画面越しに三人が顔を付き合わせて、やり取りをしていた。それぞれの主張は平行線で、まとまりがなかった。
「中立地帯で戦闘行為は禁止しています。あなた方は、このサイラム星系におけるルールを破った」
アマール政府のサリム外務次官は、ガルマン帝国のベラミー大使に抗議していた。
「駐留軍に加えて、三十隻もの艦隊をこの中立のサイラム星系に入れるとは、どういうつもりかね? そちらが、そのつもりなら、我々も黙っている訳にはいかない」
ボラー連邦のジャミラロワ大使は、冷たい視線を画面から向けていた。
二人の言い分を聞いたベラミー大使は、笑いながら言った。
「我が国に対して破壊工作を計画している者がいると情報が入ったのだ。確認すると、我々の帝国の外からやって来た者たちだった。しかも、艦隊をこの星系付近まで連れて来ていた。逮捕して尋問したり、船の臨検ぐらいする権利はあるはずだ」
「それはわかっています。そのような行為は、我々アマール政府とあなた方三者の条約によって、認められています。私がお話ししているのは、戦闘行為のことです。特に、戦闘機で追い掛けたり、ましてや、艦隊で砲撃戦など、言語道断です」
「奴らが、逃げるので、仕方なくやった処置だ」
ベラミー大使は、面倒そうな表情になった。
「ならば、我々も、星系に駐留させる軍を増強して、有事に備えさせてもらわなければな」
「ジャミラロワ大使。それも、条約違反です。アマール軍の艦隊や兵士などの五パーセント以下しか、両者共に駐留は認められていません。既に、五パーセントの上限一杯まで、駐留していますよね」
ジャミラロワ大使は笑いだした。
「ならば、政府間の条約改正に関する話し合いの場を設けよう」
ベラミー大使も、つられて笑った。
「そうだな。ぜひ話し合いで決着をつけよう」
アマール政府のサリム外務次官は、不快な表情になった。
「これ以上は、我が国の主権に関わる問題です。ここアマール星は既に、銀河系中のあらゆる民族が平和的な交流と貿易を行う為の重要な拠点になっていて、自治権が認められています。これ以上の紛争の火種は、互いに何のメリットもないはずです」
ベラミーとジャミラロワの二人の大使は、サリム外務次官を見て静かに笑った。
「君の言うとおりだが、ここは、あくまでボラー連邦とガルマン帝国の話し合いによって成立している場所であることを忘れてもらっては困る」
「むしろ、両国が軍隊を増強した方が、不法行為を行う輩を、今回のようにすぐに排除出来る。これは、検討に値すると思わんね?」
サリム外務次官は、静かに笑う二人に怒りを感じていた。
「いいでしょう。いずれにせよ、三者での会合は行いましょう。少なくとも、今のルールでは、条約破りなのは、間違いありませんから、すぐに艦隊をお引き取り願います」
その頃、ガルマン帝国のバスク少将は、アマール駐留軍に一時的に合流していた西部方面軍第十五艦隊旗艦に通信で連絡し、サイラム星系からの離脱を指示していた。
「西部方面軍司令部から、プラン変更が承認された。これより、地球連邦政府に対して、本格的に武力による圧力を加える。まずは、本隊から派遣される別の艦隊と合流し、彼らの勢力拡大阻止に向かって欲しい。再び我々との交渉のテーブルにつかせるのが目的だ。地球連邦は、我がガルマン帝国の一部となってもらうのが、最終目標だ。彼らの同盟国ガミラスの動きによって、更なるプラン変更もあり得るが、現時点で司令部は、ガミラスは戦力をほとんど裂くことはないだろうと予想している。彼らの動きにも注意しつつ、作戦を遂行してくれ」
ガルマン帝国第十五艦隊は、その指示を受けて、別の艦隊との合流地点へと向かって行った。
一方その頃、ヤマトはワープしてアマール星を離脱し、サイラム星系外に待機していたガミラス護衛艦隊と合流していた。
その艦隊の集結する中央に、次元潜航挺は堂々と浮上していた。
フラーケンの部下は、揚陸挺に乗り込んで来ると、古代やランハルトの一行と対峙していた。
「では、ガゼル提督。それから他の皆さんも。ここからお引き取り願いたい。この揚陸挺を使ってもらっても構わない」
ガゼルは、フラーケンに問いただした。
「何を馬鹿な。お前は、どうするんだ?」
フラーケンは、不敵な笑みを浮かべて言った。
「俺たちは、もともとディッツ提督から、隠密行動で自由に行動をする裁量を与えられている。そのうちに戻ると言っておいてくれ」
ランハルトは、ガゼルの横でフラーケンを見つめていた。
「……お前たちは、叔父と一緒にいるんだろう?」
フラーケンは、にやりと笑った。
「さあてな。さっきは助けてやったのだから、あまり俺たちの事は詮索して欲しくないな」
古代は、薮に話しかけていた。
