宇宙戦艦ヤマト2199 連邦の危機   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「連邦の危機」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」の続編になります。


連邦の危機11 北米第七艦隊の死闘

 北米第七艦隊は、僚艦アンティータムとチャンセラーズビルが撃沈された太陽系外の探査宙域に到達していた。前にアンドロメダとムツが設置した小型の監視装置に反応があり、土方の極東艦隊との合同訓練を抜けて、全艦でこの宙域を訪れていたのだった。

 この第七艦隊は、米国として初の波動エンジン搭載型艦船のみで構成された艦隊である。

 波動砲搭載型巡洋艦五、ミサイル巡洋艦五、そして駆逐艦十、補給艦と特務艦五の二十五隻からなる艦隊だった。

 艦隊旗艦の特務司令艦フィラデルフィアの戦闘指揮所では、艦隊司令官のフレデリック・スコーク宙将が、艦隊のイージスシステムをフルに稼働させ、周囲の警戒を強化させていた。

「無人機を出して、周囲の監視を強化しておこう。波動砲搭載艦は、全艦で波動防壁展開を用意。それ以外の艦は、イージスシステムが頼りだな。全艦に警戒を怠るなと言っておいてくれ」

 小型無人機を多数搭載した特務艦から、一斉に無人機が飛び立った。これが周囲に展開すると、レーダーの探知範囲が通常の二倍に延びるのだ。

 こうして北米第七艦隊は、監視の目を強化して暫くの間その宙域に留まっていた。

 

「スコーク宙将。レーダーに感。接近する艦隊がいます。艦種識別出来ません。未知の宇宙艦隊です」

 スコーク宙将は、戦闘指揮所のスクリーンに映るレーダーの表示を確認して、冷静に指示を出した。

「全艦に戦闘配置を通達。お客さんだ」

「接近する艦隊、五十隻程レーダーが艦影を捉えました。無人機による映像を出します」

 別のスクリーンに、無人機が撮影した映像が映っていた。

「この映像を、極東艦隊のヤマトが中立地帯で収集したデータとの照合は出来るか?」

「既に照合中です。今、結果が出ました。一部の艦が同型艦と出ています。陽電子砲を複数門装備した駆逐艦クラスの艦船です」

 スコーク中将は、やはりと思っていた。

「ガルマン帝国艦隊で間違いないな」

 

 ガルマン帝国西部方面軍第十五艦隊と第十三艦隊からなる艦隊でも、北米第七艦隊を捉えていた。

「キール司令、地球連邦の艦隊を発見しました。撒いた餌に食らいついたようです。敵は、二十五隻からなる小規模艦隊です」

 艦隊司令のキールは、すぐに全艦に通達した。

「全艦に通達! 地球連邦の艦隊に警告を与える。全艦戦闘配置につけ!」

 

「スコーク宙将、先方から通信が入っています」

 スコーク宙将は、傍にあった通信機のマイクを掴んだ。

「繋いでくれたまえ」

 通信士の士官が、通信を受信すると、戦闘指揮所のスクリーンに、ガルマン帝国艦隊の司令官と思われる人物が映し出された。

「こちらは、ガルマン帝国西部方面軍艦隊のキールである。そちらは地球連邦の艦隊だな? ここで、何をやっている?」

 スコーク宙将は、ガミラス人のような風貌の相手を見て、情報通りと思っていた。

「こちらは、地球連邦防衛軍北米第七艦隊、艦隊司令のスコークだ。すぐ近くに二隻の残骸が漂っているのがわかるかね? 何者かに撃沈された我々の僚艦だ。これを、誰がやったのかを調査している」

 キール司令は、頷いた。

「我々ではないな」

 スコーク宙将は、冷静に返答をした。

「地球連邦の星系内でも、最近何者かによるテロが繰り返され、調査の結果、貴国内のイスガルマン人が実行犯と断定するに至った。我々は、僚艦の撃沈も、貴国内の何者かが実行したと疑いを持っている」

 キール司令は、余裕たっぷりに回答をした。

「スコーク司令。我がガルマン帝国は、地球連邦政府がアマール大使館を通じて、テロの被害を受けたと訴えていると報告を受けた。しかし一方で、大使館にやって来た者たちは、我が帝国に対する破壊工作を企んでいたと情報を得ている。それが発覚しそうになると、逃亡してしまった。そして今度は、艦船の被害も我々のせいだと言うのかね」

