美食の白兎 作:ドラ民具
獣臭を頼りに僕は十三・十四・十五・十六階層を走破し、十七階層へ辿り着いた。
「間違いない、この階層に居る!」
臭いの強さが今までより濃い事からグルメ界の猛獣が十七階層に居ると判断した。
「急がないと!!」
そう言って十七階層を進んでいると牛頭のモンスターの大群が襲って来る。
「邪魔だ!!」
【猿武
拳をモンスターに叩き込むと、衝撃とその余波でその大群は魔石と
が、今はそれに見向きもせず僕は猛獣のいる場所で進んでいく。
すると、十七階層最奥の大広間でその猛獣はいた。
「グギュアアアアアアアアッ!!」
けたたましい鳴き声を上げているのは無数に腕が生えており、3つの目は顔面から突出し、ライオンのような鬣を持っているなんとも不気味な姿の巨大な蛇。
名前はデビル大蛇、目の前にいる奴は捕獲レベル21の猛獣だが原種であるデビル大蛇の捕獲レベルは5100。
しかも、大広間にはそのデビル大蛇と戦っている一団が居た。
その一団が掲げている旗には滑稽な笑みを浮かべる
確か、エイナさんが教えてくれた迷宮都市オラリオの最大派閥の一角である【ロキ・ファミリア】だったかな。
しかし、その最大派閥の【ロキ・ファミリア】でもデビル大蛇を仕留め切れていない。
何故なら、奴はその巨体に見合わず動きは極めて機敏で攻撃を全て躱しているからだというのもあるけど、当たったとしても、伸縮性のある皮膚を限界まで圧縮させて防いだり、傷を負わせる事が出来ても高い再生力ですぐに傷口を塞いでしまうからだ。
このままではいずれ限界が来る、そう感じた僕はわざと音を立てた。
「グギュアアアアッ!!」
その音にデビル大蛇が反応し、僕の方にへと向かって来る。
「危ない!!」
【ロキ・ファミリア】の誰かがそう言ってくる声が聞こえてきたけど、何の問題も無い。
僕は人差し指を立てて、飛び掛かって来るデビル大蛇の腹に三か所打ち込んだ。
すると、デビル大蛇は地面へと倒れ込むともう起き上がる事は出来ない。
「ノッキング完了」
僕はそう言った後、【ロキ・ファミリア】の人達の方を見ると唖然とした表情をしていた。
まぁ、自分達が苦戦していたデビル大蛇をこうもあっさりと行動不能にされてしまったらそうなるか。
そう考えていると、最初に我に戻った
「おいテメェ、なに人の獲物の横取りをしてやがる!!」
「横取りなんてしてませんよ、僕はただ自分に降り掛かって来た火の粉を払っただけだ。」
「なんだと、テメェ!!」
青年の言葉に対して僕は冷静にそう言うと、青年は声を荒げる。
「やめろ、ベート!」
「止めんじゃねぇよ、フィン!コイツは俺らの獲物を横取りしやがったんだぞ!!」
「だが、あのまま戦闘が続いていれば犠牲者も大勢出ていた。」
「・・・チッ!!」
ベートと呼ばれた
何故だろうか、あのフィンと呼ばれる少年からは大人の風格を感じる。
ダンジョンに潜っていれば誰しもそうなるのかな、とそんな事を考えていると先ほどのフィンと呼ばれる少年が話しかけてくる。
「うちの団員が失礼したね、申し訳ない。」
「いえ、気にしないでください。僕もそう言う時がありますし、その気持ちはよく分かりますから。」
そう言って僕は気持ちだけ受け取る事にした。
すると、フィンと呼ばれる少年の後ろから翡翠の髪と目をした
「助けてくれた事、感謝する。」
「ガハハハハハッ、小僧中々に面白いな。」
「いえ、僕はそんな大した事はしてませんよ。」
その二人の言葉に対して僕はそう言っていると、金髪金目の少女が話しかけてくる。
「ねぇ、どうしたらそんなに強くなれるの?」
そう聞いてくる少女の眼には強くなるという何か執念染みたものを感じた。
すると、僕と話していた三人はまたかといった表情をしていた事から考えてこの人は強くなる事にしか興味が無いのかと思ってしまった。
それに対して、僕はこう言った。
「正直、それは僕にもよく分かりません。強くなる理由は人それぞれ違う、だからこそ安易には答える事は出来ません。」
「そっか、ありがとう。」
僕がそう言うと、少女は少し落ち込んだ様子でそう言って来る。
すると、少女の横から
「ねぇねぇ、このモンスター倒したんじゃないの?魔石になってないし。」
褐色肌の少女の言葉を聞いて全員がデビル大蛇の方を見る。
「確かに魔石にならないし、どうなってんのよ、コレ?」
そう言っているのは
「あぁ、それはノッキングしたからですね。あと、デビル大蛇はモンスターじゃなくて食材ですよ。」
『!?』
「あれ、どうかしたんですか皆さん?」
僕の言葉を聞いて目を見開かせて僕の方を見て来る。
「すまない、君はアレの正体を知っているのかい?」
フィンと呼ばれる少年が全員の代表としてボクに質問を投げかけて来るのに対して僕はこう答える。
「はい、こいつは結構高値で取引されているんですよ。高級食材として。」
「それは
「いえ、普通に表ですけど。」
フィンと呼ばれる少年の言っている意味が分からずに答えていると、ビキリと音を立てて空間に罅が出来た。
「総員、戦闘態勢!!」
フィンと呼ばれる少年の指示に全員が従い、戦闘態勢を取る。
僕も何が現れても良いように臨戦態勢に入る。
罅は次第に大きく広がっていき、大型猛獣なら軽く通れるくらいの大穴が出来上がり、現れたのはヘビークリフの大群だった。
ヘビークリフ 哺乳獣類で捕獲レベル30の猛獣。
ざっと見積もって50頭は居る、ここは威嚇であの大穴に逃げ帰らすか。
そうやって考えを巡らせていると、【ロキ・ファミリア】がヘビークリフに攻撃を仕掛けている。
「なっ!?」
僕が驚いている間に【ロキ・ファミリア】とヘビークリフの戦いは激化する。
だが、まともに戦えているのはベートと呼ばれる
いや、後衛では翡翠髪の
他の人達も何とか応戦しようとしているが、ヘビークリフはそれじゃあ止まらない。
何故なら、ヘビークリフは筋肉を硬質化することが出来、その特質を持って攻撃や防御を行う為、肉弾戦では手強い相手だ。
だから、僕は威嚇する事にした。
殺気を含むそのオーラを漲らせ、ヘビークリフにへと浴びせるとさっきまで暴れていた様子とは打って変わって大人しくなった。
「大人しく巣に戻れ、死にたくなかったらな。」
そう言った瞬間、ヘビークリフ達は自分達が現れた亀裂へとわれ先にへと飛び込んでいき、最後の一匹が入ると罅は一瞬で修復されて何事も無かったように消え去った。
大広間に静寂が訪れる。
そして、その静寂を破ったのはフィンと呼ばれる少年だった。
「君は本当に何者なんだい、あの蛇の事を知っていたり、さっきのモンスターを威嚇だけで帰らせたりする君は?」
その問いに僕はこう答える。
「僕はベル・クラネル、新興
こうして、僕は【ロキ・ファミリア】と邂逅を果たしたのだった。
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