宇宙戦艦ヤマト2199 連邦の危機   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「連邦の危機」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」の続編になります。


連邦の危機6 アマール

 数時間後、ヤマトは、サイラム星系の第四惑星アマールの軌道上に進入していた。

 

 地球連邦政府は、外交交渉の担当者として、外務次官のキャッスルを派遣しており、彼は、第一艦橋にやって来ていた。

「デスラー大使、ガゼル司令、今回はよろしくお願い致します」

 第一艦橋にいたその二人は、キャッスルに応えた。

「任せておけ」

 ランハルトは、自信たっぷりに頷いた。一方のガゼル司令は、疲れた表情で言った。

「私よりも、精鋭の若い兵士を行かせた方がいいのではないか?」

 キャッスルは、笑顔で言った。

「とんでもない。今回のメンバーは、私も含めて若い者ばかりです。外交交渉では、貴方のような威厳ある方がいらっしゃった方がいいのです」

 ガゼルは、ふんと鼻を鳴らした。

「わしが一番の年寄りだから、と言いたいのか?」

 ランハルトの横にいたケールが、笑顔でガゼルに話しかけた。

「少し違います。なめられないように、こわもての方がいた方がいいと仰っていると思います」

 ガゼルは、少し不快な表情をした。

「秘書風情が、しゃしゃり出てくるな」

「そんなぁ」

 ケールが、ガゼルの袖を掴んだ。

「くっつくんじゃない」

 その様子を見ていた古代は、ガゼルの疲れた表情の原因がわかったような気がした。ランハルトの方を確認すると、彼は知らんぷりを決め込んでいるようだった。

 先ほど偵察機を飛ばしていたルカは、古代を見て会釈してきていた。彼女は、大使の護衛として同行するようだった。

 キャッスルは、古代の方を向いた。

「それから古代艦長。ガミラス同盟の一件以来ですが、久しぶりに一緒に行きましょうか。同行するメンバーは、艦長が選んで下さい」

 古代は、当惑した表情で言った。

「今回は、いい経験になるので、副長の北野に行ってもらうつもりでしたが」

 キャッスルは、両腕を大袈裟に広げて言った。

「ガミラスからは、ガゼル司令にご足労頂いたんですよ? こちらは提督クラスの方が同行しておりませんので、少なくとも、艦長が行かなければ、釣り合いが取れません」

 キャッスルは、にこやかに皆を見回してから、急に真面目な顔になって言った。

「こういう時は、肩書きや威厳が大事なんですよ」

 古代は、小さくため息をつき、北野の方に目配せした。その北野は、笑顔で応えていた。

「わかりました。では、私の他には、桐生くんと揚羽くんに一緒に来てもらいます。桐生くんは、異星言語の解析が出来るので。揚羽くんは、先ほど偵察に出たので、引き続き護衛として連れて行きます」

 第一艦橋に来ていた揚羽は、ルカの方を向いて会釈した。そのルカは、表情を変えずに彼の方を一瞥していた。

「異星文明とのファーストコンタクトとかわくわくするね」

 桐生美影は、嬉しそうに揚羽に話しかけていた。

「そ、そうですね」

 ルカを気にしていた揚羽は、少し上の空だった。

「艦長、先に降ろした保安部員から、問題なしと報告が来ています」

 相原は、古代に声をかけた。

「わかった。では、皆さん出発しましょう。舷側のコスモシーガルの格納庫にご案内します」

 古代は、北野に声をかけた。

「北野、後は頼んだぞ。危険を察知したら、我々を待たずに、艦の安全を最優先にしてくれ」

「了解です」

 北野は、敬礼で応えた。

 

 コスモシーガルで、惑星アマールの宇宙港に降り立ったキャッスル以下のメンバーは、保安部員と合流すると、辺りを興味深く見回していた。

 そこは、異星のあらゆる人種でごった返していた。宇宙港に駐機していた機体も、様々なデザインで統一性がなく、ボラー連邦とガルマン帝国に所属する様々な星系の人種が訪れているのは、間違いがないと思われた。

