マリアさんは結婚したい   作:大ちゃんネオ

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デスゲームに参加しよう!

 六堂千鶴。

 国連直轄組織S.O.N.G.所属。

 配偶者有り。

 妻は世界的歌姫のマリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 子供は二人。

 諜報員としての仕事の他に組織内部に入り込んだ内通者などの粛清も職務だとかなんとか。

 

 緒川慎次。

 表の顔は風鳴翼のマネージャーだが六堂千鶴と同じくS.O.N.G.の所属。

 諜報員として優秀だとかなんとか。

 正直、情報はあまり集まらなかったがいいだろう。

 

 とにかく楽しませてもらうぜ……。

 

 

 

 

 

 

 

 目を開くと、見知らぬ薄暗い部屋であった。

 コンクリート造りで少しばかりひんやりとしている。

 

「手錠、か……」

 

 後ろに回された手には手錠がかけられ、首輪までされて自由を奪われている。

 ……不覚を取ったか。

 

「目が覚めましたか、六堂さん」

 

 背後からの声は聞き馴染みのある有能な同僚の声だった。

 

「緒川さん……。まさか、緒川さんを捕らえることが出来る輩がいるとは」

「六堂さんこそ。お互い、不覚を取りましたね」

「ええ。帰ったら一緒に司令の説教を食らいましょう」

 

 ひとまず状況を改めて確認。

 部屋は殺風景でモニターが一台あるぐらい。

 恐らくあれを用いてこちらと会話しようとしてくるだろう。

 

『お目覚めのようだね』

 

 ほらやっぱり。

 モニターの電源がつくと仮面を被ったピエロのような男が私達に向けて語りかけてきた。

 

「お前が黒幕か」

 

『そうだ。気軽にゲームマスターとでも呼んでくれたまえ』

 

「なにが目的だ」

 

『決まっているだろう。ゲームだよゲーム』

 

 ゲーム?

 また悪趣味な輩に捕まってしまった。

 

「こんな30代の男二人捕まえてゲームとは、趣味が悪いぞ」

「僕達を捕まえたところで無駄ですよ」

 

『くっくっくっ。強がっていられるのも今だけだぞ。まず第一ステージ。その部屋は5分後に爆発する。さあ5分以内にこの部屋から脱出出来るかな?』

 

 爆発、か……。

 モニターの下にある包み、あれが爆弾と見た。

 さて……。

 

「手錠、取れました」

「ありがとうございます緒川さん」

 

 緒川さんの分身に礼を言って、袖に潜ませていたメスで首輪を切り裂いて……。

 

『ちょ、え? 待って、ねぇ待って』

 

 モニターに映るゲームマスターがなにやら慌てた様子でこちらに話しかけてきた。

 

「なんだ」

 

『いや、あの、え? 分身? 分身ってなに?』

 

「分身は分身ですが……」

「緒川さんは忍者だからな。当然だろ」

 

 実体のある分身すら作れる緒川さんだ。

 こんな人を忍者以外のなんと表現出来ようか。

 

『忍者!? 嘘だろ実在すんの!?』

 

「ええ、ここに」

 

『マジかよ……。あとそっちのお前も! 所持品は全部取り上げたはずだぞ!』

 

 所持品、取り上げられてたのか……。

 こんなに色々残ってるのに……。

 証拠にメス10本とサバイバルナイフを袖から取り出して見せる。

 あとチョコも取り出して食べる。

 甘い。

 

『どんだけ持ってんだお前! そんなんで街中歩くとか危険過ぎるだろ! あぶねーよ捕まっちまえ通り魔予備軍!』

 

「誰が通り魔予備軍だ。ちなみにこれは私の携行する暗器の1割にも満たない」

 

 まったく、身体検査が甘い奴だ。

 こんな奴に捕まったのかと思うと自分が情けなくて仕方ない。

 しかし、恐らく捕まった原因はあれだ……。

 朝の通勤途中の……。

 

「六堂さん、扉は施錠されていました。ゲームという以上、鍵を探すか爆弾を解除するかですが……。六堂さん、斬れますか?」

「ええ。問題なく」

 

 メスでかんぬきを斬ってしまえばこのタイプの扉は簡単に開く。

 

「脱出しましょう」

「まだ何か仕掛けてくるかもしれません。気を付けてください!」

 

 部屋から出る直前、ゲームマスターがまた何か喚きだした。

 

『いや、ちょっと待って本当に。あの次のステージまだ作ってるとこだから。もうちょい待っててほしいな~ってゲームマスター思うの。ね? お願い? 爆弾は止めたから、もうちょっとだけ待ってて本当に後生だから!』

 

 いや、作ってる途中かい。

 普通、全部終わってからやるもんじゃないのかこういうのは。

 

『久しぶりの仕事なもんだから張り切り過ぎて……』

 

「お前、絶対に遠足の前の日眠れなかったタイプだろ」

「そうでしょうね。僕も同じタイプでしたから分かりますよ」

 

『うるせえよ! 分かってたまるか! つうかお前! どうやって扉開けたんだよ!? ピッキングにしたってもっと時間かかるだろ!』

 

