気がついたらウルトラマンティガになれるようになっていました。   作:紅乃 晴@小説アカ

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石の神話(2)

 

 

 

「円…お前…」

 

 

ゼネラルリオールで働く久留米 さやか(くるべ さやか)は、銀色の巨人と化した後輩の姿に言葉を失った。

 

円 大悟(まどか だいご)。

 

彼はさやかにとって、はじめて自分の元についてくれた後輩で、ミスで怒っても決して離れていかない社員であった。

 

随分と長く苦楽を共にしてきた仕事仲間であった彼が、ネット上でまことしやかに囁かれている銀色の巨人とは誰が想像できたものか。

 

大きな銀色の手から安全な丘に降ろされ、彼はさやかを見下ろして小さく頷くと、光と化して元の場所へと飛び立ってゆく。

 

 

「お前は昔から…責任感が強いやつだとは思っていたよ」

 

 

不思議なやつだと、さやかは感じ取っていた。普段はとぼけているのに、肝心なタイミングで大吾は必ず答えた。仕事に対しては必ず成果を出してくれた。向き合うことをやめずに前に進み続ける姿勢に、さやかも救われたときが何度もあった。

 

だからだろうか。

 

彼が銀色の巨人だったと分かった瞬間、驚きや恐怖よりも先に納得が混ざってしまった。

 

 

「これでサヨナラなんて認めないからな、円…必ず戻ってこい」

 

 

遠くで爆音が響く。さやかの視線の先では、銀色の巨人とそれに匹敵する怪獣の死闘が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光から銀色の色へと変わったティガは、伶那の戦闘機からゆっくりと離れると、四つん這いで唸り声を上げるガグマとの戦いに備える。

 

市街地までもう距離はない。

 

ティガは背に街を背負ってガグマへと走り出した。

 

鈍い打撃音が辺りに響く。

 

角が二本あるガグマは、ティガの猛攻を跳ね除けるように体を逸らし、ティガの巨体を投げ飛ばした。

 

 

「キャアーーっ!!」

 

 

巨人が倒れた振動で、戦闘機から脱出した伶那の体が想像絶する揺れに襲われる。

 

あたりの岩も激しく揺れ、傾斜になっている部分では大小様々な岩が転がり落ちてきていた。

 

それを見たティガは、パワーで勝るガグマに対抗しようと額で腕をクロスし、パワータイプへの変身を試みる。

 

だが、ティガの体は変化せず、変わりに光の稲妻が体を駆け巡った。

 

オルタナティブタイプであるティガには、本来のパワータイプ、スカイタイプといった変身をする力が発生しない。光のエネルギーが圧倒的に不足しているのだ。

 

その隙に、ガグマが角を突き出した突進。ティガの体は再び宙を舞うことになる。

 

ダメだ。このままでは…!!

 

地面に叩きつけられてから、ティガの起こした行動は早かった。

 

膝をついて体を起こすと、腕を脇へ構えてエネルギーを収束させてゆく。

 

ハンドスラッシュ。

 

構えた腕に螺旋状の風が巻き上がり、一閃と放たれた一撃は、光の刃と風を織り混ぜてガグマの頭部にある角を吹き飛ばした。

 

 

「———っ!!!」

 

 

喉の器官を振るわせて苦しみと痛みの咆哮を上げるガグマ。すると、青白い燐光を発すると、角を破壊された怒りからかガグマが閃光をティガへと撃ち放つ。

 

 

「巨人の体が…!!」

 

 

光が当たったティガの脚部が、岩へと変貌する。

 

じわじわと下半身が岩へと変えられてゆく中、ティガは冷静さを失わずに胸の前で腕を交差させた。

 

 

「全機!巨人と巨大生物から離れろ!!今すぐにだ!!」

 

 

宗方の叫び声のような通信が響いた瞬間、紫の光を収束させL字に腕を組んだティガが、体の表面にこびり付いた岩を吹き飛ばして必殺の「ゼペリオン光線」をガグマへと放った。

 

ガグマの肉体から迸るような爆発が吹き、巨大生物として猛威を振るったガグマは断末魔の叫びと共に大爆発を起こして消え去った。

 

胸に付くカラータイマーが赤い光を発して点滅を繰り返している。

 

ティガの巨人は消耗したように呼吸を整えると、空を見上げて手を——。

 

 

「撃てぇ——っ!!」

 

 

同時に、背中に光が走った。

 

想像絶する衝撃と痛みを受けて、ティガの巨人は呻き声を上げるような声を響かせて膝をついた。

 

誰だ?誰が打った?まさか新しい怪獣が…。

 

 

「ティガの巨人を逃すな!!ここで仕留めるぞ!!」

 

 

背後へ目をやると、陸自の戦車部隊と攻撃ヘリ部隊が大軍を為して市街地からティガの方めがけて前進を続けていた。

 

人間が、ティガに攻撃を仕掛けたのだ。

 

