世界を敵に回しても   作:はすきるりん

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だいぶ久しぶりに更新しました!
これから少しずつ更新していきたいと思いますのでよろしくお願い致します!


35話 願いとオモイ

『君はいつもニコニコしながら世界を視てるけど、そんなに人間ばっかり視てて飽きないのかい?』

 

『確かに!なんでいつも楽しそうに視てるのかしら?

私も気になって視てみたけど何が面白いのかよくわからなかったわ!』

 

『ほら。いつも君の好きなことには影響されやすい ○○ですらこんな感じなんだから。やっぱりこれだけは君がおかしいよ』

 

そんなにおかしいかな。人間はあんなに短い人生の中でどんなに辛いことがあってもそれを乗り越えて、命を繋いで家族を作り一生懸命に生きてる。

それって凄いことだと思わない?

僕は思うし、尊敬だってしてる。

 

『尊敬ってそこまでかい…というか君は人間たちのような家族ってのに憧れがあるのかい?』

 

僕たちの世界ではあんまり家族とかそういったのがないし、興味はあるかも

 

『ふーん、…ねえそれなら僕r『私らで家族になれば良いんじゃないかしら!?』…見事に被ったね』

 

僕らで家族に…

 

『○○に先に言われちゃったけど、まあそういうこと。他のやつらはくだらないとか言ってくるだろうけど、僕らは君の想いを尊重するよ。

君が家族を欲するなら、今から僕らが君の家族になろう』

 

…本当に良いの?

 

『もちろん!まだ私も○○もあなたほど人間の家族というのは理解できていないけど、時間はたくさんあるんだもの!ゆっくり勉強して、私たちなりの家族を築いていきましょ!だから…』

 

『…私たちはいつも一緒よ(だよ)!』

 

ああ…ありがとう。これからもずっと一緒だ。

僕たちは家族だ

 

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【新宿防衛戦から8日後】

 

新宿防衛戦に参加し傷を負った兵士が次々と回復していく中、今回一番の功労者であろう三宮シオンは未だ目を覚ましていなかった。

 

「シオンさん…」

 

シオンの手をぎゅっと握るシノア。その顔には明らかに疲れが見えていた。

そして隣でシノアの背中をそっと撫でる三葉。

昨晩、同じシノア隊の仲間である百夜優一郎が目覚めたことで多少気持ちは落ち着いたが、それでもまだ彼女の不安感は完全には消えなかった。

 

「鬼呪の使いすぎによる脳へのダメージが原因らしいが、医者が言うにこうまでなるには普通の人では耐えられないぐらいの苦痛があったって…

シオン、お前本当に大丈夫なのかよ…」

 

三葉は防衛戦でのシオンの戦闘を思い出していた。

2つの強力な黒鬼装備を自在に操り、貴族や貴族レベルも数人いた60人以上の吸血鬼たちをたった1人で相手にしていた彼の背中を。

三葉はその後ろ姿をまるで物語の英雄のようだと思った。

そんな彼は、その苦痛が原因で血涙や吐血をしていても全く苦しそうにしていなかったと思い出した。

 

「正直、優のあの姿は怖いと思った、けどなんだか私はお前の方が怖いと思って仕方ないぞ。

頼むから早く目を覚ましてくれ。シノアも私もお前がいなきゃ生きた心地がしないんだ、そんなのわかってるだろばかシオン」

 

シノアとシオンの手に自分のを重ねる三葉。

そんな時ガチャッと病室のドアが開いた。

 

「大丈夫だよ二人とも。シオンはもうじき目を覚ますから」

 

「せっかくシオンが目を覚ましても、あなたたちが元気じゃなきゃシオンがガッカリしちゃうわよ!ほら!スマイルスマイル!」

 

入ってきたのはシオンと契約した鬼であるクロとヒメだった。

二人は両手に溢れんばかりの飲み物とお菓子を抱えていた。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「本当だよ。僕たちはシオンの鬼呪装備だからね。ある程度そういったことは察知できるんだよ」

 

「そ、そっか。それなら良かった。

…ところでお前たちのその大量の飲み物とお菓子はなんだ。どこから盗ってきちゃったんだ!」

 

「あら三葉ったら酷いわ!ちゃんと買ったのよ!シオンのお財布から!」

 

「いくら今回のでボーナスが来るからって使いすぎるな!

