地球――。
土方は、太陽系防衛艦隊を帰還させた後、地球連邦政府の会議に呼び出されていた。
副大統領のダグラスを始めとした、関係者一同が、再びワシントンの連邦防衛省地下にある司令部へと集まっていた。
「重篤な状態だったチャールズ大統領だが、峠を越して意識が戻ったそうだ。まだ入院が必要な状態の為、引き続き私が大統領職を続けることになるが、数カ月後には、復帰出来る見込みだ。しかし、次期大統領選も迫って来ている。残念だが、このまま、引退を考えているそうだ」
ダグラス副大統領は、始めに大統領の容態について説明した。
「私としても、残念なことだが、情勢は待ってはくれない。これまでの状況を確認し、次の動きを決めておこう。アドミラルヒジカタ、本当にご苦労だった。早速だが、報告を頼めるかね?」
土方は、脱いだ軍帽を脇にどけ、資料を手に取った。
「はい。それでは、私から報告致します。既にご連絡したとおり、太陽系から離れること二光年の宙域で、侵攻中のガルマン帝国艦隊と交戦しました。既に、彼らの艦隊は撤退しましたが、この戦闘で当方の駆逐艦十五隻が大破、または中破の損害を受け、一二五名の死者、そして三六七名の負傷者が出る結果となりました。このような結果を招いたことを、まずはお詫び申し上げます」
土方は、立ち上がって頭を下げた。
「ヒジカタ、頭を上げ給え。私は、太陽系への侵攻を食い止めた貴殿の手腕に大いに感謝している。彼らは、祖国の為に命をかけて戦った英雄だ。これから、一人一人の家族に、私から感謝の意を伝えていくつもりだ。また、ガルマン帝国から地球を死守した軍を讃える式典も開くつもりだ」
土方は、再び深く礼をした。
「大統領。ありがたいお言葉に感謝します。亡くなった者たちも、その言葉に救われるでしょう。そしてそれは……。私自身も、ですが」
土方は、痛恨の極みといった苦渋の表情で頭を上げた。
「本当にご苦労だった」
「ありがとうございます。それから、今回、デスラー元総統のガミラス回遊艦隊の支援があったことで、それ以上の死傷者が出ることを防ぐことが出来ました。今後、彼らにも、何らかの礼をしたいと思います」
ダグラス副大統領は、作戦の成功を誇示するよりも、死傷者を出したことを嘆き、他の者の手柄を話す土方の姿を、不思議に思っていた。
日本人の謙虚さに、いつも驚かされる。
今回の件は、もっと、自分を誇ってもいいはずなのだが……。
彼は、つくづく、この惑星に、連邦という組織があり、イデオロギーの異なった国家が一つに束ねられていることは、奇跡のようなものだ、と感じていた。
「そのデスラー元総統の件ですが」
ウィルソン防衛長官は、ダグラスへと話しかけた。
「以前のガミラス戦争時代に、我々の銀河系へと進出していたガミラスは、銀河方面軍を編成して派遣していました。銀河系の亜空間ゲート付近には、彼らの拠点として使われた大きな宇宙基地が存在しています。既に、彼らは銀河系から撤退していますので、宇宙基地は遺棄されてそこにそのまま存在しています。大マゼラン銀河を出て放浪していたデスラー元総統らは、銀河系に辿り着き、その基地を無断で利用しているようです」
ダグラス副大統領は、訝しげな顔でウィルソンを見た。
「デスラーは、かつて我々の地球を死の星にしたガミラスの前の指導者だ。本当に信用出来るのかね?」
ウィルソン防衛長官は、両手を広げて首を振った。
「今は、一〇〇パーセントとは言えませんが。ヒジカタの報告によれば、信用して良いと思います」
土方は、その件について補足した。
「デスラー元総統は、先のガミラス・ガトランティス戦争の時に、ガミラス本星とも、我々とも共同作戦をとっています。また、彼らが抱えている回遊艦隊と呼ばれる艦隊は、以前の親衛隊などに所属していた反乱軍が中心となっていますが、三百余隻の艦隊しか保持しておりません。もはや以前のような地球侵攻を考えることは無いと思います。仮に、地球連邦と戦うことになったとしても、現在の我々の保有戦力で、充分に撃退可能だと考えます。何よりも、あのイスカンダルのスターシャ女王が同行していますので、そのような事態は考えにくいと思います」
そこで、外務長官のライアンが話を始めた。
「私から、この件で提案があります。今回の戦争の危機は、デスラー元総統らの手で一旦は回避出来ましたが、今後も同じような事態が起こらないとも限りません。ボラー連邦とガルマン帝国との外交ルートを構築する為にも、中立地帯に外務省の人間を送り込めないかと考えています。デスラー元総統らのいる基地は、中立地帯にもかなり近く、まずは基地への人員配置を検討することは出来ませんか?」
ウィルソン防衛長官は、腕を組んで意見を考えていた。
「うむ。それはいい。ボラー連邦とガルマン帝国を監視する目的で、前哨基地を設けられれば、今回のような事態への対処は、より素早く可能になる。軍をそこに常駐出来れば、安全保障の観点からも望ましいと思います」
ダグラス副大統領は、その意見を思案していた。
「確かにいいアイデアだな。外務省と防衛省で協力して、検討を進めてくれ。だが、懸案は、既にデスラー元総統がそこを使っているという事実だ」
ライアンは、微笑していた。
「ガミラスの現政府に正式に交渉してみましょう。あれは、あくまでも、ガミラス正規軍の所有物ですから、我々の方に権利がもらえる可能性が高いですね。その上で、勝手に使っているデスラー元総統とは、何らかの交渉が発生するとは思いますが……」
ウィルソンは、更に意見した。
「そこに宇宙艦隊を配置するなら、それなりの規模が必要でしょう。建造中の空母型主力戦艦を一部そちらに割くことを考えたいですね。それから、ヒジカタが先程報告したように、兵士たちの人名が失われれば、いくら艦隊の数を揃えても運用出来なければ意味が無い。現在構想中の無人艦隊の配置も、検討に値すると思います」
最後に、エマーソン連邦捜査局長官が手を上げた。
「連邦捜査局も、この話には参加を希望したいですね。これからは、事件は宇宙規模で起こりうる、というのが今回の一件で明らかになりました。宇宙連邦捜査局の創設を提案します。捜査官を、基地に派遣しておけば、今回のような事態にすぐに対応出来ます」
土方は、隣に座っていた藤堂長官と顔を見合わせた。
「土方くん。何やら、急にいろいろ決まりそうだね……。極東管区から基地に派遣する人員を割く可能性が高いと私は思うが、何か君から意見はあるかね?」
土方は、その話に腕を組んだ。
「異星人と仲良くするのが上手くて、そういうことが好きな士官がいることはいます。しかし、その士官を出せば、艦隊の戦力ダウンは避けられません」
「ほう。君がイメージしているその士官とは誰のことかね?」
「優秀な若い艦隊指揮官で、地球を救った英雄ですよ……」
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。