 スコーク宙将は、相手が言い掛かりをつけてきているのを認識して、努めて冷静に話した。

「そこまでは言っていない。今は、疑いを持っている、という段階だ。それから、我々が破壊工作をやろうとしていたという件は、事実無根だ」

「それはどうかな? 自作自演をして、我々に攻撃する口実を得ようとしているのではないか? これが我がガルマン帝国政府の見解だ」

 スコーク宙将は、怒りを感じて不快な表情になった。

「それは、根拠のない言い掛かりだ」

 キールは、薄ら笑いを浮かべて言った。

「我がガルマン帝国は、地球連邦に対して強く抗議する。その為、現在我が国の艦隊が、地球連邦に向かおうとしている。我々は、その先陣としてここにやって来た。しかし、ここで発見した君の艦隊は、既に我が国に対する攻撃を準備しているものと判断せざるを得ない。我がガルマン帝国に対する不当な行為が、何をもたらすか、身をもって理解するといい」

 唐突に通信が切れた。

 スコーク宙将は、急いで全艦に通達した。

「全艦、ガルマン帝国艦隊の攻撃が来る! 迎撃に備えよ!」

 

 通信を切ったキール司令は、全艦に通達した。

「全艦、地球連邦艦隊に向け、攻撃開始!」

 ガルマン帝国艦隊の二十余隻の駆逐艦は、一斉に陽電子砲の砲撃を開始した。

 

 北米第七艦隊では、イージスシステムが敵艦隊の陽電子砲の砲撃を探知し、自動迎撃システムが稼働した。

「敵艦隊の陽電子砲の砲撃を探知、自動迎撃システムが同時に三十の目標に迎撃を開始します」

 艦隊のミサイル巡洋艦五隻から、一斉に三十発の陽電子砲無効化用迎撃ミサイルが発射された。

 スコーク宙将は、黙ってスクリーンに映るイージスシステムが捉えた目標群の光点を、固唾を飲んで見つめた。

「迎撃ミサイル、各自システムが決めた所定の位置で自爆して陽電子砲を無効化します」

 北米第七艦隊の少し離れた場所で、一斉に迎撃ミサイルが自爆した。陽電子砲のビームは、自爆した場所で無効化され、ビームが消滅した。

「迎撃成功! 効果は一分間持続します」

「よし! ミサイル巡洋艦は、次弾装填して待機」

 その間にも、ガルマン帝国艦隊の砲撃は止まず、次々にビームが迎撃ミサイルが生成した無効化空間に吸い込まれて行った。

 

「キール司令、敵艦隊の目前で、陽電子砲のビームが消失しています!」

 キール司令は呆れていた。

「また、バリアだというのか? 地球連邦の艦隊は、そんな装備を全艦に搭載しているというのか? 駆逐艦は、そのまま砲撃を続行! 合わせて巡洋艦からミサイルを一斉に発射しろ」

 ガルマン帝国艦隊の巡洋艦十隻が位置を変え、上部ミサイル発射口から、一斉にミサイルが発射された。

 

「間もなく、陽電子砲の無効化空間が効力を失います。システムが自動的に判断して、ミサイル巡洋艦から次弾発射しました」

「敵艦からミサイル三十基の発射を感知。イージスシステムが一斉に目標を捕捉。波動砲搭載型巡洋艦より、通常迎撃ミサイル三十基発射されました」

 スコーク宙将は、スクリーンに映る敵ミサイルに向かう自軍の迎撃ミサイルを祈るような気持ちで見つめた。

 戦闘指揮所の乗員も、全員でそれを見守った。一人の士官が一言呟いた。

「当たれ……」

 北米艦隊の直上から接近していた敵ミサイルに、次々に迎撃ミサイルが命中して爆発した。まるで、太陽が出現したかのように、真っ暗な宇宙空間が明るく照らし出された。

「敵ミサイルの撃ち漏らし三基接近!」

「パルスレーザー砲台、撃て!」

 北米艦隊を護衛する駆逐艦群は、一斉にパルスレーザー砲をミサイルに向けて発射した。レーダーに連動して自動追尾して、艦隊のすぐ近くでミサイルは撃破された。

「敵ミサイル、迎撃成功です!」

 スコーク宙将は、マイクを掴んで全艦に通達した。

「我々は、明確な敵艦隊の攻撃を受けた。これより、反撃を開始する。全艦、全武器システムを起動!」

 駆逐艦と巡洋艦各艦は敵艦を捕捉して、ショックカノンの砲門をそれぞれ向けた。

「まずは、無人機の攻撃準備!」

 最初に射出した無人機は、一斉に敵艦隊の真上に移動し、一定の離れた位置で静止した。

「スコーク宙将。無人機、位置につきました。想定通り、敵艦隊はデブリと誤認識していると思われます」

「いいぞ、今だ! 攻撃開始!」

 敵艦隊の直上に展開した無人機から、一斉に小型ミサイルが発射された。

 