 ガミラス人は、その様な光景に慣れていたが、地球人は皆、異星の人種のるつぼを見るのが初めての経験で、驚きを隠せなかった。

「何か、凄いですね。銀河系って、こんなにいろんな知的生命体がいたんですね」

 桐生は、目を輝かせていた。

「桐生くん。そんなに、じろじろ見ない方がいい」

 古代は、彼女をたしなめた。

「あ、そうですね。ごめんなさい」

 そんな一行の前に、一人のアマール人と思われる男性が近づいて来て、ガミラス語で話しかけられた。

「ガミラスと地球からやって来た方々ですね?」

「はい、そうです。アマール政府の関係者の方ですか?」

 キャッスルは、にこやかに彼に返事をした。

「はい、そうです。政府の事務次官の一人が時間が取れるそうです。これからすぐに向かってもよろしいですか?」

「もちろん。よろしくお願いします」

 

 一行は、アマール政府の関係者という人物が用意したバスのような輸送車両に乗せられ、宇宙港からアマール星の首都と思われる場所に移動していた。途中、異星の建築物や文化を見た地球人たちは、何を見ても驚いていた。

 そんな古代たちの様子を見たランハルトが、一言苦言を呈した。

「落ち着きが無いな。さっき言っていた威厳とやらは、どうしたんだ」

 キャッスルは、少し興奮した表情で返事をした。

「そう言われましても。我々、ガミラス星以外で、こういうところに来るのは初めてですから」

 少し呆れたランハルトは、それ以上は何か言っても無駄だと思っていた。ふと、隣に座るケールの様子を見ると、珍しく表情が固く、落ち着かない様子だった。

「どうした?」

 ケールは、はっとしてランハルトの方を見た。何か言おうとしていたようだったが、その表情は、少し暗かった。

「大使。嫌な予感がしています」

「そうか……。しかし、今更止める訳にはいかない」

「そう、ですよね」

「十分に注意しよう。何か気が付いたら、すぐに教えてくれ」

「はい。そうします」

 

 一行は、首都の街の中心部にあった政府の庁舎と思われる建物に通された。

 案内された会議室で、暫し待っていると、一人のアマール人の若い女性が訪れてきた。

「皆さん、初めまして」

 挨拶をした女性は、ガミラス人を見て、少し驚いた様子を見せた。それにいち早く気が付いたルカは、ランハルトとガゼルの背後から耳打ちをした。

「どうやら、ガルマン帝国人と我々がそっくりな人種のようです。最初の宇宙基地でも、間違えられました」

 ランハルトとガゼルは黙って頷いた。

「初めまして。急な訪問にご対応頂き、助かりました。地球連邦政府代表の外務次官のノーマン・キャッスルです。こちらは、ガミラス政府代表のデスラー大使です」

 キャッスルは、握手しようと手を差し出したが、相手のアマール人の女性は躊躇していた。

「これは失礼、いつもの癖で。地球の挨拶のやり方で、友好の証として、右手を差し出して、握り合うのです」

 キャッスルは、そのまま手を伸ばした。

 アマール人の女性は、戸惑いながら、その手を握った。

「これで合っていますか? 私は、異星交流担当事務次官のイリヤと申します」

 イリヤは、ランハルトらにも、同じように手を差し出して、地球式の挨拶をしていった。

 

 一同は、一通りの挨拶を済ますと、会議室の席についた。

「今回の訪問の目的ですが、改めてご説明頂けますか?」

 キャッスルは、ランハルトに目配せしてから、話し始めた。

「それでは、私から。我々は、この天の川銀河の端にある太陽系の第三惑星地球からやって来ました。我々は、数年前からようやく星系外に進出可能な技術を持ち、あなた方のような同じ銀河系の星ぼしとの交流を強く望んでいます。今回は、そのような異星交流に慣れたガミラス政府の協力を仰ぎ、同行してもらいました。ついては、事務レベルの交流をまずは深めて、政治的な交渉や協議が出来る道筋をつけるのが、今回の訪問の目的です」

 イリヤは頷いた。

「ご説明ありがとうございます。しかし、単純に交流を深めたいだけでしょうか? ここは、ご存じかわかりませんが、少々複雑な歴史や政治的な状況が進行中の場所です。それに、そちらのガミラス政府の方々が一緒にお越しになっているということは、それ以上の目的があるように見受けられます」

 ランハルトは、ちらとキャッスルの方を見た。事前の約束では、イスカンダル人によるテロの問題や、ガミラスとイスカンダルが過去に分派した同じ民族がガルマン帝国を作ったという件など、核心をついた内容は、混乱を招いてしまう可能性があるため、状況を確認しつつ、タイミングを見計らう方針だった。