お前たちの食費だけでどれだけ消費しているのかわかってるのか!

もう少し節約というのをだな…」

 

「よく言うよ、君もやたらと美容品とか買ってるし、それに君だって実は隠れてよく食べてるんじゃないか?その証拠がその立派に育った胸だろ!

シノアを見てみなよ!ほぼ同じ食生活な筈なのにシノアの胸とは天地の差だ!

いや巨貧の差だ!

シノア、君からも何か言ってあげなよ!」

 

「…ちょっと待ってくださいクロさん。今の流れ的に攻撃する相手はみっちゃんですよね?なぜか流れ弾が凄い飛んできたんですけど。

むしろ本命はこっちだったのではと疑ってしまうレベルなんですが」

 

「元気出してシノア!私はシノアの控えめな胸好きよ!寝る前とかによく自分で触ってるみたいだけど私はそのサイズ感がシノアって感じがするから、本当に気にしちゃダメよ!」

 

「きゃあぁぁぁぁ!な、ななんでそのことを…

シオンさん起きてませんよね!?聞かれてません!?

ちょっとヒメさん本当にこの話はここだけにして下さいよ!

いいですね!?」

 

ヒメの大暴露に思わず大声で叫んでしまったシノア。

片手でなんとかヒメの口を塞ぎながら、先ほど流れ弾を打ってきたクロに向かってお菓子やら飲み物を投げつけていた。

そんなカオスと成り果てた光景に、三葉は少しばかり現実逃避をしたくなったがなんとか堪えて止めに入る。

ここがいつもの家なら放っておくが、今自分達がいるのは病室で、寝ているのは自分たちが心の底から愛しているシオンなのだ。

一刻も早く元気になってもらいたいため、今回は今まで以上に強く言わなくては!

そう決意し立ち上がった瞬間だった

 

「…な…んか…うるさ…い…」

 

ずっと寝ていたからか、普段の声とは違い少ししゃがれた声が、先ほどまで騒がしかった病室を静かにさせた。

声がした方向は、この部屋でたった1つしか使っていない病床からだった。

 

「し、シオンさん?!」

 

「シオン!起きたのか!」

 

シノアと三葉はすぐにシオンの側へと駆け寄った。

ぎゅっとシオンの手を握る二人。

目を覚ましてくれた嬉しさからか、二人の目は潤んでいた

 

「…元気そうで…よかっ…あーその様子だと…だいぶ心配かけたな」

 

ゆっくりと目を開け二人を見たシオン。

シノアと三葉の表情から自分がどれだけ寝込み心配をかけたのかがわかり、今回は事が事だったが、なるべく今後は無茶をしないようにしようと決めた。

その時、2人はシオンのある変化に気づいた。

 

「!…シオンさん、その目」

 

「右目が青から赤に変わってる…」

 

その変化とはシオンの右目が青色から赤色に変わっている事だった。

さらにその右目の動向が縦に割れ、色のせいもあってその眼はまるで吸血鬼のようだった。

シオン本人は特に違和感もないのかピンときていない様子。

そこに今まで静かだった者が動いた

 

「それは今回で大量に鬼呪を使ったせいだよ。」

 

クロがシオンの方へ寄ると顔を覗き込む。

ヒメもベットに乗り移るとシオンに覆いかぶさり顔を見下ろす

 

「君は前に一度だけ、フェリド・バートリーと対峙した時に鬼化している。

それは君も覚えているだろ?

普通の人間と鬼だったら、そこから肉体の主導権を奪い合うために一日中人格が行ったり来たりするんだけど、僕たちは別に主導権を握らずともこうして外に出れてるから肉体を奪わなくていいんだ。

だから君はなんのリスクもなく僕たちの力を好きなだけ振るえる様になってる。

つまり君の鬼化は普通起こらない。

ただし、君自身が鬼になりたい、もしくは鬼と同様の力を欲した時、僕たちの送った力を利用して、君の意志で鬼化出来る様になったみたい。

その眼はこの前の防衛戦の名残りみたいなものかな。

時期に元に戻ると思うから安心していいと思うよ」

 