「どうやってもなにもただ斬っただけだが……」

 

『くぅ~! ムカつく! こういうな○う系主人公っぽいことされるの超ムカつく!』

 

 なにを言っているんだこいつは……。

 ともかく、こいつのお願いを聞いてやる義理はないので緒川さんと二人でここから脱出すべく走る。

 この部屋は最上階だったようで階段を駆け降りていく。

 途中、なにか撃たれたりだとか罠っぽいものがあったような気がするが多分気のせいだろう。

 そんなこんなでようやく一階に辿り着いた……と思ったら。

 バカみたいにデカイ鉄の扉が行く手を阻んでいた。

 その扉の隣に備えられたモニターの電源がついてまたゲームマスターと顔を合わせることになった。

 

『くっくっくっ。ようこそ最後のステージへ……』

 

「2つ目で最後のステージかぁ……」

 

『それはお前達が色々無視して突っ走るからでしょ!』

 

「お前がちゃんと完成させてなかったからだろう」

 

『ぐっ……』

 

 黙った。

 にしてもこれは流石に斬れないな……。

 専用の工具でもあれば話は別だが流石に暗器として持ち運べはしないので携行していない。

 どうしたものか。

 

「司令なら壊せるんだろうけどな……」

「ですねぇ……」

 

『え、なに? これ壊せる人間がいるの?』

 

「ああ、うちの司令だ。あの人なら余裕だ」

 

『なにそれ怖い。だが今はその司令さんとやらもいらっしゃらない。さあ、頑張ってその扉を開くんだな!』

 

 ただ扉を開くだけのゲームとはこれ如何に。

 ヒントもなにもないぞ。

 まさか本当に力ずくで開けろということか?

 ……まあ、このゲームマスターならそれもあり得そうだが。

 しかし、そろそろ時間だろう。

 

「出勤しない。定時連絡もない。ともなれば」

「ええ、恐らくかと」

 

 緒川さんと共に扉の前から離れる。

 その数秒後、鉄の扉が殴り飛ばされた。

 

「お前達、無事か!」

 

 噂をすればなんとやら、司令の登場である。

 まさか司令直々に来るとは思っていなかったが。

 

『な、なんだお前達は!? 離せ! 離せぇぇぇ!!!』

 

 モニターの向こう側のゲームマスターも捕まったようだ。

 とりあえず、一件落着。

 あのピエロの素顔でも見に行ってやるとするか。

 

 

 

 

 

 ゲームマスターは素直に色々と自供してくれた。

 錬金術師達に雇われて私達を捕えたのだという。だが恐らく捕らえた目的は人質なりなんなりにするためでゲーム(の体をなしていなかったが)をするなんてことにはなっていなかったはず。

 ゲームマスターの趣味と、捕らえてどうするかを上手く共有出来ていなかったのだろう。

 下請けに依頼する時はちゃんと情報引き継ごうな。

 

「それにしても、よく緒川と千鶴を捕まえることが出来たな。二人はうちのエースだぞ」

 

 ……やばい。

 知られたらまずい。

 どうやって捕まってしまったのかを。

 緒川さんと目が合い、今すぐあのゲームマスターを処分することに決めて懐から短刀を取り出す。

 しかし時既に遅し。

 

「……二人の通勤経路にそれぞれ風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴのブロマイドを置いて、拾わせたその隙に……」

「なるほど……。あとで二人には説教するのと……この事を、しっかり伝えておくからな。翼とマリア君に」

「ぼ、僕は翼さんの担当として道にブロマイドが置いてあることが許せなくてですね……」

「私も子供の手本となるよう普段から意識していたので、道にゴミが捨てられていたらちゃんとゴミ箱に捨てる。そう、捨てるつもりで拾ったのです」

「で、捨てたのか?」

 

 ……まだ胸ポケットにあります。

 そんなこんなでマリアにこのことが伝えられた。

 

 

 

 

「ふ~ん? そんなに欲しかったんだ~ブロマイド~。本人がここにいるのに~」

 

 テーブルの向こう側。

 そっぽを向いたマリアが棒読みで俺を怒っている。

 

「いや、だからちゃんとゴミ箱に捨てようとしてだな……」

「捨てるつもりだったんだ~私のブロマイド~」

 

 拾ったことも捨てようとした(建前)こと、どっちを言ってもマリアを怒らせる。

 どうすればいいんだ……!

 

「あ、いや、ブロマイドはまだ捨ててない……ぞ?」

「ふ~ん? そんなに私のことが好きなのね千鶴は~」

「それは……そう、だろう……」

 

 しばらく沈黙したあと、そっぽを向いていたマリアが俺に顔を向けた。

 

「ふふっ。それで許してあげるわ」

「……すまない」

「もう、ブロマイド一枚で惑わされないこと。いい?」

「……はい」

 

 これで許してもらえた。

 ……そう思ったのだが、しばらくこのことはネタにされ続けて俺の立場は若干弱くなった。

 あと緒川さんの方は怒られたというより呆れられたとかなんとか。

 とにかく、道に落ちている不審な物には注意しようと心に決めたのだった。

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