能力バトルはもういいから普通の学校生活を送らせてくれ! ――国立異能力バトル高校学級日誌   作:アレクラルク

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真なる最終章 フェアネス&カインドネス
運命の神かく語りき


《――もう二十年近くが過ぎたのか。地上の時の流れは早い》

 

《復讐など考えないよ。ただ自分の過ごしたあの箱庭を、どのように発展・繁栄させていくのかのみに興味がある》

 

《ああ、異能力高校だけでなく、世界そのものを、だ》

 

《…………》

 

《フェアネス&カインドネス  片手に剣を片手に花を》

 

《クリスタライズ タスク=キラー》

 

告死烏(こくしがらす) フレンドシップ》

 

《アイアン=ドレス 死後装束をキミに》

 

《糸の視えない糸電話 サトラレテルーゼ》

 

《最後に我が娘にして前任者。冬林未来のプライマル=ハートとザ=ワード》

 

《僕の地上でお世話になった人たちや友人の物語は、あえてこの口から語るまい》

 

《時は流れる。世代は変わる。それこそが語らねばならぬこと故に》

 

《そうだな……。あのフェアネス&カインドネスの少年が入学する場面から物語を始めようか。時は数年さかのぼるな》

 

《神にとっては数年の月日など、文庫のページを二・三枚めくる程度のことよ。……らちもない》

 

《久し振り――世界》

 

《彼らの軌跡を美しき物語として語れることを、詩の女神にでも願うとしようか! ……縦割り行政。なーんてね、はっはっは》

 

 …………。

 

 僕の名前は雪浦(ゆきうら)陽一(よういち)。あの異能力高校の新入生になる。

(今日から学校だ!)

 逸る気持ちで通学路を歩いていると――

「うるせえ! もう死なせろ! オレは仕事もなくなって、生きている価値なんてないんだぁあああああああああああああああああああっ!!!」

(酔っ払い……)

 ここまで臭いが漂ってくるようだった。ホームレスではなさそうだけど、お世辞にもお洒落なおじさんとは言い難い。

 国立ウィル能力研究大学附属高等学校。かつては通称異能力バトル高校?

 正直に言って、バトルとかぴんと来ない。勉強して強力なウィル能力を発現させて、企業にクリスタライズさせた能力を高く売りつける。それが目的。

(ああはなりたくないな……)

 思うのだけど、目は離せない。

 僕も能力がゴミだったなら、こうなる可能性はあるわけだから。

 僕の能力? 知らない。まだ出ていない。

 ただ思うんだよね。

 一人一能力って不便じゃない? って。

 もっと色んな能力を持ちたいよね。みんな。

 戦闘だけでなく、それ以外にも。

 それ以外の能力者でも護身用の能力が欲しいかも知れない。

 だから、みんなに追加で一能力ずつプレゼント出来るような能力があれば、人気者になれるかなー……なーんて。

《面白すぎるぞ……お前。それを授ける。ウィル能力名はこのカナメ神が直々に名付ける。――【フェアネス&カインドネス】……それで行け》

(?)

 頭の中で声がする。

 だけど、きっと幻聴だろう。

 あ、警察が来たようだ。

 ? 何だ、あの女の子。異能力高校の制服……?

「はいはーい。おじさん。落ち着いてねー。――【プライマル=ハート】!」

 

 3年 生徒会長 冬林未来

 ウィル能力名 【プライマル=ハート】

 効果 相手を平常心にする。

 

 おじさんの目がしゃっきりした……? うわ、何だ。この女の子、すっごい美少女じゃないか!

 この時点で、僕は彼女の能力など知らないわけだけど。

「そうだよ……。仕事なんてしたくねーよ。福祉のお世話になって、朝から酒が飲める身分じゃねーか。勝ち組勝ち組! はっはー!」

 さわやかな笑顔でおじさんは警察に連行されていった。

 パトカーに人が乗せられるところを、僕は初めて目にしたかも知れない。

「おや? 1年生?」

「はい……」

 ということは、この人、2年生か3年生かな……。

 今日は入学式だから、上級生は登校しないと思っていたんだけど。

「一緒に行く?」

「はい……」

 この時の僕は、まだ彼女の背を追い越してはいなかった。

「いやー、父ちゃん……。面白い能力を与えたね、この子に」

 この呟きの意味も、まだ理解できてはいなかったんだ――。

 

 


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