「その状態も僕たちとお揃いで似合ってるよ」と言うと、クロは自身の力で影の椅子を作るとそれに座りお菓子を食べ始めた

ヒメはいつの間にかシオンの上ですやすやと眠っていた

シノアと三葉はクロの説明を聞いて、とくに異常がないと知り一安心すると今まで溜めていた疲れが限界を迎えたのかシオンのベットに伏せて眠ってしまった。

ヒメを起こさないようにゆっくりと起き上がるシオンは伏せて眠っているシノアと三葉の頭を優しく撫でた。

 

(こうなるまで心配させちゃったか…今度からは本当に気をつけなきゃな)

 

撫でていると2人の首筋にまだ治っていない傷があった事に気付きそっと触れた

 

(怪我させて悪かった。俺がもっと早く来ていれば…って今悔いても遅いか

もっと強くなろう。これ以上2人に怪我を増やさせない様に

…本当に無事でいてくれてありがとうな2人とも)

 

2人を愛おしそうに見つめるシオン。

そのシオンの表情を見ていたクロはぷくーっと頬を膨らませていた

 

「ちょっとさシオン。確かに2人は君の大切な許嫁だから分かるけど、もう少し僕たちにも感謝とその愛情を注いでくれてもいいんじゃないの。

僕もヒメも2人に負けず劣らず心配してたんだけど?」

 

「あー…確かに2人にはちゃんと言ったことは少なかった気がする。

…改めてありがとうなクロ、ヒメ。

ヒメは寝ちゃってるから聞こえてるかわからないけど、俺はいつも2人に感謝してる。2人が俺を選んでくれたからこうやって毎日幸せに過ごせてる。

俺のこの日常は、クロとヒメ、三葉にシノア、まあそれにグレンとか、みんな一緒じゃなきゃ成立たないと思ってる。

それに実はさ、クロとヒメはなんだか出会うずっと前から(・・・・・・・・・)一緒にいた気がしてくるんだ。2人といるとなんだか懐かしいって言うか。

何言いたいのか上手くまとめれてないけど、

とにかく俺はこのみんなで過ごす日常を失いたくない

だから…これからも俺と一緒にいてくれ」

 

少し照れくさそうに頭を掻きながらも頑張って伝えたシオン。

その耳は真っ赤に染まっていた。

それに気付いたクロは胸の中がじんわり熱くなった。

正直なところ、クロはシオンに言われなくても自分達が感謝されてることや凄く愛されている事は分かっていた。

ただ少し意地悪で言っただけで、普通にはぐらかされて終わるだけかなって思ってたのに、まさかこんなに真っ直ぐ気持ちを伝えてくれたことに驚いていた。

 

(あーあ、ヒメも三葉もシノアも勿体ない事をしたね。シオンのこんな表情そうそう見れるものじゃないよ。

今起きている僕だけしか知らないシオンの表情。

しっかりとこの目と脳に焼き付けなきゃね。

もうこの時間は全部僕の宝物。

僕とシオンだけの秘密。

君たちには絶対に教えてあーげない)

 

自分の奥底からじわじわと欲が溢れ出てくるクロ。

身体が火照り呼吸が荒むも妖艶な笑みを浮かべ、そっとヒメたちを起こさない様にシオンへと近づいた。

 

 

君は罪深いねシオン。

鬼である僕を、いや、僕たちをこれほど欲情させるなんて。

僕もヒメも他の鬼より特別なのに、凄いのに、その僕たちをこんなにさせちゃうんだから、他の鬼が契約してたらきっとその鬼は身が持たないね。

 

実はね、あの契約の日からずっと、君とは遥か昔からずっと一緒にいた気がするってヒメと話していたんだ。

鬼になって記憶を無くすよりもずっと前から。

今まで記憶のことなんてどうでもよかったけど、もし君と出会っていたなら思い出したいな。どんな些細なことでも君と僕たちの思い出ならなんだって。

ああ、約束するよ。僕たちはずっと君と一緒だよ。

絶対離れない。例えこの世界を敵に回しても僕たちが壊してあげる。

だからもっと、もっと、もーっと僕たちを使ってね。

 

 

 

みんなを起こさない様に、静かにシオンの唇に自分のを重ね、ゆっくり、ゆっくりとシオンの舌を絡めた。

1分にも1時間にも感じたそれをやめると、クロはするりとシオンの首筋へと顔を寄せた。

 

 

「僕らはずっと一緒だよ。愛してるよシオン」

 

 


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