「たくよぉ、人を犯罪者扱いして連れてきたと思ったら次は歓迎しますだぁ?ふざけんじゃねぇよ。そんなこと信じられると思ってんのか?ああ?こちとらエレベーターに仕掛けられた罠で満身創痍なんだよ」
「といいつつ食事には手をつけるのねぇ」
「そもそもエレベーターの件は貴方のせいです」
「すいませーんこの肉まだありますー?」
手錠から解放された霧夜は一通りの説明を受けた後警戒はしつつパーティーに出された肉などを頬張り始める。先ほどまで命を掛けた状況に置かれていたためまだ夕食を食べていなかったためか次々と口の中に放り込む。
「はっはっはっ!男はよく食うくらいが丁度いいからなぁ!どんどん食べてくれ!」
「あっ!霧夜それ私が食べようと思ってた鶏唐揚げ!」
「早い者勝ちだっつうの」
「かーえーしーてー!」
さっきまで命を掛けた状況だったにも関わらずこの二人はいつもの調子を取り戻して居る様子を見て胆力だけはあるのだろうかと風鳴翼はため息をつきながら眺める。
しかし、どうしても面白い気分になることは出来なかった。
unknownと呼ばれているこの騒がしい少年はともかく、もう一人の少女は2年前自分の片翼である天羽奏のガングニールをその身に纏っていたのだ。疑問は尽きない。
「さてとお二人さん?食べるのはそれくらいにして、お互いの力について知りたくない?」
「知りたいです」
「まあたしかに…」
「じゃあ私からのお願いが2つ、今夜のことは誰にも言わないこと。それと…とりあえず脱いでもらいましょうか?」
そこで霧夜に衝撃が走る。目の前にいるのは髪をアップにしてメガネをした巨乳の女性、白衣を着ているところを見ると医者かなにかだろう。そんな女性に脱げと言われてドキドキしない高校生はいない。
いや逆にいいんですか?脱いでいいんですか!?一体俺何をされてしまうのだろうという霧夜の妄想は広がる。
「優しくお願いします!」
「ダメだよ霧夜!明らかに目が怖いよあの人!」
「うるせぇ!今から俺は大人の階段を上る!イケメンじゃない俺にはまたとないチャンスなんだよ!」
「そうかしら?綺麗な顔立ちだと思うけれど?」
そう言うと女性は霧夜に近づき頬を撫でる。その手つきは妖艶で、さらに顔が近づくにつれて女性のいい匂いがして更にドキドキと心臓が脈打つ。男子高校生にこの刺激は強すぎる。
「ほんとに綺麗な顔…憎らしいほどに…」
「え?」
最後に睨まれたような気がしたが、気のせいだったのかまたニコニコとして霧夜から離れた後、女性は櫻井了子と名乗った。
その後メディカルチェックが行われてその日はそのままそれぞれの自宅へと送り届けられた。
響は未来がいるリディアンの寮に、霧夜は自分の学校の寮に。
「ただいまー、誰もいないけどな」
霧夜の学生寮は普通のマンション型になっており部屋もそれぞれ一人に割り当てられているという好条件になっていた。
間取りはロフト付きの1K。
もちろん希望すれば誰かと相部屋になり部屋も少し広いものが割り当てられるのだが、全然知らない人間と住むのはめんどくさいと霧夜は普通に一人で住んでいる。
1人は慣れているので問題ない。
「今日は色々あったよ…父さん」
霧夜はロフトに敷いてある布団に横になり今は亡き父親に語りかける。彼の父親は彼が6歳の頃に病気で死亡しており、母親は彼が3歳の頃に家を出てそれきりだった。父親の死後は祖父に育てられたが、いろんなところを飛び回っていたためか家では1人が多かった。
だから寮で一人になったところで変わりはないのだ。
「うわ、未来からエグいぐらい着信来てる…明日返そ」
スマホを見ると未来からの通知が溜まっていたが翌日に回し、目を閉じると疲れていたのか数分もしないうちに意識は暗闇へと飲まれて行った。
◆◆◆
誰もいない二課の研究室、そこで櫻井了子は如月霧夜と立花響のメディカルチェックの結果を眺めていた。
二人とも聖遺物と人体が融合している融合症例に間違いない。これは今までに前例はなく聖遺物研究者にとっては大きな発見だ。しかし、何故か了子は不満そうに霧夜のデータを眺めていた。
「忌々しい…どうやって…なぜこの時代に居る…よりにもよって今、この時代にっ!」
ギリッと歯を食いしばると、了子の髪の毛が黒髪から金色へと変わりアップに纏めていた髪を解き下ろした。
「また私の邪魔をするのか…
その表情は、憎しみに染まっていた。
早くGくらいまで書きたいなぁ