 イリヤは、更に話しを続けた。

「デスラー大使。お噂は、こちらの銀河系でも聞いています。何でも、ガミラス星はマゼラン銀河を制覇した覇者とか。一時は、ボラー連邦やガルマン帝国とも小競り合いがあったと聞いています。地球連邦も、存在は知っていますよ。近年、ガミラス星と同盟を結んで、急速に勢力を拡大しようとしていると情報が入って来ています。地理的に近いガルマン帝国は、そのことを懸念しているようです」

 キャッスルとランハルトは、驚いていた。

「なるほど。そこまで知られているなら、あまり遠慮する必要はないな」

 ランハルトは、不敵な笑みを浮かべていた。キャッスルは、慌ててそれを否定しようとした。

「ちょっとお待ち下さい。我々にガルマン帝国と対立する意図はありません。それは、ガミラス政府も立場は同じです」

 ランハルトは、面白そうにキャッスルの表情を窺った。

「大使!」

「わかっている。彼の言っていることは本当だ。我々は、既にこの銀河系からは撤退している。地球人とはいろいろあって、今でも仲良くやっているが、天の川銀河で勢力を広げようなどと、現政府が考えることは無いだろう」

 イリヤは、二人の様子を不思議そうに眺めた。

「わかりました。では、このサイラム星系とアマール星について少しお話ししましょう。ここは、ボラー連邦とガルマン帝国の対立によって、長い間戦争に巻き込まれてきた歴史があります。近年、双方の休戦協定が結ばれ、ここが戦闘を禁じる中立地帯に決まってから、この銀河系で唯一の平和的な交流が可能な場所になりました。私たちのアマール星では、双方の軍の駐留が条件とは言え、自治権も認められています。しかし、いつ再び双方の国家がこの地で戦争を始めてもおかしくありません。ここは、そういう場所なのです」

 イリヤの表情は暗く陰った。

「ボラー連邦もガルマン帝国も、所属する星系は、彼らに侵略され、植民地と化しています。圧政に苦しむ人々の唯一の希望は、私たちが神と崇めるマザー・シャルバートへの信仰です」

「マザー・シャルバート?」

 キャッスルとランハルトは、突然出てきた名前に興味を持った。

「失礼。宗教のことは、あまりお話しすべきことじゃありませんね」

 古代は、そこで割り込んだ。

「イリヤさん。ぜひ、聞かせて頂けませんか? 人々が圧政に苦しんでいると聞いて興味を持ちました」

 古代は、真剣な眼差しでイリヤを見つめた。その瞳を見たイリヤは、普段なら話さないようなことを話し始めた。

「わかりました。シャルバートは、かつて強力な力で銀河に平和をもたらしていたそうです。そして、滅び行く星ぼしに救済の手を差しのべ、あまねく星ぼしに平穏をもたらしていたそうです。今こそ、マザー・シャルバートは姿を現し、皆を救ってくれると信じられています」

 その話しを聞いたガミラスと地球の一行は、シャルバートとイスカンダルのイメージが重なっていることに動揺した。

「その、マザー・シャルバートとは、ボラー連邦領かガルマン帝国領内に実在する人物なのでしょうか?」

 古代は、もう少し詳細を知ろうと粘ってみた。

 イリヤは、小さく首を振った。

「まさか。これは、あくまでも信仰、伝説です。そのように信じられているだけです。人々は、それほどまでに追い詰められているのです。かくいう私も、もし今、マザーが来てくれたら、と考えることがあります」

 キャッスルは、そこまで聞いてから、全員の顔色を窺った。

「イリヤさん。あなたのお話しに、我々は心を打たれました。我々の本当の目的をお話しします」

 イリヤは、突然の申し出に驚いていた。

「実は、我々の地球は、ガルマン帝国からのテロ行為によって、多くの死傷者が出ています。我々がここにやって来たのは、その真意を確かめるべく、外交ルートを構築するのが目的です」

 イリヤは、その話しに真剣な眼差しで応えた。

「やはり。そのようなことだと思っていました」

 そしてキャッスルは、今日、最も話したかったことを語った。

「どうにか、ガルマン帝国と話しをしたいと思っています。アマール政府から仲介をお願いすることは出来ないでしょうか?」

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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