美食の白兎 作:ドラ民具
十八階層での休息という名のデビル大蛇の食事会は肉の一片たりとも残る事無く完食した僕達は地上にへと向かっていた。
「本当に良かったのかい、僕達もデビル大蛇を食べてしまっても?」
「はい、一人で食べるよりみんなで食べた方が美味しいですから」
僕は【ロキ・ファミリア】の団長であるフィン・ディムナさんとそう話しながら進んでいく。
そして、僕は【ロキ・ファミリア】の人達から質問攻めをされるのだった。
「ねぇねぇベル、デビル大蛇の後に出てきたあのモンスターは捕獲レベル幾つ位なの?」
「あぁ、ヘビークリフの事?あの猛獣の捕獲レベルは30くらいだったかな」
「デビル大蛇より上なの!?」
「うん、まぁ群れで行動している猛獣だしそれも加味してると思うけどね…。普通の美食屋なら避けるべき猛獣だからね」
突然の質問に僕は答えると、ティオナは驚きの表情を浮かべる。
「あの、美食屋って何?」
「美食屋って言うのは未開の味を求めてまだ見ぬ食材を自ら探し、捕食する食の探究者である。ここらへんは冒険者と似ているかな。」
「そうなんだ」
次に質問してきたのは
「でも、美食屋の中には料理人と
「それは何故だ?」
「美食屋が冒険者なら料理人は鍛冶師や
「なるほど、美食屋が食材調達し料理人がその食材を調理するということか」
「そうです」
僕の言葉に食いついたのは翡翠髪の
「ベルよ、お主の世界に美味い酒はあるか?」
「ありますよ、バッカス島に生息している酒乱牛やバッカスドラゴンが一押しですね。酒乱島に一本500万ヴァリスのエメラルドワインがありますし」
「お、おぉ、凄まじいのう…」
『{主に金額が…!!}』
「まぁ、僕の場合グルメ界にあるドッハムの湧き酒が一番ですけど」
「ほう、その酒はそんなにも美味いのか?」
「えぇ、僕の師匠の一人が人生のフルコースに入れているくらいですから」
酒の事を聞いてきたのは酒好きの
「人生のフルコース?なにそれ?」
「人生のフルコースっていうのは未開の味を探し求める美食屋が人生の目標とするメニューでオードブル(前菜)、スープ、魚料理、肉料理、メインディッシュ(主菜)、サラダ、デザート、ドリンクの8つからなっているんだけど個人の嗜好やこだわりが反映されている場合も多く、必ずしもフルコースの捕獲レベルの高さと実力は比例しないから。
美食屋だけでなく、料理人や再生屋、研ぎ師などもフルコースを持っている場合があり、特に料理人の場合は自分もしくはコンビが調達した食材を調理したメニューとなっているからね」
「なるほどってまた気になる単語が出てきたわね」
ガレスさんの次に質問してきたのはティオネで人生のフルコースついて聞いてきたため、答えると納得をしてもらえた。
「じゃあさじゃあさ、ベルの人生のフルコースってどんなの!?」「ちょっと馬鹿ティオナ!!」
疑問を解決させようとしたティオネを押しのけてティオナが僕の人生のフルコースについて聞いて来る。
「うん、僕の人生のフルコースはまだ八つとも空欄だよ」
「えっ、何で!?」
「だって、世界にはまだまだ僕の知らない食材があるんだからそんなすぐに決めなくてもいいかなって思っているから」
「ほう、確かにこの世はまだ知らぬ『未知』に溢れておるからのぅ。お主の考え方は間違っておらんじゃろうな」
ティオナの質問に答えると驚かれてしまうがその考えを伝えるとガレスさんが代弁してくれた。
「じゃあさ、人生のフルコース完成したら御馳走してよ!!」
「ちょっと待ちなさい馬鹿ティオナ!!それだとお金が幾らあっても足りないわよ!!」
「えー、でも食べてみたいじゃん!!」
「あははっ、別にタダでいいよ。美味しく食べてくれるならお金なんていらないし」
「ベルあんた絶対いつか詐欺に遭うわよ…」
僕の言葉にティオネは呆れながらそう言って来る。
「絶対だからね!約束!!」
「うん、約束!!」
「えへへ…///!!」
ティオナの念を押して来るのに対して僕もそれを守る事を言うとティオナは笑っていた。
すると、ずっと黙っていたベートが話しかけて来る。
「オイ、テメェの世界で一番強ぇ
「ちょっと、ベート空気読みなさいよ」
「ホントだよ、あの強がり狼は」
「黙ってろ、馬鹿ゾネス共!!」
「あぁん!!」「なんだとー!!」
ベートの質問に対しティオネ・ティオナが噛み付き、ベートが罵倒し一触即発の空気が漂う。
「やめんか、お前等」 「止めんじゃねぇ、糞爺!!」
「そうだぞ、みっともない」 「え~だってさ~…」
「ティオネ、落ち着こうか」 「はい、落ち着きました団長!!」
フィンさん達に止められて三者三様の返答をするのを見て僕は近くにいた平凡な青年代表格のラウルにこう言った。
「楽しい所だね【ロキ・ファミリア】」
「そうっすね、自分はこの
「そっか」
僕とラウルがそんな事を話していると、アイズが話しかけて来る。
「私も聞きたい、貴方のいた世界に存在する最強の生物を…」
その言葉と共に向けられた眼には何か黒い物を感じ取れた、まるで己すら焼き殺すほどの黒い炎を…。
「それならあそこで口論している人達も聞きたいだろうしね。それじゃあ、説明始めるよー!!」
『!!』
僕の言葉を聞いてさっきまで口論していたのが嘘のように静まり返った。
「僕のいた世界で最強と言わしめる猛獣は八体の猛獣、総じて『八王』とよばれる存在だ」
「八王…」
「それぞれの祖先は時代こそ違えどいずれも地上を支配し、最強と謳われた伝説の猛獣達で今もなおその子孫は最強の遺伝子を受け継いで各大陸を支配しており、複雑に入り組んだグルメ界の生態系バランスは八王によって保たれているんだ」
「数千年前の足跡に近づいただけでも圧倒的な存在感に体が萎縮してしまうほどで、八王の足跡上には八王の種類やその時の機嫌によって、花畑や美しい湖、一木一草生えない荒野などが発生するなど、まさに環境そのもののような存在だ。彼らが本気で攻撃態勢に入ってしまうと、対象が原型を留めていられる時間は100分の1秒もなく、ほぼ攻撃と同時に死ぬ。また、小動物のような敏感さを併せ持っておりわずかな地殻変動や気候の変化から将来の危機を察知し太古より幾度と無く繰り返してきた生物大量絶滅の危機を乗り越えてきた。
「…テメェとその八王が闘りあったらどっちが勝つ」
「当然、八王だけどタダでヤラレルつもりは無いけどね…」
ベートの問いに対し僕はそう答える。
「八王、そんなヤバい奴等が居るのね…」
「うん、それならもっと強くならないとね!!」
「やってやる…!!」
「強くなる!!」
八王の話を聞いても自分を奮い立たせている【ロキ・ファミリア】。
僕もこんな
そうして、話している内にダンジョンと地上を繋ぐ入口が見えて来た。
「それじゃあ、僕はここで失礼しますね」
「あぁ、とても興味深い話が聞けたよ。ありがとう、ベル・クラネル」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
こうして、僕の初めてのダンジョン探索は終わりを迎えたのだった。
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