「薮。ヤマトで反乱を起こした者たちは、地球帰還後に全員情状酌量を持って許された。戻っても何も問題はない。戻って来ないか?」
それを聞いた薮は、一瞬心が揺らいだ。しかし、意を決して言った。
「古代さん。確かに帰りたくないと言ったら嘘になります。でも俺は、ここに居場所を見つけたんです。まだ、しばらくは隊長たちと一緒にやって行きたい」
フラーケンは、薮の方をちらりと見て言った。
「いいのか? それで」
薮は、フラーケンを見て恐る恐る言った。
「隊長、嘘をついてすいません。俺、本当はテロン人だったんです。許されるなら、まだ一緒にやっていきたいんですが……」
フラーケンは、笑った。
「薄々は気づいていたさ。お前、ザルツ語もガミラス語も喋れなかったからな。お前がいなければ、この艦は動かん。引き続き、よろしく頼むぞ」
「隊長……」
薮は、嬉し涙を浮かべていた。
それを見た古代は、小さくため息をついて言った。
「わかった……。司令部の藤堂長官にも、君が正式にガミラス軍への異動を希望していると伝えておこう」
薮は、フラーケンと古代の顔を交互に見て、涙ぐんだ。
「いろいろと、ご迷惑をおかけして、ごめんなさい」
古代は、フラーケンの方を向いて言った。
「薮のこと、よろしくお願い致します」
「今のこいつの名は、ヤーブだ。よろしくも何も、ヤーブは俺の大切な部下だ」
古代も、笑顔で言った。
「ヤーブ……。では、また会うのを楽しみにしています」
古代は、二人を真剣な表情で見つめて、静かに敬礼した。
ヤマトに戻った古代とキャッスルは、亜空間通信で、地球連邦に連絡をしていた。艦長室の端末のスクリーンには、ライアン外務長官が映っていた。キャッスルは、ライアンに促されて報告をした。
「どうやら、ガルマン帝国は、我々とまともに話し合う気は無いようです。我々が破壊工作を計画していると嫌疑をかけられ、それを理由に捕まりそうになりました。たった今、やむを得ず脱出してきたところです」
ライアンは、報告を思案していた。
「ふむ。そうなると、普通に交渉するのは難しい状況だな。大統領にも報告して、今後の対策を検討するよ。一度帰還してもらうしかないな。古代艦長、軍にも言っておくので、ヤマトを帰還させてくれ」
「わかりました」
報告を終えた古代は、第一艦橋に行くと、すぐに相原に声をかけた。
「ガミラス艦隊のガゼル司令に繋いでくれ」
「はい。少しお待ち下さい」
スクリーンに、空母ダレイラのガゼル司令とランハルトが現れた。
「デスラー大使、ガゼル司令。地球連邦政府に今回の報告をしました。対策を検討するため、帰還命令が出ました」
ガゼル司令は、頷いて言った。
「そうだろうな。こちらは、大使とも話し合ったが、別行動をすることにする。暫くこの付近の宙域に留まるつもりだ」
古代は、少し意外に思っていた。
「どうされるおつもりですか?」
今度は、ランハルトが口を開いた。
「俺たちも、本星に今回のことを報告して、指示を仰ぐ予定だ。本星に亜空間通信が可能な宙域がこの近傍にあるので、まずはそこに向かう」
「なるほど、わかりました。くれぐれも、お気をつけて」
「そっちもな。単艦での行動は慣れているとは思うが」
「ありがとうございます。ではまた。通信終わり」
古代は、敬礼して通信を切った。
古代は、艦内通信のマイクを掴んで艦内に指示を伝えた。
「皆、聞いてくれ。ガルマン帝国との交渉は不調に終わった。帰還命令が出ているため、これより地球に向けて出発する。総員、発進準備」
古代は、マイクを切ると、第一艦橋の乗組員に声をかけた。
「太田、徳川、ワープしてここを離脱する。すぐに準備して、発進させてくれ」
「了解、艦長」
「わかりました」
ヤマトは、波動エンジンを咆哮させて、ゆっくりとガミラス護衛艦隊から離れて行った。
空母ダレイラでは、ヤマトがワープしてレーダーの探知範囲から消えたのを確認していた。
ガゼル司令は、全艦に通達した。
「我々は、これより、以前放棄した銀河方面軍基地に立ち寄って、本星と連絡を取る。発進準備急げ!」
通信を切ったガゼル司令は、ランハルトに話しかけた。
「本星は動くと思うか?」
ランハルトは、艦橋の窓の外の宇宙を見ながら考えていた。
「イスガルマン人の問題を、せいぜい訴えてみるさ。だが、それでも、その余裕は無いだろうな」
「ガルマン帝国は、恐らく地球連邦に何か仕掛けて来るだろう。本星が動かなければ、巻き込まれぬよう、我々も一時退避するしかない」
ランハルトは頷いた。
「わかっている。同盟国だというのにな……」
暫くすると、ガミラス護衛艦隊も、発進してその宙域を離れ、ワープして消えた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。