空を飛ぶ新城と、丘へと登った伶那は驚いたように目を見開く。

 

 

「た、隊長!!陸自がティガに攻撃を!!」

 

 

伶那の通信の最中も陸自からティガへの攻撃は続けられており、ティガはくぐもった声を発しながら飛んでくる攻撃と巻き上がる火花を受けてうずくまった。

 

 

「隊長!!あの巨人は柳瀬を救ったんですよ!?市街地を背にあの巨大生物とも戦ったというのに何故——!!」

 

「本部からの命令は、巨大生物を市街地に入れないようにするための撃破よ」

 

 

新城の言葉に、隊を率いる入麻は簡潔に答えた。

 

あの巨人が、たとえ伶那を助けていたとしても、出現した巨大生物と同じように市街地から5キロも離れていない地点にいる以上、陸自や自分たちに下された命令の対象となる。

 

攻撃命令が解除されない以上、新城や柳瀬も、ティガの巨人を攻撃する任務の責任がある。

 

 

「…ターゲット、ロック」

 

「新城!!」

 

 

数刻の沈黙の後、陸自の戦車部隊と共にティガへ対艦ミサイルの照準を合わせる新城に、堀井が怒声のような声を上げる。

 

 

「お前!!助けてもらった恩を仇で返すつもりなんか!?」

 

「俺は自衛隊の士官だ!命令は守らなければならない!!」

 

「状況を見ずに何を抜かしてるんや!!」

 

 

たしかにティガの巨人は、客観的に見れば自分たちを助けてくれた存在かもしれない。

 

しかし、意思疎通ができない以上、あの巨人が味方である保証はない。

 

巨大生物を倒したのは単なる縄張り争いが目的か、それともまた別の目的なのか。

 

すると、ティガの巨人は砲撃が止んだ一瞬の隙に両手を組み、手のひらから不可視の円形の光の壁を形成する。

 

 

「バリアか…くそがっ!なんでもありかよ!!」

 

 

攻撃ヘリから放たれたロケット弾や、陸自の戦車の砲撃を防ぐ中、新城が爆煙の中にいるティガへミサイルを放つ。

 

ミサイルを見たティガはバリアを解除すると腕を構える。

 

刹那、新城のミサイルが着弾、爆発。

 

凄まじい衝撃波が辺りに響く中、爆炎から空へと舞い上がったティガは、音の速度を優に超えて空の彼方へと飛び立っていった。

 

 

「新城!追えるか?」

 

「あんな速度、機体がバラバラになっちまうぞ」

 

 

戦車隊や、ヘリ隊も、空へと舞い上がったティガを茫然と見上げるだけで、誰も言葉を発することはなかった。

 

 

「あれが…ティガの巨人」

 

 

ただ一人、伶那は丘の上から星となったティガの軌跡の後をじっと見守っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「円!おい、円!しっかりしろ!」

 

 

先輩の声で、俺の薄れていた意識は覚醒した。木にもたれかかる形で座り込んでいた俺を、先輩が心配そうな表情で見つめている。

 

ああ、そうか。俺は先輩を助けるためにティガに変身して…それから。

 

無意識に起きあがろうとして、腕に激痛が走った。上着は脱がされていて、シャツは捲り上げられているが血が付いているのが見える。

 

腕にはいくつもの切り傷ができていた。これはガグマとの戦いで負ったものじゃない。

 

俺はたしかに撃たれたのだ。

 

自衛隊に…人間に。

 

 

「全く、恩を仇で返すとは…不躾な奴らめ」

 

 

車から取ってきたのか、先輩は応急キットで俺の傷ついた腕を消毒し、ガーゼを当て、包帯で包んでくれている。

 

 

「そういう割には、あまり怒った口調じゃありませんね。先輩」

 

「ああ、怒ってるとも。自分でも驚くほどにな」

 

 

しかし、その怒りはどこにもぶつけられない。先輩も俺も、よくわかっていることだった。

 

もし、そんなことを言えば俺が「ティガ」であることが自衛隊や国にバレてしまうからだ。

 

 

「やはり、これは秘密にするべきなのだろうか」

 

「名乗り出ても実験動物になる未来しか見えませんしねぇ」

 

 

はっはっはっ、やはり現実ってクソだな。それもそうだな、先輩も答えると、俺に肩を貸してくれた。正直、歩くものやっとなのですごく助かります。

 

 

「けど、私は知っているぞ。お前が助けてくれたことをな」

 

 

だから、ありがとう。

 

そう言って微笑んでくれた先輩の言葉に救われる。自衛隊に撃たれたクソッタレだ出来事もチャラになるほど、俺はお人好しだった。

 

肩を貸してもらいながら丘を下ってゆく。今頃鉱山の管理会社は血眼になって俺たちを探しているところだろう。

 

先輩と共に丘から見た空は、綺麗な夕暮れに染まっているのだった。

 

 

 

 

 

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