「キール司令! 艦隊の真上に敵のミサイル多数!」

「何だと! 至急迎撃しろ!」

「間に合いません!」

 無人機から放たれたミサイルは、対空機銃によって、一部が撃墜されたが、次々にガルマン帝国艦隊のすぐ近くの真上で爆発した。

「敵ミサイルの爆発の影響でレーダーが破損したようです。レーダーが正常に表示されません!」

 キール司令の顔は青ざめた。

「馬鹿な……。これでは、我々は敵の的だ……」

 

「各艦、陽電子砲、およびショックカノンの照準の自動追尾設定完了しました!」

 スコーク宙将は、全艦に通達した。

「全艦、砲撃開始!」

 北米第七艦隊は、一斉に砲撃を開始した。

 陽電子砲と、ショックカノンのビームが、ガルマン帝国艦隊に向かって行った。

 

「回避ー!」

 全艦に響き渡ったその声も虚しく、北米第七艦隊の放った砲撃が、ガルマン帝国艦隊の駆逐艦に次々に命中した。

 この攻撃で、駆逐艦三隻が撃沈して、大爆発を起こした。他の駆逐艦にも、砲撃が命中して、一部は、大破して航行不能になっていた。

 航行不能になった駆逐艦では、指揮官のガルマン人が、脱出しようとしていた。

「お前たち、後は任せた。何とかして艦隊を守るのだ」

 そう言い残したガルマン人の艦長は、脱出ポッドで脱出して行った。

 残されたイスガルマン人の士官らは、困惑していた。

「現在のこの艦の最高位の者は?」

「中尉、あなただよ」

「まさか、俺が?」

「ガルマン人の偉いさんは、全員脱出した」

「そうは言っても、この艦は航行不能だ」

「的になってでも、艦隊を守れと言う命令だろう?」

「俺たちも脱出しよう」

「お前、知らないのか? そんなことをすれば、味方に敵前逃亡で処刑される。ここで死んだ方がましってもんだ」

 イスガルマン人の士官たちは、嘆きながら、大破した艦に留まっていた。

 

 スコーク宙将は、ガルマン帝国艦隊の一部を撃沈したことを確認して、相手に通信を送った。

 すぐにスクリーンに、再びキール司令が映っていた。彼は、憎々しげな表情で、スコークを睨んでいた。

「キール司令。我々は、これ以上の戦闘は望まない。撤退して頂きたい」

 キールは、にやりと笑っていた。

「こんなことをしでかしておいて、随分余裕があるではないか。我が国に対する宣戦布告と受け取ってよいのだな?」

 スコーク宙将は、冷静に返答をした。

「我々は、攻撃を受けて危険を感じたので、艦隊の防衛をしたまでだ。これ以上の戦いは本意ではない」

 キールの表情は、怒りに染まり、わなわなと震えていた。

 その時、ガルマン帝国艦隊の背後から、何かが現れ始めた。

 戦闘指揮所の士官が、通信中に報告を入れてきた。

「スコーク司令……。敵艦隊の増援がワープで現れました。更に五十隻、合計百隻以上の反応があります」

 キール司令の表情は、再び緩み始め、にたにたと笑っていた。

「やっと来たようだ。本隊の増援部隊だ。この数を相手に、どうするかね? スコーク司令」

 スコーク宙将は、即座に通信を切ると、全艦に指令を出した。

「全艦、これ以上ここに留まると、全滅の恐れがある。ワープで離脱して地球の極東艦隊と合流するぞ」

 北米艦隊は、艦を回頭させ、一斉に後退を始めた。

 キール司令は、全艦に指示をした。

「逃がすな!」

 しかし、一歩早く地球艦隊の方が先に動いた。

「ワープ!」

 地球艦隊は、一斉にワープして、その場から消えていった。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

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