』
『いやぁ……そんなこと……んっ、言わないでぇ……♡こんな姿見せるのは……あなただけ……ですからぁっ♡』
「……あの人たちは……まったく。あれだけ時と場所を選んでくださいと言いましたのに」
「あれ?しお子?どうしたの、そんな扉に張り付くようにして」
「この方が中の音を聞き取りやすいので。……あなたもどうですか?」
なぜかこんなやり取りが頭の中に急によぎったので書いた。