気がついたらウルトラマンティガになれるようになっていました。   作:紅乃 晴@小説アカ

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空に駆ける(1)

 

 

時は令和。

 

新たな時代を迎えた世界は、大いなる危機に瀕していた。

 

 

日本へ現れたゴルザとメルバ。

 

沖縄諸島に出現したガグマ。

 

そして、謎の光の巨人…ティガ。

 

 

その出現を皮切りに、世界各地で巨大生物による被害が勃発。

 

 

最初に現れたのはサンフランシスコだった。

 

 

米国は陸海空軍の総攻撃を実施するが、巨体を支える外殻をもつ巨大生物には、現状の兵器では効果が薄い。

 

世界最大の軍事力を誇る米軍ですら、突如として現れた巨大生物に苦戦を強いられることとなった。

 

 

そんな中、眩い光の柱と共に現れたのは光の巨人。

 

 

壮絶な銀色の巨人と巨大生物の戦いの後、銀色の巨人が放った白熱光線で巨大生物は撃退。

 

 

米国による核発射の一歩手前まで危惧されていた事態は、光の巨人「ティガ」によって防がれた。

 

 

 

その後、オーストラリア、イギリス、ロシア、中国と、次々と巨大生物が出現。現地の軍との武力衝突の最中にも、ティガの巨人は現れ、巨大生物を撃退したのちに空へと去ってゆく。

 

巨大生物の存在と、ティガの巨人の存在が世界に示されてから、国家という勢力図は大きく書き換えられることになる。

 

ある国は「怪獣」を怒れる神の使いとし崇め、「ティガ」を人の業として唾棄する。

 

ある国は逆に「ティガ」を神の化身として崇める。あるいはその両方を脅威として恐れ慄く。

 

そしてある国は、「怪獣」と「ティガ」を捉えようと躍起なる。

 

果ては、嘘の怪獣出現情報を流し、ティガの巨人を誘き出そうとする国まで出る始末だった。

 

しかし、惑わしにティガは姿を表せることはなかった。

 

あの光の巨人が現れるのは、決まって巨大生物によって人々が苦しめられようとしている時だ。

 

その時、人々の願いに応えるように光の柱が現れ、ティガの巨人がその地に降り立つ。

 

やがて人々は、「ティガ」と「怪獣」をフィクションとは思わず、世界の一部というように受け入れ始めた。

 

世界各地に猛威を振るう怪獣がいるという、少し前まででは想像も出来なかった世界が現実になってゆく。そして人は、そんな混沌たる世界にも順応していく。

 

 

そんな時だ。

 

世界各地で謎の爆発事故が発生した。

 

爆破物が不明。

 

目的も不明。

 

主犯者も不明。

 

予告もなく爆破されるテロ事件に、世界が恐怖する中、ひとつだけその現場で目撃される共通点があった。

 

それは、その場にいる人の中で必ずいる。

 

体の一部を欠損した〝人間〟が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらが東京湾海底で確認されたピラミッドについてです」

 

 

TPS日本支部の司令室に集まったGUTSの隊員たちは、TPS日本支部の局長である安藤の言葉に耳を傾けていた。

 

 

「モンゴルとイースター島で確認された巨大生物「ゴルザ」と「メルバ」の進行方向は、明らかにに東京湾沖合の海底ピラミッドを目指していました。また調査した結果、東京湾沖合で発掘されたオーパーツは紀元前350万年前……およそ、三千万年前の地層と同じ成分で構成されていた」

 

 

しかも、我々が知らない元素も含まれていると安藤は言葉を括ると、東北地方の地図を写し始めた。

 

 

「東北地方では過去の伝承に魔を断つ光の存在として「奥特曼」という伝承があった」

 

 

モニターには伝承が伝えられているという祠の調査をする研究員たちの姿があった。

 

石畳の階段を登った先にある小さな祠は、見た目はひどく、作りも古いものであったが、その地下には狭く続くトンネルがある。人1人がやっと通れるような隙間の奥には、おびただしい壁画と象形文字が象られた遺跡が眠っていたのだ。

 

 

「遺跡に記された「奥特曼」を、堀井くんのサウンドトランスメーターで解読し、現代文字へと翻訳した結果、その魔を断つ光の存在が「ウルトラマン」と呼ばれるということが判明した」

 

「ウルトラマン…ウルトラマン、ティガ」

 

「ウルトラマンと呼ばれる存在は、過去に赤い目をした巨人と、光の柱を背負った存在が争い、空へと消えていったと記されていました」

 

 

安藤と共に解読を担当していた堀井も同意するように頷きながら、入麻の呟くような言葉に答える。他のモニターには、ワイドショーで外国の地で巨大生物と戦いを繰り広げる銀色のティガの姿があった。

 

 

「しかし、ウルトラマンという存在も、ティガという存在も、人類の味方であるという保証はありません」

 

 

宗方のいう意見も最もだ。これまでティガはまるで人類を守るように巨大生物の前に現れて戦いを繰り広げ、そして去っていく。しかし、それは客観的に見た意見であり、ティガが人類の味方をしているという事実はどこにもありはしない。

 

ふと、ワイドショーが街中の取材をしているシーンへと切り替わる。

 

 

《巨大生物も、あの巨人も、たまったもんじゃありませんよ》

 

《巨大生物を倒してくれる巨人は、きっと良い巨人なんですよ!》

 

《派手に暴れるなら、どこか他所でやってほしいものですな。潰されたら脚が弱い私では何もできませんよ》

 

 

リポーターのマイクにそれぞれの人が答える言葉を聞いていると、立ち上がった新城が苛立ち気味に側に置かれてあるリモコンでモニターを消した。

 

 

「くだらねぇ…。どいつもこいつも怪獣だの、巨人だの!俺たちGUTSがいるっていうのによ!」

 

 

そう吐き捨てるように呟くと、新城は苛立った足取りのまま司令室を出ていってしまった。伶那が入麻とアイコンタクトをすると、彼女は出ていった新城を追いかけてゆく。

 

ここのところ、新城の様子がおかしい。入麻は言葉にできない嫌な予感を1人感じ取ってあるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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